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13.ユーリス・セントヘレナという男(2)
しおりを挟む「どうでしたか?婚約者は。」
リリアとの初対面は終わり、執事のテオが紅茶を持ってくる。
あの女についてはいろいろな悪い噂を聞いているし、実際見たところもかなり…傲慢そうに見えた。
侍女たちからも世話に苦労しているとの報告も受けている。
「どうでしたもなにも、服はあれしかないのか。貴族の娘だろう?」
さらにあの女は夫との面会なのに子爵の娘が着るような薄い生地のドレスで現れた。
エルレルト家ではどのような教育をされてきたのだろうか。
「知りませんよ。俺も着替えずにそのまま行くっていうもんだからびっくりしました。ユーリス様のことを馬鹿にしているのでしょうか?」
「俺は所詮北方の伯爵だからな。帝都の公爵家の娘からしたら下の身分なのだろう。」
「それでも夫を軽蔑するなんて、礼儀作法からどうにかする必要がありそうです。」
テオは口を曲げて苦言を呈する。
しかしどうせこれは『白い婚約』だ。
いつか解消されるだろうから今は辛抱すればいい。
「しっかり城の帳簿は管理しておいてくれ。あの女のせいでセントヘレナが窮地に陥っては困る。」
「そうですね。あとは女中にも城内の監視を怠らないように言っておきます。あ、それと」
テオは椅子に深く座りなおして言う。
「あのおん…こほん、リリア様は最近外出されることが多いのです。」
「どこに行っている?」
「それは分かりません。馬も使っていないようですし、そこまで遠くには行っていないと思います。」
なら城下町で遊んでいるというところか。
帝都に比べてこの辺りの娯楽は少ない。
そんな場所で男好きと言われる彼女が何をするかは一目瞭然だろう。
「好きにさせておけ。きっと愛人でも作っているんだろ。」
「なんでそう思うんです?」
「俺が『お前を愛することはない。』と言った時、リリアはかなり嬉しそうにしていた。テオの話を聞いて今あの表情の意味に繋がった。」
あの発言をしたときは、もっと悲壮な顔をすると思っていた。
だが彼女は逆にどこか嬉しそうな顔をしていたのだった。
それはきっと街に愛人でもできたからだろう。
お金と生活を保障してくれる場所に住んで、夫が愛してくれないから街の者と好き勝手恋愛をする。
いい生活じゃないか。
「不貞の証拠を早急に集めましょうか?そうすれば」
「いや、別に構わない。」
「どうしてです?こんなのあんまりじゃないですか!」
俺だってああいういわくつきな女には関わりたくない。
しかし、彼女がいることで助かっている面もある。
「俺もお飾りの婚約者がいると助かる。」
「あ、あぁブリッツ様のことですか…。」
ブリッツ子爵の一人娘、ビビアンは許嫁だったが、父が発狂した際に婚約を打ち切って、それからというもの交流は一切ない。
「この手紙の量を見てくれ…。」
「うわっ…すごいですね…。」
見ての通り、ビビアンはずっと俺に執着していて手紙が毎週のように送られてくるのだ。
最近は俺とリリアが婚約したことを聞きつけたようで、手紙が送られてくることが少なくなってきているので心労が一つ減った気分なのだ。
彼女は次のちゃんとした妻を見つけるまでは女避けとして使えそうだ。
申し訳ない気持ちもあるが利用させてもらうぞ。
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