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第20章 是正基準
111 実はギャル語ではなく……
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寮の自室に戻って、机についたところで、私はため息をひとつつく。
課題提出は上手くいったし、明日から週に|200C奨学金が増えることになった。
それでも上手くいったという気分以上に感じる気の重さで、次の学習に取りかかる気分になれない。
エノフ指導員の話は、情報という意味では価値が高いのだけれど、精神的には重すぎて結構疲れてしまう。
こういった重さは、一人で抱えていると余計に重くなる。
さっさと誰かに話して、共有してしまった方がいい。
ただ長期課程(Ⅰ)の場合、食事配給時間とダンスの時間を除けば、他の生徒に意図的に出会うというのは難しい。
それに今日は第6曜日、休日なので街では行事があったりイベントがあったりするのだ。
だから少なからぬ生徒が出かけていたりする。
それにどの曜日だろうと、日中は基本的に学習時間だ。
他人様の学習の邪魔なんてのはしたくない。
となると……
掲示板に書き込むのが、一番正しい気がする。
書いていいものかどうか、とりあえず知識魔法で確認。
『問題ありません。既にチアキ以外の生徒であっても、知識魔法でも検索可能です』
つまりそのまま書き込んでも、問題ないと。
ただ『B基準未満の場合、是正化措置という名の洗脳を受ける可能性が高い』なんていきなり書く蛮勇はわたしにはない。
少し考えた後、こんな文章を作って掲示板に書き込んでみた。
『先月、第一施設で是正措置があったという話を聞きました。これについて伝聞ですが、『卒業後のコースでB基準、最終試験が7割以上の層は、基本的に是正化措置はかけない。犯罪的な趣向とか、そうでなくとも周囲にとって不利益になるだろう人格の場合は除く』という話も耳にしています。これについて、他になにか情報はあるでしょうか?(記:チアキ)』
これだけ書けば、私が意図したことは第一施設の皆さんに伝わるだろう。
ちょっとすっきりというか、重荷を下ろしたような気分になった。
それでは語学の学習、今日の分を開始するとしよう。
◇◇◇
いつものルーティン通り、語学と魔法を終えたところで休憩時間。
本日のデザートは紅茶ゼリー。
甘さ控えめなのでちょっとだけシロップをかけて、地球のレモン水よりちょっとだけ青臭い自家製テッテレル水といただく。
そろそろ暖かいから暑いになりつつある季節には、これがちょうどいい。
これ以上暑くなったら、魔法で部屋を冷やす方がいいだろう。
その程度の魔法なら、今の私なら問題なく使えるし。
ただデザートはなかなか良い感じなのだけれど、何か忘れているような気がする。
何だっけ……
5秒ほど考えて、思い出した。
掲示板に是正化措置について書いたのだったと。
さて皆様の反響はどうだろう。
掲示板魔法を起動して、確認してみる。
『是正化措置って、洗脳ですよね(記:フアム)』
『でもあれで、食堂や運動場も大分ましになりました。前は馬鹿の動物園状態でしたから。でもあれって、3月はじめと終わりの2回ありませんでしたか(記:アレク)』
『今調べたら、もっとやっている様です。3月27日にも実施したという記録がありました(記:タート)』
『第一施設ではそんなことがあったんですか(記:トラン)』
『あの状況なら仕方ないです。でも第二施設ではなかったんですか(記:エナ)』
『第二施設では気付きませんでした。2月に完全矯正処分3人と自室謹慎6人、3月に自室謹慎が1人出ただけです(記:トラン)』
『その辺がきっと、翌月に第一施設に送られて、是正化措置になったのでしょう(記:ウー)』
『なら第二施設にいれば安全ってことでしょうか。あとB基準、最終試験が7割以上なら是正化措置はないというのは、何か裏付けはあるでしょうか(記:エト)』
エト、やはり洗脳が怖い様だ。
ここでもしっかり反応している。
『知識魔法で確認しました。この内容は、指導員が生徒の何人かに話したものの模様です。だから確定ソースは出ないけれど、信憑性はあると判断していいと思います(記:ナフリン)』
つまり私だけでなく、他にも同様の内容を、おそらくはエノフ指導員に教えられたということだろう。
これで大分気が楽になった。
そう思ったところで、また知っている名前の書き込みが出てきた。
『去年の情報だとマジやばい。第一施設の長期課程(Ⅲ)ほぼ全員、是正化措置食らってたっぽいのよ。んで長期課程(Ⅱ)も、半分以上がそーなったっぽいって話。しかも是正化措置受けると成績バチ上がりするらしくてさ。去年9月はⅡの最上位クラスの半分が“是正済み勢”。ヤバくね!?
(記:ケイト)』
うわっ。
ケイトが書いたこの情報、まさに裏付け情報みたいなものだろう。
『第二施設なら大丈夫だという情報はありませんか?(記:エト)』
『情報の出どころが第一施設の長期(Ⅱ)出身だから、正直ハッキリは分かんないんよね~、って言いたいとこなんだけど、知識魔法で去年の第二施設のお知らせチェックした感じ、そういうのなかったわ。たぶん是正化措置の担当自体が、第一施設にしかいないっぽいんよね(記:ケイト)』
ケイトって、やっぱり基本的には親切だし面倒見がいいんだよな。
そう思いつつ、ふと気になったので、知識魔法で確認してみる。
このケイトの書き方や話し方は、惑星オーフ上ではどういう意味があるのか。
文字表記なら分析もしやすいかなと思ったのだ。
『この書き方は、ナルニーアレ連邦の若者言葉をそのまま表記に使用したものです。チアキに知識魔法で提供する際は、最も近い表現として、日本語のいわゆるギャル語に訳しています』
なるほど。
ギャル語ではなく、オーフ標準語のナルニーアレ的若者言葉だったのか。
つまり将来のことを考えて、あえて標準語そのままではなく、ナルニーアレで通用しやすい言葉を学習していたということだろう。
『一般的な標準語は、地方によってはお高くとまっているとか、余所者の言葉だと捉えられる場合があります。おそらくはそういった事態を避けるべく、あえて方言的な言葉を学んで使用しているのでしょう』
最初からそこまで考えて、言語を学んでいたようだ。
何というかケイト、やっぱり凄いなと感じる。
課題提出は上手くいったし、明日から週に|200C奨学金が増えることになった。
それでも上手くいったという気分以上に感じる気の重さで、次の学習に取りかかる気分になれない。
エノフ指導員の話は、情報という意味では価値が高いのだけれど、精神的には重すぎて結構疲れてしまう。
こういった重さは、一人で抱えていると余計に重くなる。
さっさと誰かに話して、共有してしまった方がいい。
ただ長期課程(Ⅰ)の場合、食事配給時間とダンスの時間を除けば、他の生徒に意図的に出会うというのは難しい。
それに今日は第6曜日、休日なので街では行事があったりイベントがあったりするのだ。
だから少なからぬ生徒が出かけていたりする。
それにどの曜日だろうと、日中は基本的に学習時間だ。
他人様の学習の邪魔なんてのはしたくない。
となると……
掲示板に書き込むのが、一番正しい気がする。
書いていいものかどうか、とりあえず知識魔法で確認。
『問題ありません。既にチアキ以外の生徒であっても、知識魔法でも検索可能です』
つまりそのまま書き込んでも、問題ないと。
ただ『B基準未満の場合、是正化措置という名の洗脳を受ける可能性が高い』なんていきなり書く蛮勇はわたしにはない。
少し考えた後、こんな文章を作って掲示板に書き込んでみた。
『先月、第一施設で是正措置があったという話を聞きました。これについて伝聞ですが、『卒業後のコースでB基準、最終試験が7割以上の層は、基本的に是正化措置はかけない。犯罪的な趣向とか、そうでなくとも周囲にとって不利益になるだろう人格の場合は除く』という話も耳にしています。これについて、他になにか情報はあるでしょうか?(記:チアキ)』
これだけ書けば、私が意図したことは第一施設の皆さんに伝わるだろう。
ちょっとすっきりというか、重荷を下ろしたような気分になった。
それでは語学の学習、今日の分を開始するとしよう。
◇◇◇
いつものルーティン通り、語学と魔法を終えたところで休憩時間。
本日のデザートは紅茶ゼリー。
甘さ控えめなのでちょっとだけシロップをかけて、地球のレモン水よりちょっとだけ青臭い自家製テッテレル水といただく。
そろそろ暖かいから暑いになりつつある季節には、これがちょうどいい。
これ以上暑くなったら、魔法で部屋を冷やす方がいいだろう。
その程度の魔法なら、今の私なら問題なく使えるし。
ただデザートはなかなか良い感じなのだけれど、何か忘れているような気がする。
何だっけ……
5秒ほど考えて、思い出した。
掲示板に是正化措置について書いたのだったと。
さて皆様の反響はどうだろう。
掲示板魔法を起動して、確認してみる。
『是正化措置って、洗脳ですよね(記:フアム)』
『でもあれで、食堂や運動場も大分ましになりました。前は馬鹿の動物園状態でしたから。でもあれって、3月はじめと終わりの2回ありませんでしたか(記:アレク)』
『今調べたら、もっとやっている様です。3月27日にも実施したという記録がありました(記:タート)』
『第一施設ではそんなことがあったんですか(記:トラン)』
『あの状況なら仕方ないです。でも第二施設ではなかったんですか(記:エナ)』
『第二施設では気付きませんでした。2月に完全矯正処分3人と自室謹慎6人、3月に自室謹慎が1人出ただけです(記:トラン)』
『その辺がきっと、翌月に第一施設に送られて、是正化措置になったのでしょう(記:ウー)』
『なら第二施設にいれば安全ってことでしょうか。あとB基準、最終試験が7割以上なら是正化措置はないというのは、何か裏付けはあるでしょうか(記:エト)』
エト、やはり洗脳が怖い様だ。
ここでもしっかり反応している。
『知識魔法で確認しました。この内容は、指導員が生徒の何人かに話したものの模様です。だから確定ソースは出ないけれど、信憑性はあると判断していいと思います(記:ナフリン)』
つまり私だけでなく、他にも同様の内容を、おそらくはエノフ指導員に教えられたということだろう。
これで大分気が楽になった。
そう思ったところで、また知っている名前の書き込みが出てきた。
『去年の情報だとマジやばい。第一施設の長期課程(Ⅲ)ほぼ全員、是正化措置食らってたっぽいのよ。んで長期課程(Ⅱ)も、半分以上がそーなったっぽいって話。しかも是正化措置受けると成績バチ上がりするらしくてさ。去年9月はⅡの最上位クラスの半分が“是正済み勢”。ヤバくね!?
(記:ケイト)』
うわっ。
ケイトが書いたこの情報、まさに裏付け情報みたいなものだろう。
『第二施設なら大丈夫だという情報はありませんか?(記:エト)』
『情報の出どころが第一施設の長期(Ⅱ)出身だから、正直ハッキリは分かんないんよね~、って言いたいとこなんだけど、知識魔法で去年の第二施設のお知らせチェックした感じ、そういうのなかったわ。たぶん是正化措置の担当自体が、第一施設にしかいないっぽいんよね(記:ケイト)』
ケイトって、やっぱり基本的には親切だし面倒見がいいんだよな。
そう思いつつ、ふと気になったので、知識魔法で確認してみる。
このケイトの書き方や話し方は、惑星オーフ上ではどういう意味があるのか。
文字表記なら分析もしやすいかなと思ったのだ。
『この書き方は、ナルニーアレ連邦の若者言葉をそのまま表記に使用したものです。チアキに知識魔法で提供する際は、最も近い表現として、日本語のいわゆるギャル語に訳しています』
なるほど。
ギャル語ではなく、オーフ標準語のナルニーアレ的若者言葉だったのか。
つまり将来のことを考えて、あえて標準語そのままではなく、ナルニーアレで通用しやすい言葉を学習していたということだろう。
『一般的な標準語は、地方によってはお高くとまっているとか、余所者の言葉だと捉えられる場合があります。おそらくはそういった事態を避けるべく、あえて方言的な言葉を学んで使用しているのでしょう』
最初からそこまで考えて、言語を学んでいたようだ。
何というかケイト、やっぱり凄いなと感じる。
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