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第14章 とっても長い春休み⑴ 漁船と宴会と怪しい朝と
61 今度は船で釣行だ
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2月ももうすぐ終わる木曜日。
新旧役員一同がキャンピングカーで訪れた南浜の砂浜に、中古の漁船が待っていた。
ごく近海で使うような、船室の無いタイプ。
それでも長さ6メートル以上、中の幅も2メートル以上はある。
「父島で新しい船を買われる方がいたそうなので、古い方を購入してここまで曳航してもらったの。これを改造すれば空飛ぶ船が作れるでしょ」
由香里姉のいきなりの話に、俺は絶句する。
そう言えば帰省から戻ってきた後。マグロを釣った話を聞いた由香里姉が、凄く羨ましそうな顔をしていたような。
「露天風呂の木材でお世話になった、父島の木材屋さんに、いい中古の小型船があれば連絡欲しい、って頼んでおいたの。春休みに間に合いそうで良かったわ」
「つまりこれを改造して、空飛ぶ漁船を作れ、と」
「出来れば早急にね。もうすぐ春休みが始まるし」
高専の春休みは長い。
ほぼ3月いっぱいと4月の3分の1は休みだ。
むろん学生会には、新入生用のパンフとか色々雑事はあるけれど。
「それに台風シーズンの食糧難でも、これがあれば魚を捕れるでしょ」
「でも、この船、どうやって工房まで持っていくんですか」
見たところトレーラーも何もない。
「それも実は相談済みよ」
「修兄、協力お願いします」
香緒里ちゃんの声。
俺は香緒里ちゃんに指示され、船の先に近い方に座る。
そして真ん中に香緒里ちゃんが座り、後ろには奈津希さんが陣取った。
「修兄はバランスの関係があるので動かないで下さい。では行きます」
香緒里ちゃんがそう言うと同時に、漁船が浮かんだ。
例の物にかかる重力を操作する魔法だ、きっと。
「それじゃ動かすよ。工房横まで、GO!」
漁船がゆっくり方向を変え、そして前進し始めた。
香緒里ちゃんが浮力を魔法で調節し、奈津希さんの風の魔法で進んでいる。
以前は香緒里ちゃんの魔法、浮力の調整は出来なかった筈なのに。
どうやら香緒里ちゃんの魔法が進化したようだ。
「何ならこのままで、既に完成しているんじゃないか」
「魔法でバランスを取るのが大変なので、長時間は無理です」
一気に40mの崖を飛び越え学校へ。
南浜から学校は直線距離だと近い。
500m無いだろう。
あっという間に目的地の工房が見える。
奈津希さんは船を綺麗にターンさせ、工房と並行な状態にして寄せていく。
そして香緒里ちゃんの魔法で、ほぼ衝撃無く船は着地した。
◇◇◇
この時期になると、もう再試験以外の授業は残っていない。
なので試験を一発クリアした俺達は、今季の授業は終わり。
お陰で船の改造が捗る。
浮力調整用の重りも、工房の資材で何とかなった。
手間取ったのは船の構造の変更だ。
船の構造物のほとんどは、重力で船体に載っている状態。
なので浮力機構を内蔵してかつ船体に固定するのが一番大変だった。
逆にそれさえ上手くいけば、所詮今まで作った空飛ぶシリーズの延長線上。
機構的に難しい点は何もない。
なおこの時期、本来なら学生会は新入生用のパンフレットの作成で忙しい。
3月7日からの入校手続きに間に合うように、学生生活や寮の様子等を入れたパンフを作成するのだ。
でも今年は既に作業は終わり、もうすぐ印刷物が本州から航空便で届く予定だ。
奈津希さんの知り合いの紹介で、安くて早い印刷屋を見つけたらしい。
本来は同人誌用だとか言っていたけれど。
そして改造作業は、無事27日月曜の昼過ぎに完了。
試運転を待っていた、学生会新旧役員全員が海装備で集合している。
「出航!」
由香里姉の号令で、俺は船を浮上させた。
普通、このサイズの船は、船尾で運転する。
でも改造する際に前に運転席を取り付けた。
操作体系はキャンピングカーと同じにしてある。
俺の悲しい魔力でも実用的に使えるよう、色々機構は改良したけれど。
目指すは、この前マグロを釣った学校裏の入江。
あっという間に目的地に到着だ。
「ジェニー、獲物はいるかな」
「もう少し沖合れす」
ここからはジェニーの指示、というか探知魔法に従う。
まるで人間魚群探知機だ。
「この付近、水深70mれ1m以上の大物がいるれす」
早速、由香里姉と香緒里ちゃんが仕掛けを落とす。
なお釣る順番はじゃんけんで決定済。
片方が大物をかけた場合はもう片方は竿を上げるとか、食べられる魚の量が冷蔵庫のキャパを超えた時点で終了という取り決めも。
「ユカリ先輩、もう少しゆっくり待たないと、下まで行っていないれす」
「カオリはもう少し巻くれす」
「オサム、進路やや右れす」
生きたレーダーが深さ、船の速さや方向まで完全に指示してくれている。
キャンピングカーでやった奈津希さんや風遊美さんの時より、効率はよさそうだ。
そう思ったら。
「ユカリさんヒットれす。1mより上れす」
俺は船を停めた。
香緒里ちゃんが残念そうに仕掛けを巻く。
そして由香里姉と巨魚との強烈なファイトが始まる。
だが。
引いていた竿が一気にテンションを失った。
「残念れす。糸が切れたれす」
大物用の極太なラインが、かなり下で切られていた。
ラインとジグを結び直して選手交代。
今度は香緒里ちゃんと月見野先輩が仕掛けを落とす。
今度はすぐに香緒里ちゃんの竿がしなった。
「50cm位れす。だからアカリさんはそのまま釣っていていいれす」
「結構重いです、これ」
「それも魚釣りの醍醐味さ。頑張れ」
そう言っている間に、今度は月見野先輩の竿も思い切りしなった。
「それは大きいれす。危ないかもしれないれす」
「大きさは?」
月見野先輩は必死に竿と格闘している。
「1.5mはあるれす」
新旧役員一同がキャンピングカーで訪れた南浜の砂浜に、中古の漁船が待っていた。
ごく近海で使うような、船室の無いタイプ。
それでも長さ6メートル以上、中の幅も2メートル以上はある。
「父島で新しい船を買われる方がいたそうなので、古い方を購入してここまで曳航してもらったの。これを改造すれば空飛ぶ船が作れるでしょ」
由香里姉のいきなりの話に、俺は絶句する。
そう言えば帰省から戻ってきた後。マグロを釣った話を聞いた由香里姉が、凄く羨ましそうな顔をしていたような。
「露天風呂の木材でお世話になった、父島の木材屋さんに、いい中古の小型船があれば連絡欲しい、って頼んでおいたの。春休みに間に合いそうで良かったわ」
「つまりこれを改造して、空飛ぶ漁船を作れ、と」
「出来れば早急にね。もうすぐ春休みが始まるし」
高専の春休みは長い。
ほぼ3月いっぱいと4月の3分の1は休みだ。
むろん学生会には、新入生用のパンフとか色々雑事はあるけれど。
「それに台風シーズンの食糧難でも、これがあれば魚を捕れるでしょ」
「でも、この船、どうやって工房まで持っていくんですか」
見たところトレーラーも何もない。
「それも実は相談済みよ」
「修兄、協力お願いします」
香緒里ちゃんの声。
俺は香緒里ちゃんに指示され、船の先に近い方に座る。
そして真ん中に香緒里ちゃんが座り、後ろには奈津希さんが陣取った。
「修兄はバランスの関係があるので動かないで下さい。では行きます」
香緒里ちゃんがそう言うと同時に、漁船が浮かんだ。
例の物にかかる重力を操作する魔法だ、きっと。
「それじゃ動かすよ。工房横まで、GO!」
漁船がゆっくり方向を変え、そして前進し始めた。
香緒里ちゃんが浮力を魔法で調節し、奈津希さんの風の魔法で進んでいる。
以前は香緒里ちゃんの魔法、浮力の調整は出来なかった筈なのに。
どうやら香緒里ちゃんの魔法が進化したようだ。
「何ならこのままで、既に完成しているんじゃないか」
「魔法でバランスを取るのが大変なので、長時間は無理です」
一気に40mの崖を飛び越え学校へ。
南浜から学校は直線距離だと近い。
500m無いだろう。
あっという間に目的地の工房が見える。
奈津希さんは船を綺麗にターンさせ、工房と並行な状態にして寄せていく。
そして香緒里ちゃんの魔法で、ほぼ衝撃無く船は着地した。
◇◇◇
この時期になると、もう再試験以外の授業は残っていない。
なので試験を一発クリアした俺達は、今季の授業は終わり。
お陰で船の改造が捗る。
浮力調整用の重りも、工房の資材で何とかなった。
手間取ったのは船の構造の変更だ。
船の構造物のほとんどは、重力で船体に載っている状態。
なので浮力機構を内蔵してかつ船体に固定するのが一番大変だった。
逆にそれさえ上手くいけば、所詮今まで作った空飛ぶシリーズの延長線上。
機構的に難しい点は何もない。
なおこの時期、本来なら学生会は新入生用のパンフレットの作成で忙しい。
3月7日からの入校手続きに間に合うように、学生生活や寮の様子等を入れたパンフを作成するのだ。
でも今年は既に作業は終わり、もうすぐ印刷物が本州から航空便で届く予定だ。
奈津希さんの知り合いの紹介で、安くて早い印刷屋を見つけたらしい。
本来は同人誌用だとか言っていたけれど。
そして改造作業は、無事27日月曜の昼過ぎに完了。
試運転を待っていた、学生会新旧役員全員が海装備で集合している。
「出航!」
由香里姉の号令で、俺は船を浮上させた。
普通、このサイズの船は、船尾で運転する。
でも改造する際に前に運転席を取り付けた。
操作体系はキャンピングカーと同じにしてある。
俺の悲しい魔力でも実用的に使えるよう、色々機構は改良したけれど。
目指すは、この前マグロを釣った学校裏の入江。
あっという間に目的地に到着だ。
「ジェニー、獲物はいるかな」
「もう少し沖合れす」
ここからはジェニーの指示、というか探知魔法に従う。
まるで人間魚群探知機だ。
「この付近、水深70mれ1m以上の大物がいるれす」
早速、由香里姉と香緒里ちゃんが仕掛けを落とす。
なお釣る順番はじゃんけんで決定済。
片方が大物をかけた場合はもう片方は竿を上げるとか、食べられる魚の量が冷蔵庫のキャパを超えた時点で終了という取り決めも。
「ユカリ先輩、もう少しゆっくり待たないと、下まで行っていないれす」
「カオリはもう少し巻くれす」
「オサム、進路やや右れす」
生きたレーダーが深さ、船の速さや方向まで完全に指示してくれている。
キャンピングカーでやった奈津希さんや風遊美さんの時より、効率はよさそうだ。
そう思ったら。
「ユカリさんヒットれす。1mより上れす」
俺は船を停めた。
香緒里ちゃんが残念そうに仕掛けを巻く。
そして由香里姉と巨魚との強烈なファイトが始まる。
だが。
引いていた竿が一気にテンションを失った。
「残念れす。糸が切れたれす」
大物用の極太なラインが、かなり下で切られていた。
ラインとジグを結び直して選手交代。
今度は香緒里ちゃんと月見野先輩が仕掛けを落とす。
今度はすぐに香緒里ちゃんの竿がしなった。
「50cm位れす。だからアカリさんはそのまま釣っていていいれす」
「結構重いです、これ」
「それも魚釣りの醍醐味さ。頑張れ」
そう言っている間に、今度は月見野先輩の竿も思い切りしなった。
「それは大きいれす。危ないかもしれないれす」
「大きさは?」
月見野先輩は必死に竿と格闘している。
「1.5mはあるれす」
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