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第5章 変化の予感 (1)
31 危険の告示?
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『ペルリア自然観察』の1と2、そして『独自魔法作成Ⅰ』をやって、少し復習をしていたところで。
いつものようにスマホが通知音を発して、画面におなじみの表示が出る。
『まもなく夕食の配給時刻です。私室の外へ……』
ただ今日はその通知に続いて、別のメッセージも画面表示され、音声で流れはじめた。
『移住準備の為の学習を始めて、本日で半月が経過しました。半月後の3月2日第1曜日に最初の一斉到達度確認試験が実施されます。
現在時をもってこの試験の詳細範囲を公開しました。各人のタブレットで『学科』項目から『一斉到達度確認試験』を選ぶ事によって確認可能です』
なるほど、後で確認しておこう。
今はさっさと上着を着て、食堂に向かう準備をしないと。
ニナが待っているだろうから。
収納から上着を出して羽織る間も、タブレットからの音声は続いている。
『なお『一斉到達度確認試験』の成績や各科目の到達度、日頃の生活態度等を判断した結果、よりふさわしい環境に移動して貰う事があります。移動先によってはカリキュラムの変更もありますので、あらかじめご了承ください』
この『よりふさわしい環境』というのは、どういう意味だろう。
危険な香りがするのは、私の気のせいだろうか。
メッセージはそこで止まった。
これで終わりのようなので、タブレットを収納に仕舞う。
それではさっさと食堂に行って、ニナと合流しよう。
私はスリッパから靴に履き替え、立ち上がった。
◇◇◇
結局今日も、ニナの部屋で夕食を食べることになった。
『ペルリア自然観察』の件もあるけれど、それ以上に食事前の連絡が気になったからだ。
今日の夕食のメインは、ミートソースの上にマッシュした芋を重ねて焼いたもの。
芋の層をスプーンで崩してミートソースごと口に運びつつ、ニナに聞いてみる。
「夕食の前にあった連絡について、ニナはどう思う。私には『駄目な状態ではどうなるかわからないぞ』と言っているようにしか思えないんだけれど」
「学習だけで無く、日頃の生活態度についても言及がありました。ですから移民としてふさわしくない者、望まれない者は処分する。もしくは強制的に勉強や訓練をさせる環境に放り込む。私はそう捉えました」
処分とか強制という言葉が出てきた。
どうやらニナも、私と同じように感じたようだ。
「更に言うとここまでの期間、生活態度についても観察されていたように感じます。
食堂を常に開放しているのも、外出について他に話す事を禁止せずにエトが事件を起こしたのも、立入禁止場所を少なくして、あえて密会とか性的接触が出来そうな隠れ場所が幾つかあるのも、意図的なものではないか。行動を把握して、移民にふさわしくない者を早期発見する為に、ふさわしくない行動を可能とする場所をあえて作っているのではないか。私はそう疑っています」
えっ!?
私が思ってもいなかった言葉に、思わず反応してしまう。
「性的接触出来る場所なんてのもあったんだ」
今の身体では、早過ぎるというか幼過ぎる気がする。
これで相手の身体を見て、生々しい性欲が沸くのだろうか。
ここに来る前は大人で、性的に盛んな生活をしていたとしても。
「少なくとも1人はそういった男子がいました。ですが3日目から後、見ていません。移民として迎え入れるのに適切ではない、そう判断された可能性があります」
つまり私の知らない間に、既に処分された生徒がいるかもしれない。
やはりデスゲームと思った方がいいのだろうか。
「気がつかなかったな」
「最初の朝の食事配給時に誘われたので、顔を覚えていました。そして昼、施設内を一通り見て回っているときに、性的接触の現場を確認したのです。そしてその日の夕方の食事配給時にも別の女子を誘っていたのを見ました。なので以後も注意していたのです」
この年齢になっても、性的に節操がない者はいたようだ。
食堂にたむろっているゾンビみたいな連中といい、ここの施設の生徒、質が悪すぎではないだろうか。
もちろんまともな生徒もいるけれど。
「ですので、次の一斉到達度確認試験の成績やそれまでの素行で、処分される生徒がいてもおかしくはないと考えます。ただああやって警告したという事は、今からなら助かるという意味も含まれている気がするのです。それが対象の生徒に通じているかは分かりませんけれど」
もう引き返せないなら。警告する意味はない。それは確かにひとつの考え方だ。
しかし……
「もう助からない人もいて、そうならないようにと回りに警告している。そういう可能性もあるよね」
「確かにそうかもしれません。ですがそうだとしても、私達はどうする事も出来ません。救えないし救う義務も無い。そこは割り切るしかないでしょう。
そもそもこれは、全て推測です。知識魔法はこの件については返答しません。ですから実際にどうなのかは、私達にはわかりません」
確かにまあ、その通りだ。
それにゾンビのような連中は、私達の生活の邪魔でもある。
倫理とかは別論とすれば、いなくなってくれた方がありがたい。
「それに一方では、外出許可を出したり奨学金を与えたり等、待遇を良くする動きがあります。ある程度の資金を投入しても優秀な移住者を得たい。それは確かなようです。
ですからこちらが生活上の問題を起こさず、それなりに学習を進めていれば、そうそう問題になることはないと思います」
確かにその通り。
私がここへ来て最初に考えた方針が、きっと正解だ。
「此処での生存戦略としては、優等生でいることが第一なんだろうね、きっと」
「その通りだと思います。さて、この話はこれ以上考えても確かめられませんし、進展もありません。ですからこのくらいにして、『ペルリア自然観察』の話をしましょう」
確かにその方が建設的だ。私はうなずいて、ニナに同意を示す。
いつものようにスマホが通知音を発して、画面におなじみの表示が出る。
『まもなく夕食の配給時刻です。私室の外へ……』
ただ今日はその通知に続いて、別のメッセージも画面表示され、音声で流れはじめた。
『移住準備の為の学習を始めて、本日で半月が経過しました。半月後の3月2日第1曜日に最初の一斉到達度確認試験が実施されます。
現在時をもってこの試験の詳細範囲を公開しました。各人のタブレットで『学科』項目から『一斉到達度確認試験』を選ぶ事によって確認可能です』
なるほど、後で確認しておこう。
今はさっさと上着を着て、食堂に向かう準備をしないと。
ニナが待っているだろうから。
収納から上着を出して羽織る間も、タブレットからの音声は続いている。
『なお『一斉到達度確認試験』の成績や各科目の到達度、日頃の生活態度等を判断した結果、よりふさわしい環境に移動して貰う事があります。移動先によってはカリキュラムの変更もありますので、あらかじめご了承ください』
この『よりふさわしい環境』というのは、どういう意味だろう。
危険な香りがするのは、私の気のせいだろうか。
メッセージはそこで止まった。
これで終わりのようなので、タブレットを収納に仕舞う。
それではさっさと食堂に行って、ニナと合流しよう。
私はスリッパから靴に履き替え、立ち上がった。
◇◇◇
結局今日も、ニナの部屋で夕食を食べることになった。
『ペルリア自然観察』の件もあるけれど、それ以上に食事前の連絡が気になったからだ。
今日の夕食のメインは、ミートソースの上にマッシュした芋を重ねて焼いたもの。
芋の層をスプーンで崩してミートソースごと口に運びつつ、ニナに聞いてみる。
「夕食の前にあった連絡について、ニナはどう思う。私には『駄目な状態ではどうなるかわからないぞ』と言っているようにしか思えないんだけれど」
「学習だけで無く、日頃の生活態度についても言及がありました。ですから移民としてふさわしくない者、望まれない者は処分する。もしくは強制的に勉強や訓練をさせる環境に放り込む。私はそう捉えました」
処分とか強制という言葉が出てきた。
どうやらニナも、私と同じように感じたようだ。
「更に言うとここまでの期間、生活態度についても観察されていたように感じます。
食堂を常に開放しているのも、外出について他に話す事を禁止せずにエトが事件を起こしたのも、立入禁止場所を少なくして、あえて密会とか性的接触が出来そうな隠れ場所が幾つかあるのも、意図的なものではないか。行動を把握して、移民にふさわしくない者を早期発見する為に、ふさわしくない行動を可能とする場所をあえて作っているのではないか。私はそう疑っています」
えっ!?
私が思ってもいなかった言葉に、思わず反応してしまう。
「性的接触出来る場所なんてのもあったんだ」
今の身体では、早過ぎるというか幼過ぎる気がする。
これで相手の身体を見て、生々しい性欲が沸くのだろうか。
ここに来る前は大人で、性的に盛んな生活をしていたとしても。
「少なくとも1人はそういった男子がいました。ですが3日目から後、見ていません。移民として迎え入れるのに適切ではない、そう判断された可能性があります」
つまり私の知らない間に、既に処分された生徒がいるかもしれない。
やはりデスゲームと思った方がいいのだろうか。
「気がつかなかったな」
「最初の朝の食事配給時に誘われたので、顔を覚えていました。そして昼、施設内を一通り見て回っているときに、性的接触の現場を確認したのです。そしてその日の夕方の食事配給時にも別の女子を誘っていたのを見ました。なので以後も注意していたのです」
この年齢になっても、性的に節操がない者はいたようだ。
食堂にたむろっているゾンビみたいな連中といい、ここの施設の生徒、質が悪すぎではないだろうか。
もちろんまともな生徒もいるけれど。
「ですので、次の一斉到達度確認試験の成績やそれまでの素行で、処分される生徒がいてもおかしくはないと考えます。ただああやって警告したという事は、今からなら助かるという意味も含まれている気がするのです。それが対象の生徒に通じているかは分かりませんけれど」
もう引き返せないなら。警告する意味はない。それは確かにひとつの考え方だ。
しかし……
「もう助からない人もいて、そうならないようにと回りに警告している。そういう可能性もあるよね」
「確かにそうかもしれません。ですがそうだとしても、私達はどうする事も出来ません。救えないし救う義務も無い。そこは割り切るしかないでしょう。
そもそもこれは、全て推測です。知識魔法はこの件については返答しません。ですから実際にどうなのかは、私達にはわかりません」
確かにまあ、その通りだ。
それにゾンビのような連中は、私達の生活の邪魔でもある。
倫理とかは別論とすれば、いなくなってくれた方がありがたい。
「それに一方では、外出許可を出したり奨学金を与えたり等、待遇を良くする動きがあります。ある程度の資金を投入しても優秀な移住者を得たい。それは確かなようです。
ですからこちらが生活上の問題を起こさず、それなりに学習を進めていれば、そうそう問題になることはないと思います」
確かにその通り。
私がここへ来て最初に考えた方針が、きっと正解だ。
「此処での生存戦略としては、優等生でいることが第一なんだろうね、きっと」
「その通りだと思います。さて、この話はこれ以上考えても確かめられませんし、進展もありません。ですからこのくらいにして、『ペルリア自然観察』の話をしましょう」
確かにその方が建設的だ。私はうなずいて、ニナに同意を示す。
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