21 / 24
21
しおりを挟む「今から、この学園の根幹にかかわる大事なお知らせをする。特に、新旧生徒会役員の皆さんは心して聞くように」
彼の柔らかくも凛とした声が、校内の放送をジャックする。
2人で話していくうち、『サポーター』の意思確認は生徒会派の統括……つまり要先輩という人に任せることになった。どうやらこの人は、俺が誘拐されていた時にも活躍してくれた人物らしい。
教師だとかえって生徒会側についてしまう危険性があるが、彼なら中立を貫いてくれる。彼の性格上、生徒会を守る者として生徒会長がつくったルールを見過ごすような真似は絶対にしないと信頼がおけるから、ということらしかった。
彼との交渉を進めると言って、天先輩は朝から出かけていった。そうして根回しが終わり正式な発表を行えることになったのが、正午のことだった。
「みんなも知っての通り、この学園には『サポーター』という特別な制度がある。本来は生徒会の補佐として仕事を請け負う役割として作られたはずのこの制度が、今では生徒会役員の欲を満たすだけの存在として機能してしまっている。また、『サポーター』となることが合意ではなく、無理やりの契約である場合も多いと聞く。まず、これまでこの現状を知りながらも放置していたことについて謝りたい。特に『サポーター』として苦しんできた人たち、本当に申し訳なかった。今後このようなことがないように、今日この瞬間から合意のない『サポーター』契約を禁止とする」
禁止、と言い切ったことで、周りの空気がざわついた。
天先輩には生徒がどんな様子かを見ていてほしいと言われたから、人の多い食堂に来ていたのだ。1人だと俺が会長付き『サポーター』ゆえに質問攻めにあうと踏んで、ここへは元同室だった3人と来ている。
「まさか、本当にあの会長を懐柔するとはな……うまくコトが運びすぎてて驚いたよ」
「ほんとに。秋弥のポテンシャルにはびっくりだよ。一体どんな交渉術を使ったんだか」
「そんな大層なことしてないですよ。天先輩が意外と、優しい人だっただけで」
「ふ~~ん、なるほど。その顔の赤らめ方、もしかして絆されたのはお前もだな?」
「え、な、何言ってるんですか」
「まぁまぁ先輩たち。まずは無事に会えたことを喜びましょうよ。1カ月連絡がつかなくなって、ほんとに心配したんですから」
「あーー、その節は本当にすみませんでした。色々あって連絡もしないことになってて」
「夕斗なんて2週間経ったくらいから眠れなくなってたんだぞ? 口を開けばずーっと秋弥の心配ばっかりしてたし」
「それは……ほんとにすみませんでした」
同室のみんなと言い合っている間にも、放送からは淀みない声が聞こえる。
「現在『サポーター』となっている人は、これより103教室へ集まること。そこで『サポーター』契約の確認を行う。合意なしと判断された場合は、その時をもって今後は普通の生徒として生活を送ってくれていい。役員側からの接触がないよう俺が責任をもって監視をするので、本当に素直な気持ちのままに答えてくれ。きっとあなたが解放されることを、望んでいる友人やご家族もいると思うから。
連絡は以上。『サポーター』は必ず、103教室へと集まること。来ない場合は、疚しいことがあると考え不合意とみなすことにするから、役員たちは逃げようなんて考えないでね」
放送終了の合図が鳴り、それまで声を潜めている者が大半だった食堂にも喧噪が戻る。
予想通り、聞こえてきた意見は会長の決断を支持するものばかりだった。
「良かったな。秋弥も、郁夜も」
そういえば、郁夜先輩も親友を『サポーター』制度で失ったんだっけ。
朝陽先輩から声をかけられた郁夜先輩の目にはキラリと光るものが滲んでいて、胸が少しだけ締め付けられた。
これまでの時間はかえっては来ないけれど、
かえってこないと思われていた明日はかえってくる。
「じゃあ、俺も一応『サポーター』だし行ってくるよ」
「おう。お兄さんと再会しておいで」
「うん!!」
兄ちゃんには「おかえり」を、天先輩には「ありがとう」を一刻も早く伝えたくて、廊下を駆けるように進んだ。
1
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた
無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる