機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第9章 新しい日常

39 跳べる足

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 俺の引っ越しは簡単に終わった。
 そして毎日作業したお陰でマンション内の電化製品等の魔法装置化もほぼ終わったし、屋上庭園スペースの改装も工事もほぼ終わった。

 屋外庭園スペースは立派な露天風呂になってしまった。
 念のため更にアスファルトシートとFRPでコーティングされた防水層。
 その上に木材等で作った浴槽とベンチ、寝転んで休めるウッドデッキまで設置。
 一体何処の立ち寄り湯だという感じだ。

 年数回はやってくる台風に備え、全て魔力で固定済み。
 露天風呂用の水は基本的に浄化再利用と雨水タンク併用。
 由香里姉がどこからか手に入れた温泉の素も入れている。

 屋内も給湯や調理は全て魔力仕様に改造した。
 エアコンも冷蔵庫も魔力仕様。
 光熱費でかかるのは照明やパソコン等に使う電気代だけ。

 そして今日は金曜日。
 全裸女子高生どもが窓の外をうろついている。
 風呂入ったりデッキで寝転んでいたり、やりたい放題だ。

 ただ嫌々ながらに作った作品ろてんぶろではあるけれど。
 楽しそうに使ってくれると、製作者冥利というか嬉しくなってしまう。
 我ながら物作り屋だなと思ってしまうけれど。

 そしてこの露天風呂を作ってよかった事がもう一つ。
 バスと違ってこうやって自分の部屋で休めることだ。

 もちろん最初は強制的に参加だが、途中で部屋に帰るのは自由。
 なので今日はさっさと上がって自分の部屋で休憩中。
 風呂はだれも居なくなったら一人で入ろう。

 そう思ったら窓をノックする音。
 ジェニーだ。

「どうした」

「今日は私が横に寝る番なのでよろしくれす」

 ええっ。
 俺は窓を開けて由香里姉に確認する。

「今日からはベッドの数もあるし、ベッド争奪くじ引きの必要ないだろ」

「でも正規のベッドの数は5つだし、修のベッドは大きいしちょうどいいじゃない。今日は残念ながらジェニーちゃんに負けたけどね」

 家主がそう言うならしょうがない。
 喧嘩しても勝てないし。

「じゃあ窓もドアも開けておくから」

「ではまた後でくるれす」

 とジェニーは風呂の方へ戻っていく。
 ちなみに今の風呂の時間、一番危険なのはジェニーだ。
 体型が一番メリハリに富んでいる上、義足の関係で下の毛を剃っているから。
 後ろ姿はなにげに由香里姉や香緒里ちゃんと似ているんだけど。

 あ、いかん。
 邪念が襲ってくる。
 かといってカーテンを閉めるのも逆に怪まれそうだし。

 こういう時は寝るに限る。
 今週は引っ越しや色々な製作で疲れているし。
 よし寝よう!
 俺はだだっ広いベッドの片側を開け、寝ることにした。

 ◇◇◇

 ふと誰かの気配がして目が覚めた。
 少し目を開けると、ジェニーが布団に入ろうとしている。

「ごめんなさい。起こしましたれすか」

「大丈夫、どうせ明日は休みだしさ」

 それにここは俺の部屋。
 マイクロバス時代と違い、風呂を片付ける必要もないし。

「なら起きたついでにお願いあるれす」

「何だ?」

「あの2人と同じように、寝る時一緒に手を繋いで欲しいです」

 それくらいなら良いか。
 俺は右手をジェニーに預ける。

「ありがとうれす」

 ジェニーはそう言って俺の手を握った。

「カオリにもユカリ先輩にも色々話聞いたれすよ。オサムのこと」

「どんな話だ」

「色々れすよ。出会った時の話とか公園で遊んだ話とか。どれくらいあの2人がオサムのこと思っているのかよくわかったれす」

 恥ずかしい話をしたんじゃないよな。
 そんな事を思いながら俺はジェニーの話を聞いている。

「でも、ワタシも同じ位オサムに感謝しているれすよ」

「何で」

「この脚れす」

 ジェニーは握った俺の手を太腿のところへと導く。
 触れたのはジェニー本来の脚と俺が作った義足のちょうど境目。

「この脚のお陰でワタシはあの時のワタシを抜け出せたれす」

 そう言ってジェニーは、語り始めた。

 ◇◇◇

 この義足を手にした頃のワタシは多分最低の状態れした。
 半年前の交通事故でパパもママも死んじゃって、ワタシも両足が無くなって。
 入院期間が長かったので来年は進級出来ないことも決まりますた。
 好きだったバスケも出来なくなりあした。

 車椅子で時々未練がましくプレイ中のバスケコート見たり、もうすぐ同級生じゃなくなるクラスメイトの慰めをただ聞いたりしていますた。
 自分は不幸なんだとただ思い込んでいますた。

 そんな時、担当の先生から義足の話があって。
 お金も普通の義足より安いし何となくお願いしますた。
 後で聞いたのですが先生は昔日本に留学していて、この学校の先生と個人的に繋がりがあったようれす。

 正直な処、義足に何も期待していませんれした。
 らからこの義足を選んでくれたのも実は先生れす。

『これが一番生活で使いやすいという事もあるけれど、それ以上にジェニーを変えてくれる可能性があるから』

 そう言った先生の言葉の意味は、その時はワタシにはわかりませんれした。
 ただ車椅子を使わなくて済むから便利になるかなと、それしか思いませんれした。

 でも義足を付けて試しに歩いてみた時。
 昔とおなじ目線の高さで立ってみた時。
 ふとワタシはこの義足で試してみたいことを思いつきますた。

 ワタシは車椅子を先生のところに預けたまま、ある場所に向かいました。
 途中家に寄ってある物を取り出して。

 向かったのは家の近くにあった練習用のバスケのゴールスタンドれす。
 もちろん義足は使い始めたばかりなのれ、体重移動によるオートで歩いてれす。
 細かい動きも全く出来なかったのれ義足のオートバランスに頼ってれす。

 でもとにかく事故の前とほぼ同じ目線で、ワタシはバスケのゴールスタンド前、フリースローラインぎりぎりの所に立ちますた。

 まずは立ったまま、腕だけでショットしてみますた。
 長いこと打っていなかったので当然入りませんれした。
 5回位ショットしてみましたが、一回も入りませんれした。

 でもその時、この義足が確かに語りかけてくれたんれす。
 ワタシのスタイルはそんな感じだったかい、と。

 少し義足を本気で試してみました。
 ジャンプも出来ました。
 オートでも少し走れるようれした。

 だからワタシは、ゴールから少し離れたところから軽く走り、ジャンプしてショットしてみますた。
 ボールは入りませんでした。

 でもまた声が聞こえました。
 キミのスタイルはそんなに大人しかったかい、と。
 そしてまだ跳べるよ、まだまだ翔べるよとささやきかけました。

 だからワタシはボールを持ってセンターライン近くまで下りますた。
 見えない敵に突っ込むようにその時の全力でドリブルして走り込み、全力でジャンプしますた。

 次の瞬間ワタシの視界はゴールを越えた高さまで一気に翔びますた。
 ゴールポストを上から見下ろして、そしてワタシは気づきますた。
 もう一生挑戦出来ないと思った高さを、こんなに簡単に越えられることに。

 何とか無事に着地できたワタシは、今度はゴールポストの近くに立ちますた。
 さっきより心持ち力を抑えてジャンプして、ボールをゴールに叩き込むようにショットしますた。

 ボールはあっさりゴールに叩き込まれ、下でポンポン跳ねますた。
 この半年ワタシを落ち込ませていた何かが、ボールの音とともに去っていく気配がしますた。
 ワタシがこの半年閉じこもっていた世界の壁なんて、こんなに簡単に翔び超えられるんらなと気づきますた。

 その足で先生の所へ駆けて行って、先生に抱きついていっぱいお礼言いますた。
 そうしたら先生は長袖をまくって、右腕の肘まで出して見せてくれますた。
 それまで気づかなかったのれすが、先生の右腕は義手ですた。

『あの時の私に必要だったのは、絵が描ける腕だったの。そしてあなたに必要だったのはきっと翔べる脚。
 どう、跳べた?』

 私は頷きますた。
 そして誰が義手や義足を作ってくれたのかを聞きますた。

『義手を作ったのは日本の学生だった私の友人よ。そしてその義足は彼の教え子の作品』

 私は是非この義足の製作者に会ってお礼を言いたい、そう先生に言いますた。

『私は彼に会いに留学したけれど、何ならあなたもそうしてみる。どうせ学年も変わることだし。魔法が使えないから結構厳しいかもしれないけれど、試験は英語でも受けられるわ。それにあなたはある程度日本語が出来るわよね』

 確かにマンガやアニメを良く見ていたので、当時でも私は少しは日本語がわかりました。だから先生に是非にとお願いしました。

『あなたはまだ魔法が使えないから本当なら魔法工学科しか応募資格が無い。でも魔法を使う道具を使っているうちに魔法が使えるようになる事はよくある。だからぎりぎりまで学科選択は待って応募してみるわ』

 そしてほぼ先生につきっきりで試験対策と日本語の勉強をしているうちに探知魔法をつかえるようになりますた。
 そして試験にも無事受かりますた。

 来る時に先生が、
『私は失敗したけれど、何なら彼を捕まえてくるぐらい頑張ってね』
と言って見送ってくれました。
 そうして私はここに来たのれす
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