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第20章 これも女子会?
112 毎週の恒例行事の後
4月15日第2曜日の13時半過ぎ。
アキトと演劇を見たあと、いつもの公園のベンチで会話中。
「今回は普通に演劇らしい演劇だったな。少し後味が悪いけれどさ」
確かに前回のような外連味はなく、普通の演劇に近いスタイルだった。
照明代わりとか、スモークっぽいのとかで魔法は使っていたけれど。
あと後味が悪いというのもわかる。
でも私としては、前回以上に楽しめた。
だから私からはこんな返答になる。
「でも、こういうのも悪くないよね。前座の『魔物』も面白かったし」
そう、本編も良かったけれど、前座もなかなか良かったし上手かった。
今回は中年くらいの男性1人が、閉じた幕の前に立って喋る形式。
しかし手の動きや体の使い方が巧みで、魔法で背後に光を出して人の気配を演出したりする。
内容は、男が魔物に追われて逃げながら助けを求めるところからはじまる。
ところが実は、その男こそが魔物で、別の街で人を襲いすぎたために討伐隊が出るようになり、逃げてきた先でまた新たな獲物を狙おうとしていた、という話だ。
これを絶妙な口調と身振り手振り、ちょっとした光だけの魔法で演じる。
それだけで何の仕掛けもないのに、情景がありありと浮かんでくるのだ。
「あの前座の人、イルテトさんという俳優で、今回の劇団「アレナイト」の一員だそうだ。前座専門で、個別のファンも多いらしい。まあ見ている最中に気になったから、知識魔法で調べたんだけどさ」
どれどれ。
『イルテトは劇団「アレナイト」所属の俳優で、前座専門として知られています。話術と身体表現、わずかな魔法だけを使う芸に定評があり、サイン入り観劇証などの関連グッズの売り上げは、看板俳優のヒリオンや看板女優のレータを上回るとも言われています。』
前座専門ではあるけれど、スター的な存在だったりするのか。
「なるほどね。でも本編の演劇も良かったと思うよ。後味はあんまり良くないけど、私は前のよりは好きかな」
そこまで言って、演劇を見ながら感じたことを思い出し、付け加える。
「そういえば本編も、どこか前座と似た雰囲気があったけど、あれも同じ劇団だからかな」
今回の演劇は、ジャンルで言えばホラーになるのだろう。
話は一見、普通の義務教育学校の教室という状況から始まる。
しかし教師役が絶叫した後、倒れて消えたり、生徒のひとりが舞台袖へ行って悲鳴とともに姿を消しても、他の生徒は誰も反応しなかったりと、 だんだん雰囲気が不穏になっていく。
そして終盤近くで、これまでの出来事が「学園祭のためにやっていた劇の練習」だったと明かされるのだ。
だがそのすぐ後、脚本担当の少女が「実はみんな嫌いでした」という独白を始める。
いじめに近い状況とか、教師もそれを黙認しているばかりか、むしろ面白がっているという状況とか。
そしてその独白の後、舞台冒頭と同じように教師役が不自然に倒れ……
最後には劇場全体が真っ赤に染まって、悲鳴と笑い声の中で終わる、という内容だった。
「似た感じがするのは脚本が同じ人だからだと思う。演出は別で、イルテトさんは脚本を受け取った後は自分一人で役作りして演じるらしいけど。ただ本編、後味悪い系ホラーだとは思わなかった。確かに見てる間は引き込まれたけどさ。どうにもすっきりしない」
どうやらアキトは、ハッピーエンド志向のようだ。
まあそういう趣味もありだろう。
私は今回の、所々でドキリとして、最後に現実の惨劇を予感させる終わり方、なかなか面白いと思ったのだけれど。
「それじゃ来週は、何か良さそうなの、ある?」
「うーん、今度はある程度前に公演していて話の内容が分かるもので……」
演劇情報紙を見ながら、来週見る演劇を探す。
といっても私たちが見に行ける対象の劇場は2箇所しかない。
あとは治安が悪い場所にあるとか、いわゆるアダルトな内容専門だとか、前衛的あるいは政治的すぎる内容専門だから。
「来週はヒリナ観劇じゃなくて、パニノン劇場でやっている『王の帰還』でいいか? ヒリナで次にやる奴は、どうも僕の苦手な感じでさ」
確かに『惨劇の館』という題で『誰も生き残れない』なんてキャッチフレーズの話は、ハッピーエンド主義者向きではないだろう。
それに『王の帰還』を演じる劇団『エノテーカ舞踏団』の評判はかなりいい。
ただ今回は場所以外にも違いがある。
「確かにこっちの方が面白そうだよね。でもこれは、食事時間以外も公演しているんだね」
開演時間が9時、12時、15時、18時と、1日4回もある。
「劇団や劇場によっては、全席食事なしドリンクのみというスタイルもあるらしい。人気のある劇団や出し物の場合は、食事席無しで人数を詰めた方が儲かるかららしいけれどさ。ただこのタイプだと椅子席ワンドリンクでも高い席と安い席があって、面倒なんだけれど」
「1日4回も同じ公演、しかもダンスをやるのって疲れないのかな」
「回復魔法を使えるから大丈夫なんじゃないか。あと予算は今回と同じでいいか? 150C、200C、250Cの席があるけれどさ……」
あれこれ話して、結局は来週第1曜日、朝8時半にこの公園集合で、席は今までと同じ200Cの席と決めた後。
「そういえば先週、掲示板でなかなか凄いことを書いていたよね」
「でもアキトもあの内容は、エノフ指導員から聞いて知っていたんじゃないの」
「バレたか。でも掲示板で書くことは思いつかなかったな。たしかにあれが正解って気がするけれどさ」
なんて形で多少の雑談&情報交換をした後、別れる。
アキトと演劇を見たあと、いつもの公園のベンチで会話中。
「今回は普通に演劇らしい演劇だったな。少し後味が悪いけれどさ」
確かに前回のような外連味はなく、普通の演劇に近いスタイルだった。
照明代わりとか、スモークっぽいのとかで魔法は使っていたけれど。
あと後味が悪いというのもわかる。
でも私としては、前回以上に楽しめた。
だから私からはこんな返答になる。
「でも、こういうのも悪くないよね。前座の『魔物』も面白かったし」
そう、本編も良かったけれど、前座もなかなか良かったし上手かった。
今回は中年くらいの男性1人が、閉じた幕の前に立って喋る形式。
しかし手の動きや体の使い方が巧みで、魔法で背後に光を出して人の気配を演出したりする。
内容は、男が魔物に追われて逃げながら助けを求めるところからはじまる。
ところが実は、その男こそが魔物で、別の街で人を襲いすぎたために討伐隊が出るようになり、逃げてきた先でまた新たな獲物を狙おうとしていた、という話だ。
これを絶妙な口調と身振り手振り、ちょっとした光だけの魔法で演じる。
それだけで何の仕掛けもないのに、情景がありありと浮かんでくるのだ。
「あの前座の人、イルテトさんという俳優で、今回の劇団「アレナイト」の一員だそうだ。前座専門で、個別のファンも多いらしい。まあ見ている最中に気になったから、知識魔法で調べたんだけどさ」
どれどれ。
『イルテトは劇団「アレナイト」所属の俳優で、前座専門として知られています。話術と身体表現、わずかな魔法だけを使う芸に定評があり、サイン入り観劇証などの関連グッズの売り上げは、看板俳優のヒリオンや看板女優のレータを上回るとも言われています。』
前座専門ではあるけれど、スター的な存在だったりするのか。
「なるほどね。でも本編の演劇も良かったと思うよ。後味はあんまり良くないけど、私は前のよりは好きかな」
そこまで言って、演劇を見ながら感じたことを思い出し、付け加える。
「そういえば本編も、どこか前座と似た雰囲気があったけど、あれも同じ劇団だからかな」
今回の演劇は、ジャンルで言えばホラーになるのだろう。
話は一見、普通の義務教育学校の教室という状況から始まる。
しかし教師役が絶叫した後、倒れて消えたり、生徒のひとりが舞台袖へ行って悲鳴とともに姿を消しても、他の生徒は誰も反応しなかったりと、 だんだん雰囲気が不穏になっていく。
そして終盤近くで、これまでの出来事が「学園祭のためにやっていた劇の練習」だったと明かされるのだ。
だがそのすぐ後、脚本担当の少女が「実はみんな嫌いでした」という独白を始める。
いじめに近い状況とか、教師もそれを黙認しているばかりか、むしろ面白がっているという状況とか。
そしてその独白の後、舞台冒頭と同じように教師役が不自然に倒れ……
最後には劇場全体が真っ赤に染まって、悲鳴と笑い声の中で終わる、という内容だった。
「似た感じがするのは脚本が同じ人だからだと思う。演出は別で、イルテトさんは脚本を受け取った後は自分一人で役作りして演じるらしいけど。ただ本編、後味悪い系ホラーだとは思わなかった。確かに見てる間は引き込まれたけどさ。どうにもすっきりしない」
どうやらアキトは、ハッピーエンド志向のようだ。
まあそういう趣味もありだろう。
私は今回の、所々でドキリとして、最後に現実の惨劇を予感させる終わり方、なかなか面白いと思ったのだけれど。
「それじゃ来週は、何か良さそうなの、ある?」
「うーん、今度はある程度前に公演していて話の内容が分かるもので……」
演劇情報紙を見ながら、来週見る演劇を探す。
といっても私たちが見に行ける対象の劇場は2箇所しかない。
あとは治安が悪い場所にあるとか、いわゆるアダルトな内容専門だとか、前衛的あるいは政治的すぎる内容専門だから。
「来週はヒリナ観劇じゃなくて、パニノン劇場でやっている『王の帰還』でいいか? ヒリナで次にやる奴は、どうも僕の苦手な感じでさ」
確かに『惨劇の館』という題で『誰も生き残れない』なんてキャッチフレーズの話は、ハッピーエンド主義者向きではないだろう。
それに『王の帰還』を演じる劇団『エノテーカ舞踏団』の評判はかなりいい。
ただ今回は場所以外にも違いがある。
「確かにこっちの方が面白そうだよね。でもこれは、食事時間以外も公演しているんだね」
開演時間が9時、12時、15時、18時と、1日4回もある。
「劇団や劇場によっては、全席食事なしドリンクのみというスタイルもあるらしい。人気のある劇団や出し物の場合は、食事席無しで人数を詰めた方が儲かるかららしいけれどさ。ただこのタイプだと椅子席ワンドリンクでも高い席と安い席があって、面倒なんだけれど」
「1日4回も同じ公演、しかもダンスをやるのって疲れないのかな」
「回復魔法を使えるから大丈夫なんじゃないか。あと予算は今回と同じでいいか? 150C、200C、250Cの席があるけれどさ……」
あれこれ話して、結局は来週第1曜日、朝8時半にこの公園集合で、席は今までと同じ200Cの席と決めた後。
「そういえば先週、掲示板でなかなか凄いことを書いていたよね」
「でもアキトもあの内容は、エノフ指導員から聞いて知っていたんじゃないの」
「バレたか。でも掲示板で書くことは思いつかなかったな。たしかにあれが正解って気がするけれどさ」
なんて形で多少の雑談&情報交換をした後、別れる。
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