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第9章 新しい日常
41 だから俺も続けていける
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「あの頃はまだ魔法工学という概念が無くてな。俺は大学の機械工学科で院生しながら何とか魔法と工学を融合できないか悪戦苦闘していた。
そんなある日、担当の助教授の娘が事故で右腕の肘から先を切断してしまって、魔法を使って何とかならないかという話がやってきた。
医学的な方法は魔法を使っても無理だったと聞いてな、とっさになんとかしますと受けあってしまった。
まあ勢いみたいなもんさ。
当時は今ほどいい材料も無かったし方法論も手探りだった。材料も一から開発して、俺としては当時の全能力を使って作ったのがあの義手だ。
当時は魔法の工学における応用を認めさせようという功名心もあったしな。
正直な所完成度はお前の作った義足と比べて遥かに劣る。アナの魔力に依存しているから汎用性もない。
腕力だってあの世代の女子の8割程度の出力しか出ない。
でも思い通りに動かせるという意味では最大限拘った。
本物の腕よりも思い通りに動き細かい作業もこなせるというように。
そうしたら思った以上に喜んでもらえてな。
俺が物作りを本当の意味で好きになったのはあれがきっかけだったかもな。
アナのお陰で変な功名心無しでと言うか、純粋に物を作って人に喜んで貰えるのが楽しいと気づいた気がする。
そのうちアナが同じ大学の学部に留学してきて、アナが院を卒業するまで5年位皆でつるんでいたな。まあそれはともかくとして」
先生は俺の顔を見る。
「私もお前に質問をする。お前はあの義足を何を思って作った。実際に使った感想を綴った手紙を見てどう思った。 実際にジェニーに感想を聞いてどう思った」
俺は思い出す。
あの義足は、俺にとってはただの課題だった。
でも俺なりに色々拘って、出来る限りのものを作ったつもりだ。
そのために香緒里ちゃんに新素材を開発してもらった。
細かいプログラムの動作や構造の微調整、それこそ足の指一つ一つの動作さえバランスと意志との兼ね合いで色々拘って。
だからあの手紙を貰って凄く嬉しかった。
苦手な英語、それも手書きの長文を一晩で翻訳してしまうくらいに。
そしてさっきのジェニーの告白。
最後はまあ逃げてきた訳だけど、それでも俺自身凄く嬉しかったのは事実だ。
「凄く、嬉しかったです。そこまでの思いも苦労もしていませんでしたけど」
「でもその嬉しさを忘れなければお前は物作りを続けていられる。違うか」
「はい」
「ならその経験を大切にしておけ」
先生はそう言ってぷいとそっぽを向く。
「まあそんな経験はめったにないだろう。だから当分はまた教授会を笑わせるようなものでも頑張って作ってくれや、また」
「はい」
やばい、
すげえマジで涙が出そうだ。
なので気分を変えるため、ちょっと先生に質問してみることにする。
「ところで写真に写っている他の女性は誰ですか」
「ん、あ、まあその時よくつるんでいた仲間だ」
あ、怪しい。
「今の奥様も写っています」
「一番左、アナの隣だ」
一番田奈先生から離れたところに写っている、美人というより可愛い感じの女性。
「これ以上の質問は拒否するぞ。お前もほとぼりが覚めたら出て行け。鍵はオートロックだから心配いらん」
しっしっ、と先生は俺を追い払う手真似をして、ウィンドゥを戻しCADの画面にする。
ここまでのようだ。
俺は指定された部屋、隣ならジェニーの部屋にあたる部屋に入る。
ベッドと机があるが、ベッドにはシーツも布団もない。
まあでもマットがあれば十分だ。
俺はマットに寝転び目を閉じる。
思ったより疲れていたらしく、あっさりと俺は眠りの世界に入った。
◇◇◇
次の日午前6時頃、俺は田奈家を辞して薊野家に帰る。
田奈先生は寝ているようなので挨拶はしなかった。
玄関は掌紋認証であっさり開いた。
皆寝ているらしく静かだ。
こっそり自分の部屋のドアを開ける。
ジェニーは寝ているようだ。
でも俺がベッドに近づいたところで。
「ごめんなさい、オサム。昨日は少しやりすきますた」
ジェニーが目を閉じたまま俺に話しかけてきた。
「いやまあそれはそれとして。アナさん、ジェニーの先生の昔の写真を見てきたよ」
俺は話題を変えるため、そうジェニーに告げる。
「え、本当れすか」
ジェニーが飛び起きた。
「何処にあったれすか。どんな写真れすか」
「隣の田奈先生のところで見せてもらった。美人だね」
「そうなんす今でも綺麗なんす。私も見たいれす」
「まだ田奈先生寝てるしな。後で起きたら見せてもらおう」
「そうね、私も見たいわ」
不意に第三者の声がする。
振り返ると、今の声の主の由香里姉を始め香緒里ちゃん、鈴懸台先輩、月見野先輩と全員揃っていた。
「部屋を抜けたと思いましたらそんな所にいらしたなんてね。でも面白そうな情報ですわ」
「先生と田奈先生は色々ロマンスもあったらしいれす。後で皆で聞いてみるれす」
おいよせ、と思ったがもう遅い。
結局朝9時、ジェニーが田奈先生の起床を確認して20分後。
全員で田奈先生の家を強襲する羽目になってしまった。
すまない、我が教官。
でもこれくらいは、責任を取って貰ってもいいだろう?
そんなある日、担当の助教授の娘が事故で右腕の肘から先を切断してしまって、魔法を使って何とかならないかという話がやってきた。
医学的な方法は魔法を使っても無理だったと聞いてな、とっさになんとかしますと受けあってしまった。
まあ勢いみたいなもんさ。
当時は今ほどいい材料も無かったし方法論も手探りだった。材料も一から開発して、俺としては当時の全能力を使って作ったのがあの義手だ。
当時は魔法の工学における応用を認めさせようという功名心もあったしな。
正直な所完成度はお前の作った義足と比べて遥かに劣る。アナの魔力に依存しているから汎用性もない。
腕力だってあの世代の女子の8割程度の出力しか出ない。
でも思い通りに動かせるという意味では最大限拘った。
本物の腕よりも思い通りに動き細かい作業もこなせるというように。
そうしたら思った以上に喜んでもらえてな。
俺が物作りを本当の意味で好きになったのはあれがきっかけだったかもな。
アナのお陰で変な功名心無しでと言うか、純粋に物を作って人に喜んで貰えるのが楽しいと気づいた気がする。
そのうちアナが同じ大学の学部に留学してきて、アナが院を卒業するまで5年位皆でつるんでいたな。まあそれはともかくとして」
先生は俺の顔を見る。
「私もお前に質問をする。お前はあの義足を何を思って作った。実際に使った感想を綴った手紙を見てどう思った。 実際にジェニーに感想を聞いてどう思った」
俺は思い出す。
あの義足は、俺にとってはただの課題だった。
でも俺なりに色々拘って、出来る限りのものを作ったつもりだ。
そのために香緒里ちゃんに新素材を開発してもらった。
細かいプログラムの動作や構造の微調整、それこそ足の指一つ一つの動作さえバランスと意志との兼ね合いで色々拘って。
だからあの手紙を貰って凄く嬉しかった。
苦手な英語、それも手書きの長文を一晩で翻訳してしまうくらいに。
そしてさっきのジェニーの告白。
最後はまあ逃げてきた訳だけど、それでも俺自身凄く嬉しかったのは事実だ。
「凄く、嬉しかったです。そこまでの思いも苦労もしていませんでしたけど」
「でもその嬉しさを忘れなければお前は物作りを続けていられる。違うか」
「はい」
「ならその経験を大切にしておけ」
先生はそう言ってぷいとそっぽを向く。
「まあそんな経験はめったにないだろう。だから当分はまた教授会を笑わせるようなものでも頑張って作ってくれや、また」
「はい」
やばい、
すげえマジで涙が出そうだ。
なので気分を変えるため、ちょっと先生に質問してみることにする。
「ところで写真に写っている他の女性は誰ですか」
「ん、あ、まあその時よくつるんでいた仲間だ」
あ、怪しい。
「今の奥様も写っています」
「一番左、アナの隣だ」
一番田奈先生から離れたところに写っている、美人というより可愛い感じの女性。
「これ以上の質問は拒否するぞ。お前もほとぼりが覚めたら出て行け。鍵はオートロックだから心配いらん」
しっしっ、と先生は俺を追い払う手真似をして、ウィンドゥを戻しCADの画面にする。
ここまでのようだ。
俺は指定された部屋、隣ならジェニーの部屋にあたる部屋に入る。
ベッドと机があるが、ベッドにはシーツも布団もない。
まあでもマットがあれば十分だ。
俺はマットに寝転び目を閉じる。
思ったより疲れていたらしく、あっさりと俺は眠りの世界に入った。
◇◇◇
次の日午前6時頃、俺は田奈家を辞して薊野家に帰る。
田奈先生は寝ているようなので挨拶はしなかった。
玄関は掌紋認証であっさり開いた。
皆寝ているらしく静かだ。
こっそり自分の部屋のドアを開ける。
ジェニーは寝ているようだ。
でも俺がベッドに近づいたところで。
「ごめんなさい、オサム。昨日は少しやりすきますた」
ジェニーが目を閉じたまま俺に話しかけてきた。
「いやまあそれはそれとして。アナさん、ジェニーの先生の昔の写真を見てきたよ」
俺は話題を変えるため、そうジェニーに告げる。
「え、本当れすか」
ジェニーが飛び起きた。
「何処にあったれすか。どんな写真れすか」
「隣の田奈先生のところで見せてもらった。美人だね」
「そうなんす今でも綺麗なんす。私も見たいれす」
「まだ田奈先生寝てるしな。後で起きたら見せてもらおう」
「そうね、私も見たいわ」
不意に第三者の声がする。
振り返ると、今の声の主の由香里姉を始め香緒里ちゃん、鈴懸台先輩、月見野先輩と全員揃っていた。
「部屋を抜けたと思いましたらそんな所にいらしたなんてね。でも面白そうな情報ですわ」
「先生と田奈先生は色々ロマンスもあったらしいれす。後で皆で聞いてみるれす」
おいよせ、と思ったがもう遅い。
結局朝9時、ジェニーが田奈先生の起床を確認して20分後。
全員で田奈先生の家を強襲する羽目になってしまった。
すまない、我が教官。
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