月が出ない空の下で ~異世界移住準備施設・寮暮らし~

於田縫紀

文字の大きさ
30 / 125
第4章 二度目の外出

30 特別科目の詳細

しおりを挟む
 2月16日第4曜日、お昼過ぎ。

『通知が届いています』

 来たな。そう思いつつ、タップしてみる。

『特別科目『ペルリア自然観察』詳細について』 

 読み進めたところ、内容はこんな感じだ。
  ① 当日朝集合までに、特別科目『ペルリア自然観察』の1と2を履修しておくこと
  ② 2月20日第2曜日の朝7時に、共用棟2階の第1教室に集合
    朝食・昼食は外出先で食べるため、食堂で受け取らないこと
  ③ 出席予定者は10名
  ④ 自然公園までは各自で向かう。徒歩の他、身体強化魔法を使用して走路を走る等しても可
  ⑤ 配られた券で自然公園に入園し、最低限次の場所を回ること
   ⅰ 自然公園(本園)
   ⅱ 自然公園(附属動物園)
  ⑥ 食事については、次の場所で次の内容の物に対し、引換券を使用可能。なお引換券は2枚(2食分)配布する
   ⅰ 公園内各売店
    ・ 弁当、飲み物セット各種
   ⅱ バイキングレストラン『ヘーラニフト』
    ・ ランチバイキング
   ⅲ カヘイ『リハホルタ』
    ・ モーニングセット
    ・ ランチセット
  ⑦ 16時までに施設に戻り、共用棟2階の学習相談室へ行って帰校報告をすること

 この前の『ペルリア共和国・生活実習』とパターンは一緒だ。
 集まって指示の後、自由に出かけて、食事をして、自由に帰ってきて、帰校報告をする。
 ただ違う点、気になる点が結構ある訳で……

 10人ということは、前回の5人が全員参加するとしても、あと5人増えているという計算になる。
 他にも外出許可証が出るような特別学習が、私の知らない間にあったのだろうか。
 それともこの『ペルリア自然観察』も、外出許可に繋がるイベントなのだろうか。

「『ペルリア自然観察』は外出許可証を発行する特別授業です。いままで外出出来なかった生徒に対しては、『ペルリア共和国・生活実習』と同様に通帳が作成され、週に300Cカルクフの奨学金が支給されるようになります。ただし既に外出許可証を持っている者に追加奨学金等はありません」

 つまり似たような位置づけのイベントという訳か。
 もちろん内容が違うから、条件も異なるのだろうけれど。

 誰が来るかは、ニナ以外はわからない。
 前回の特別実習に参加したうち、アキトやカタリナとは話が出来ていない状態だ。

 食堂にはゾンビみたいな連中が常駐しているから、話が出来るような環境にない。
 私もニナとよく一緒にいるせいか、ゾンビのターゲットになっているから。

 運動の時にも出会えていない。
 外の運動場は食堂の窓から見えるので、行きたくない。
 そして室内運動場へは、食堂の横の廊下を通る必要がある。

 3回ほど運動に行った時は、それっぽい集団が運動場にいない事を知識魔法で確認後、隠蔽魔法を起動して室内運動場まで移動した。
 何人か生徒はいたけれど、会話するところまでは至らなかった。
 母国語が同じ2~3人組にか、1人だけれど話しかけにくい感じの人という感じで。
 私も1人で話しかけにくい人と見られている可能性は高いけれど。

 考えても仕方ない事は、ここまでにしよう。
 あと気になるのは食事のメニュー。
 でもその前に、知らない単語があったので確認しておきたい。
 
『『走路』とは、遠距離を高速で移動する為の専用道路です。主要な街と街の間、または街の外周等に設置されており、時速60km以上で移動する際に使用します。
 ポアノンの場合は外周道路として、ニトレ大通りの北端と南端を、西側の南分水路分岐上流を経由する形で走っています。またこの外周路から北のネテフ、東のナヒコ、南東のエネト、南南西のフレーオルへ走路が設けられています。
 施設からニトレ大通り南端まで200m、そこから外周道路東分岐まで2.2km、東分岐から自然公園入口までが2kmです』

 時速60km以上か。
 身体強化魔法を使えばそれくらい出せるかもしれないけれど、長時間その速度で走り続けるのは辛そうだ。

『遠距離陸上輸送業者等の業務で移動する者は、通常は自分の身体で走るより自転車を使用する事が多いです。独自魔法を動力として、平坦な区間を最高時速100kmで走行します』

 それはもう、自転車ではなくオートバイだろうと思うのだけれど。

『付属している動力機構が足で漕ぐ形式のみなので、自転車です。実際は漕がず、魔法で走らせる事が多い様です。オートバイや自動車等、内燃機関や電動動力機を使用する交通機関は存在しません』

 確かに外出中に自動車を見なかったけれど、やっぱり存在しなかったようだ。
 そして自転車が陸上最速の交通機関。
 でもそれなら、魔力で走る三輪や四輪の車はないのだろうか。
 街では人力の荷車しか見ていないけれど。

『四輪車以上は路上で場所を取る事から、走路ではなく一般道を使用します。また走行に魔力を必要とする為、それほど長距離を走らせる事はありません。
 四輪車でしか陸上を運べないような荷物は、基本的には運河や河川で近くの河川港まで運ばれ、そこから運ぶ形となります。
 ペルリアは船運の為、河川や運河が整備されています。ですので陸上部分は比較的低速の運用でも、問題が出る事はありません』

 生物以外は人が収納魔法で運ぶ方が早くて楽。
 生物だけは港で見たような檻で、基本的には船で、船で行けない部分は四輪車と、場合によっては人力の荷車で運ぶと。

 何というか、日本の常識と大分異なる。
 そう思った時、気づいてしまった。
 あれこれ調べる間に、随分と脱線してしまった事に。

 とりあえず夕食までは、科目を進めるとしよう。
 そして最優先は、『ペルリア自然観察』の1と2だ。

 それではやるとしよう。
 私はタブレットを操作し、学科選択に新たに加わった『ペルリア自然観察』を選択する。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します

枯井戸
ファンタジー
 ──大勇者時代。  誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。  そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。  名はユウト。  人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。  そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。 「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」  そう言った男の名は〝ユウキ〟  この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。 「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。  しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。 「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」  ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。  ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。  ──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。    この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

【完結】前世聖女のかけだし悪女

たちばな立花
ファンタジー
 魔王を退治し世界を救った聖女が早世した。  しかし、彼女は聖女の能力と記憶を残したまま、実兄の末娘リリアナとして生まれ変わる。  妹や妻を失い優しい性格が冷酷に変わってしまった父、母を失い心を閉ざした兄。  前世、世界のために家族を守れなかったリリアナは、世間から悪と言われようとも、今世の力は家族のために使うと決意する。  まずは父と兄の心を開いて、普通の貴族令嬢ライフを送ろうと思ったけど、倒したはずの魔王が執事として現れて――!?  無表情な父とツンがすぎる兄と変人執事に囲まれたニューライフが始まる!

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒
ファンタジー
不運な事故により、23歳で亡くなってしまった会社員の八笠 美明。 目覚めると見知らぬ人達が美明を取り囲んでいて… (まさか……転生…?!) 魔法や剣が存在する異世界へと転生してしまっていた美明。 魔法が使える事にわくわくしながらも、王女としての義務もあり── 王女として生まれ変わった美明―リアラ・フィールアが、前世の知識を活かして活躍する『転生ファンタジー』──

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

処理中です...