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第25章 加速する情勢
第214話 まさかここで登場とは
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翌朝はゆっくり起きて朝食。2日続けてラーメンも何なので本日はピザ。
肉の後にピザなんてカロリー総攻撃という感じだが気にしてはいけない。
なお本日の朝食はタカス君が作ってくれた。
「今日は昨日の獲物の処理と買い物、終わったらソーセージ作りだよな」
食べながら言ったシンハ君の台詞にアキナ先輩がため息をつく。
「それですが悪いお知らせがありますの」
悪いお知らせか。何だろう、それは。
「あるやんごとなき方から昨夜連絡が入りました。見せたいものがあるのでウージナの研究室で待っていてくれないかという事です。なおオマーチの皆さんも一緒にお願いしますとの事です」
そんな事を言ってくるやんごとなき方なんて一人しかいない。
なお表情を見るにアキナ先輩、ユキ先輩、ヨーコ先輩、それにオマーチのタカモ先輩は知っていた模様だ。
「それですので、とりあえず肉を処理したらすぐウージナへ移動します。もう一度こちらへ戻ってくる予定なので荷物は最小限で大丈夫です」
距離感覚がもう完全におかしくなっている。普通ならここからウージナは日帰りどころか1日かけても行ける距離じゃない。
でも殿下はこっちが移動魔法を使う事を知っている。結果こういった無茶な連絡が入るわけだ。
シャクさんやターカノさんもたまったものじゃないよなと思う。
そんな訳で朝食後はまず全員で昨日の獲物を処理する。
鹿魔獣《チデジカ》や猿魔獣《ヒバゴン》はフールイ先輩以下4人で処理。猪魔獣《オツコト》は革手袋を装着して残り全員で処理だ。
処理と言っても猪魔獣《オツコト》はお湯をかけて毛をむしるだけ。だからある程度誰でも出来る。そんな訳でオマーチ勢含めてよってたかって処理だ。
本当は肉を各部位にまでわけて、更に合宿用にとっておくところ。しかし今日は時間が無い。だから皮を剥ぐ処理が終了した時点で受付に持ち込んで換金する。
「今日はソーセージのつもりだったんだけれどな」
「猪魔獣《オツコト》はまだまだいるから大丈夫ですよ」
「それにしても殿下、何の用かしらね」
もう誰もが殿下だろうとわかっている。何せ今までが今までだったから。
着替えて清拭魔法をかけた後、フールイ先輩の強力魔法アンテナで全員移動。いつもの研究室に戻ってきた。
「本当は上のお風呂でさっぱりしたい処ですね」
「あ、それいいかも。帰ってきたらそうしましょう」
おいおい誰だ余分な事を言ったのは。でもまあそれはいいとしてだ。
「ターカノさんに連絡を入れました。半時間程度待ってくださいとのことです」
何だろう。本日は移動魔法で押しかけてくるんじゃないのか。そう思ったところでナカさんの声が再び響く。
「追伸が入りました。蒸気自動車を動かせるようにしておいて欲しいとの事です」
何だろう。でもとりあえず言われたとおりにしておく。
幸い蒸気自動車は度重なる改良のおかげで始動が楽になっている。冬でも石炭を入れて生活魔法で火をつけてやれば割と簡単に起動する。石炭も水も満タンにしてあるし大丈夫だ。
「でもこれに全員が乗ったらもう誰も乗れないですよね」
「14人が限界だよな」
意図がよくわからない。
そして更に。
「また連絡が入りました。蒸気自動車に全員で乗り港の海軍基地に向かってくださいだそうです」
海軍基地! そこまで行くと思い当たる節もある。
しかし同時に嫌な予感というか不安。まさか昨日の会話、聞かれていたのではないだろうな。
確かに空間魔法を使えばこちらに気付かれず盗聴も可能だろう。でも偶然だと思いたい。
14人を乗せた蒸気自動車は出発する。
「海軍基地の門のところでいいんだよね」
「それでいいそうです。そこで待っているそうです」
もし俺の予想が当たっているのなら、自動車で行くことにはおそらく意味がある。
港までの道のりは1離未満。歩行者や馬車に気を使いながらでも6半時間かからない。
そして到着した海軍基地の門の前。そこにはどことなく見覚えのある、でも違ったものが待っていた。
間違いなく蒸気自動車だ。形も俺たちの乗っているものと良く似ている。色が濃緑色だが前席の後ろ部分まではほぼ全く同じ形だ。
ただ2列目以降の座席や屋根は無く、平たい荷台になっている。つまり緑色にしたトラックバージョンだ。
鑑定魔法で見てみると他にも微妙に違いはある。部品が全てユニット構造になって交換が容易になっているとか。ピストンが低圧用無しの2気筒仕様だとか。ブレーキがただの油圧ディスクブレーキだとか。
全体的に簡素になっている感じだ。
その蒸気自動車の運転席にはジゴゼンさん、荷台にターカノさんとシャクさん。助手席に当然のような顔をして座っているのは勿論ホン・ド殿下だ。
「すまないね。遠くに行っているのにまだ戻ってきてもらって」
「いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」
2列目にいるアキナ先輩の台詞にあわせてこっちも頭を下げる。
「実は色々出来たから元の制作者に敬意を表してお呼びしたんだ。まあちょっと自慢しようかなという意図もないわけじゃないけれどね」
おいおい殿下本音が漏れているぞ。
「それじゃこの車の後ろをそのままついてきてくれ。話は通っているから阻止されたり問題になることは無い」
その台詞が終わるとともに濃緑色のトラックが動き始める。
肉の後にピザなんてカロリー総攻撃という感じだが気にしてはいけない。
なお本日の朝食はタカス君が作ってくれた。
「今日は昨日の獲物の処理と買い物、終わったらソーセージ作りだよな」
食べながら言ったシンハ君の台詞にアキナ先輩がため息をつく。
「それですが悪いお知らせがありますの」
悪いお知らせか。何だろう、それは。
「あるやんごとなき方から昨夜連絡が入りました。見せたいものがあるのでウージナの研究室で待っていてくれないかという事です。なおオマーチの皆さんも一緒にお願いしますとの事です」
そんな事を言ってくるやんごとなき方なんて一人しかいない。
なお表情を見るにアキナ先輩、ユキ先輩、ヨーコ先輩、それにオマーチのタカモ先輩は知っていた模様だ。
「それですので、とりあえず肉を処理したらすぐウージナへ移動します。もう一度こちらへ戻ってくる予定なので荷物は最小限で大丈夫です」
距離感覚がもう完全におかしくなっている。普通ならここからウージナは日帰りどころか1日かけても行ける距離じゃない。
でも殿下はこっちが移動魔法を使う事を知っている。結果こういった無茶な連絡が入るわけだ。
シャクさんやターカノさんもたまったものじゃないよなと思う。
そんな訳で朝食後はまず全員で昨日の獲物を処理する。
鹿魔獣《チデジカ》や猿魔獣《ヒバゴン》はフールイ先輩以下4人で処理。猪魔獣《オツコト》は革手袋を装着して残り全員で処理だ。
処理と言っても猪魔獣《オツコト》はお湯をかけて毛をむしるだけ。だからある程度誰でも出来る。そんな訳でオマーチ勢含めてよってたかって処理だ。
本当は肉を各部位にまでわけて、更に合宿用にとっておくところ。しかし今日は時間が無い。だから皮を剥ぐ処理が終了した時点で受付に持ち込んで換金する。
「今日はソーセージのつもりだったんだけれどな」
「猪魔獣《オツコト》はまだまだいるから大丈夫ですよ」
「それにしても殿下、何の用かしらね」
もう誰もが殿下だろうとわかっている。何せ今までが今までだったから。
着替えて清拭魔法をかけた後、フールイ先輩の強力魔法アンテナで全員移動。いつもの研究室に戻ってきた。
「本当は上のお風呂でさっぱりしたい処ですね」
「あ、それいいかも。帰ってきたらそうしましょう」
おいおい誰だ余分な事を言ったのは。でもまあそれはいいとしてだ。
「ターカノさんに連絡を入れました。半時間程度待ってくださいとのことです」
何だろう。本日は移動魔法で押しかけてくるんじゃないのか。そう思ったところでナカさんの声が再び響く。
「追伸が入りました。蒸気自動車を動かせるようにしておいて欲しいとの事です」
何だろう。でもとりあえず言われたとおりにしておく。
幸い蒸気自動車は度重なる改良のおかげで始動が楽になっている。冬でも石炭を入れて生活魔法で火をつけてやれば割と簡単に起動する。石炭も水も満タンにしてあるし大丈夫だ。
「でもこれに全員が乗ったらもう誰も乗れないですよね」
「14人が限界だよな」
意図がよくわからない。
そして更に。
「また連絡が入りました。蒸気自動車に全員で乗り港の海軍基地に向かってくださいだそうです」
海軍基地! そこまで行くと思い当たる節もある。
しかし同時に嫌な予感というか不安。まさか昨日の会話、聞かれていたのではないだろうな。
確かに空間魔法を使えばこちらに気付かれず盗聴も可能だろう。でも偶然だと思いたい。
14人を乗せた蒸気自動車は出発する。
「海軍基地の門のところでいいんだよね」
「それでいいそうです。そこで待っているそうです」
もし俺の予想が当たっているのなら、自動車で行くことにはおそらく意味がある。
港までの道のりは1離未満。歩行者や馬車に気を使いながらでも6半時間かからない。
そして到着した海軍基地の門の前。そこにはどことなく見覚えのある、でも違ったものが待っていた。
間違いなく蒸気自動車だ。形も俺たちの乗っているものと良く似ている。色が濃緑色だが前席の後ろ部分まではほぼ全く同じ形だ。
ただ2列目以降の座席や屋根は無く、平たい荷台になっている。つまり緑色にしたトラックバージョンだ。
鑑定魔法で見てみると他にも微妙に違いはある。部品が全てユニット構造になって交換が容易になっているとか。ピストンが低圧用無しの2気筒仕様だとか。ブレーキがただの油圧ディスクブレーキだとか。
全体的に簡素になっている感じだ。
その蒸気自動車の運転席にはジゴゼンさん、荷台にターカノさんとシャクさん。助手席に当然のような顔をして座っているのは勿論ホン・ド殿下だ。
「すまないね。遠くに行っているのにまだ戻ってきてもらって」
「いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」
2列目にいるアキナ先輩の台詞にあわせてこっちも頭を下げる。
「実は色々出来たから元の制作者に敬意を表してお呼びしたんだ。まあちょっと自慢しようかなという意図もないわけじゃないけれどね」
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「それじゃこの車の後ろをそのままついてきてくれ。話は通っているから阻止されたり問題になることは無い」
その台詞が終わるとともに濃緑色のトラックが動き始める。
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