病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

文字の大きさ
223 / 266
第25章 加速する情勢

第214話 まさかここで登場とは

しおりを挟む
 翌朝はゆっくり起きて朝食。2日続けてラーメンも何なので本日はピザ。
 肉の後にピザなんてカロリー総攻撃という感じだが気にしてはいけない。

 なお本日の朝食はタカス君が作ってくれた。

「今日は昨日の獲物の処理と買い物、終わったらソーセージ作りだよな」

 食べながら言ったシンハ君の台詞にアキナ先輩がため息をつく。

「それですが悪いお知らせがありますの」

 悪いお知らせか。何だろう、それは。

「あるやんごとなき方から昨夜連絡が入りました。見せたいものがあるのでウージナの研究室で待っていてくれないかという事です。なおオマーチの皆さんも一緒にお願いしますとの事です」

 そんな事を言ってくるやんごとなき方なんて一人しかいない。
 なお表情を見るにアキナ先輩、ユキ先輩、ヨーコ先輩、それにオマーチのタカモ先輩は知っていた模様だ。

「それですので、とりあえず肉を処理したらすぐウージナへ移動します。もう一度こちらへ戻ってくる予定なので荷物は最小限で大丈夫です」

 距離感覚がもう完全におかしくなっている。普通ならここからウージナは日帰りどころか1日かけても行ける距離じゃない。

 でも殿下はこっちが移動魔法を使う事を知っている。結果こういった無茶な連絡が入るわけだ。
 シャクさんやターカノさんもたまったものじゃないよなと思う。

 そんな訳で朝食後はまず全員で昨日の獲物を処理する。
 鹿魔獣《チデジカ》や猿魔獣《ヒバゴン》はフールイ先輩以下4人で処理。猪魔獣《オツコト》は革手袋を装着して残り全員で処理だ。

 処理と言っても猪魔獣《オツコト》はお湯をかけて毛をむしるだけ。だからある程度誰でも出来る。そんな訳でオマーチ勢含めてよってたかって処理だ。

 本当は肉を各部位にまでわけて、更に合宿用にとっておくところ。しかし今日は時間が無い。だから皮を剥ぐ処理が終了した時点で受付に持ち込んで換金する。

「今日はソーセージのつもりだったんだけれどな」

「猪魔獣《オツコト》はまだまだいるから大丈夫ですよ」

「それにしても殿下、何の用かしらね」

 もう誰もが殿下だろうとわかっている。何せ今までが今までだったから。
 着替えて清拭魔法をかけた後、フールイ先輩の強力魔法アンテナで全員移動。いつもの研究室に戻ってきた。

「本当は上のお風呂でさっぱりしたい処ですね」

「あ、それいいかも。帰ってきたらそうしましょう」

 おいおい誰だ余分な事を言ったのは。でもまあそれはいいとしてだ。

「ターカノさんに連絡を入れました。半時間程度待ってくださいとのことです」

 何だろう。本日は移動魔法で押しかけてくるんじゃないのか。そう思ったところでナカさんの声が再び響く。

「追伸が入りました。蒸気自動車を動かせるようにしておいて欲しいとの事です」

 何だろう。でもとりあえず言われたとおりにしておく。

 幸い蒸気自動車は度重なる改良のおかげで始動が楽になっている。冬でも石炭を入れて生活魔法で火をつけてやれば割と簡単に起動する。石炭も水も満タンにしてあるし大丈夫だ。

「でもこれに全員が乗ったらもう誰も乗れないですよね」

「14人が限界だよな」

 意図がよくわからない。

 そして更に。

「また連絡が入りました。蒸気自動車に全員で乗り港の海軍基地に向かってくださいだそうです」

 海軍基地! そこまで行くと思い当たる節もある。

 しかし同時に嫌な予感というか不安。まさか昨日の会話、聞かれていたのではないだろうな。

 確かに空間魔法を使えばこちらに気付かれず盗聴も可能だろう。でも偶然だと思いたい。

 14人を乗せた蒸気自動車は出発する。

「海軍基地の門のところでいいんだよね」

「それでいいそうです。そこで待っているそうです」

 もし俺の予想が当たっているのなら、自動車で行くことにはおそらく意味がある。
 港までの道のりは1離2km未満。歩行者や馬車に気を使いながらでも6半時間10分かからない。

 そして到着した海軍基地の門の前。そこにはどことなく見覚えのある、でも違ったものが待っていた。

 間違いなく蒸気自動車だ。形も俺たちの乗っているものと良く似ている。色が濃緑色だが前席の後ろ部分まではほぼ全く同じ形だ。
 ただ2列目以降の座席や屋根は無く、平たい荷台になっている。つまり緑色にしたトラックバージョンだ。

 鑑定魔法で見てみると他にも微妙に違いはある。部品が全てユニット構造になって交換が容易になっているとか。ピストンが低圧用無しの2気筒仕様だとか。ブレーキがただの油圧ディスクブレーキだとか。
 全体的に簡素になっている感じだ。


 その蒸気自動車の運転席にはジゴゼンさん、荷台にターカノさんとシャクさん。助手席に当然のような顔をして座っているのは勿論ホン・ド殿下だ。


「すまないね。遠くに行っているのにまだ戻ってきてもらって」

「いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」

 2列目にいるアキナ先輩の台詞にあわせてこっちも頭を下げる。

「実は色々出来たから元の制作者に敬意を表してお呼びしたんだ。まあちょっと自慢しようかなという意図もないわけじゃないけれどね」

 おいおい殿下本音が漏れているぞ。

「それじゃこの車の後ろをそのままついてきてくれ。話は通っているから阻止されたり問題になることは無い」

 その台詞が終わるとともに濃緑色のトラックが動き始める。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...