ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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拾遺録6 俺達の決断

43 エピローグ⑴ 事務処理の完了

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 ブッカロの別邸に行った後しばらくは、疾風怒濤の如く過ぎ去っていった。

 まず俺は王都ラツィオへ行って、タウフェン公爵に今回の顛末について報告。
 更に貴族同士の婚姻ということで国王庁式部局へ出向いて、婚姻の許可及び貴族家統合の申請手続きをして。

 さあ帰ろうと思ったところで、国王庁財務局からの呼び出しなんてのが入った。
 これはアコルタ子爵領の今までの粉飾会計について、処分を決める為の聴取だそうだ。
 誤魔化すと洒落にならないし、アコルタ子爵家側に瑕疵があるのは間違いない。
 だから今回判明した状態とともに、ダヴァ男爵である俺が責任を持って正確な数値を調査し、改善することを約束。

 結果、以下の3つの条件で、アコルタ子爵家の存続を認めてもらった。
1.人口等の国税徴収に必要な値の調査結果を以下の日程で国王庁に報告すること
   ○ 2月1日までに概算でいいから速報で
   ○ 正確な値を4月1日までに正式に
2.俺とイレーネの結婚式を4月末日までに実施した後、当時の責任者であったアコルタ子爵ダニエーレが当主から退いた上で、俺に子爵位を譲ること
3.1の報告終了後からできるだけ早いうちに、国王庁が改善指示を出す。この指示に基づいて、7月までに改善方策とその中間実施報告、来年4月1日に3月1日現在の改善実施報告を提出すること。

 なお2について粘ってみたが、イレーネが子爵位につくのは認めないという回答だった。

「本来は複数年にわたる故意の会計偽装は、降爵か奪爵の処分対象となる。本件はダヴァ男爵のこれまでの実績と信用のもと、特例として条件付きで存続を認めたに過ぎない。故に当事者であるダヴァ男爵がアコルタ子爵となる以外の解決は認めない」

 2以外はまあ、妥当というか温情措置ではあるだろう。
 十年かそれ以上会計偽装をし、国に虚偽報告をしていたのだ。
 この程度で済んで正直ほっとしたというのが本音だ。

 すぐにテモリにこの話を持ち帰ろうとしたところで、更にタウフェン公爵から連絡が入った。
 今度は謁見時間が取れたから結婚する件について陛下と話していけという話だ。

 何かおかしい。
 そもそも今回の件はタウフェン公爵に報告して、国王庁式部局に申請するだけの予定だった。
 もちろん国王庁にも報告は必要だ。
 しかしタウフェン公爵経由で国王庁に話が行って、国王庁が検討し、数日後に呼び出しだの何だのとなるだろうと思っていたのだが。

 それに国王に謁見なんて、一ヶ月前くらいに予約を入れてやっとというのが普通だ。
 無論王族だの側近だの一部の大貴族だのは別だけれども。

 こんなに一気に話が進むのは、何かある。
 そう思いつつも、俺は断るようなことは出来る立場にないわけで……

 ◇◇◇

 結局王都ラツィオに2泊3日してから、テモリへと戻る。
 領主館では、ヒューマの指示で作業が進んでいた。

「とりあえず現領主のダニエーレさんに協力して貰って、全権をイレーネさんとイレーネさんに依頼された『光の欠片』に委ねるという指示をして貰ったんですよ。それで作業の邪魔になる駄目な職員をバッサリと整理して。大体そういう職員は幾つかの非違事項を抱えているので、切るのは簡単でしたね」

 ヒューマは詐欺師臭いところはあるが、頼りにはなるのだ、間違いなく。
 ただ今回は、俺が国王庁財務局から持ってきた課題がある。
 なので領の実態調査をして報告しなければならない旨を話したところ、ヒューマの奴、あっさりこう返答しやがった。

「調査の準備は出来ていますよ。サリアにカタサーロとシデルノへ行って、速く飛ぶ者オキュペテーのカリン以外3人と南の風ノトスのアンナ、ミリアに指名依頼を出しています。この連中なら、偵察魔法と高速移動魔法が使えますからね。領主家の事務員と組みで動かせば、村の土地利用調査は2週間かからないでしょう。本当はカリンも呼びたいのですけれど、拠点に1人は残しておかないと申し訳ないので。
 ファビオだけは別業務もあるので、今日中にサリアがここまで連れてくる予定です。別業務というのは昨年の領会計についての調査で、僕とレウス、レズン、あとファビオで、明日から始めるつもりです。会計監理魔法を本気で使えば、1週間程度で領の収入と支出の正しい値が出せると思いますよ」

 思い切り先回りされたと感じる。
 なので念の為聞いてみた。

「まるで俺が調査下命を持って帰ってくることがわかっていたみたいだな」

「わからなくても予想はできますよ。あとカイルは別の仕事がありますからね。領内の空気を一新する為に、所信表明演説と各村の巡視、更には商業ギルドや冒険者ギルドに挨拶回りをして貰いますから。アコルタ領の新しい顔として、せいぜい領民の皆さんに思い切り夢と希望を与えてやって下さい。
 回った後は職員の面接が待っています。商業ギルドと冒険者ギルドに職員の紹介を依頼していますからね。基本的にはカイルが面接する相手は、採用していいと判断している者だけにするつもりですけれど。カイルの名前である程度は来てくれると思いますので、よろしくお願いしますよ」

 毎度ながら、どっちがリーダーだと言いたくなる。
 しかし、こういった作業はヒューマの方が俺より遙かに上手なのは確かだ。
 まあ俺がリーダーというのは、年齢と名目だけだしな。

 あと本来は子爵を継ぐ筈だったイレーネにも、もちろん報告した。
 イレーネを子爵に出来なくて申し訳ないと。
 こちらの返答は予想外だった。

「実はこの命令がなくても、カイルさんに子爵を継いでもらうつもりでした。結婚前に子爵位を継ぐことになるのなら、一時的に私が預かるのも仕方ないと思っていましたけれども。アコルタ子爵として領民に希望を持って貰うには、カイルさんになってもらう方がいいでしょうから」

 当然のことという感じでイレーネはそう返答した。
 本当にそれでいいのかと、その場では俺には聞けなかった。
 違っていたとしても、変えることは出来ない状態だから。

 ◇◇◇

 そういった、どうにもならないことは別として。
 ヒューマの采配によって、2月1日まで期限の調査速報は1月20日に完成して提出し、更に4月1日まで報告の詳細も1月30日中に無事完成。

 あまりにとんでもないペースで進んだことに、結局は作業を手伝ってくれたレノアさんからこんな言葉が出たほどだ。

「魔法って戦闘や力仕事、外での現場作業だけかと思っていました。しかしこういった事務処理に対してもとんでもなく有効なんですね」

 即座にケイトさんから、注意が入った。

「ここでの魔法の使用方法は、一般の参考にしてはいけません。おそらく迷宮消去者ダンジョン・イレーサーやその姉妹パーティでしか使用していないし出来ない特殊な使用法です」

 さらにヒューマとファビオから補足が入る。

「まだ移動魔法や偵察魔法を使える魔法使いは多くないですからね。あと会計監理魔法はある程度経理や会計の実務経験が無いと覚えられませんから。うちでも使えるのは商会の実務をやっている僕とレウス、食堂を経営しているレズン、あとはリディナ先生、兄弟パーティの経営管理をしているファビオくらいですね。もちろんレノアさんとケイトさんには覚えて貰いますけれど」

「うちの兄と、速く飛ぶ者オキュペテーの拠点で僕の補助をしてくれているノエミも使えますね。他の連中にも教えているんですけれど、なかなか習得してくれないんですよ」

 この魔法は元々フミノ先生が開発した、『表に数字を書き込んで計算する魔法』だった。
 それをリディナ先生が、自分の知識を加えて更に改良。
 それをヒューマとファビオが覚えて、他の人に教えたという形になる。

 まあそんな一幕はともかくとして、報告書が出来たので、さっさと王都ラツィオに行って提出。
 1時間ちょっと聴取を受けた後、無事報告は受領され、アコルタ家の存続は無事確定した。
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