機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
60 / 202
第13章 冬の終わり頃の、ある記念日に

60 皆で試食会(1名除く)

しおりを挟む
「じゃあ誰のから開封する」

「では無難に鈴懸台先輩と月見野先輩から頂いたものから」

 俺は丁寧にラッピングされた箱を開ける。
 出てきたのはスマホ大の長方形で、大きくホワイトチョコで『義理』と書いてある。

「本命チョコの皆様に敬意を表して、だな。それに四角い方が食べやすい」

「私はもう少し、普通のデザインにするつもりでしたけれど」

 多分飴玉や色チョコでデコレーションしているあたりが月見野先輩の主張で、四角い形と義理の文字が鈴懸台先輩の主張なのだろう。

「次は私の希望れす」

 という事なので、ジェニーから貰った平たい箱を開ける。
 薄い青色のハート型という、ある意味チョコらしくない色のチョコレート。

「ちょっと色を工夫してみたれす。可愛い色に出来たれす」

 確かに色としては可愛いが、青色というのはチョコレートの色というか、食べ物の色として適切なのだろうか。
 次に俺はちょっと背の高めの箱を取る。

「これは風遊美さんのですよね」

「気に入って頂ければいいのですが」

 ちょっと期待しつつ開けると、中は小さな円形の塊だった。
 ケーキというにはちょっと違うけど。

「コーヒーチョコマフィンです。チョコ味だけでは飽きるかなと思いまして」

 確かに甘いものだけの中では重宝しそうだ。
 綺麗に茶色い艶があって、チョコチップとナッツがところどころに見えている。
 素直に美味しそうだ。

「じゃあ同じ箱つながりで、香緒里ちゃんのを開けるよ」

 出てきたのはチョコレートケーキ、じゃない。
 分厚いハート型チョコ。厚さ約5センチ。
 カラフルチョコで飾り付けをしてあるが、基本的にはチョコの塊そのもの。

 おいおい、これどうやって食べるんだ。
 そう思いつつも、取り敢えず表情には出さないようにする。

「一昨年は色々やって失敗した憶えがあるので、今年はシンプルに作ってみました」

 ちなみに一昨年のとは、涙のように苦いチョコレートケーキだった。
 本人は焦げの色とチョコの色の違いに気づいていなかったようだが。
 それに比べると今年のは、きっとチョコそのものは美味しいから、まあいいか。

「最後は由香里姉のですね」

 今年こそシンプルなの、と願いつつ箱を開ける。

 巨大なハート型。サイズA4大。厚さも1センチ強。
 ピンクの無駄にかわいい字体で、『EAT ME!』とでっかく書いてある。

 うわーっ、漫画でしか見ないような、ベッタベタの本命チョコだこれ。
 なんという気恥ずかしい代物だ。

「今年は奈津希がいたからテンパリングも万全だし仕上がりも思い通りよ」

 うーん、やっぱり薊野姉妹のセンスは今年も変わらないか。
 まあ今年は味に問題がない分だけ、ましかもしれない。

「やっぱり奈津希、自分の分は無しで本当にいいんですか。」

 奈津希さんの分がやっぱり無い。
 風遊美さんが奈津希さんに再度尋ねる。

「そうだね、それではこの日のために作った構想ウン年制作1週間の大作をもってくるよ。楽しみに待っててな」

 奈津希さんはにやにやしながら客室へと姿を消す。

「何を用意しているのでしょうかね」

「ろくなものではない可能性が高いと思います」

 月見野先輩と風遊美さんがそんな事を話しているうちに。

「じゃーん!ジャジャジャジャジャジャーン!」

 奈津希さんの声がドアの向こうからした。
 注目しろ!という事だろう。
 そして扉が開き、奈津希さんが登場する。

「えっ!」

 全員が絶句した。

 奈津希さんの服装はほとんど裸に近い。
 申し訳程度のビキニだけををまとっている。
 チョコレート色の。

「今年の新作、水着型チョコレートだ!」

 あまりの馬鹿馬鹿しさに全員が真っ白に燃え尽きる中、つい俺は聞いてしまう。

「それ、本当に全部チョコレートなんですか」

 素材強度的に疑問があったのだ。

「よくぞ聞いてくれた修君。本当は全部チョコレートで作る予定だったのだがビキニにするには強度が足りなくてな、だから殆どはチョコレート色の光沢がある人工皮革だ。ただし!」

 そう言って奈津希さんは、両手両足を広げたポーズで俺のすぐ前に立つ。

「よく見ろ、胸の2箇所と下の1箇所、艶が微妙に違う場所があるだろう。ここだけはチョコレートだ。常時魔法で冷やしてやらなければ溶けて丸見えになるがな」

 よく見ると乳首の付近と股間の女性器部分の素材感が違う。

「何という物をつくっているんですか!」

 溶かしたチョコを身体にかけるのは、アダルトビデオであった気もする。
 でもまさか、チョコでビキニを作る馬鹿が身近に実在するとは思わなかった。

「たゆまぬ努力と想像力と魔法によって奇跡のチョコが完成した。チョコ本体はベルギー直輸入で味も確かだぞ。ほれ修、溶ける前に食べてくれ。かじると痛いから優しく舐め取ってくれるとお姉さんは嬉しいぞ。ほれほれ、うりうり」

 右胸の頂点付近を俺の口元へ寄せてくる。
 俺が下がると、その分胸を近づける。
 あ、まずいと思った瞬間。

 不意に奈津希さんが崩れ落ちた。
 その背後には風遊美さん。
 頭を打たないよう、奈津希さんの脇に両手を入れて、何とか支えている。

「うちの代の馬鹿がお見苦しい事をして、申し訳ありません。すぐ片付けますから」

 そのまま風遊美さんは、ずるずると奈津希さんを引っ張って客間へ。
 今崩れ落ちた衝撃で下のパーツのチョコが割れて、一番やばい部分が丸見えになっているのは、取り敢えず見ないふりをしておく。
 チョコに巻き込まないためか毛を剃っているので、よけい丸見えだ。

「何か圧倒されてしまったです」

「いやでも本当にあれを作った技術は凄いと思うよ。布地部分を含め自製だろうし」

「あらゆる方面で優秀なのですが、性格が残念なのです」

 戻ってきた風遊美さんが、そう言ってため息をついた。
 いわゆる『才能の無駄遣い』という奴だろうか。

 まだ『病院が来い』とか『病院逃げて』までは行っていないよな。
 今のを動画に撮って投稿すれば行けるかもしれないけれど。

「さて、これだけチョコが集まりましたから、最初のひとくちを修さんに食べて頂いて、あとは皆で味見しませんか。もちろん全部修さんに食べて欲しいという方がいれば別ですけれど」

「私はそれでいいかな、これ全部修に食べさせたらお腹壊しそうだし」

「私もそれでいいです」

 等々、気絶中の1名を除いて月見野先輩の提案に賛成する。
 そうしてチョコレートパーティが始まった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...