機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第16章 新人歓迎! 新学期

68 春休みが終わって

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 昨日の新入生懇話会や学校案内。
 今日の研究会や各事務局等の紹介。
 そんな新入生対象の学生会主催行事2件を無事に終えた、4月6日金曜日の夜。

 俺達新役員全員、ぐったり疲れて露天風呂に浸っている。
 例によって香緒里ちゃんは樽湯、ジェニーが寝湯、奈津季さんと由香里姉がメインの浴槽で、俺と風遊美さんがぬる湯だ。

 ちなみに春休み中、少しだけ露天風呂を改装している。
 主な変更点は3つ。
  ○ ぬる湯の浴槽を少し拡大。
  ○ 樽湯ももうひとつ追加。
  ○ 樽湯の温度調整をほとんど水と同じ程度の温度まで低く出来るように改良(ジェニーの要望)。

 実はこの改装、個人的には風遊美さん対策だったのだ。
 しかしぬる湯を50センチ拡大しても結局何も変わらなかった。

 何故なら風遊美さんが、俺を基準に前と同じ間隔でぬる湯に入ってくるから。
 俺が端に逃げても同じ間隔に詰めてくる。
 下手に樽湯に逃げたらこの前と同じ状態になりかねない。
 だから結局現状維持だ。

「取り敢えず最初の行事は無事に乗り切れました。ありがとうございました」

「いえいえ風遊美さんこそお疲れ様でした。挨拶もあるし会長が一番大変でしょう。それに風遊美さんとジェニーのお陰で今年は助かりました」

「今年は特に留学生が多かったですしね」

 元々この高専は留学生が多い。
 俺達の代でも3割は留学生だ。

 元々この島全体が、国際的な魔法使いの避難所アジールとして機能していることもあって、隣の魔技大ともども留学生を積極的に受け入れている。
 今年は校舎改築工事が終わり高専の定員が増えたのだが、その増えた分のほとんどが留学生だったりする。
 実に入学者205名中82名が留学生。

 特区自体も日本以外の出身者が多い。
 教師陣もバイリンガルやトライリンガルが多い。
 だから留学生も、ある程度の日本語が使えれば不自由はないらしい。
 ただ説明の際、微妙なニュアンスやら何やら伝わりにくくて困る事もある。

 その点今年は、
  ○ ジェニーが英語とフランス語
  ○ 風遊美さんがスウェーデン語とドイツ語と英語
を使えるので色々とスムーズに行った。

 学校案内は集会形式で概要を簡単に説明した後、学校内を歩きながら施設や各教室等を紹介する。
 例年は言語の違いや文化の違い等で、上手く説明できない場合が多々あった。

 しかし今回、留学生組は使用言語で分けてジェニーと風遊美さんにそれぞれ引率してもらい、日本語の他に各言語で説明してもらった。
 部活や各研究会や執行部等の説明も、必要に応じて各言語で解説した。
 これは参加者にも各研究会等にも好評だったようだ。

「あとは研究会や部活の補正予算折衝と、学生会うちの新人募集ですね」

「程よい人数が来てくれれば嬉しんですが、難しいです」

「ジェニー制作のWebページは絶好調みたいですけれどね」

 ジェニーが制作している魔技高専学生会サイトは、既に学校や学生会の紹介という範囲を超え、掲示板や生活百科、リンク集や知恵袋的共助ページも加えた、一大ポータルサイトになっている。
 PVも既に一日あたり、総計で万を超えているらしい。

 そのうちサーバを管理している魔技大の情管から苦情が来るんじゃないだろうか。
 微妙に心配だったりする。

 寝湯にいたジェニーがこっちを向いた。

「今度の月曜の放課後、学生会の見学に3人来るれすよ」

 何だって!

「ジェニー。いつそういう話があったんだい」

「たった今、メールあったれす」

 ジェニーが防水タブレットを傍らから出す。
 田奈先生対策でカメラがアルミテープで塞いである風呂仕様だ。

 どれどれと皆が寝湯の方へ集まる。
 俺も本当は見たいのだが、裸女集合に加わる勇気はない。
 だからぬる湯に浸かったまま、声だけ聞くことにする。

「うわこれ何語ですか」

「フランス語れす。ソフィーちゃんはカナダのケベックの人なのれ」

「ソフィーちゃんって知り合い?」

「学生会サイトを作ってすぐメールをくれた人れす。補助魔法科に入ったと聞いているれす」

「3人という事は、他の2人もカナダからの留学生さんですか」

「ソフィーちゃんのペンパルれ、一人は日本人の女の子で一人は英国人の男子れす。それ以上はまだ聞いていないれす」

 詳細は不明という事か。

「男女比も人数もちょうどいいですね」

「でも性格とかはまだ不明です」

「ソフィーちゃんはいい子れすよ。何度もメール交換しましたからある程度はわかるれす」

「何れにせよ、出迎えの準備はしましょうか」

「お茶菓子と学生会の仕事内容のレジュメと、そんなものかな」

「レジュメは私達に説明したものを流用すればいいですね」

 話が自動的に進み始めている。
 内容的にも俺が出る幕はなさそうだ。
 なので久しぶりに一人の湯船を満喫しながら、のんびりさせて貰う。

 ◇◇◇

 コーヒーは今セットした落としたてを用意済。
 紅茶は現在蒸らし中であと2分でちょうど。
 パンフレットは学生会関係以外も色々と机上に用意してあるし、奈津希さんお手製クッキーも戸棚で出番を待っている。

 月曜日は1年生は4限まで。
 順当にいったらまもなく訪問者が来る予定だ。

「接近中れす。あと30秒で来るれす」

 ジェニーの魔法が来訪者を感知。そして。
 トン、トン、トン。
 学生会の扉がノックされた。
 香緒里ちゃんが扉を開ける。

「どうぞ」

 ちょっと緊張した感じの3人が入ってくる。
 日本人のかなり小柄な女子、濃い茶髪に丸メガネの男子、男子とほぼ同じ身長だけどいかにも細くて華奢な明るい茶髪ロングの女の子だ。

「まあ、座って下さいれす」

 ジェニーが椅子を引いて、どうぞと手招き。

「コーヒーがいいですか、紅茶がいいですか」

「あ、すみません。コーヒーがいいです」

「僕は紅茶で」

「私もコーヒーです」

 との事なので香緒里ちゃんがお茶を用意。
 なお学生会幹部は、風遊美さんとジェニーがコーヒー派、他の3人が紅茶派だ。
 お茶菓子も出て一通り落ち着いたところで、風遊美さんから口を開く。

「どうもはじめまして。会長の鷺沼風遊美です。ジェニーから今日訪問する話は聞いていますけれど、まずは何からお話したらいいでしょうか」

「副会長の宮崎台奈津希だ。まあ、特に細かい事は気にせず、何でも聞いてくれ。例えばこの特区のお勧め場所とか好きな男のタイプとか」

 それに続いて俺達も挨拶する。
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