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第8章 秋の夜の夢
34 今日も露天風呂の日
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学園祭も半ばすぎると惰性になる。
土日はまた盛り上がるのだが今日は水曜日、一番客が少なく盛り下がる日だ。
「まあ今日は事件も事故もなくて良かったです」
「でも何もないと退屈じゃない」
創造製作研究会特製どら焼きを頬張りながら由香里姉が言う。
時刻は午後4時。南の離島であるここ聟島ではまだ日は長い。
しかしそろそろ、俺にとっては危険な時間だ。
「露天風呂はNGですよ。この時期島の色んな所に観光客が入り込んでいるんで」
だから先に釘を刺しておく。
「ついでに言うと工房で風呂も駄目ですからね。シャッター閉めておいても今は人通りありますし、間違って管理担当の先生に見られたら洒落になりません」
更に強く釘を打っておく。
「じゃあ、この島以外なら大丈夫ね」
思ってもみない方向から反撃された。
「学園祭期間中に島を離れるのはどうかと思いますが」
「10分以内で学校に辿り着けるなら問題はないですわ」
月見野先輩も露天風呂賛成派に回った。
「この前海水浴をした島、あそこなら急げば10分で学校に着けるよな」
鈴懸台先輩も敵に回り、俺に勝ち目はなくなった。
◇◇◇
午後6時過ぎ、すっかり暗くなった中をキャンピングカーは走り始める。
港はこの時期混んでいるので直接空中へ。
既に回りは暗いが携帯電話のGPSとヘッドライトを駆使して飛んでいく。
幸い今日は風がそれほど強くない。
学校から10分もしないで目的地の北之島へ到着した。
崖にぶつからないよう慎重に高度を下げ、この前の浜辺に到着する。
ジェニーが魔法をかけたようだ。
島の近辺を上空から見た図が脳裏に描かれる。
人の印はこの浜以外には無い。
「こういう時ってジェニーの魔法は本当に便利ね。安心できる」
「そう言ってもらえると嬉しいす」
そう言いつつ風呂の準備。
PVCのプールを組み立てポンプをプールと海とに放り込む。
ポンプ部分もかなり強化したので見る間にお湯が溜まっていく。
プール部分も加工済みなので放っておけばかけ流しの露天風呂の完成だ。
既に由香里姉や鈴懸台先輩等は服を脱ぎだしている。
今日はもう暗いしいつもの事だから俺も大丈夫だ。
まだ半分くらいしかお湯が溜まっていない状態。
でも由香里姉と鈴懸台先輩は風呂に入る。
待ちきれなかった模様だ。
2人は全身を延ばして大の字になってお湯に浮いている状態。
風呂が充分大きいから2人なら大の字になっても何とかぶつからずに入れる。
まあ邪魔になったら月見野先輩が強制手段に出ると思うけれど。
その月見野先輩も服を脱ぎだした。
そろそろ俺も諦めよう。服を脱ぎ、お湯に浸かる。
◇◇◇
今日ベッドを共有するのは香緒里ちゃん。
これで3回めになる。
香緒里ちゃんと同じベッドの時は手を繋いで、そのまま会話せずに2人で寝る。
最初、香緒里ちゃんは話するのも恥ずかしそうな感じでただ俺の手を握ってきた。
だから俺もそれにあわせた。
今日も2人で無言で手を繋ぐ。
何故か香緒里ちゃんと手をつなぐと安心してかすぐに眠れる。
そして手を繋いだまま2人で同じ夢を見る。
小さい香緒里ちゃんと小さい俺が一緒に遊んでいる夢が多かったような気がする。
はっきりしないのは夢だから。
覚めるとあっという間に記憶から逃げていく夢だから。
でも夢の幸せな感触だけはいつまでも覚えている。
そして今日も夢の中。
夏草が小さい俺達の胸より高く生い茂ったあの公園。
白いサマードレスを着た小さい香緒里ちゃんがとことこと俺の前にやってくる。
そして俺の前で立ち止まって、頭を下げた。
「今日は修兄とお話をしたいと思います。だから、ちょっと起きて下さい」
え、あれ。
「今日はちょっと勇気を出してお話したいんです。お願いします」
ふと気づく。
見慣れた天井と壁。誰かと手を繋いでいる。
そう、ここはいつものキャンピングカーのベッドの中。
手を繋いでいるのは香緒里ちゃんだ。
隣に寝ていた香緒里ちゃんが握っていた俺の手を離し、起き上がる。
そして立ち上がってキャンピングカーのドアを開けて、外へ。
どうしよう。そう思ったのは一瞬だけだった。
俺は起き上がり、そして香緒里ちゃんの後を追う。
星空が妙に明るくて幻想的な夜。
脳裏に浮かぶレーダーには俺と香緒里ちゃん以外動いている人間はいない。
俺はキャンピングカーのすぐ先にいる香緒里ちゃんに近づく。
「ありがとうございます。来てくれたんですね」
香緒里ちゃんが振り返らず向こうを見たままそう言った。
「お話って何だ?」
「いろいろ、です。たとえば修兄が私のことをどう思っているのかな、とか」
香緒里ちゃんが俺の方に向き直る。
「好きなのか嫌いなのか、それとも特になんとも思っていないのか」
「好きだよ」
その言葉は用意していた。
あくまで軽い口調で言う事も含めて。
「ならどんなふうに好きですか。友達ですか恋人ですか後輩ですか」
「一番近いのは家族として、かな。ある意味親よりも近いかも。本当の姉妹はいないけどさ」
俺が用意していた台詞はここまで。
ここからは真剣勝負。
「……ちょっと冷えてきましたね」
冷えると言うほどではないが、風がだいぶ涼しくなってきたのは確かだ。
「身体が冷えそうなので、御風呂でも入ってお話しませんか」
土日はまた盛り上がるのだが今日は水曜日、一番客が少なく盛り下がる日だ。
「まあ今日は事件も事故もなくて良かったです」
「でも何もないと退屈じゃない」
創造製作研究会特製どら焼きを頬張りながら由香里姉が言う。
時刻は午後4時。南の離島であるここ聟島ではまだ日は長い。
しかしそろそろ、俺にとっては危険な時間だ。
「露天風呂はNGですよ。この時期島の色んな所に観光客が入り込んでいるんで」
だから先に釘を刺しておく。
「ついでに言うと工房で風呂も駄目ですからね。シャッター閉めておいても今は人通りありますし、間違って管理担当の先生に見られたら洒落になりません」
更に強く釘を打っておく。
「じゃあ、この島以外なら大丈夫ね」
思ってもみない方向から反撃された。
「学園祭期間中に島を離れるのはどうかと思いますが」
「10分以内で学校に辿り着けるなら問題はないですわ」
月見野先輩も露天風呂賛成派に回った。
「この前海水浴をした島、あそこなら急げば10分で学校に着けるよな」
鈴懸台先輩も敵に回り、俺に勝ち目はなくなった。
◇◇◇
午後6時過ぎ、すっかり暗くなった中をキャンピングカーは走り始める。
港はこの時期混んでいるので直接空中へ。
既に回りは暗いが携帯電話のGPSとヘッドライトを駆使して飛んでいく。
幸い今日は風がそれほど強くない。
学校から10分もしないで目的地の北之島へ到着した。
崖にぶつからないよう慎重に高度を下げ、この前の浜辺に到着する。
ジェニーが魔法をかけたようだ。
島の近辺を上空から見た図が脳裏に描かれる。
人の印はこの浜以外には無い。
「こういう時ってジェニーの魔法は本当に便利ね。安心できる」
「そう言ってもらえると嬉しいす」
そう言いつつ風呂の準備。
PVCのプールを組み立てポンプをプールと海とに放り込む。
ポンプ部分もかなり強化したので見る間にお湯が溜まっていく。
プール部分も加工済みなので放っておけばかけ流しの露天風呂の完成だ。
既に由香里姉や鈴懸台先輩等は服を脱ぎだしている。
今日はもう暗いしいつもの事だから俺も大丈夫だ。
まだ半分くらいしかお湯が溜まっていない状態。
でも由香里姉と鈴懸台先輩は風呂に入る。
待ちきれなかった模様だ。
2人は全身を延ばして大の字になってお湯に浮いている状態。
風呂が充分大きいから2人なら大の字になっても何とかぶつからずに入れる。
まあ邪魔になったら月見野先輩が強制手段に出ると思うけれど。
その月見野先輩も服を脱ぎだした。
そろそろ俺も諦めよう。服を脱ぎ、お湯に浸かる。
◇◇◇
今日ベッドを共有するのは香緒里ちゃん。
これで3回めになる。
香緒里ちゃんと同じベッドの時は手を繋いで、そのまま会話せずに2人で寝る。
最初、香緒里ちゃんは話するのも恥ずかしそうな感じでただ俺の手を握ってきた。
だから俺もそれにあわせた。
今日も2人で無言で手を繋ぐ。
何故か香緒里ちゃんと手をつなぐと安心してかすぐに眠れる。
そして手を繋いだまま2人で同じ夢を見る。
小さい香緒里ちゃんと小さい俺が一緒に遊んでいる夢が多かったような気がする。
はっきりしないのは夢だから。
覚めるとあっという間に記憶から逃げていく夢だから。
でも夢の幸せな感触だけはいつまでも覚えている。
そして今日も夢の中。
夏草が小さい俺達の胸より高く生い茂ったあの公園。
白いサマードレスを着た小さい香緒里ちゃんがとことこと俺の前にやってくる。
そして俺の前で立ち止まって、頭を下げた。
「今日は修兄とお話をしたいと思います。だから、ちょっと起きて下さい」
え、あれ。
「今日はちょっと勇気を出してお話したいんです。お願いします」
ふと気づく。
見慣れた天井と壁。誰かと手を繋いでいる。
そう、ここはいつものキャンピングカーのベッドの中。
手を繋いでいるのは香緒里ちゃんだ。
隣に寝ていた香緒里ちゃんが握っていた俺の手を離し、起き上がる。
そして立ち上がってキャンピングカーのドアを開けて、外へ。
どうしよう。そう思ったのは一瞬だけだった。
俺は起き上がり、そして香緒里ちゃんの後を追う。
星空が妙に明るくて幻想的な夜。
脳裏に浮かぶレーダーには俺と香緒里ちゃん以外動いている人間はいない。
俺はキャンピングカーのすぐ先にいる香緒里ちゃんに近づく。
「ありがとうございます。来てくれたんですね」
香緒里ちゃんが振り返らず向こうを見たままそう言った。
「お話って何だ?」
「いろいろ、です。たとえば修兄が私のことをどう思っているのかな、とか」
香緒里ちゃんが俺の方に向き直る。
「好きなのか嫌いなのか、それとも特になんとも思っていないのか」
「好きだよ」
その言葉は用意していた。
あくまで軽い口調で言う事も含めて。
「ならどんなふうに好きですか。友達ですか恋人ですか後輩ですか」
「一番近いのは家族として、かな。ある意味親よりも近いかも。本当の姉妹はいないけどさ」
俺が用意していた台詞はここまで。
ここからは真剣勝負。
「……ちょっと冷えてきましたね」
冷えると言うほどではないが、風がだいぶ涼しくなってきたのは確かだ。
「身体が冷えそうなので、御風呂でも入ってお話しませんか」
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