ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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拾遺録3 仕入れ旅行の帰りに

4 再会

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 次にセレスと出会ったのは二ヶ月後の六月半ば。雨の季節が終わり晴れの日が続き始めた頃だった。

 ◇◇◇

 弟のファビオは昨年11月まで、街から5離10kmほど離れた場所でやっている勉強会へと通っていた。

 カラバーラは新しい街だ。うちの家も7年前に引っ越したばかり。
 5年前、来年でファビオが10歳になるというので適当な私塾を探しはじめた。しかし街が新しすぎて良さそうな私塾がない。

 うちが越してきたのはスリワラ領が出来て3年目。そして私塾探しを始めたのはスリワラ領が出来て5年目。
 だから私塾など、古い大きな街なら当たり前にあるような施設でもないものが多いのだ。

 それでも探した結果、同じ通りに店を構えている種苗・農業用品問屋のカラマイ家からこんな話を聞いた。

『少し遠いけれどお勧めの私塾がある。私塾というより有志がやっている勉強会という形式だけれども。
 週に1回だけれど教える内容は充実しているようで、読み書きや算術の他に魔法まで教えている。
 領騎士団の顧問が時々教えたりもしているらしい。うちも子供3人を通わせている。
 10歳にならなくても通えるから、もし私塾を探しているなら試しに行ってみたらどうか』

 カラマイ家はうちより3年早くカラバーラへと来て店を構えている。スリワラ領が出来る際に新領主から乞われて此処へ越してきて店を出したと聞いた。

 他に良さそうな私塾はなかった。それに9歳でも問題無いなら試しに通わせてみてもいいだろう。
 そんな感じでファビオを送り出したら1日目で灯火と水出しの魔法を覚えて帰ってきた。本人も楽しそうだったし、以降そのまま毎週通う事に決まったのだ。
 
 結局ファビオはそのまま5年間、毎週その私塾に通った。結果読み書き算術だけで無く高度な魔法まで使えるようになった。
 そしてそのまま店の手伝いでは無くC級魔法使いの冒険者になってしまったのだが、それはまあ別の話としよう。

 さて、週に1回とは言え、10歳程度の子供の足に片道5離10kmの距離はそれなりに厳しい。

 だから通常は行き帰りに乗合馬車を利用する。私塾の方も開始を乗合馬車の時間に合わせてくれているし、帰りの馬車まで預かっていてくれたりなんて事もしてくれる。

 しかしたまに馬車や馬の都合で乗合馬車が休むなんて時もある。そういう時は通っている子の親等で相談して、馬車を仕立てたりするのだ。

 たまになのだから私塾を休んでもいいと俺は思う。しかし10人程通っている子供達が全員、歩いてでも通いたがるのだ。
 
 大体はそういう際、カラマイ家が馬車を出してくれる。カラマイ家は子供を3人行かせている上、店で馬車を持っているから。

 だがその日はたまたまカラマイ家で御者や馬丁をやってくれているマリオさんが休みだった。
 それで月に一度は馬車で長距離出かけ、ある程度は御者の真似事や馬の扱いなんて事も出来る俺が代行で馬車を運転することになったのだ。
 月半ば過ぎで時間があったというのもある。

 ただ馬車で片道5離10kmだと1時間程かかる。行って帰って馬に水を飲ませ飼い葉を与えたりなんてすると3時間弱。

 往復すると一日仕事だ。カラマイ家の場合は行った後に近くの村等で買い付けとか作況調査とかやるらしいけれど、俺の場合は完全に往復だけだし。

 これはこれで大変だな。なんて思いつつファビオを含む子供10人を載せ、私塾のある開拓村へ。

 1時間程で無事村の入口に到着。ファビオに案内されるままに馬車を走らせ、古いがしっかりとした石造りの教会へと到着。
 子供達をおろし、教会横の広場で馬車を転回させていた時。

「お疲れ様です。よろしければ少し休憩されませんか?」

 どこかで聞いた声だ。そう思って振り返る。見覚えがある。誰だっただろう。

 麻とウール混紡っぽい紺色の上着と同じ素材のグレーのスカート。何処かで見た布地だが、シルエットが女性らしくて綺麗だ。
 そしてやはり何処かで見たような革製の丸っこい手提げバック。

 1数える位で気付いた。ああ、あのとき布を4巻買っていった女性、確かセレスという名前だったなと。

「先日はありがとうございました。セレスさんはこちらの方でしたか」

「ええ、ここで勉強会をやっているんです。といっても勉強の方のメインは私以外の2人で、私は勉強や魔法の初歩が主な担当ですけれど」

 なるほど……そこまで聞いて気づく。魔法!?

「魔法を使われるんですか?」

「ええ。ここに来るまではあと2人と冒険者をやっていましたから。今でもC級冒険者です。一応、ですけれど。
 ただ私は大した事はないんです。あの2人に後から加わって、魔法や読み書きも2人に教わっただけですから」

 冒険者という言葉と目の前の女性のイメージがあわない。更に言うと年齢があわない気もする。

 この私塾が出来たのはうちの家が引っ越してくるより前だと聞いている。8年前、カラバーラがスリワラ領になって2年目くらいの頃だ。
 
 とすると8年前以前にこの人は冒険者をしていた事になる。となると今が20歳くらいだとして12歳以下。そして冒険者登録が出来るのは12歳以上の筈だ。
 登録してすぐに冒険者をやめたというのだろうか。その辺がよくわからない。

 あとC級というのは基本的に『どんな魔物や魔獣でも相手に出来るレベルの冒険者』だった筈だ。
 ネイプルに仕入れに行く際に確認しているから間違いない。

 でもセレス、それほど強そうには見えない。むろん魔法使いだから見た目と強さはあまり関係ないのだろうけれど。
 なんて事を考えつつとりあえず返答。 

「済みません。それでは少し宜しいでしょうか」

「ええ。折角ですから勉強会の状況もご覧になっていきませんか。少しだけでも見れば状況はわかると思いますから」

 確かに見てみたい。ここの私塾では魔法も教えていると聞いた。どんな感じで魔法を教えているのだろう。興味がある。

「ありがとうございます」 

「それではこちらでお待ちしています」 

 待たせるのは申し訳無い。なので俺はさっさと馬車を転回させ、馬を綱木へと繋ぐ。

「済みません。お待たせしました」

「いえ。それではどうぞ」

 彼女と一緒に教会らしき建物へ向かう。
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