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第13章 リゾートモードの筈なのに
第104話 自動車改良無事完成
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朝食後、車を停めている玄関前に出てみる。でっかい流木が2本車の脇に並べてあった。
2本とも一番太い部分が直径が60指以上、長さは5腕ありそうだ。
「これは立派だな。重かっただろ」
俺なら持ってくるどころかこの場から動かせないだろう。
「トレーニング代わりにはちょうど良かったな。引っ張っても固いから大丈夫だし」
「でも砂浜でこれを引くのはかなり足腰がきつかったぞ」
どうやら2人で1本ずつ引っ張ってきたようだ。そしてシンハ君にとってはそこそこ余裕で、ヨーコ先輩にはかなりきつい作業だった模様。
ここは一応注意しておこう。
「ヨーコ先輩、シンハにパワーで付き合わない方がいいですよ。こいつは細胞レベルで頑丈人間ですから」
横で俺と同じくらいシンハのことを良く知っているミド・リーがうんうんと頷いている。
頑丈人間とはこの国の人気娯楽小説の主人公。馬車と衝突すると馬車が壊れ、鋼製の投げ槍をパンチで撃破する。
もちろんファンタジーとして書かれているのだろう。しかしシンハ君を知っている俺やミド・リーにはとても虚構の存在とは思えない。
「そういえばミセン山噴火の際、クシーマ卿がパンチとキックで地形を変え、土石流のコースを街から外したと聞いた事がある。私は噂に尾ひれがついたものだと思ったのだが、あれは実話なのだろうか」
「僕の父は現場を見たって言っていたよ。支尾根をひとつ完全に崩してコースを曲げたって」
ヨーコ先輩とシモンさんから新証言が出てきた。どうやらシンハ君の親父も頑丈人間だったようだ。
見かけは柔和でそう感じさせないのだけれど、目撃者がいるなら間違いあるまい。
「何かずるいな。私のは単なる身体強化だけなのに」
「先輩は身体強化の他に風魔法も使えるだろ」
ヨーコ先輩に対するシンハ君の口調が変わったな。俺は気づいたがあえて指摘はしないでおく。
それより本題は木の方だ。
「シモンさん、材料はこれで大丈夫かな」
「充分だよ。よく乾燥しているし堅くて使いやすそう」
そう言って彼女は魔法アンテナを蒸気自動車と木の方に向ける。
なおシモンさんの魔法アンテナは先輩達のものより更に更に改良されている。反射器が上下に2本多かったり、導波器が更に2本追加されていたり。
おかげでただでさえ大きいアンテナが異常なまでに大きくなった。でも戦闘用ではないのでこれでいいのだそうだ。
「じゃあ屋根を錬成するよ」
そう言うと同時に屋根部分が出現している。しっかりとした真鍮フレームの柱に木製のちょっと分厚い屋根。
分厚いのは物を置く場所を作っているからだ。その上は革でカバーして荷物が落ちないようになっている。
蒸気自動車の形は21世紀初頭の自動車を知っている俺から見るとかなり異形だ。
前部分はスーパー7とか古い車のボンネットをごくごく短くしたような感じ。前輪のすぐ後ろに運転席と助手席。そこから2列目、3列目、4列目と座席は少しずつ高さが上がっていく。
4列目の席の足の高さがちょうど後輪の上くらい。その後ろは石炭庫。一番後ろに薄型の煙突が屋根の上まで伸びている。
車体そのものは前傾姿勢だが屋根は一番後ろの席にあわせた高さで水平。以前ネットか何かで見たT型フォードに何処かのスタジアムから持ってきた高さが段々になっている座席を4列のせ、後ろに煙突付きボイラーと石炭庫をくっつけたような形。と格好いいとは言えない形だ。
「少し座席が低くて乗りやすくなったかな」
「屋根の荷物はどうやって載せるの」
「一番後ろの椅子の上に立つとちょうど荷物室に手が届くようになっている」
「本当だ。上に穴がある」
「それで入らないなら革製の部分を開ける事も出来るよ」
見てみるとなかなか細かい細工がしてある。大きめのレバーで簡単に革製のカバーを張ったり外したりも出来るのだ。
こういった細かい工夫もシモンさんの腕だ。一瞬のうちに細部まで全部イメージ出来る物なのか。俺にはとてもそんな真似は出来ない。
「どうする。試運転してみる?」
「そうだな。ついでに買い物をしてこようか」
「それなら石炭も一応買っておこうよ。帰りに一気に帰れるし」
「ならまとめて買い出しだな。皆に行くかどうか聞いてこよう」
そんな訳で一通り確認した結果。
アキナ先輩、シモンさん、ミド・リー、俺の4人で行く事になった。
「まずは石炭を買って、それから食品市場かな」
「それなら最初は工房街の資材市場にご案内致しますわ」
なぬ、資材市場だと。魅力的な響きだ。
「石炭以外も資材市場で見てみていいですか」
「勿論ですわ」
よし。何か面白い素材が手に入るかもしれない。
「ここの工房街ってどんな場所なの」
「ウージナと同じで船や馬車、農具や鍋釜等を作ったりする工房が中心ですわ」
「何かアージナならではの資材とかはありますか」
「残念ですがウージナとそう変わらないと思いますわ」
それでも実際に見れば何かあるかもしれない。ちょっとだけ期待を載せて蒸気自動車は走る。
2本とも一番太い部分が直径が60指以上、長さは5腕ありそうだ。
「これは立派だな。重かっただろ」
俺なら持ってくるどころかこの場から動かせないだろう。
「トレーニング代わりにはちょうど良かったな。引っ張っても固いから大丈夫だし」
「でも砂浜でこれを引くのはかなり足腰がきつかったぞ」
どうやら2人で1本ずつ引っ張ってきたようだ。そしてシンハ君にとってはそこそこ余裕で、ヨーコ先輩にはかなりきつい作業だった模様。
ここは一応注意しておこう。
「ヨーコ先輩、シンハにパワーで付き合わない方がいいですよ。こいつは細胞レベルで頑丈人間ですから」
横で俺と同じくらいシンハのことを良く知っているミド・リーがうんうんと頷いている。
頑丈人間とはこの国の人気娯楽小説の主人公。馬車と衝突すると馬車が壊れ、鋼製の投げ槍をパンチで撃破する。
もちろんファンタジーとして書かれているのだろう。しかしシンハ君を知っている俺やミド・リーにはとても虚構の存在とは思えない。
「そういえばミセン山噴火の際、クシーマ卿がパンチとキックで地形を変え、土石流のコースを街から外したと聞いた事がある。私は噂に尾ひれがついたものだと思ったのだが、あれは実話なのだろうか」
「僕の父は現場を見たって言っていたよ。支尾根をひとつ完全に崩してコースを曲げたって」
ヨーコ先輩とシモンさんから新証言が出てきた。どうやらシンハ君の親父も頑丈人間だったようだ。
見かけは柔和でそう感じさせないのだけれど、目撃者がいるなら間違いあるまい。
「何かずるいな。私のは単なる身体強化だけなのに」
「先輩は身体強化の他に風魔法も使えるだろ」
ヨーコ先輩に対するシンハ君の口調が変わったな。俺は気づいたがあえて指摘はしないでおく。
それより本題は木の方だ。
「シモンさん、材料はこれで大丈夫かな」
「充分だよ。よく乾燥しているし堅くて使いやすそう」
そう言って彼女は魔法アンテナを蒸気自動車と木の方に向ける。
なおシモンさんの魔法アンテナは先輩達のものより更に更に改良されている。反射器が上下に2本多かったり、導波器が更に2本追加されていたり。
おかげでただでさえ大きいアンテナが異常なまでに大きくなった。でも戦闘用ではないのでこれでいいのだそうだ。
「じゃあ屋根を錬成するよ」
そう言うと同時に屋根部分が出現している。しっかりとした真鍮フレームの柱に木製のちょっと分厚い屋根。
分厚いのは物を置く場所を作っているからだ。その上は革でカバーして荷物が落ちないようになっている。
蒸気自動車の形は21世紀初頭の自動車を知っている俺から見るとかなり異形だ。
前部分はスーパー7とか古い車のボンネットをごくごく短くしたような感じ。前輪のすぐ後ろに運転席と助手席。そこから2列目、3列目、4列目と座席は少しずつ高さが上がっていく。
4列目の席の足の高さがちょうど後輪の上くらい。その後ろは石炭庫。一番後ろに薄型の煙突が屋根の上まで伸びている。
車体そのものは前傾姿勢だが屋根は一番後ろの席にあわせた高さで水平。以前ネットか何かで見たT型フォードに何処かのスタジアムから持ってきた高さが段々になっている座席を4列のせ、後ろに煙突付きボイラーと石炭庫をくっつけたような形。と格好いいとは言えない形だ。
「少し座席が低くて乗りやすくなったかな」
「屋根の荷物はどうやって載せるの」
「一番後ろの椅子の上に立つとちょうど荷物室に手が届くようになっている」
「本当だ。上に穴がある」
「それで入らないなら革製の部分を開ける事も出来るよ」
見てみるとなかなか細かい細工がしてある。大きめのレバーで簡単に革製のカバーを張ったり外したりも出来るのだ。
こういった細かい工夫もシモンさんの腕だ。一瞬のうちに細部まで全部イメージ出来る物なのか。俺にはとてもそんな真似は出来ない。
「どうする。試運転してみる?」
「そうだな。ついでに買い物をしてこようか」
「それなら石炭も一応買っておこうよ。帰りに一気に帰れるし」
「ならまとめて買い出しだな。皆に行くかどうか聞いてこよう」
そんな訳で一通り確認した結果。
アキナ先輩、シモンさん、ミド・リー、俺の4人で行く事になった。
「まずは石炭を買って、それから食品市場かな」
「それなら最初は工房街の資材市場にご案内致しますわ」
なぬ、資材市場だと。魅力的な響きだ。
「石炭以外も資材市場で見てみていいですか」
「勿論ですわ」
よし。何か面白い素材が手に入るかもしれない。
「ここの工房街ってどんな場所なの」
「ウージナと同じで船や馬車、農具や鍋釜等を作ったりする工房が中心ですわ」
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