機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
137 / 202
第27章 ひとつだけの嘘~夏の旅行・後編

136 猛獣対怪獣観戦記

しおりを挟む
 夕食は美味いし量も十分にあった。
 刺身天ぷら煮物焼き物という典型的な和の会席料理に、ひつまぶしときしめんが付いていた。
 昼に奇食を食べ過ぎたジェニーとソフィーは全部食べられなかった位だ。
 その残りを詩織ちゃんと復活したロビーで平らげていたが。

 夕食に満足してしまった事もあり、何か皆でだらだらした感じになる。

「えー、今日はカラオケ行かないれすか」

「うちは昨日やったしな」

「まだ今日以外にも街中で3泊あるからさ」

「うー、じゃあ後でラーメン食べに行くです」

 例外はさっさと風呂に入って戻ってきた、ジェニーとソフィー。

「これから夜の部を攻めにいくれす」

「夜の部って何だ」

「日本の誇る漫画文化を堪能しに行くれすよ」

「漫画喫茶で漫画を読みまくってきますデス」

 おいおい、体力大丈夫か。

「朝御飯までには帰ってこいよ」

 腐女子2人が護衛兼小間使いのロビーを連れて出ていく。
 ロビーも色々大変だ。

「やっぱり、うちも負けていられないです。香緒里先輩、風遊美先輩、行くのです」

「行ってらっしゃい」

 ささっと逃げたが、やはり詩織ちゃんに捕まった。

「修先輩も当然参加なのです」

「何を」

「カラオケの練習なのです。攻撃魔法科に負ける訳にはいかないのです」

 別に勝ち負けやっている訳じゃないのだけれど。
 半ば無理やり詩織ちゃんに連れられ、名駅にあるカラオケボックスへ。
 21時までの学生料金で入り、ドリンク持って部屋へ。

「何か詩織ちゃん、慣れているな」

「姉貴と東京で何回か行ったですからね」

 成程、ならこの中では一番詳しいだろう。
 特区にカラオケは無い。
 個室に入り、分厚い本を渡される。

「これで歌いたい歌があれば探すですよ」

 詩織ちゃん自身は備付タブレットで、慣れた手つきで曲を探して入力する。

「このタブレットを使って検索もできるですよ。それでは」

 曲が始まり、詩織ちゃんがマイクを持つ。えらい派手な曲だ。
 全く俺の知らない曲だが、こういうのが今の流行りなのだろうか。
 何せ芸能関係は全く興味が無いので、全然わからない。

 だから歌いたい曲と言われても、そもそもどんな曲があるかすら俺は知らない。
 見ると香緒里ちゃんは何とか1曲入れた模様。
 風遊美さんは香緒里ちゃんにアドバイスを受けながら探しているようだ。

 それにしても詩織ちゃん、妙に慣れているしノッている。
 片手を振り上げたり裏声つかったり、なんかもう。

 一応手拍子で応援してやるが、正直俺はこんなのする自信無いぞ。
 最後のサビまできっちり決めて、詩織ちゃんはマイクのスイッチを落とした。

「さあ、どんどん入れるですよ。修先輩入れたですか」

「いや、だって歌える曲をそもそも知らないし」

 詩織ちゃんにすごい大げさなため息をつかれる。

「だろうと思ったのですよ。なら修先輩は特訓なのです。フリータイム時間のみできっちり仕上げるのです」

 香緒里ちゃんの歌を片手で応援しながら、詩織ちゃんは勝手に曲をタブレットで入れる。
 同じ曲を3回だ。

「一緒に歌ってあげるので特訓なのですよ。覚悟するのです……」

 何故だ。
 どうしてこうなった。

 ◇◇◇

 そして翌朝、まだ頭の中を何曲かリフレインしている。
 俺のスマホにも入れられているし。

「4曲ともニコニコ動画ではメジャーなボカロ曲なのです。ですから心おきなく聞いて覚えるですよ。とりあえずこの3曲とデュエット1曲は東京決戦までにマスターするです」

 どれも割とメジャーなカラオケ曲らしい。
 何がメジャーなのか、俺にはよくわからないけれども。

 いずれもテンポのいい曲で、特に1つは早口言葉に近い感じだ。
 しかしこんな曲が流行っているのだろうか。
 俺は今まで聞いた事が無いのだけれど。

 そして詩織ちゃん、最後に歌った異様な超早口の入るあの曲は何だったんだ。
 人間の曲じゃないぞ、それ。
 まあ人間じゃなくてボカロの曲なのだろうけれど。

 さて、今日は真っ当に名古屋観光の予定だ。
 名古屋城を見てひつまぶしを食べて、大須の商店街をぶらっと散歩して……
 と思ったら詩織ちゃんに捕まった。

「何処へ行くですか」

「いや、名古屋に来たんだから、名古屋城を見てひつまぶしを食べて大須の商店街……」

「今日は朝からカラオケ店が開いているのです。フリータイム料金でお得に特訓なのです」

 止めてくれ。

「面白そうだな。僕も混ぜてくれないか」

 あ、猛獣様なつきさんがやって来てしまった。

「いいですよ。敵に不足ないのです」

「よし、行くぞルイス!」

 不運にもすぐ近くにいたルイスが捕まった。
 犠牲者、俺の他にもう1人追加だ。
 他の皆様はとっくに逃げている。

 4人で昨日夜にも行ったカラオケ店へ。

「まずはジャブですよ」

 詩織ちゃんは良く歌っている派手派手な歌を歌う。
 俺も仕方無く、昨日教わった中で比較的歌いやすい真っ当なのを入れる。

 俺が入れた曲が3曲め。
 という事は奈津季さんが入れたのだろう。
 ルイス君も1曲入れる。

「成程、ボカロ系か。ならこっちは大人な歌で勝負だ」

 セックス・ピストルズに似ているけれど違うグループの名前が出る。
 何だこれは。
 いきなり給食とか鬼とか叫んでいるぞ。

「ONIGUNSOW!ですか。やりますね」

 給食とか昼休みとかどう聞いても大人な歌ではない自称大人の歌の後、仕方なく俺の番。
 あ、間違えて早口な方を入れていた。
 おかげで序盤がちょっと失敗したが、まあ何とか歌い終わる。

 次はルイスが英語の歌を歌う。
 これはビートルズだっけ?
 明るくてテンポよくてまっとうな歌で大変よろしい。
 微妙に『大変な日の夜』という歌の選択に恨みが出ているような気がするけれど。

「ならこっちはこれですよ」

 例の無茶苦茶早口で最高速な別れの歌だ。

「もう俺達は出来るだけ歌わないで見てようぜ」

 ルイス君にこっそり耳打ち。
 そして奈津希さんはみかん!を連呼し始めた。

 猛獣対怪獣の戦いは続く。
 俺とルイスに救いは来ない……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...