機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第10章 新役員がやってきた

42 新役員がやってきた

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「来ないですねえ」

「まあ、来ないよね」

 俺と由香里姉の会話。
 何が来ないかというと、来期の学生会役員の立候補者だ。

 本当は会長、副会長、書記、会計、監査の5人の正役員を応募している。
 しかし今年も立候補者は今のところゼロ。
 まあ例年立候補ゼロで、教官による推薦で細々と決めているのが実情だけれども。
 しかも今季は書記と会計と監査を月見野先輩一人で兼ねているという、少人数化も極まった状態だったりする。
 
「このままだと修が学生会長をやる日も近いかもね」

「勘弁して下さいよ由香里姉。来期でやっと3年だしそういう柄じゃないのは知っているでしょう」

 本来は11月27日から12月1日まで立候補受付、4日から公示で8日に選挙の予定だった。
 でも立候補者は誰も出ないまま、今日は12月7日。

 校内中の掲示板に立候補者追加受付中の張り紙もしたし、昼の校内放送でも毎日流してもらっている。
 でも投票日前日の今日の午後4時30分現在、誰も立候補者はいない。

「去年はどうしたのですか」

「そろそろ来るんじゃないかな」

 香緒里ちゃんの質問に、鈴懸台先輩が謎の返答をする。

「筑紫野先生があと15秒れこの部屋に来ます」

 ジェニーがこの部屋に近づく人間を感知した。
 筑紫野先生は学生会を担当している教官だ。

 ぴったり15秒後、学生会室のドアがノックされる。

「入るわよ」

 返事も聞かずに入ってきたのは40代の大柄でスタイルの良い女性。
 筑紫野先生は空いている椅子にでんと腰掛ける。

「どうかしら。立候補者は誰か来ましたか」

「例年通りですわ」

 由香里姉が代表して答える。

「やっぱりねえ。学園祭実行委員なんかは人気もあるんだけれど、学生会は何故か人気が無くてねえ。代々そうなのよね」

 そう言って先生は香緒里ちゃんが入れた紅茶入りのカップを軽く口に運ぶ。

「それでどうするんですか」

「来期の会長と副会長は教授会から推薦するわ。残りの役職は今の補佐3人で割り振って貰いたいんだけど、いいかしら」

 ちょっと考える。
 今度来る会長と副会長がどんな人物かはわからない。

 でも正役員になるとはいえやることは多分あまり変わらないだろう。
 工房もそのまま使える可能性が高い。
 悪い話ではないと思う。

「俺はそれで大丈夫です」

「修兄も一緒なら」

「ジェニーも大丈夫れすよ」

 筑紫野先生は俺達の返答に軽く頷く。

「なら決まりね。明日の午後4時には顔合わせで連れてくるわ」

「先生、今度の会長と副会長候補はどなたなのでしょうか」

「まだ本人の最終確認取ってないからね。明日のお楽しみにしておいて」

 月見野先輩の質問を軽くいなして先生は立ち上がる。

「それじゃまた明日くるわね。お茶ご馳走様」

 ◇◇◇

 新会長や新副会長が誰かわからないまま、間もなく午後4時を迎える。

 空いている机を由香里姉と鈴懸台先輩の横に移動させ、それにともなって他の机も少しずつ移動させて準備を整えた。
 お茶の準備も出来ている。

 それぞれ役職の仕事内容を記載したレジュメも用意した。
 実際にやっていると、役職で仕事を振るより、各自の得意分野で仕事を振る方が多くなるのだが、まあ基本は基本だ。

「来ましたれす。筑紫野先生とあと2人。どっちも女性れす」

 ジェニーの魔法が反応したようだ。
 ドアがノックされ、こっちが返事をする前に開かれる。

「入るわよ」

 筑紫野先生の後に続いて入ってきたのは、ジェニーの言うとおり女子学生2人。
 一人はやや灰色がかった特徴的な色の髪をミディアムボブにした、色白で物静かそうなメガネをかけたやや小柄な女の子。
 もう一人は茶色いショートヘアの、身長170センチ位の引き締まったいかにも活発そうな感じの女の子だ。

 俺達は立ち上がって迎える。

「細かい事は抜きよ。この2人が教授会推薦の来期会長副会長候補。自己紹介して」

 まずは灰色髪の小柄な方が頭を下げる。

「来期の会長候補に推薦されました補助魔法科3年の鷺沼風遊美さぎぬまふゆみです。よろしくお願いします」

 次は背の高い方だ。

「同じく、副会長候補の宮崎台奈津希みやざきだいなつきだ。攻撃魔法科3年。よろしく」

 続いて俺達も由香里姉から順番に挨拶をする。

「それじゃあ、引き継ぎなり情報交換お願いね。あと役員選出は例年通り、投票無しで不信任のみ意見票の提出でいいわ。あとはよろしくね」

 筑紫野先生はそう言うと、席にも座らずターンして扉を開け、出ていった。

「それではこちらにお座りになって。簡単な資料も用意致しましたから」

 月見野先輩のその言葉で香緒里ちゃんとジェニーは紅茶等の用意をしに行き、2人が座るとともに全員で座る。

「さて、仕事の流れとかは後でそのレジュメを見てもらえばわかると思うわ。居残りも3人いるから多分問題はないしね。だから優先課題としてはお仕事以外の件になるかな」

「そうだね。例えば詳しい自己紹介とか質問とか。3月の交代までは引き継ぎ含めて一緒に仕事する訳だし、会計以下は来年度も一緒に仕事する訳だしな」

「という訳ですし、まずは詳細な自己紹介でも致しましょうか。という訳で、まずは一番長い付き合いになると思われる来期監査担当の長津田君からお願いね」

 え、いきなり俺か。
 何も用意していないぞ。
 でもしょうがない。

「2年魔法工学科の長津田修です。趣味は電子工作、苦手なのものは体力が必要な事一般。得意なものは工作全般。使用できる魔法は物品加工と製品審査。で後は何を言えばいいんだ」

「好きな女の子のタイプとか」

「特に無し。好きになってから考える」

 由香里姉の攻撃を撥ね付ける。

「じゃあ由香里とジェニーと香緒里ちゃんの3人なら誰を恋人に選ぶ?」

「回答を拒否」

「強いて言えば」

「黙秘権を行使」

 鈴懸台先輩の意地悪な質問が続く。

 何か自己紹介でなく単に俺をいじる場になっているような……
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