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第18章 再会の季節
第148話 結構大きい登録特典
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魔法金属を購入するのは手間取った。
鍛冶組合そのものはセレスがあっさり探してくれた。しかし簡単には売ってくれなかったのだ。
「魔法金属を買いたいのですけれど」
セレスがそう告げたところ、最初に受け付けてくれたお姉さんが少し考えるようなそぶりを見せる。
そして。
「わかりました。少々お待ちください」
そう言っていきなり奥に引っ込んでしまった。
かわりに出てきたのは20代後半程度に見える女性。知っている人だとカレンさんと同じくらい。
だからまあ、私でも一応大丈夫。
彼女はこちらに軽く頭を下げた後、口を開く。
「申し訳ありません。魔法銀や魔法銅、魔法鉄は国管理物資なので購入者の身元と使用用途の確認が必要となっています。
申し訳ありませんが身分証になるものを提示して、使用目的を教えて頂けないでしょうか」
セレスがどうしようという目でこっちを見る。
以前の私なら此処で撤退するところだ。しかし今は恐怖耐性(3)。更に服も髪型もセレス監修による武装済み。
だからこれくらいでは引き下がらない。
「目的はゴーレムの新造。身分証はこれ」
冒険者証を提示する。
「拝見させていただきます……すみません。冒険者の方ですね。申し訳ありませんが代理購入の際にはゴーレムを作られる方の委任状が必要になっております」
うん、まだ耐えられる。これが厳ついおっさんだったらアウトだったかもしれないけれど。
だから次の抵抗だ。
「代理ではない。作るのは私自身」
「それでしたらゴーレム製造者登録、もしくはご自身がゴーレムを作られるという何か証明になるものの提示をお願いしていいでしょうか」
製造者登録なんてものがあるのか。知らなかった。知らないから当然そんな登録なんてしていない。
どうしよう。そう思った時、ふと思いついた。
「私が作ったゴーレムそのものでもいい?」
「ええ。それでも問題ありません」
バーボン君はリディナのところ。しかしシェリーちゃんはアイテムボックスに入っている。
シェリーちゃんを出し、起動する。
「私が自作したゴーレムです」
シェリーちゃんにこう言わせて頭を下げさせた。
「ええ。少し確認させていただきますが宜しいでしょうか」
「では起動解除する」
シェリーちゃんは完全に私の自作だ。だから調べられても問題ない。
受付のお姉さんから何かしらの魔力が動いている。どうやら私の知らない魔法で調べている模様。
およそ30数えるくらいでお姉さんからの魔力が止まった。そして彼女は私の方を見る。
「失礼いたしました。確かにフミノさんの独自製作によるゴーレムである事が確認できました」
「すみません。その独自製作の確認とはどうやったのでしょうか」
この質問はセレスだ。
「確認事項は2点です。起動源に残る魔力の形と、ゴーレム各部の構造です。
起動源の魔力はフミノさんの魔力の形と一致しました。故にこのゴーレムを素体からゴーレムにしたのはフミノさんに間違いありません。
素体の構造もほぼ独自仕様と思われます。特に関節部分は今までに見た事がない構造です。
魔力受容体及び魔力配線の形式はラモッティ伯爵家工房の鉱山採掘用022型に類似しています。これは同型の整備経験があるのか、もしくは参考にしたのでしょう。
全体としては今までに確認のない新形式のゴーレムであると判断出来ます。
以上からこのゴーレムはフミノさんの完全独自製作によるものと判断いたしました」
なるほど。受け付けを交代した意味と理由を理解した。
このお姉さんはプロだ。魔力の形を視る事が出来て、かつ最低でも監視魔法を使えるだけではない。おそらく主要なゴーレムの構造も全て頭の中に入れている。
鉱山採掘用何とかというのはバーボン君の事だろう。確かにその辺の構造は参考にした。
一方で関節部分は確かに私独自だ。ローラーベアリングだの玉軸受けだの独自機構を結構使っている。
その辺を見事に見破られてしまった訳だ。
「ところでこれだけのゴーレムを独自製作できるのなら、製造者登録をされたらいかがでしょうか。製作技術は証明していただけましたし、今此処で登録する事が可能ですけれど」
「登録するとどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか」
これもセレスが聞いてくれた。うん、もうここからはセレスに任せてしまおう。私は疲れた。
「登録はゴーレム製造と販売を業務として行う際に必要となります。年間売上が正金貨10枚を超える場合、及び商業ギルドでゴーレム販売を取次ぎする際には登録証が必要です。
また登録証を提示すると国指定の鍛冶組合及び取引所で購入代金が割引されます。金属類は概ね2割引きで購入が可能です。
更に魔法金属が購入できない地方であっても、登録証があれば商業ギルド経由で取り寄せる事が可能です。取り寄せの金額が若干かかりますが、魔法金属そのものが非常に高価ですので問題はあまりないでしょう。
更に登録と同時に商業ギルドの正会員としても登録されます。ゴーレム以外でも商売等を行う際、かなり便利になりますよ」
おお、つまり何処に行っても注文して待てば魔法金属を購入できる訳か。2割引きというのも魅力だな。
「それで費用や義務等はあるのでしょうか」
セレス、ちゃんとデメリットも聞いてくれた。特典に釣られそうになっている私よりよっぽどしっかりしている。
「費用は初回登録時に小金貨1枚程かかります。年会費等はありません。登録すれば一生有効です。
登録費は一見高く感じますが、魔法金属は高価なので概ね初回購入時の割引だけで元がとれます。
ただし最低で年1回、居所を報告する義務があります。これは商業ギルドに出頭していただけばすぐに行います。
なお商業ギルドに対しての費用は一切かかりません。正会員であってもです。
もともとゴーレム製造者登録制度は、ゴーレム製作という貴重な魔法と技術を持つ者を国や商業ギルドが把握する為にはじめた制度です。ですから登録して貰う為にメリットが多くなっております」
なるほど。理屈は理解できる。ただ私達は定住せず旅を続けている。この場合はどうなのだろうか。
「私達は拠点を定めないタイプの冒険者なのですが、それでも宜しいのでしょうか」
私が注意するまでもなくセレスが聞いてくれた。
お姉さんはあっさり頷く。
「ええ、問題ありません。定住する義務はありませんから。義務はあくまで年1回の居所報告だけです。ですがその場合は3ヶ月に1度程度でいいので、商業ギルドに出頭して頂けると助かります」
それくらいなら出来るだろう。
「登録した事で名前が知られ、ゴーレムを製作する為に依頼という名目で半ば強制的に拘束されたりする事はないでしょうか」
おっと、そういう懸念もあるのか。
セレス、良く気づいたな。
「ご存じのようにゴーレム製造の最大手はラモッティ伯爵家です。ですので伯爵家が自らも守るために法整備に尽力しています。結果、『戦争等、国家の非常事態において、国王が必要と認めた時』以外の場合は、貴族であろうとゴーレムを製造するよう命令したり、強制措置をとったり出来ません。ですので問題は無いかと思われます」
なるほど。なら大丈夫だろう。
「それでは参考までに魔法金属の値段と、どれくらい安くなるかを教えて頂けますでしょうか」
そういえばそこが肝心だった。流石セレス。私は頭が回らなかった。
「正規の金額は魔法銀は100軽で正金貨5枚。魔法銅は同じく100軽で正金貨1枚。魔法鉄は同じく100軽で正金貨10枚となります。
なお登録された場合はここから2割引きとなります」
魔法金属、無茶苦茶高価だ。しかし買える金額ではある。そしてこの金額だと2割引きはかなり大きい。
どうしよう。セレスが私の方を見る。うん、ここは登録してしまおう。2割引きと取り寄せ可能というのがメリットとして大きい。
だから私はセレスに頷く。
「わかりました。それでは登録をお願いします」
「ありがとうございます。それではこの登録用紙に記載をお願いいたします」
あとの手続きは冒険者ギルドと大差ない。
登録と引き換えに魔法銀を100軽、魔法銅を300軽、更に鉄や黄銅、銅も割引価格で購入。
この量ならライ君の新造+バーボン君の強化が可能だろう。
足取りももうウッキウキだ。
「かなり安くなりましたけれど、魔法金属って高いんですね」
「でも他の金属も2割引きで買えた、これは結構大きい」
なんてセレスと話しながら組合事務所を後にした。
鍛冶組合そのものはセレスがあっさり探してくれた。しかし簡単には売ってくれなかったのだ。
「魔法金属を買いたいのですけれど」
セレスがそう告げたところ、最初に受け付けてくれたお姉さんが少し考えるようなそぶりを見せる。
そして。
「わかりました。少々お待ちください」
そう言っていきなり奥に引っ込んでしまった。
かわりに出てきたのは20代後半程度に見える女性。知っている人だとカレンさんと同じくらい。
だからまあ、私でも一応大丈夫。
彼女はこちらに軽く頭を下げた後、口を開く。
「申し訳ありません。魔法銀や魔法銅、魔法鉄は国管理物資なので購入者の身元と使用用途の確認が必要となっています。
申し訳ありませんが身分証になるものを提示して、使用目的を教えて頂けないでしょうか」
セレスがどうしようという目でこっちを見る。
以前の私なら此処で撤退するところだ。しかし今は恐怖耐性(3)。更に服も髪型もセレス監修による武装済み。
だからこれくらいでは引き下がらない。
「目的はゴーレムの新造。身分証はこれ」
冒険者証を提示する。
「拝見させていただきます……すみません。冒険者の方ですね。申し訳ありませんが代理購入の際にはゴーレムを作られる方の委任状が必要になっております」
うん、まだ耐えられる。これが厳ついおっさんだったらアウトだったかもしれないけれど。
だから次の抵抗だ。
「代理ではない。作るのは私自身」
「それでしたらゴーレム製造者登録、もしくはご自身がゴーレムを作られるという何か証明になるものの提示をお願いしていいでしょうか」
製造者登録なんてものがあるのか。知らなかった。知らないから当然そんな登録なんてしていない。
どうしよう。そう思った時、ふと思いついた。
「私が作ったゴーレムそのものでもいい?」
「ええ。それでも問題ありません」
バーボン君はリディナのところ。しかしシェリーちゃんはアイテムボックスに入っている。
シェリーちゃんを出し、起動する。
「私が自作したゴーレムです」
シェリーちゃんにこう言わせて頭を下げさせた。
「ええ。少し確認させていただきますが宜しいでしょうか」
「では起動解除する」
シェリーちゃんは完全に私の自作だ。だから調べられても問題ない。
受付のお姉さんから何かしらの魔力が動いている。どうやら私の知らない魔法で調べている模様。
およそ30数えるくらいでお姉さんからの魔力が止まった。そして彼女は私の方を見る。
「失礼いたしました。確かにフミノさんの独自製作によるゴーレムである事が確認できました」
「すみません。その独自製作の確認とはどうやったのでしょうか」
この質問はセレスだ。
「確認事項は2点です。起動源に残る魔力の形と、ゴーレム各部の構造です。
起動源の魔力はフミノさんの魔力の形と一致しました。故にこのゴーレムを素体からゴーレムにしたのはフミノさんに間違いありません。
素体の構造もほぼ独自仕様と思われます。特に関節部分は今までに見た事がない構造です。
魔力受容体及び魔力配線の形式はラモッティ伯爵家工房の鉱山採掘用022型に類似しています。これは同型の整備経験があるのか、もしくは参考にしたのでしょう。
全体としては今までに確認のない新形式のゴーレムであると判断出来ます。
以上からこのゴーレムはフミノさんの完全独自製作によるものと判断いたしました」
なるほど。受け付けを交代した意味と理由を理解した。
このお姉さんはプロだ。魔力の形を視る事が出来て、かつ最低でも監視魔法を使えるだけではない。おそらく主要なゴーレムの構造も全て頭の中に入れている。
鉱山採掘用何とかというのはバーボン君の事だろう。確かにその辺の構造は参考にした。
一方で関節部分は確かに私独自だ。ローラーベアリングだの玉軸受けだの独自機構を結構使っている。
その辺を見事に見破られてしまった訳だ。
「ところでこれだけのゴーレムを独自製作できるのなら、製造者登録をされたらいかがでしょうか。製作技術は証明していただけましたし、今此処で登録する事が可能ですけれど」
「登録するとどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか」
これもセレスが聞いてくれた。うん、もうここからはセレスに任せてしまおう。私は疲れた。
「登録はゴーレム製造と販売を業務として行う際に必要となります。年間売上が正金貨10枚を超える場合、及び商業ギルドでゴーレム販売を取次ぎする際には登録証が必要です。
また登録証を提示すると国指定の鍛冶組合及び取引所で購入代金が割引されます。金属類は概ね2割引きで購入が可能です。
更に魔法金属が購入できない地方であっても、登録証があれば商業ギルド経由で取り寄せる事が可能です。取り寄せの金額が若干かかりますが、魔法金属そのものが非常に高価ですので問題はあまりないでしょう。
更に登録と同時に商業ギルドの正会員としても登録されます。ゴーレム以外でも商売等を行う際、かなり便利になりますよ」
おお、つまり何処に行っても注文して待てば魔法金属を購入できる訳か。2割引きというのも魅力だな。
「それで費用や義務等はあるのでしょうか」
セレス、ちゃんとデメリットも聞いてくれた。特典に釣られそうになっている私よりよっぽどしっかりしている。
「費用は初回登録時に小金貨1枚程かかります。年会費等はありません。登録すれば一生有効です。
登録費は一見高く感じますが、魔法金属は高価なので概ね初回購入時の割引だけで元がとれます。
ただし最低で年1回、居所を報告する義務があります。これは商業ギルドに出頭していただけばすぐに行います。
なお商業ギルドに対しての費用は一切かかりません。正会員であってもです。
もともとゴーレム製造者登録制度は、ゴーレム製作という貴重な魔法と技術を持つ者を国や商業ギルドが把握する為にはじめた制度です。ですから登録して貰う為にメリットが多くなっております」
なるほど。理屈は理解できる。ただ私達は定住せず旅を続けている。この場合はどうなのだろうか。
「私達は拠点を定めないタイプの冒険者なのですが、それでも宜しいのでしょうか」
私が注意するまでもなくセレスが聞いてくれた。
お姉さんはあっさり頷く。
「ええ、問題ありません。定住する義務はありませんから。義務はあくまで年1回の居所報告だけです。ですがその場合は3ヶ月に1度程度でいいので、商業ギルドに出頭して頂けると助かります」
それくらいなら出来るだろう。
「登録した事で名前が知られ、ゴーレムを製作する為に依頼という名目で半ば強制的に拘束されたりする事はないでしょうか」
おっと、そういう懸念もあるのか。
セレス、良く気づいたな。
「ご存じのようにゴーレム製造の最大手はラモッティ伯爵家です。ですので伯爵家が自らも守るために法整備に尽力しています。結果、『戦争等、国家の非常事態において、国王が必要と認めた時』以外の場合は、貴族であろうとゴーレムを製造するよう命令したり、強制措置をとったり出来ません。ですので問題は無いかと思われます」
なるほど。なら大丈夫だろう。
「それでは参考までに魔法金属の値段と、どれくらい安くなるかを教えて頂けますでしょうか」
そういえばそこが肝心だった。流石セレス。私は頭が回らなかった。
「正規の金額は魔法銀は100軽で正金貨5枚。魔法銅は同じく100軽で正金貨1枚。魔法鉄は同じく100軽で正金貨10枚となります。
なお登録された場合はここから2割引きとなります」
魔法金属、無茶苦茶高価だ。しかし買える金額ではある。そしてこの金額だと2割引きはかなり大きい。
どうしよう。セレスが私の方を見る。うん、ここは登録してしまおう。2割引きと取り寄せ可能というのがメリットとして大きい。
だから私はセレスに頷く。
「わかりました。それでは登録をお願いします」
「ありがとうございます。それではこの登録用紙に記載をお願いいたします」
あとの手続きは冒険者ギルドと大差ない。
登録と引き換えに魔法銀を100軽、魔法銅を300軽、更に鉄や黄銅、銅も割引価格で購入。
この量ならライ君の新造+バーボン君の強化が可能だろう。
足取りももうウッキウキだ。
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