33 / 202
第7章 ついに開始だ学園祭
33 別腹の定義
しおりを挟む
こっちの学祭でも大学の学祭でも一番多い出し物は飲食店だ。
しかも出前もしてくれるところが結構ある。
中でも毎年評判がいい店というのはある訳で、有名なのは大学歴史文化研究会のやっているパンとサンドイッチとケーキの店だ。
ここは出前を注文すると、ステレオタイプな魔女コスプレをした店員が箒に乗って空飛んで配達してくれる。
なかなかに魔法特区らしい店だが、味も確かだ。
なお売り物の各種パンは大学の部室で焼いているらしい。
サンドイッチの具材もそれなりにいい物を使っているらしく、ちょっと高いが美味しいと評判だ。
学祭期間に限らず常設して欲しいとの希望も多いようだが、結構手間も時間もかかるらしい。
だから今のところ学祭期間のみの営業。
例年予約だけでほぼ営業終了してしまうので、評判は高いが食べたという人は多くない。
それを今回は大学に姉がいるという鈴懸台先輩のつてで大量に予約していた。
「毎度あり~」
巨大な袋2つに詰まったパンを置き、魔女が学生会室の窓から外へと飛んでいく。
ちなみに飛行中に下からスカートの中が見えるのではという疑問はスパッツで解決しているようだ。
この心遣いを学生会幹部共も見習って欲しい。
さて。俺達は会議用の折りたたみ机2つを空きスペースに設置。
パイプ椅子6つで取り囲むように座る。
そして広げる各種のパン。
この島は足りないものが多い。
例えば本土ではあたりまえのようにある菓子パン類。
同じくケーキ類。
なにせ実態は辺境の孤島で、研究者と学生がほとんどの魔法特区。
こういった潤いのある贅沢品はほとんどないのだ。
しかし今は、学祭期間中だけとは言え営業している店がある。
そして1人1,000円の予算で買いまくった成果がテーブル上に並んでいる。
「いただきます」
全員で唱和した直後から戦争は始まった。
由香里姉が残像すら残さないような腕の動きで最初に取ったのはクリームパン。
半分をちぎって口に入れた所で、残り半分を鈴懸台先輩に奪われる。
奪った鈴懸台先輩はそのままクリームパンを口の中にいれて味わい、
「デカルチャー!」
と訳わからない感嘆詞を叫んだ。
その間に香緒里ちゃんはメロンパンとあんぱんとスコーンを少しずつちぎって取ってもぐもぐ。
月見野先輩はブレッツェルをうっとりした目をして頬ぼっていて、その横でジェニーはフランスパンのサンドイッチを豪快にがしがし食べている。
俺は黒パンのサンドイッチを食べながらのんびりと観察。
平和で幸せな午後のひととき、という感じだ。
最後にチーズケーキを食べていた時、学生会室のドアがノックされた。
「はい」
「お届け物です」
聞き覚えのある声がする。
香緒里ちゃんがドアを開けると、創造製作研究会の玉川先輩が現れた。
「どうしたんですか先輩」
「田奈先生からの差し入れ、だと」
そう言って俺に向かって出したのは、皿に入ってラップされた少し透明がかった小豆色の塊が2つ。
「特製水羊羹。生物なのでお早めにお召し上がり下さいとのことだ。じゃあな」
どうもこの部屋は居心地が悪いらしく、玉川先輩は逃げるように去っていった。
そして俺の前に残された小豆色の塊。
「どうします。今食べたばかりですし、冷蔵庫に入れておきますか」
便宜上受け取ってしまった俺は皆に尋ねる。
「チイチイ、甘いよ長津田君。甘いものは」
「別腹よ!」
鈴懸台先輩と由香里姉の声がハモった。
「でもチーズケーキも食べましたよね、今」
疑問に思う俺に月見野先輩が諭すように言う。
「長津田君。普通の食べ物と甘いものは別腹ですし、洋のデザートと和のデザートも別腹なのですのよ。ですからそれはこのテーブルの中央に置きなさいな」
俺にその理論は理解できない。
でも言いたいことはわかった。
俺はテーブルの中央、さっきまでチーズケーキがあった場所に皿を置く。
ラップを取って俺の手が皿を離れた瞬間、由香里姉が右手に氷の刃を出現させ、目にも留まらぬ早業で2本の水羊羹を6等分。
そしてそのまま一切れを自分の皿に運ぶ。
「いい仕事をしているわ。やっぱり暑い午後には冷たい和のスイーツがよく合うわ」
確かにここは南の島。
11月近い今でも気温は25℃ある。
でもチーズケーキのあとに水羊羹、それもでっかい1本を3等分した塊を食べるだろうか、普通は。
しかし既に俺以外の皆は自分の皿に水羊羹を運んでいる。
下手をすると取られてしまいそうなので、俺も慌てて自分の皿に水羊羹を運んだ。
「うん、いける。久しぶりに和菓子を食べたけれどやっぱりいいね」
「さっきあんみつを食べたけれど、これはこれで美味しいです」
どうも俺以外は和菓子と洋菓子別腹派のようだ。
「確かにこれは良いものですわね。田奈先生も空中スクーターは別として、人間大砲くらいは許してあげてもいいかもしれませんわ」
と月見野先輩。
「えっ、でも田奈先生肋骨にひびが入ったんじゃ」
「あれは脅しですわ。そうでもしないと無茶されるでしょ」
月見野先輩はそう言ってウィンクする。
やっぱり月見野先輩、怖いな。
そう思いつつ俺は他の皆様方を見習い水羊羹に手をつける。
上品で自然なあんこの甘みとつるりとした舌触り。
ついつい抵抗なく食べきってしまった。
うん、これは確かに別腹。
俺も納得せざるを得ないようだ。
しかも出前もしてくれるところが結構ある。
中でも毎年評判がいい店というのはある訳で、有名なのは大学歴史文化研究会のやっているパンとサンドイッチとケーキの店だ。
ここは出前を注文すると、ステレオタイプな魔女コスプレをした店員が箒に乗って空飛んで配達してくれる。
なかなかに魔法特区らしい店だが、味も確かだ。
なお売り物の各種パンは大学の部室で焼いているらしい。
サンドイッチの具材もそれなりにいい物を使っているらしく、ちょっと高いが美味しいと評判だ。
学祭期間に限らず常設して欲しいとの希望も多いようだが、結構手間も時間もかかるらしい。
だから今のところ学祭期間のみの営業。
例年予約だけでほぼ営業終了してしまうので、評判は高いが食べたという人は多くない。
それを今回は大学に姉がいるという鈴懸台先輩のつてで大量に予約していた。
「毎度あり~」
巨大な袋2つに詰まったパンを置き、魔女が学生会室の窓から外へと飛んでいく。
ちなみに飛行中に下からスカートの中が見えるのではという疑問はスパッツで解決しているようだ。
この心遣いを学生会幹部共も見習って欲しい。
さて。俺達は会議用の折りたたみ机2つを空きスペースに設置。
パイプ椅子6つで取り囲むように座る。
そして広げる各種のパン。
この島は足りないものが多い。
例えば本土ではあたりまえのようにある菓子パン類。
同じくケーキ類。
なにせ実態は辺境の孤島で、研究者と学生がほとんどの魔法特区。
こういった潤いのある贅沢品はほとんどないのだ。
しかし今は、学祭期間中だけとは言え営業している店がある。
そして1人1,000円の予算で買いまくった成果がテーブル上に並んでいる。
「いただきます」
全員で唱和した直後から戦争は始まった。
由香里姉が残像すら残さないような腕の動きで最初に取ったのはクリームパン。
半分をちぎって口に入れた所で、残り半分を鈴懸台先輩に奪われる。
奪った鈴懸台先輩はそのままクリームパンを口の中にいれて味わい、
「デカルチャー!」
と訳わからない感嘆詞を叫んだ。
その間に香緒里ちゃんはメロンパンとあんぱんとスコーンを少しずつちぎって取ってもぐもぐ。
月見野先輩はブレッツェルをうっとりした目をして頬ぼっていて、その横でジェニーはフランスパンのサンドイッチを豪快にがしがし食べている。
俺は黒パンのサンドイッチを食べながらのんびりと観察。
平和で幸せな午後のひととき、という感じだ。
最後にチーズケーキを食べていた時、学生会室のドアがノックされた。
「はい」
「お届け物です」
聞き覚えのある声がする。
香緒里ちゃんがドアを開けると、創造製作研究会の玉川先輩が現れた。
「どうしたんですか先輩」
「田奈先生からの差し入れ、だと」
そう言って俺に向かって出したのは、皿に入ってラップされた少し透明がかった小豆色の塊が2つ。
「特製水羊羹。生物なのでお早めにお召し上がり下さいとのことだ。じゃあな」
どうもこの部屋は居心地が悪いらしく、玉川先輩は逃げるように去っていった。
そして俺の前に残された小豆色の塊。
「どうします。今食べたばかりですし、冷蔵庫に入れておきますか」
便宜上受け取ってしまった俺は皆に尋ねる。
「チイチイ、甘いよ長津田君。甘いものは」
「別腹よ!」
鈴懸台先輩と由香里姉の声がハモった。
「でもチーズケーキも食べましたよね、今」
疑問に思う俺に月見野先輩が諭すように言う。
「長津田君。普通の食べ物と甘いものは別腹ですし、洋のデザートと和のデザートも別腹なのですのよ。ですからそれはこのテーブルの中央に置きなさいな」
俺にその理論は理解できない。
でも言いたいことはわかった。
俺はテーブルの中央、さっきまでチーズケーキがあった場所に皿を置く。
ラップを取って俺の手が皿を離れた瞬間、由香里姉が右手に氷の刃を出現させ、目にも留まらぬ早業で2本の水羊羹を6等分。
そしてそのまま一切れを自分の皿に運ぶ。
「いい仕事をしているわ。やっぱり暑い午後には冷たい和のスイーツがよく合うわ」
確かにここは南の島。
11月近い今でも気温は25℃ある。
でもチーズケーキのあとに水羊羹、それもでっかい1本を3等分した塊を食べるだろうか、普通は。
しかし既に俺以外の皆は自分の皿に水羊羹を運んでいる。
下手をすると取られてしまいそうなので、俺も慌てて自分の皿に水羊羹を運んだ。
「うん、いける。久しぶりに和菓子を食べたけれどやっぱりいいね」
「さっきあんみつを食べたけれど、これはこれで美味しいです」
どうも俺以外は和菓子と洋菓子別腹派のようだ。
「確かにこれは良いものですわね。田奈先生も空中スクーターは別として、人間大砲くらいは許してあげてもいいかもしれませんわ」
と月見野先輩。
「えっ、でも田奈先生肋骨にひびが入ったんじゃ」
「あれは脅しですわ。そうでもしないと無茶されるでしょ」
月見野先輩はそう言ってウィンクする。
やっぱり月見野先輩、怖いな。
そう思いつつ俺は他の皆様方を見習い水羊羹に手をつける。
上品で自然なあんこの甘みとつるりとした舌触り。
ついつい抵抗なく食べきってしまった。
うん、これは確かに別腹。
俺も納得せざるを得ないようだ。
57
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる