19 / 21
19話
しおりを挟む
「はぁ……」店の外に出て深くため息をつく。肌寒さを感じる寒空に白い息が混ざる。
伊崎に病気の事を打ち明けてから、テンションが落ちた。俺は、悲しそうな顔をする伊崎を見ていたら居たたまれなくなり店の外へ逃げ出した。
「申し訳ない事をしたなぁ…」飲みの席で病気を打ち明けて楽しい雰囲気を壊した事、体調を崩す度に迷惑を掛けていた事全てに罪悪感が込み上げてきてその場に座り込み頭を抱える。伊崎にあんな顔をさせたかった訳じゃないんだけどな…。
下を俯いた瞬間、地面が赤くなっていることに気づき思わず鼻に手を当てる。いつから出ていたのだろうか、少しづつ量を増やしながら出てくる鼻血にうんざりした。人通りが多い居酒屋街で鼻血を出していれば人目にもつく。俺は慌てて店の中へ戻り伊崎の元に行った。
「伊崎、ごめん。……先に帰るな」帰り支度をし申し訳なさそうに謝ると、伊崎は慌てた様子で「俺も一緒に出るよ」と鞄とコートを持ち靴を履きだす。
「ごめん…」また俺の所為で迷惑をかけたと思い、伊崎に届かない声で謝る。
━━━━━━━カシュッ
「気分はどうだ?」温かい缶コーヒーを差し出しながら隣に座る伊崎。
「大分マシになったよ、ありがとう。」缶コーヒーを貰いながら感謝を伝え1口飲む。
居酒屋を出た後、近くの公園のベンチに座り、ハンカチで鼻血が止まるのをずっと待っていた。その間、体調や気分の有無を確認し自分のコートを俺に掛けてくれた。
「伊崎…」
「何だ?」コーヒーを飲みながら視線をこちらに向ける。
「今日は……その、…」改めて感謝を伝えようとすると恥ずかしくなってしまい、下を俯きながら話を続ける。
「色々と…ありがとう。」
「………。」
「病気の事、本当は誰にも言わないでおこうとしてたんだ…。周りに気を使われるのが嫌で……それに、…」
「なぁ、蓮見。」突然会話を遮られて名前を呼ばれたので、驚いて顔を上げる。
「俺は、蓮見が病気で死ぬかもしれないって言った時最初は何の冗談だろうて思ってた。でも、日に日に体調が悪化しているのを見て現実なんだって思った。」
「…。」
「蓮見が居なくなる事を想像すると、悲しすぎて泣きそうになった。でも、それ以上に病気と闘ってる蓮見がいちばん辛いんだなって思ったんだ。俺は話を聞く事しか出来ないけど、蓮見は弱音や愚痴をどんどん声に出して俺にぶつけてほしい。」
伊崎の声色から伝わる優しさが心に染みる。思わず泣きそうになってしまい、下を俯く。
伊崎に病気の事を打ち明けてから、テンションが落ちた。俺は、悲しそうな顔をする伊崎を見ていたら居たたまれなくなり店の外へ逃げ出した。
「申し訳ない事をしたなぁ…」飲みの席で病気を打ち明けて楽しい雰囲気を壊した事、体調を崩す度に迷惑を掛けていた事全てに罪悪感が込み上げてきてその場に座り込み頭を抱える。伊崎にあんな顔をさせたかった訳じゃないんだけどな…。
下を俯いた瞬間、地面が赤くなっていることに気づき思わず鼻に手を当てる。いつから出ていたのだろうか、少しづつ量を増やしながら出てくる鼻血にうんざりした。人通りが多い居酒屋街で鼻血を出していれば人目にもつく。俺は慌てて店の中へ戻り伊崎の元に行った。
「伊崎、ごめん。……先に帰るな」帰り支度をし申し訳なさそうに謝ると、伊崎は慌てた様子で「俺も一緒に出るよ」と鞄とコートを持ち靴を履きだす。
「ごめん…」また俺の所為で迷惑をかけたと思い、伊崎に届かない声で謝る。
━━━━━━━カシュッ
「気分はどうだ?」温かい缶コーヒーを差し出しながら隣に座る伊崎。
「大分マシになったよ、ありがとう。」缶コーヒーを貰いながら感謝を伝え1口飲む。
居酒屋を出た後、近くの公園のベンチに座り、ハンカチで鼻血が止まるのをずっと待っていた。その間、体調や気分の有無を確認し自分のコートを俺に掛けてくれた。
「伊崎…」
「何だ?」コーヒーを飲みながら視線をこちらに向ける。
「今日は……その、…」改めて感謝を伝えようとすると恥ずかしくなってしまい、下を俯きながら話を続ける。
「色々と…ありがとう。」
「………。」
「病気の事、本当は誰にも言わないでおこうとしてたんだ…。周りに気を使われるのが嫌で……それに、…」
「なぁ、蓮見。」突然会話を遮られて名前を呼ばれたので、驚いて顔を上げる。
「俺は、蓮見が病気で死ぬかもしれないって言った時最初は何の冗談だろうて思ってた。でも、日に日に体調が悪化しているのを見て現実なんだって思った。」
「…。」
「蓮見が居なくなる事を想像すると、悲しすぎて泣きそうになった。でも、それ以上に病気と闘ってる蓮見がいちばん辛いんだなって思ったんだ。俺は話を聞く事しか出来ないけど、蓮見は弱音や愚痴をどんどん声に出して俺にぶつけてほしい。」
伊崎の声色から伝わる優しさが心に染みる。思わず泣きそうになってしまい、下を俯く。
293
あなたにおすすめの小説
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる