81 / 202
第18章 まもりたいもの
81 俺は除外の魚釣り
しおりを挟む
中間テストも無事に終わり、補正予算折衝も何とか終わった、6月の平凡な平日。
補正予算折衝は、大方の研究会や部活にとって、不本意に終わったと思う。
実際に結構不満が多かったのだが、補正予算にも基準と予算枠があるのだ。
元々補正予算は新人が予想より多かったり、新たな実績なり、そういう事態の際に執行するものだ。
殆どの研究会等は新人の大幅獲得に失敗し、実績もそれ程無い。
なら当然、補正予算を支出する必要はないと見做される訳だ。
例外的に創造製作研究会は3人の新人獲得に成功、更に買い上げ物品の制作補助の実績も併せ、10万円強の補正予算獲得に成功した。
別に俺が古巣を贔屓した訳ではない。
彼らはそれ相応の努力をしたという事だ。
さて色々な面倒事が終わったので、俺はのんびり課題の制作をしている。
今回の課題は製作といっても、物ではなくプログラムだ。
円周率を自分で考えたアルゴリズムで作成し求めよ、という問題である。
ちなみに評点基準は既に公表されている。
① 円周率を独自アルゴリズムで30桁以上正確な値を求められた場合 A評価
② 同様に16桁以上正確な値を求められた場合 B評価
③ 正確な値が15桁以下、若しくはプログラムミスで動作しないがアルゴリズムは間違っていない場合 C評価
④ 但しアルゴリズムを自分で考えていないと判断された場合 D評価
なお他人またはネット等のアルゴリズムをコピーした可能性があると判断した場合は、確認のため教官室に呼び出しの上面接及び小テストを行う。
⑤ 使用可能な変数型は、標準ライブラリにあるもののみとする。
他人が作成した変数型を使用した場合は、D評価とする。
またプログラムの実行評価は、スタンドアロンの端末で行う。
⑥ D評価の者は再課題を別途作成し、提出することとなる。この場合の最高評価はBとする。
以上だ。
この課題のいやらしいと感じるところは、次の2点。
○ アルゴリズムを独自に考えてプログラムすること
○ A評価を受けるためには、プログラム言語上の仕様の長長整数型よりも桁数が多い計算を行うルーチンを自作する必要があること
ちなみに何故、プログラムの実行評価をスタンドアロン端末で行うという規定なのか。
これはネットを検索して正確な円周率を探してくるというお馬鹿なプログラムを、作って提出した先輩がいたためである。
なお当時の評点基準には抵触しなかったので、A評価を勝ち取ったらしい。
さて、今俺がいるのは、いつもの学生会工房。
今工房にいるのは、俺と香緒里ちゃんと詩織ちゃん。
風遊美さんとジェニーとソフィーちゃんは学生会室でサイト更新をしていて、奈津希さんとルイス君は外でトレーニング。
香緒里ちゃんは例によってバネ作業に追われていて、詩織ちゃんはまた怪しげな物を作っている。
「今回作っているのは、何なんだ」
詩織ちゃん、にやりと嗤う。
「単なるオーブンなのですよ。この前のお魚を、丸ごと中までこんがり焼けるオーブンがあったら楽しいかな。そう思ったのです」
この前のというのは、あの巨大カンパチのことだろう。
「そんなの食べている途中で飽きるし、腐る前に食べきれないだろ」
「ついでなので、低温乾燥機能とスモーク機能も追加するのです。ロウニンアジの丸ごとアジの開きとか、そのスモークとかを見てみたいです」
カンパチでは無く、飛行漁船で釣った巨大アジの方だったようだ。
確かにあの大きさのアジの開き、一度はやってはみたい気がする。
多分やったら後悔するパターンだろうとは思うけれど。
◇◇◇
そしてその終末、土曜日の早朝。
俺達は海に出ていた。
例の空飛ぶ漁船上から出ている釣り竿は3本。
4年生、2年生、1年生による学生会内学年対抗アジ釣り大会だそうだ。
体長40cm以上の美味しい魚をカウントし、重さの総合計で順位を決定。
賞品等は特になし。
また俺は船の操縦専任で、参加資格は無しとのこと。
何でそんな事になったかは簡単だ。
詩織ちゃんの馬鹿馬鹿しく大きいオーブンを見た奈津希さんが、ついノってしまったのだ。
「どうせなら、これでアジの開きや丸焼きをいくつか作って、学校内有志でパーティしようぜ」
釣り用の竿も3本に増えているし、仕掛け等も追加購入されていた。
用意がいいというか、要は奈津希さんが釣りをしたかっただけのような。
午前8時、釣り開始から開始30分が経過。
カウントされた釣果はまだ無い。
体長35cmのカイワリが今のところの最大サイズ。
あれをリリースした時、風遊美さんが凄く悔しそうな顔をしていたのは内緒だ。
「ジェニー、場所を変えたほうが良さそうか」
「いない訳ではないのれすが。このままの方向と速度であと5m落としてみてくらさい」
ジェニーの指示で3人共少し糸を出す。
いきなり一番左、一年生組の竿が曲がった。
「ヒット、体長50cmちょいです」
香緒里ちゃんと奈津希さんが、残念そうにリールを巻いて竿を上げる。
その横ではルイス君が、竿とリールを手に戦いを始めていた。
結構ガンガン下の方へ向かって引く。
横方向へファイトしすぎると、船のバランスが悪くなる。
だから真後ろに竿が向かうよう、俺は船を微調整。
魚が凄く暴れているようだ。
結構右に左に竿が持って行かれている。
だがルイス君はしっかりバランスを取っている。
むしろファイトを楽しんでさえいるようだ。
流石攻撃魔法科。
「いいなあ、楽しそうで。くすぐってやろうかな」
「頼むから止めて下さい」
ルイス君は奈津希さんとそんなやりとりをしながら、着実に魚を寄せている。
5分位かけ、ルイス君が汗びっしょりになって寄せたところを、奈津希さんがタモ網一発で掬い上げた。
見ると黒いロウニンアジ、といった感じの魚だ。
見かけはちょっと不気味でさえある。
「体長54cm、重さ7kg。食べられるかの判定は」
「シガテラ毒は大丈夫です」
「ブラックジャックだね。ギンガメアジの一種だ。これでいざという時の開き用は確保できたな」
奈津希さんはそう言って、氷温保存の魔法をかけて船庫へ。
1年組はソフィーちゃんに釣り竿が渡され、再び釣りが再開される。
今度はあっさりとジェニーの竿が曲がった。
補正予算折衝は、大方の研究会や部活にとって、不本意に終わったと思う。
実際に結構不満が多かったのだが、補正予算にも基準と予算枠があるのだ。
元々補正予算は新人が予想より多かったり、新たな実績なり、そういう事態の際に執行するものだ。
殆どの研究会等は新人の大幅獲得に失敗し、実績もそれ程無い。
なら当然、補正予算を支出する必要はないと見做される訳だ。
例外的に創造製作研究会は3人の新人獲得に成功、更に買い上げ物品の制作補助の実績も併せ、10万円強の補正予算獲得に成功した。
別に俺が古巣を贔屓した訳ではない。
彼らはそれ相応の努力をしたという事だ。
さて色々な面倒事が終わったので、俺はのんびり課題の制作をしている。
今回の課題は製作といっても、物ではなくプログラムだ。
円周率を自分で考えたアルゴリズムで作成し求めよ、という問題である。
ちなみに評点基準は既に公表されている。
① 円周率を独自アルゴリズムで30桁以上正確な値を求められた場合 A評価
② 同様に16桁以上正確な値を求められた場合 B評価
③ 正確な値が15桁以下、若しくはプログラムミスで動作しないがアルゴリズムは間違っていない場合 C評価
④ 但しアルゴリズムを自分で考えていないと判断された場合 D評価
なお他人またはネット等のアルゴリズムをコピーした可能性があると判断した場合は、確認のため教官室に呼び出しの上面接及び小テストを行う。
⑤ 使用可能な変数型は、標準ライブラリにあるもののみとする。
他人が作成した変数型を使用した場合は、D評価とする。
またプログラムの実行評価は、スタンドアロンの端末で行う。
⑥ D評価の者は再課題を別途作成し、提出することとなる。この場合の最高評価はBとする。
以上だ。
この課題のいやらしいと感じるところは、次の2点。
○ アルゴリズムを独自に考えてプログラムすること
○ A評価を受けるためには、プログラム言語上の仕様の長長整数型よりも桁数が多い計算を行うルーチンを自作する必要があること
ちなみに何故、プログラムの実行評価をスタンドアロン端末で行うという規定なのか。
これはネットを検索して正確な円周率を探してくるというお馬鹿なプログラムを、作って提出した先輩がいたためである。
なお当時の評点基準には抵触しなかったので、A評価を勝ち取ったらしい。
さて、今俺がいるのは、いつもの学生会工房。
今工房にいるのは、俺と香緒里ちゃんと詩織ちゃん。
風遊美さんとジェニーとソフィーちゃんは学生会室でサイト更新をしていて、奈津希さんとルイス君は外でトレーニング。
香緒里ちゃんは例によってバネ作業に追われていて、詩織ちゃんはまた怪しげな物を作っている。
「今回作っているのは、何なんだ」
詩織ちゃん、にやりと嗤う。
「単なるオーブンなのですよ。この前のお魚を、丸ごと中までこんがり焼けるオーブンがあったら楽しいかな。そう思ったのです」
この前のというのは、あの巨大カンパチのことだろう。
「そんなの食べている途中で飽きるし、腐る前に食べきれないだろ」
「ついでなので、低温乾燥機能とスモーク機能も追加するのです。ロウニンアジの丸ごとアジの開きとか、そのスモークとかを見てみたいです」
カンパチでは無く、飛行漁船で釣った巨大アジの方だったようだ。
確かにあの大きさのアジの開き、一度はやってはみたい気がする。
多分やったら後悔するパターンだろうとは思うけれど。
◇◇◇
そしてその終末、土曜日の早朝。
俺達は海に出ていた。
例の空飛ぶ漁船上から出ている釣り竿は3本。
4年生、2年生、1年生による学生会内学年対抗アジ釣り大会だそうだ。
体長40cm以上の美味しい魚をカウントし、重さの総合計で順位を決定。
賞品等は特になし。
また俺は船の操縦専任で、参加資格は無しとのこと。
何でそんな事になったかは簡単だ。
詩織ちゃんの馬鹿馬鹿しく大きいオーブンを見た奈津希さんが、ついノってしまったのだ。
「どうせなら、これでアジの開きや丸焼きをいくつか作って、学校内有志でパーティしようぜ」
釣り用の竿も3本に増えているし、仕掛け等も追加購入されていた。
用意がいいというか、要は奈津希さんが釣りをしたかっただけのような。
午前8時、釣り開始から開始30分が経過。
カウントされた釣果はまだ無い。
体長35cmのカイワリが今のところの最大サイズ。
あれをリリースした時、風遊美さんが凄く悔しそうな顔をしていたのは内緒だ。
「ジェニー、場所を変えたほうが良さそうか」
「いない訳ではないのれすが。このままの方向と速度であと5m落としてみてくらさい」
ジェニーの指示で3人共少し糸を出す。
いきなり一番左、一年生組の竿が曲がった。
「ヒット、体長50cmちょいです」
香緒里ちゃんと奈津希さんが、残念そうにリールを巻いて竿を上げる。
その横ではルイス君が、竿とリールを手に戦いを始めていた。
結構ガンガン下の方へ向かって引く。
横方向へファイトしすぎると、船のバランスが悪くなる。
だから真後ろに竿が向かうよう、俺は船を微調整。
魚が凄く暴れているようだ。
結構右に左に竿が持って行かれている。
だがルイス君はしっかりバランスを取っている。
むしろファイトを楽しんでさえいるようだ。
流石攻撃魔法科。
「いいなあ、楽しそうで。くすぐってやろうかな」
「頼むから止めて下さい」
ルイス君は奈津希さんとそんなやりとりをしながら、着実に魚を寄せている。
5分位かけ、ルイス君が汗びっしょりになって寄せたところを、奈津希さんがタモ網一発で掬い上げた。
見ると黒いロウニンアジ、といった感じの魚だ。
見かけはちょっと不気味でさえある。
「体長54cm、重さ7kg。食べられるかの判定は」
「シガテラ毒は大丈夫です」
「ブラックジャックだね。ギンガメアジの一種だ。これでいざという時の開き用は確保できたな」
奈津希さんはそう言って、氷温保存の魔法をかけて船庫へ。
1年組はソフィーちゃんに釣り竿が渡され、再び釣りが再開される。
今度はあっさりとジェニーの竿が曲がった。
48
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる