月が出ない空の下で ~異世界移住準備施設・寮暮らし~

於田縫紀

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第22章 外出予定が続く週

118 セールの現場から

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 20日の第1曜日。
 朝食を食べて朝8時半前に家を出る。
 真っ直ぐ公設市場に行って、お金を下ろして、ささっと買物をしてから行けば、ちょうどヌローラ商業施設カルテノの開店時間。

 二階入口への40人くらいの列の最後に、ニナとフインがいた。
 あとカタリナとケイト、ヒナリは開店待ち列の先の方にいるのが見える。
 なお他にも4人ほど、同じ第二施設の生徒がいた。
 様式4の服を着ているのですぐわかる。

「思ったより来ていますね」

「週払いの給与は、概ね第5曜日締めの第1曜日払いです。きっと15日に安くなったことに気付いた人が、給料を今日下ろして来たのでしょう」

 ニナの言葉になるほどと思いつつ、進んでいく列に従って、店の中へ。

「それではそれぞれ自分のものを探して、相談したいことがあったら話すという形でいいでしょうか」

「そうだね。それじゃ私も自分のを探してくる」

「私も探してきます」

 ニナやフインと別れ、何にしようか頭を整理するために左端へ。
 魔法で売り場全体を俯瞰するように見てみる。
 何と売っている水着の8割はビキニだ。
 少なくともマネキンが着ているのは、そうなっている。

 バーゲン前に見た時は、普通の服っぽいものも結構あった気がする。
 でもセール会場はビキニがメインで、ワンピース系は袖有りセパレートとかと長くてちょいマタニティっぽいのと一緒に、その他扱いになっている。

『以前見た服っぽい水着は、ラッシュガードと組み合わせた例として展示されていたものと思われます。なおラッシュガード兼用の上着は、1階にて展示・販売されています。またペルリアの女性用水着は、セパレート型が一般的です』

 そうだったのか。
 しかし地球ではほぼセパレート式スクール水着(上半身袖あり、下はショートパンツ形状)の水着にしかお世話になっていない私には、正直ハードルが高い。
 待てよ、セパレート主体ということは、ああいった露出の少ない形状の水着もあるということでは……

『腹や腰回りが出ていない水着は、少なくとも若い女性が着るものとしては、ペルリアでは一般的ではありません』

 今回の知識魔法、妙に厳しい気がする。気のせいだろうか。
 うん、悩んでいる時に1人だけで考えると泥沼にはまる。
 せっかく皆で買いに来ているのだ。
 ここは皆さんの意見を聞く事にしよう。

 ただヒナリとケイトのペアに聞いた場合、私が求めていない意見が返ってきそうだ。
 ここはニナの良識的だろう意見に期待してみよう。

 偵察魔法でニナを探すと……
 いた、けれど何かかなり強烈なコーナーにいるような……
 具体的には、肩紐はあるけれど上が細めのチューブ状で、下のショーツもかなり短めのタイプを確認している。
 色は黒色が好みのようだ。

 つまり色と肩紐以外は、前に私がケイトに薦められたものとほぼ同じ。
 なぜこれを選んだのか、それとも別の意図があるのか。
 私の期待とは異なるけれど、個人的興味がある。
 ということで近づいて、質問だ。

「どれがいいか分からなくなったんだけれど、ニナはもう決まった?」

 露出が多いのは苦手で決められない。
 そんな本音は隠して聞いてみる。

「ええ。おそらくこれにすると思います。本当は肩紐も無い方がすっきりしていいと思うのですけれど、少しは泳ぎたいと考えると、この程度は固定できた方がいいと思いますから」

 良識派だと思っていたニナが、まさかこんな露出多めのを選ぶとは。
 確かにニナは私より胸が成長しているけれど……
 なんて思ったのを察したのか、ニナが苦笑っぽい笑みを浮かべる。

「体型的にはまだ早いと言われそうです。でもそうして地味なのばかり選んでいると、後悔というか、あの時思い切っておけばよかったと後に思ったりするんです。思い切ったのって、時期を逃すと二度と着られなくなりますから。せっかく若返ったんだから、今度は少し思い切ってみようと思って」

 なるほど、そういう考え方もあるのか。

「なので迷った場合、オーソドックスなデザインで、かつ攻め気味のものがお勧めです。あくまで私の意見ですけれど」

「わかった。ありがとう」

 でもだからと言って、ここまで布地少なめのものに挑戦する勇気は私にはない。
 だいたい水浴場開きの日は、アキトと一緒に演劇を観に行く約束をしているのだ。
 その際にこのビキニは……
 うん、私には無理。少なくとも今は。

 それではフインの動向を見に行こう。
 あとはカタリナの動向も。

 ◇◇◇

 フインの見ていたのは、ビキニでも胸側にフリルというか大きめのフレアが付いているデザインで、色は赤に近いピンク。
 フインも私より胸があるので、ビキニでいい気がする。
 それにフレア系は私には似合わない気がするので、パスということで。

 カタリナは、まずは問題なく動けることを重視するそうだ。
 なので候補は上がタンクトップのブラより下部分を切ったような形、下がショートパンツのセパレートで、色は白のセパレートタイプ。
 セパレートタイプとしては露出もやや少なめで、これくらいが妥協点として正しいのだろうか。
 
 ついでということで、ヒナリ&ケイト組の方も様子見に行ってみる。
 すぐに発見したので近づいてみると、先に声をかけられた。

「やっほ~チアキ! もう選んだ~?」

「迷い中。それでこれは、ヒナリの水着?」

 手に取ったように見えたのは、ブラが白のフレアタイプでやや細め肩紐なし、ショーツも少しフレアが入っているけれど細め小さめというデザイン。
 
「これウチの~。いろいろ迷ったけど、これが妥協ラインって感じ! ヒナリはまだ決まんなくてさ~。だから先にウチの決めちゃおって思って~」

 なるほど、確かにこれ、あのチューブトップの白い水着と似ている。
 チューブトップの部分に大きめのフレアをつけ、ショーツの上部分にささやかなフレアをつけただけという感じだ。

「なるほどね、でも似合っていると思うよ」

 そう、確かに似合っているし、ケイト自身の要望通り露出も多め。
 だからきっと、問題はない。

「じゃあヒナリのやつ見に行こっか~! 一緒に見る?」

 確かにあれこれ意見を聞きながら見れば、少しは私も考えがまとまるかもしれない。

「そうだね。なら一緒していい?」

「もちろん~! じゃあ候補その1からもう一回見に行こ~♪」

 私はヒナリとケイトについて、水着売り場を歩いて行く……
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