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第6章 電波と魔力の共通点?
第48話 俺達の新拠点
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「見たとおり、ここは小型船の造船も出来るタイプの場所だ。元々船の研究をしていた場所だが、研究には手狭になって別施設に引っ越し、以来空いていたらしい」
ヨーコ先輩が予想を裏付ける説明をしてくれた。
「つまりここにあの蒸気ボートも置けると」
「どうもそうらしい。あんな秘密の塊を民間業者の係船所に不用意に預けっぱなしにするなという事のようだ。外はオッター川支流のモトヤス運河に繋がっている」
何だその便利さは。
「こっちの扉の中も見ていい?」
「勿論だ」
早速ミド・リーとかシモンさんとかが色々と確認する。
「こっちはキッチンとテーブルのある小部屋だよ。おやつを作ったり食べたりするのにちょうどいいね」
「わっ。シャワーもある。洗面所もあるしトイレも綺麗」
「こちらは仮眠室でしょうか。カプセルベッドが10カ所ほどあります」
何だこの至れり尽くせりな施設は。いいのかこんなの中等部生徒に貸し出して。
「あと必要資材は頼めば持ってきてくれるそうだ。希少素材以外は無料でな」
ナンダヨソレハ……コレハユメデスカ……アナタハ神カ……
余りの好待遇に頭がおかしくなりそうだ。気をしっかり持て俺! これは夢じゃない現実だ!
「ノルマとか無いですよね。もっと色々軍のためになる物を開発しろって」
あまりの厚遇に心配になったので聞いてみる。
「それはありませんわ。これは開発のための投資というよりむしろ保秘に対する手当という面の方が大きいですから。ただ新たに開発した物があれば一応軍の方でも確認させて欲しいそうです。ただ単なる民生用のものなら特に権利に関与はしないそうですわ」
「なお契約は全員が王立学校を離れるまでだそうだ」
つまり学校にいる間はこの施設と資材を自由に使える訳か。これ以上無い条件だが問題がひとつある。
「俺の家の石鹸工場はどうする? ここへバラして運ぶか?」
そう、シンハ君が言った通り、石鹸工場の件だ。
俺は条件をひととおり確認した時点で既にある案を考えている。でもそれが全員の賛同を得られるかはわからない。人によっては失う物も結構あるかもしれないからだ。
でもあえて、俺から言い出してみる事にする。
「石鹸の製造は終わりにしよう」
「どういう事?」
最初に疑問が出たのはフールイ先輩だった。てっきり最初はシンハ君かアキナ先輩だと予想していたのだけれど。
「石鹸やスキンケア製品の製造はもう新しく開発すべき処があまり無い状態です。製造もシモンさんのおかげで誰でも出来るような状態になりましたし。だからもう俺達がやらなくてもいいんじゃないか。そう思うんです」
「石鹸はやめる?」
「他の人に施設ごと譲り渡して作って貰えばいいでしょう。無論あそこの機械は俺達でないとわからない部分が多い。だからきっちりしたマニュアルを作って、あと2週間に1回くらいは俺とシモンさんが見回るようにする。でもそうすれば俺達がやる必要はもう無いと思うんです。むしろ専任の誰かが作った方が生産数も増えてそれだけ多くの人に行き渡るようになる」
もう俺達にとって石鹸等の開発製造は終わった作業だと思うのだ。研究したり新しくしたりする余地はほとんど残っていない。
ならこれを機に手を引くべきだろう。それが俺の考えだ。
「でもあれが手に入らなくなると困る」
「その辺は契約内容でどうにでも出来ます」
「せっかく儲かっているのに」
「ある程度の歩合でこっちにお金が回るようにすればいいでしょう」
この辺は既に質疑応答考慮済みだ。
「ああやって皆でわいわい言いながら作業をするなんて事は、私にとっては新鮮で楽しかったのですけれどね」
「私もだ」
これは想定外の感想だ。なるほど、大貴族のお嬢様はそういう経験はあまり無かったのだろう。そう思うとちょっと申し訳ないような気がする。
「でも正しい意見だと思いますわ。石鹸作りの作業の時間の分、他のことを色々できるようになりますから」
「残念だけれど正論だな」
「そうですね」
「僕もあの辺の機械は改良し尽くしたし」
「あの製品が手に入るのならそれでいいかな」
「同意」
残ったのはシンハ君だ。
「でもあの工場はどうするんだ」
「一番いいのはシンハの親頼みかな」
これも俺が既に考えていたことだ。
「何故だ」
「元々場所はシンハの家の別館だ。それにウージナは王家直轄都市だけれど郊外南側はシンハの家の領地。だから人を集めるのは難しくないと思うんだ」
「でも家にはあの工場を正当な金額で買い取るような資金は無いぞ」
「そんなのは出世払いでいい。どうせ必ず儲かるんだ。それに貴族の家で作っているというのも重要だ。それはそれでブランドになる」
「でもそれなら先輩達の家の方が」
「アキナ先輩の家とヨーコ先輩の家でどっちが石鹸を手に入れるかで政争を起こされちゃまずいだろ。だからここはシンハの家に任せた方が無難なんだ」
悪いがシンハ君に口で負けるとは思っていない。腕力で勝てないのと同じくらいの自信がある。
「それがいいと思いますわ。我が家や王家がこれまで通り入手するにも問題は無いでしょうから」
「そうだな。先輩の家とどっちが手に入れるかなんてやるよりは正しい解決法だ」
両巨頭もOKしてくれた。
「なら僕とミタキ君とで機械を更に改良して、マニュアルを作って、どんな人が何人いればいいか説明書きも作るよ」
シモンさんありがとうございます。
「でも水飴の件もあるしさ。何か申し訳ない」
「今まで只で場所を貸してくれたお礼だと思えばいい。それに家の中の資材も大分使わせて貰ったからさ」
別館にあった穴のあいた鍋とか室内配管とか色々資材として使ってしまっている。
シンハの両親ともに鷹揚な人だからな。だから領主なのに貧乏なのかもしれないけれど。
「ならこれから船を回送して、明日からは石鹸工場の撤退準備かな」
「そうだね。シンハは今日の夜にでもお父さんにこの件を話しておいて」
シンハ君、ビクッと身を震わせる。
「うう、俺は言葉で説明するのは苦手なんだ」
「あの石鹸工場を直接見せたらわかるでしょ」
シンハ君、今度はため息をついて俺の方を見た。
「ミタキ、親父への説明、一緒に頼む」
仕方ないか。過去にも似たような事が無かったわけじゃ無いし。初等学校の宿題で親に仕事の内容をインタビューするという宿題とか。
この前の水飴の件だって説明時の順序とか台詞とか、俺がシナリオを書て別途シンハ君に持たせりもしたし。
ヨーコ先輩が予想を裏付ける説明をしてくれた。
「つまりここにあの蒸気ボートも置けると」
「どうもそうらしい。あんな秘密の塊を民間業者の係船所に不用意に預けっぱなしにするなという事のようだ。外はオッター川支流のモトヤス運河に繋がっている」
何だその便利さは。
「こっちの扉の中も見ていい?」
「勿論だ」
早速ミド・リーとかシモンさんとかが色々と確認する。
「こっちはキッチンとテーブルのある小部屋だよ。おやつを作ったり食べたりするのにちょうどいいね」
「わっ。シャワーもある。洗面所もあるしトイレも綺麗」
「こちらは仮眠室でしょうか。カプセルベッドが10カ所ほどあります」
何だこの至れり尽くせりな施設は。いいのかこんなの中等部生徒に貸し出して。
「あと必要資材は頼めば持ってきてくれるそうだ。希少素材以外は無料でな」
ナンダヨソレハ……コレハユメデスカ……アナタハ神カ……
余りの好待遇に頭がおかしくなりそうだ。気をしっかり持て俺! これは夢じゃない現実だ!
「ノルマとか無いですよね。もっと色々軍のためになる物を開発しろって」
あまりの厚遇に心配になったので聞いてみる。
「それはありませんわ。これは開発のための投資というよりむしろ保秘に対する手当という面の方が大きいですから。ただ新たに開発した物があれば一応軍の方でも確認させて欲しいそうです。ただ単なる民生用のものなら特に権利に関与はしないそうですわ」
「なお契約は全員が王立学校を離れるまでだそうだ」
つまり学校にいる間はこの施設と資材を自由に使える訳か。これ以上無い条件だが問題がひとつある。
「俺の家の石鹸工場はどうする? ここへバラして運ぶか?」
そう、シンハ君が言った通り、石鹸工場の件だ。
俺は条件をひととおり確認した時点で既にある案を考えている。でもそれが全員の賛同を得られるかはわからない。人によっては失う物も結構あるかもしれないからだ。
でもあえて、俺から言い出してみる事にする。
「石鹸の製造は終わりにしよう」
「どういう事?」
最初に疑問が出たのはフールイ先輩だった。てっきり最初はシンハ君かアキナ先輩だと予想していたのだけれど。
「石鹸やスキンケア製品の製造はもう新しく開発すべき処があまり無い状態です。製造もシモンさんのおかげで誰でも出来るような状態になりましたし。だからもう俺達がやらなくてもいいんじゃないか。そう思うんです」
「石鹸はやめる?」
「他の人に施設ごと譲り渡して作って貰えばいいでしょう。無論あそこの機械は俺達でないとわからない部分が多い。だからきっちりしたマニュアルを作って、あと2週間に1回くらいは俺とシモンさんが見回るようにする。でもそうすれば俺達がやる必要はもう無いと思うんです。むしろ専任の誰かが作った方が生産数も増えてそれだけ多くの人に行き渡るようになる」
もう俺達にとって石鹸等の開発製造は終わった作業だと思うのだ。研究したり新しくしたりする余地はほとんど残っていない。
ならこれを機に手を引くべきだろう。それが俺の考えだ。
「でもあれが手に入らなくなると困る」
「その辺は契約内容でどうにでも出来ます」
「せっかく儲かっているのに」
「ある程度の歩合でこっちにお金が回るようにすればいいでしょう」
この辺は既に質疑応答考慮済みだ。
「ああやって皆でわいわい言いながら作業をするなんて事は、私にとっては新鮮で楽しかったのですけれどね」
「私もだ」
これは想定外の感想だ。なるほど、大貴族のお嬢様はそういう経験はあまり無かったのだろう。そう思うとちょっと申し訳ないような気がする。
「でも正しい意見だと思いますわ。石鹸作りの作業の時間の分、他のことを色々できるようになりますから」
「残念だけれど正論だな」
「そうですね」
「僕もあの辺の機械は改良し尽くしたし」
「あの製品が手に入るのならそれでいいかな」
「同意」
残ったのはシンハ君だ。
「でもあの工場はどうするんだ」
「一番いいのはシンハの親頼みかな」
これも俺が既に考えていたことだ。
「何故だ」
「元々場所はシンハの家の別館だ。それにウージナは王家直轄都市だけれど郊外南側はシンハの家の領地。だから人を集めるのは難しくないと思うんだ」
「でも家にはあの工場を正当な金額で買い取るような資金は無いぞ」
「そんなのは出世払いでいい。どうせ必ず儲かるんだ。それに貴族の家で作っているというのも重要だ。それはそれでブランドになる」
「でもそれなら先輩達の家の方が」
「アキナ先輩の家とヨーコ先輩の家でどっちが石鹸を手に入れるかで政争を起こされちゃまずいだろ。だからここはシンハの家に任せた方が無難なんだ」
悪いがシンハ君に口で負けるとは思っていない。腕力で勝てないのと同じくらいの自信がある。
「それがいいと思いますわ。我が家や王家がこれまで通り入手するにも問題は無いでしょうから」
「そうだな。先輩の家とどっちが手に入れるかなんてやるよりは正しい解決法だ」
両巨頭もOKしてくれた。
「なら僕とミタキ君とで機械を更に改良して、マニュアルを作って、どんな人が何人いればいいか説明書きも作るよ」
シモンさんありがとうございます。
「でも水飴の件もあるしさ。何か申し訳ない」
「今まで只で場所を貸してくれたお礼だと思えばいい。それに家の中の資材も大分使わせて貰ったからさ」
別館にあった穴のあいた鍋とか室内配管とか色々資材として使ってしまっている。
シンハの両親ともに鷹揚な人だからな。だから領主なのに貧乏なのかもしれないけれど。
「ならこれから船を回送して、明日からは石鹸工場の撤退準備かな」
「そうだね。シンハは今日の夜にでもお父さんにこの件を話しておいて」
シンハ君、ビクッと身を震わせる。
「うう、俺は言葉で説明するのは苦手なんだ」
「あの石鹸工場を直接見せたらわかるでしょ」
シンハ君、今度はため息をついて俺の方を見た。
「ミタキ、親父への説明、一緒に頼む」
仕方ないか。過去にも似たような事が無かったわけじゃ無いし。初等学校の宿題で親に仕事の内容をインタビューするという宿題とか。
この前の水飴の件だって説明時の順序とか台詞とか、俺がシナリオを書て別途シンハ君に持たせりもしたし。
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