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第9章 新しい日常
40 逃げる俺
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そこまで話してジェニーは少し身体を起こして俺の方をまっすぐ見る。
「だから私はオサムに感謝しているれす。私が私として再び在るのもオサムのおかげれすから」
「いいや、礼を言うのは俺の方かもしれない」
俺は思う。
確かにあの義足はそれなりに頑張って作った。
機能もいろいろ考えたし仕組みもそれなりに工夫した。
でもジェニーの思い程の強さを込めて作った訳ではない。
あくまで課題として最高のものを作ろうとして作っただけ。
だからこんな感じに一方的に感謝されるとこそばゆいとともに申し訳ない。
でもそれ以上に俺は嬉しい。
こんなに俺の作品が感謝されて使ってもらえると思うと凄く嬉しい。
「まさかこの義足を作った時は、こんな事になるなんて思っていなかった。だからこんなに喜んで使って貰えるなんて俺は凄く嬉しい。何かもう物作り冥利に尽きるというかなんというか」
「うーん、何か先生の忠告とおりすね。ちょっとワタシの望んだ方向と違うれす」
ジェニーがちょっと不満そうな顔をした。
そして完全に身を起こしてベッドに足を伸ばして座り、俺の方を見る。
「ワタシはジェニー、ジェニス・ブルーリーフヒル。12月18日生まれの16歳。アメリカのロサンゼルス出身」
突然ジェニーは自己紹介を始めた。
何でだろう。
「血液型はB型。宗教は両親が敬虔なパスタファリアンでした」
「パスタファリアンって、スパモン教か」
「オサムも知っているすか」
空飛ぶスパゲティモンスター教に敬虔な信者っているのだろうか?
「両親とは死別、付き合いのある親戚縁者も特になし。実家がロサンゼルス郡サンタモニカにあるけど維持できないので売却予定。日本での後見人は田奈先生」
「田奈先生って、あの俺の担当の」
「そうれす。魔法工学科の主任教授の田奈先生れす。ワタシの先生の友人で義手を作った人れす」
うーん、人間どこで繋がっているかわからない。
とするとあのむさい中年オタクの田奈先生も若い頃は色々あったのだろうか。
想像できないけれど。
「あとはワタシについて、オサムは何か聞く事あるれすか」
「いや今は、というか何で」
ジェニーはにやりと笑う。
肉食獣系統の笑みだ。
「先生が言っていたれす。もし義足を作った彼が先生の知っている彼と同じタイプなら、鈍感だから直接行動に出ないと色々気づいてもらえないだろうって。ワタシもそう思うれす」
不穏な予感がする。
「だからまずはワタシの自己紹介をすて、何か疑問点が無いか聞いてみたれす。そして次はワタシの質問の番れす。
オサムはワタシの事を好きれすか。好きれないならどうすれば好きになってくれるれすか」
いきなり危険な質問が来た。
「好きだけど……」
「友達としてれすか、恋人になれますか、ユカリ先輩やカオリと較べてどうれすか」
俺には答える余裕がない。
「もし恋人としてじゃないなら、どうすれば恋人になれますか。何ならこの場で既成事実を構築すればいいれすか。ワタシはパスタファリアンなんで禁忌はないれすよ。それに燃えるように愛するのはパスタファリアンの教義なのれす」
あ、完全にアウトな領域に踏み込みそうだ。
かくなる上は三十六計。
俺は身体を回転させてベッドから出て逃走する。
「あ、オサム……」
ドアを素早く開け身体を滑り込ませて部屋を出る。
そのまま玄関までダッシュしサンダルを履いて外へ出る。
玄関の扉を閉めて一安心。
ジェニーは結構ラフな格好をしていた。
だから着替えないと外には出られまい。
まあ外まで追っかけてくる可能性はあまりないと思うけど。
そして俺は持ち出したスマホからある電話番号へと電話をかける。
現在午後9時10分。
あの親父ならまだ起きているはずだ。
「はい、田奈ですが」
「先生すみません長津田です。追われているんで匿って下さい。玄関前にいます」
割とすぐに玄関ドアが開く。
俺は開いたドアに身体を滑り込ませた。
そして玄関ドアを閉める。
「どうした長津田。何か面白い事でもあったか」
「先生の過去に追いかけられました」
これ位は言ってもいいだろう。
「何だか知らんがまあ上がれ。他の家族は東京に遊びに行っていて日曜まで帰らん」
お言葉に甘えて上がらせてもらう。
「部屋は北の客間が空いているから適当に使え」
これは便利かもしれない。
後日また利用させてもらう可能性もありそうだ。
さて、ちょうどいい機会なので、俺はさっきのジェニーの話で気になったところを先生に聞いてみる。
「ところでジェニーの後見人、田奈先生だったんですよね」
「ああ、断れない知り合いに頼まれてな」
「その断れない知り合いって昔の彼女ですか」
返事に一拍の間があった。
「仲間って言い方が一番近い感じだな、私としては」
田奈先生は広いリビングの奥にある書斎スペースへ歩いて行く。
俺がついていくと先生はCADらしきウィンドウの上に新たにフォルダを表示させ、写真と名前がついたディレクトリ内のあるフォルダの1枚の写真を表示させた。
画面に表示されたのは、大学生くらいの男1人女3人。
中心に写っている男は、よく見ると田奈先生の面影がある。
「俺の左に写っているのがアナ、アナスタシアだ。私にジェニーの事を頼んできた張本人」
褐色の髪の色の白い美人が、昔の田奈先生の横で笑っている。
「アナさんの義手を作ったのは、田奈先生なんですよね」
「それも聞いたか」
田奈先生はふっと息をつく。
「だから私はオサムに感謝しているれす。私が私として再び在るのもオサムのおかげれすから」
「いいや、礼を言うのは俺の方かもしれない」
俺は思う。
確かにあの義足はそれなりに頑張って作った。
機能もいろいろ考えたし仕組みもそれなりに工夫した。
でもジェニーの思い程の強さを込めて作った訳ではない。
あくまで課題として最高のものを作ろうとして作っただけ。
だからこんな感じに一方的に感謝されるとこそばゆいとともに申し訳ない。
でもそれ以上に俺は嬉しい。
こんなに俺の作品が感謝されて使ってもらえると思うと凄く嬉しい。
「まさかこの義足を作った時は、こんな事になるなんて思っていなかった。だからこんなに喜んで使って貰えるなんて俺は凄く嬉しい。何かもう物作り冥利に尽きるというかなんというか」
「うーん、何か先生の忠告とおりすね。ちょっとワタシの望んだ方向と違うれす」
ジェニーがちょっと不満そうな顔をした。
そして完全に身を起こしてベッドに足を伸ばして座り、俺の方を見る。
「ワタシはジェニー、ジェニス・ブルーリーフヒル。12月18日生まれの16歳。アメリカのロサンゼルス出身」
突然ジェニーは自己紹介を始めた。
何でだろう。
「血液型はB型。宗教は両親が敬虔なパスタファリアンでした」
「パスタファリアンって、スパモン教か」
「オサムも知っているすか」
空飛ぶスパゲティモンスター教に敬虔な信者っているのだろうか?
「両親とは死別、付き合いのある親戚縁者も特になし。実家がロサンゼルス郡サンタモニカにあるけど維持できないので売却予定。日本での後見人は田奈先生」
「田奈先生って、あの俺の担当の」
「そうれす。魔法工学科の主任教授の田奈先生れす。ワタシの先生の友人で義手を作った人れす」
うーん、人間どこで繋がっているかわからない。
とするとあのむさい中年オタクの田奈先生も若い頃は色々あったのだろうか。
想像できないけれど。
「あとはワタシについて、オサムは何か聞く事あるれすか」
「いや今は、というか何で」
ジェニーはにやりと笑う。
肉食獣系統の笑みだ。
「先生が言っていたれす。もし義足を作った彼が先生の知っている彼と同じタイプなら、鈍感だから直接行動に出ないと色々気づいてもらえないだろうって。ワタシもそう思うれす」
不穏な予感がする。
「だからまずはワタシの自己紹介をすて、何か疑問点が無いか聞いてみたれす。そして次はワタシの質問の番れす。
オサムはワタシの事を好きれすか。好きれないならどうすれば好きになってくれるれすか」
いきなり危険な質問が来た。
「好きだけど……」
「友達としてれすか、恋人になれますか、ユカリ先輩やカオリと較べてどうれすか」
俺には答える余裕がない。
「もし恋人としてじゃないなら、どうすれば恋人になれますか。何ならこの場で既成事実を構築すればいいれすか。ワタシはパスタファリアンなんで禁忌はないれすよ。それに燃えるように愛するのはパスタファリアンの教義なのれす」
あ、完全にアウトな領域に踏み込みそうだ。
かくなる上は三十六計。
俺は身体を回転させてベッドから出て逃走する。
「あ、オサム……」
ドアを素早く開け身体を滑り込ませて部屋を出る。
そのまま玄関までダッシュしサンダルを履いて外へ出る。
玄関の扉を閉めて一安心。
ジェニーは結構ラフな格好をしていた。
だから着替えないと外には出られまい。
まあ外まで追っかけてくる可能性はあまりないと思うけど。
そして俺は持ち出したスマホからある電話番号へと電話をかける。
現在午後9時10分。
あの親父ならまだ起きているはずだ。
「はい、田奈ですが」
「先生すみません長津田です。追われているんで匿って下さい。玄関前にいます」
割とすぐに玄関ドアが開く。
俺は開いたドアに身体を滑り込ませた。
そして玄関ドアを閉める。
「どうした長津田。何か面白い事でもあったか」
「先生の過去に追いかけられました」
これ位は言ってもいいだろう。
「何だか知らんがまあ上がれ。他の家族は東京に遊びに行っていて日曜まで帰らん」
お言葉に甘えて上がらせてもらう。
「部屋は北の客間が空いているから適当に使え」
これは便利かもしれない。
後日また利用させてもらう可能性もありそうだ。
さて、ちょうどいい機会なので、俺はさっきのジェニーの話で気になったところを先生に聞いてみる。
「ところでジェニーの後見人、田奈先生だったんですよね」
「ああ、断れない知り合いに頼まれてな」
「その断れない知り合いって昔の彼女ですか」
返事に一拍の間があった。
「仲間って言い方が一番近い感じだな、私としては」
田奈先生は広いリビングの奥にある書斎スペースへ歩いて行く。
俺がついていくと先生はCADらしきウィンドウの上に新たにフォルダを表示させ、写真と名前がついたディレクトリ内のあるフォルダの1枚の写真を表示させた。
画面に表示されたのは、大学生くらいの男1人女3人。
中心に写っている男は、よく見ると田奈先生の面影がある。
「俺の左に写っているのがアナ、アナスタシアだ。私にジェニーの事を頼んできた張本人」
褐色の髪の色の白い美人が、昔の田奈先生の横で笑っている。
「アナさんの義手を作ったのは、田奈先生なんですよね」
「それも聞いたか」
田奈先生はふっと息をつく。
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