ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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第18章 再会の季節

第146話 昔来ていた店

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 セレスは人駄目ソファーの袋を3店舗にわけてお願いした。
 てっきり一番良さそうな店で全部を頼むのだろう。私はそう思っていたので少し驚いた。

「今回どうしてああやって注文したのか、教えて貰っていいかな」

 3店舗目を出て少し歩いてからリディナが尋ねる。どうやらリディナにとっても予想外だったようだ。

「まとめて注文した方が値引きもお願いしやすいです。ただ今回は初めての街で既存にはないものを注文するという状態です。ですから期間と仕上がり状態を考えた結果、このような形でお願いしました。

 まず期間です。これだけ分けても明日の夕方までかかる位です。全部を1つの店でお願いしたら、徒弟が多い大規模なお店でなければもっと時間がかかってしまいます。

 この近辺にそういった大きなお店は2軒ありました。でも両方とも置いてある品物のうち幾つかに縫い目の荒いものが見られました。
 一見の客ではそういった技術の低い徒弟が担当する虞があります。ですのでこの2軒は候補から外しました。

 あとは失敗を防ぐ為です。どの店も注文するのは初めてです。ですから万が一外れのお店で仕上がりが悪いなんて事があるかもしれません。
 ですけれど1軒が駄目でもあと2軒の品物がある。そういう意味でも分けて注文した方が安心できます。

 今回の3軒は店内の商品を監視魔法で見て、縫い目の様子で選びました。ただ丁寧なだけではなく場所によって使い分けられるか等も。

 椅子型は縫い目に負担がかかりそうなので一番良さそうなところで、あとは楕円形、円盤型という順番ですね」

「なるほど。そこまで考えているのね」

「同じ布でも縫い目ひとつで持ちがかなり変わりますから」

「流石ね。そこまで考えるなんて私は気付かなかったなあ」

 確かにそうだと思うので私も頷く。私には真似できないし、そこまで考えが至らない。

 これからもお買い物はセレスに御願いする事にしよう。その方が万事うまく行きそうだ。

 でも任せっぱなしではまずいかな。その様子を見て私も勉強するくらいしないと。
 
「それじゃ次は金属類だけれど、道順的には先に昼食や夕食用に出来合いの料理デーリシー買っていった方がいいかな。たまには他人が作ったおいしいものを食べないと、美味しい味がわからなくなるしね」

「同意」

「そうですね。金属類なら遅く行っても大丈夫でしょうから」

 テイクアウト系料理を買うのはリディナの趣味も兼ねている。既にセレスもその辺はなんとなく承知済み。
 だから私もセレスも素直に同意。

「ならこっちね」 

 リディナは市場のメイン通りから外れ、少し広めの路地のような感じの道へと入る。人通りはそれほど多くないから私でも一応大丈夫。

 ただこれは知っている人でないと通らない道という気がする。偵察魔法で上空から見てもわかりにくい。
 やはりリディナ、この辺に土地勘があるようだ。

「こっち側も市場街なんですか?」

「市場街のメインはお家賃が高いからね。出来合いの料理デーリシーや間食系の手ごろなお店は少し外れた場所にあったりするんだよ」

 理屈はわかる。でもそんな場所、地元民でなければわかる訳がない。
 やはりリディナ、この辺を知っているようだ。

 私では覚えられないような場所と道順でついたのは軽食屋という感じのお店。

「ここで食べていくんですか?」

「中で食べる事も出来るし、ここで買って外で食べる事も出来るお店だよ。今日はここで買ってこの先の公園で食べようかなと思ってるけれど、それでいいかな?」

 それなら私も問題ない。だから頷く。

「どんなものが売っているんですか?」

「ここは薄焼きのピタパンサンドのお店。具材は色々。果物系の甘いのからがっつりおかず系まで」

 リディナについてそのまま店先へ。どうやらテイクアウトは外から注文できるようだ。
 店のカウンターの上にはずらりとメニューが書いてある。鶏肉青菜炒め、鶏肉玉子トマト、鶏モモ焼き……かなり多い。

「フミノは何にする? お勧めは鶏肉青菜炒めにチーズ追加だけれど、フミノは甘い方がいいよね」
 
 その通りで私は甘いデザート系が好み。さっとメニューを見て決める。

「林檎バター水飴で」

「わかった。セレスは?」

「私はリディナさんの言ったお勧めで」

 セレスもリディナと同じがっつり派だ。

「わかった。あとこの後分も含めて少し多めに注文するね」

 他にカウンターに並んでいないので3人で行って、そして注文。

「すみません。大量注文いいですか?」

「勿論大歓迎だよ。メモするから待って頂戴。はい、どうぞ」

「それじゃ鶏肉青菜炒めにチーズ追加が6個、豚塩漬け肉青瓜にチーズ追加が6個、鶏モモトマトにチーズ追加6個。挽肉トマトチーズ6個、林檎バター水飴6個、苺バター6個で」

「わかった。合計36個だね。すぐ作るから待っていてね」

 うーん、こんな無茶な注文でもありなんだな。そう思いつつ私は店主のおばちゃんの方を見る。

 いつもはリディナ、同じ大量注文でももう少し相手にわかりやすい注文をする。同じものを10個ずつ2種類とか、メモしなくても問題ない程度の範囲で。
 
 待てよ、そういう事はリディナ、ここはこういう注文をしても問題ないと判断したという事だよな。
 この店の何処かを見てそう判断したのだろうか。それともこの店は大丈夫だと知っていたのだろうか。

「このお店はね、中等学校の寮にいた頃、よく買いに来ていたんだ」

 えっ。
 私の心を読んだかのようにリディナが話し出す。

「寮の昼食は美味しくない上に量も少なかったからね。教会がお布施として食費まで横取りしているんじゃないかって言われていた位で。

 だから自在袋を持って外に買い出しをしていたの。中でもこのお店が一番買いに来たかな。値段と味、お腹の膨れ具合のバランスが良かったから。

 私以外も結構そうやって買い出ししていた子は多くてね。だから味は保証付きだよ。無茶な大量注文しても全然問題ないし。一応事前に聞くけれどね」

 つまりリディナがメイドをする前、この近くにいたという事か。
 そう思った時だった。

「あれ、リディ、リディだよね」

 セレスでも、勿論私でもない声がした。
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