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第13章 リゾートモードの筈なのに
第103話 ファンクラブ諸氏の気持ち
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「そういえば自動車の改良ってどんな感じにするの?」
夕食中、ミド・リーが聞いてきた。
「屋根の上に荷物を載せられるようにするのが最大の改良だ。あとは座席の位置の変更と、水タンクの移設」
「まだ始めたばかりだけれどね。後ろの席からも前が見やすくなるよ」
シモンさんは俺が描いた概略図で既に改造内容を把握済み。
木材が足りないので屋根部分の改良は後回し。
まずやったのはタイヤを太くし、径を小さくする作業。若干最高速が落ちるかもしれないが道路条件を考えると問題無い。というか最高速は少し落としたい。シモンさんの運転は時に命の危険を感じるから。
これは夕食前に完了した。シモンさんと専用魔法杖があれば簡単。工作魔法様々だ。
タイヤの次は水タンクの移設と座席位置の変更、つまり今回のメインだ。この改良で座席の高さは運転席で40指、最後席で5指低くなる。
ボンネットも前方視界を妨げない程度にボリュームを出し、水タンクを移設。
この為にはあちこちを改造する必要がある。まずは必要な部品作り、なんて作業の途中で夕食タイムになった。
「なら多少お土産を買っても大丈夫ですね」
「あまり重い物は勘弁してください」
アキナ先輩は時に思い切りが良すぎる。だから一応釘は刺しておかないとまずい。
「あの大型魔法杖を置く場所が出来ただけでもいいですわ。座席の下とか横とかに無理矢理置いていましたし」
確かに魔法アンテナは折りたたんでもそこそこ大きい。あれを屋根上に積めるだけでも大分ましになるだろう。
ただ屋根を改造するためには木材が必要。在庫が無いので入手してくる必要がある。
「明日流木とかを集めて材料にする予定なんだ。手頃なのがあったら車の横に置いてくれると嬉しいな」
「なら明日、朝の訓練の時に探しておいてやるよ」
そういえば今朝、シンハ君とヨーコ先輩が早起きして出かけていたようだ。早速合同訓練をしている訳か。
「頼むね。一度分解して再構成するからしっかりしていれば形は問わないから」
シモンさんの台詞にヨーコ先輩まで頷いた。
「任せておけ、シンハと頃合いのを探してきてやる」
こんなのファンクラブに見られたら抹殺処分だよなと思う。既にシンハ君は除名処分を受けていると聞いているけれど。
「それにしてもミタキ、今日は結構食べているよね」
ミド・リーに言われて気づいた。
「そういえばそうかな」
「いつもは全部2口ずつとパン1切れ程度じゃない」
確かに今食べているパンは3切れめだ。
ウニタラモが背徳的に美味しかっただけではない。牡蠣やあさりや松葉貝が入ったグラタンも凶悪なまでのおいしさ。
だからついつい食が進んでしまったのだ。
「やっぱり人に作って貰った料理はいいよな。自分が作ったのと違って」
俺ならウニをタラモ風にしたり、牡蠣をグラタンに投入したりは出来なかった。
何か勿体ないような気がして。日本人的な価値判断から。
「なら私も作ろうかな」
いや、それはやめて欲しい。というか絶対阻止すべきだ。
「全力で断る」
「なんでー!」
それ以上言わないのが友人としての優しさ。
「あ、そろそろ夕陽が沈むよ」
シモンさんが話題を変えてくれた。
外の方を見てみる。確かに夕陽が沈もうとしていた。
「やっぱり綺麗ですね、これ」
確かにその通りだな。俺もそう感じる。
◇◇◇
俺は腹一杯になると眠くなる体質だ。眠くなったで夕食後の自動車改造作業は中止。どうせ木材が足りないからあまり進まないし。
こうやって早寝すると必ず翌日とんでもない時間に目が覚めるのが毎回のパターンだったりする。
ただ今朝は何とか朝と呼ばれる時間のようだ。鳥がさえずる声が聞こえているし空が明るくなりつつある。そして鳥以外の声も聞こえてくる……
「よし、今日は負けない」
「その辺は女子と男子の体力差があるからな。ある程度はしょうがないと思うぞ」
ヨーコ先輩とシンハ君の声だ。こんな朝早い時間からトレーニングをやっているのか。
その後はしばらくサッと地を蹴る音と息づかいだけが聞こえる。反復横跳びにしては音が不規則だ。
何をやっているのだろう。つい耳をすませてしまう。
しばらくすると足音が止まって荒い呼吸音だけになった。
「やはりシンハの方がまだ強いな」
「この訓練は剣技を使えないからさ、ヨーコ先輩が不利なだけだろ」
どうやら模擬戦かそれに類する事をしていたようだ。
「いや、これで負けるなら剣技なんてただのごまかしだ。でも楽しいな」
ん!? 何が楽しいのだろう>
「何故?」
シンハ君も今の台詞に戸惑っているようだ。
「こうやって同年代と本気で訓練していると、何か青春って感じがする」
このトレーニングが青春だって!? 何だそりゃ。そう思いかけて俺は気付いた。
そういえば以前ヨーコ先輩は言っていた。昔から特別扱いされてばっかりだったと。話し掛けてくれるのはナカさん位で、模擬戦を受けてくれるのはシンハ位だと。
なるほど、確かにヨーコ先輩なりに今は青春をしているのだろう、きっと。これで以前教室へ押しかけられたような俺への被害は無くなるだろう。アキナ先輩も卒業したことだし。
しかしそれはそれで何かちょっと言葉に出来ない気持ちも無いかといえば……
とりあえずシンハ君を除名にしたファンクラブ諸氏の気持ちに、ちょっとだけ同調したくなる。そんな朝だ。
夕食中、ミド・リーが聞いてきた。
「屋根の上に荷物を載せられるようにするのが最大の改良だ。あとは座席の位置の変更と、水タンクの移設」
「まだ始めたばかりだけれどね。後ろの席からも前が見やすくなるよ」
シモンさんは俺が描いた概略図で既に改造内容を把握済み。
木材が足りないので屋根部分の改良は後回し。
まずやったのはタイヤを太くし、径を小さくする作業。若干最高速が落ちるかもしれないが道路条件を考えると問題無い。というか最高速は少し落としたい。シモンさんの運転は時に命の危険を感じるから。
これは夕食前に完了した。シモンさんと専用魔法杖があれば簡単。工作魔法様々だ。
タイヤの次は水タンクの移設と座席位置の変更、つまり今回のメインだ。この改良で座席の高さは運転席で40指、最後席で5指低くなる。
ボンネットも前方視界を妨げない程度にボリュームを出し、水タンクを移設。
この為にはあちこちを改造する必要がある。まずは必要な部品作り、なんて作業の途中で夕食タイムになった。
「なら多少お土産を買っても大丈夫ですね」
「あまり重い物は勘弁してください」
アキナ先輩は時に思い切りが良すぎる。だから一応釘は刺しておかないとまずい。
「あの大型魔法杖を置く場所が出来ただけでもいいですわ。座席の下とか横とかに無理矢理置いていましたし」
確かに魔法アンテナは折りたたんでもそこそこ大きい。あれを屋根上に積めるだけでも大分ましになるだろう。
ただ屋根を改造するためには木材が必要。在庫が無いので入手してくる必要がある。
「明日流木とかを集めて材料にする予定なんだ。手頃なのがあったら車の横に置いてくれると嬉しいな」
「なら明日、朝の訓練の時に探しておいてやるよ」
そういえば今朝、シンハ君とヨーコ先輩が早起きして出かけていたようだ。早速合同訓練をしている訳か。
「頼むね。一度分解して再構成するからしっかりしていれば形は問わないから」
シモンさんの台詞にヨーコ先輩まで頷いた。
「任せておけ、シンハと頃合いのを探してきてやる」
こんなのファンクラブに見られたら抹殺処分だよなと思う。既にシンハ君は除名処分を受けていると聞いているけれど。
「それにしてもミタキ、今日は結構食べているよね」
ミド・リーに言われて気づいた。
「そういえばそうかな」
「いつもは全部2口ずつとパン1切れ程度じゃない」
確かに今食べているパンは3切れめだ。
ウニタラモが背徳的に美味しかっただけではない。牡蠣やあさりや松葉貝が入ったグラタンも凶悪なまでのおいしさ。
だからついつい食が進んでしまったのだ。
「やっぱり人に作って貰った料理はいいよな。自分が作ったのと違って」
俺ならウニをタラモ風にしたり、牡蠣をグラタンに投入したりは出来なかった。
何か勿体ないような気がして。日本人的な価値判断から。
「なら私も作ろうかな」
いや、それはやめて欲しい。というか絶対阻止すべきだ。
「全力で断る」
「なんでー!」
それ以上言わないのが友人としての優しさ。
「あ、そろそろ夕陽が沈むよ」
シモンさんが話題を変えてくれた。
外の方を見てみる。確かに夕陽が沈もうとしていた。
「やっぱり綺麗ですね、これ」
確かにその通りだな。俺もそう感じる。
◇◇◇
俺は腹一杯になると眠くなる体質だ。眠くなったで夕食後の自動車改造作業は中止。どうせ木材が足りないからあまり進まないし。
こうやって早寝すると必ず翌日とんでもない時間に目が覚めるのが毎回のパターンだったりする。
ただ今朝は何とか朝と呼ばれる時間のようだ。鳥がさえずる声が聞こえているし空が明るくなりつつある。そして鳥以外の声も聞こえてくる……
「よし、今日は負けない」
「その辺は女子と男子の体力差があるからな。ある程度はしょうがないと思うぞ」
ヨーコ先輩とシンハ君の声だ。こんな朝早い時間からトレーニングをやっているのか。
その後はしばらくサッと地を蹴る音と息づかいだけが聞こえる。反復横跳びにしては音が不規則だ。
何をやっているのだろう。つい耳をすませてしまう。
しばらくすると足音が止まって荒い呼吸音だけになった。
「やはりシンハの方がまだ強いな」
「この訓練は剣技を使えないからさ、ヨーコ先輩が不利なだけだろ」
どうやら模擬戦かそれに類する事をしていたようだ。
「いや、これで負けるなら剣技なんてただのごまかしだ。でも楽しいな」
ん!? 何が楽しいのだろう>
「何故?」
シンハ君も今の台詞に戸惑っているようだ。
「こうやって同年代と本気で訓練していると、何か青春って感じがする」
このトレーニングが青春だって!? 何だそりゃ。そう思いかけて俺は気付いた。
そういえば以前ヨーコ先輩は言っていた。昔から特別扱いされてばっかりだったと。話し掛けてくれるのはナカさん位で、模擬戦を受けてくれるのはシンハ位だと。
なるほど、確かにヨーコ先輩なりに今は青春をしているのだろう、きっと。これで以前教室へ押しかけられたような俺への被害は無くなるだろう。アキナ先輩も卒業したことだし。
しかしそれはそれで何かちょっと言葉に出来ない気持ちも無いかといえば……
とりあえずシンハ君を除名にしたファンクラブ諸氏の気持ちに、ちょっとだけ同調したくなる。そんな朝だ。
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