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しおりを挟む「ここは君たちが気が済むまで使っていいからね~。私は後始末をしてくるよ」
要先輩が最後に教室を出て、兄と2人、教室の中へと残される。
伝えたいことが多すぎて何から言えばいいか迷っていると、兄ちゃんの方から口を開いてくれた。
「秋弥まで『サポーター』になってるなんて思わなかった……。あの時――、あんな姿を見せちゃってごめん。気持ち悪かったでしょ」
兄が言っているのは、あの時――天先輩に煽られて、真先輩の部屋に行った時のことだ。真先輩に強請られるままに兄がお茶を口移しで飲ませていて、俺が初めて『サポーター』というものの異常性を感じ取った、あの時。
「兄ちゃんは悪くない。生徒会の人には逆らえないのがこの学園のルールってこと……俺も、身に染みて分かってるから」
「まさか、秋弥も……?」
「あ、いや。そういう意味じゃなくて」
寄り添おうと思って変な言葉選びをしたせいで、余計な心配を生んでしまう。会長はそんな人ではないと伝えたくて、大きく首を左右に振った。
「会長は、最初から……いや、最初の方は全然優しくなかったけど、本質的には優しい人だったよ。『サポーター』制度の廃止だって、会長には何のメリットもないのに俺のためにやってくれた」
「秋弥のために?」
「うん。会長には俺が兄ちゃんの弟ってこと、最初からバレてたから」
「……最初に『サポーター』になったのは、俺と繋がりがあったせいか……入ってすぐのお前が会長に気に入られるなんて、おかしいとは思ってたんだ」
「まぁ、否定はできないけど。でも、それを兄ちゃんのせいだなんて思ってないよ。現に、兄ちゃんも取り戻せてハッピーエンド!って感じだし」
「結果的にそうなったからよかったものの、お前まで俺と同じような目に遭ってたらと思うと……。ほんとに、秋弥が無事でよかった」
「俺も。兄ちゃんが、もう苦しまずに済んでよかった」
先ほど邪魔されたハグを、今度は長時間。
さっきとは違って兄の方からも力が入っているのが分かり、なんだか気持ちが落ち着いていった。これまでの時間を埋めるように、兄が傍にいることを確かめるように、力を込める。
何分そうしていただろうか。ふいに、ガララ、と扉を開く音がした。
「邪魔するのも悪いかなと思って待ってたけど、そろそろ帰ってきてくれてもいいんじゃない?」
「あ、天先輩!」
「会長……?」
兄が不思議がっている姿に、そういえばと思い出す。
「俺、まだ『サポーター』のままだから。だからそんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
「そう、なんだ」
「お兄さんからは良いイメージはあんまり持たれてないよね。あんな場所で兄弟を再会させてしまったのは、俺のせいだし」
「……でも、今日こうやって秋弥と会えたのは、貴方のおかげです。弟を大切にしてくださって……ありがとうございました」
そう言って、兄は深々と頭を下げる。なんだか大層な物言いに、くすぐったさを感じた。
「秋弥は、最初に会った時からお兄さんを助けるために一生懸命でしたよ。最初に俺が惹かれたのは、そのがむしゃらさにですから。まぁ少し……無鉄砲なところは心配ですけど」
「はは……それは俺も思いますね。秋弥は、すぐに首を突っ込んでいってしまうところがあるから」
「そのおかげで会えたので、その無鉄砲さには感謝もしてますけどね」
自分の話を2人でされているのが恥ずかしくて聞いていないフリをしていると、急に腰を掴まれる。
「え、ちょっ、兄ちゃんの前!」
「知ってるよ。でもお兄さんも許してくれそうな雰囲気だったからさ。ここで言っておいた方が後々いちゃつきやすくなるかなと思って」
「こういうことを言うには、常人は心の準備が必要なんです!!」
バタバタを暴れてパニックに陥っていると、兄が小さく笑い出す。
「『サポーター』続けるの、そういう理由だったんだね」
「うっ……それは、うん。実は会長と……お付き合いすることになった、からです」
「心配して損した。会長なら、秋弥の手綱をちゃんと握っててくれそうだね。会長、弟のこと……これからもよろしくお願いします」
「もちろん」
なんだか、不思議な気持ちだ。大好きな人に囲まれて、大好きな人たちがお互いを認め合っている。急にバラし始めたことにはびっくりしたけれど、やっぱり天先輩はすごいなと思った。場の作り方を、知っているというか。
「俺はいろいろ手続きしないといけないし、そろそろ行くよ。会長、本当にいろいろありがとうございました」
最後にもう一度お礼を言って、兄が教室を出ていった。
来た時とは一転、晴れやかな表情を浮かべながら。
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