152 / 202
第30章 冬はつとめて(2) ~修4年冬編・後半~
151 プログレス計画・起動
しおりを挟む
俺の部屋に座敷童子が出没するようになった。
俺のパソコンの研究用ファイルや、部屋に置いてある試作品等を勝手に漁っていく。
その正体は勿論詩織ちゃんだ。
そしてその理由もわかっている。
「修先輩、魔法杖の魔力増幅機構について教えてほしいのです!」
1月2日、午後3時45分。
帰省から戻ったばかりの俺は、いきなり詩織ちゃんにそうお願いされた。
「何で。杖でも作るのか」
詩織ちゃんの魔力は島内でも最強級。
しかも自分用に改造した魔力増幅アミュレットも所持している。
悪用厳禁ということで学園祭時に取り上げたのだが、結局休み前に返してやったのだ。
相変わらず本土に時々出かけているようだが、まあそれ位は大目に見てやろう。
「理由は秘密なのです。でも最強に近い増幅機構がどうしても欲しいのです」
まあ勉強するのはいい事だ。
それにこの分野、学問としてまとまっていないので、調べるのは結構大変。
俺も網羅するのに半年以上かかった。
だからまあ、協力はしてやろう。
「なら俺の資料は全部貸してやる。試作品もこの部屋にあるのは自由に持っていっていい。でも質問はどうしても分からない処限定な。その条件でどうだ」
「ありがとうなのです。では早速めぼしいものを分析させて頂くのです」
詩織ちゃんは審査魔法は無いが、外から見えない部分等も高次元的に見て確認する事が出来る。
しかも視覚の分解能が常人の数倍らしい。
どういう視力をしているのかはよくわからない。
何せ5.0まである視力検査表でも、読めない場所は無いらしいから。
「あと俺のパソコンも俺が使っていない時は自由に使っていい。このパソコンでクラウドディスクを開けば、俺がまとめた関連論文等の資料庫がある。俺の論文の下書き等も入っているから適当に見て、必要ならコピーしてくれ」
「協力、ありがとうなのでございます」
微妙な敬礼で返される。
そして詩織ちゃんは早速、最強杖試作品の招き猫ストラップを持って消えた。
実は今、俺は詩織ちゃんの作業と同じ方向性にある作業にとりかかろうとしている。
今までの理論を超える魔力増幅理論の構築と、その実証物たる最強の杖。
確かに奈津希さんに渡したものは現在技術の最先端に近い、最強の魔法操作支援具だ。
だが所詮、集大成でしかない。
類似品こそ江田先輩に渡したものしか無いが、あくまで既存理論の整理と統合の産物。
だが既存論文をほぼ網羅し集大成の最強杖を作った現在の俺には、うっすらとだが新たな方向性と理論が見え始めている。
今までの理論の、更にその先にあるもの。
仮に名前を『進化』とでも名付けようか。
まずは今見えかけている理論の整理。
そして実証用の試作品の制作だ。
俺は思考メモ用のテキストエディタと、試作品設計用のCADを画面に表示する。
さあ、始めよう。
◇◇◇
まずは実証用と比較用の杖の制作だ。
比較用とは今までの理論を総動員したもの。
要は奈津季さん用のボールペンを、杖として再設計した代物だ。
まずはこちらから取り掛かるべきだろう。
内容も方針も見えているし、作成中に新たな気づきもあるはずだ。
なお、このマンションに本日滞在しているのは俺の他に3人。
風遊美さん、奈津季さん、詩織ちゃんの3人だ。
この3人は帰省しない組。
俺のいない間は3人で適当に、この部屋で過ごしていたらしい。
ちなみに今年の授業は7日スタート。
ほとんどの面子は5日午後の飛行機で戻ってくる予定だ。
そして。
「そろそろ皆が帰って来た時の御馳走の調達をしようぜ」
奈津季さんが夕食時に、そう提案。
要は明日釣りに行こうぜ、というお誘いだ。
「いいですね。そろそろ冷凍食品以外も食べたいですし」
「一発、大きいのを狙うですよ」
2人とも乗り気。
「でも、今回は魚群探知機はいませんよ」
「代わりに潜水艇があるじゃないか」
お、そう来たか。
「でも冬の海なんて寒いですよ」
「ここは南国だぜ。冬だって海水温は20℃ある」
それって潜るには結構冷たい気が……
「それに水中と水上では電波は通じにくいですよ。長波帯のトランシーバなんて代物は無いですし」
「そうか。なら残念だが下手な鉄砲方式で行くか。
つまりレーダー無しか。
「数撃ちゃ当たるですよ、きっと」
景気いい事を詩織ちゃんは言うけれど……
◇◇◇
「釣れねえ」
ジェニーの有り難みを、俺達は思い切り認識する事になった。
開始から2時間。いつもと場所はほぼ同じ。
使っている仕掛けも下ろしている深さもほぼ同じ。
でも、釣れない。悲しいくらいに竿が動かない。
竿も1本増え4人共に構えているのに全然釣れない。
「諦めて小さい仕掛けで小物を狙いましょうか」
「でも14人の大所帯だろ。小さいのだと圧倒的に量が足りない」
14人で、かつ皆よく食べるしな。
「なら仕方ないです。そろそろ必殺技を出すのです」
詩織ちゃんがそう言って、リールを巻き始める。
完全にリールを巻いて、自分の仕掛けも全て片付けてしまった。
その代わりに取り出したのは、見覚えあるアイテム2つ。
例の詩織ちゃん改造済みアミュレットと招き猫型最強杖試作品だ。
学園祭で田奈先生がやっていたのと同じように両手で2つの魔道具を握って、一気に魔力を増大させる。
「おいおいこれって」
それほど魔力感知が得意でない俺でもわかる位凶悪な魔力だ。
風遊美さんがさささっと自分の釣り道具を片付ける。
俺や奈津希さんもそれに倣う。
そして。
ドン、という大きな音とともに、船が揺れた。
現れたのは巨大な魚。豪快に跳ねている。
奈津季さんが冷却魔法で強引にとどめを刺し、船倉に巨体を押し込んだ。
「毒は無いですね」
「カンパチだね」
「重さ12kgです」
医療魔法担当、調理担当、そして審査魔法持ちの俺の感想は以上になる。
俺のパソコンの研究用ファイルや、部屋に置いてある試作品等を勝手に漁っていく。
その正体は勿論詩織ちゃんだ。
そしてその理由もわかっている。
「修先輩、魔法杖の魔力増幅機構について教えてほしいのです!」
1月2日、午後3時45分。
帰省から戻ったばかりの俺は、いきなり詩織ちゃんにそうお願いされた。
「何で。杖でも作るのか」
詩織ちゃんの魔力は島内でも最強級。
しかも自分用に改造した魔力増幅アミュレットも所持している。
悪用厳禁ということで学園祭時に取り上げたのだが、結局休み前に返してやったのだ。
相変わらず本土に時々出かけているようだが、まあそれ位は大目に見てやろう。
「理由は秘密なのです。でも最強に近い増幅機構がどうしても欲しいのです」
まあ勉強するのはいい事だ。
それにこの分野、学問としてまとまっていないので、調べるのは結構大変。
俺も網羅するのに半年以上かかった。
だからまあ、協力はしてやろう。
「なら俺の資料は全部貸してやる。試作品もこの部屋にあるのは自由に持っていっていい。でも質問はどうしても分からない処限定な。その条件でどうだ」
「ありがとうなのです。では早速めぼしいものを分析させて頂くのです」
詩織ちゃんは審査魔法は無いが、外から見えない部分等も高次元的に見て確認する事が出来る。
しかも視覚の分解能が常人の数倍らしい。
どういう視力をしているのかはよくわからない。
何せ5.0まである視力検査表でも、読めない場所は無いらしいから。
「あと俺のパソコンも俺が使っていない時は自由に使っていい。このパソコンでクラウドディスクを開けば、俺がまとめた関連論文等の資料庫がある。俺の論文の下書き等も入っているから適当に見て、必要ならコピーしてくれ」
「協力、ありがとうなのでございます」
微妙な敬礼で返される。
そして詩織ちゃんは早速、最強杖試作品の招き猫ストラップを持って消えた。
実は今、俺は詩織ちゃんの作業と同じ方向性にある作業にとりかかろうとしている。
今までの理論を超える魔力増幅理論の構築と、その実証物たる最強の杖。
確かに奈津希さんに渡したものは現在技術の最先端に近い、最強の魔法操作支援具だ。
だが所詮、集大成でしかない。
類似品こそ江田先輩に渡したものしか無いが、あくまで既存理論の整理と統合の産物。
だが既存論文をほぼ網羅し集大成の最強杖を作った現在の俺には、うっすらとだが新たな方向性と理論が見え始めている。
今までの理論の、更にその先にあるもの。
仮に名前を『進化』とでも名付けようか。
まずは今見えかけている理論の整理。
そして実証用の試作品の制作だ。
俺は思考メモ用のテキストエディタと、試作品設計用のCADを画面に表示する。
さあ、始めよう。
◇◇◇
まずは実証用と比較用の杖の制作だ。
比較用とは今までの理論を総動員したもの。
要は奈津季さん用のボールペンを、杖として再設計した代物だ。
まずはこちらから取り掛かるべきだろう。
内容も方針も見えているし、作成中に新たな気づきもあるはずだ。
なお、このマンションに本日滞在しているのは俺の他に3人。
風遊美さん、奈津季さん、詩織ちゃんの3人だ。
この3人は帰省しない組。
俺のいない間は3人で適当に、この部屋で過ごしていたらしい。
ちなみに今年の授業は7日スタート。
ほとんどの面子は5日午後の飛行機で戻ってくる予定だ。
そして。
「そろそろ皆が帰って来た時の御馳走の調達をしようぜ」
奈津季さんが夕食時に、そう提案。
要は明日釣りに行こうぜ、というお誘いだ。
「いいですね。そろそろ冷凍食品以外も食べたいですし」
「一発、大きいのを狙うですよ」
2人とも乗り気。
「でも、今回は魚群探知機はいませんよ」
「代わりに潜水艇があるじゃないか」
お、そう来たか。
「でも冬の海なんて寒いですよ」
「ここは南国だぜ。冬だって海水温は20℃ある」
それって潜るには結構冷たい気が……
「それに水中と水上では電波は通じにくいですよ。長波帯のトランシーバなんて代物は無いですし」
「そうか。なら残念だが下手な鉄砲方式で行くか。
つまりレーダー無しか。
「数撃ちゃ当たるですよ、きっと」
景気いい事を詩織ちゃんは言うけれど……
◇◇◇
「釣れねえ」
ジェニーの有り難みを、俺達は思い切り認識する事になった。
開始から2時間。いつもと場所はほぼ同じ。
使っている仕掛けも下ろしている深さもほぼ同じ。
でも、釣れない。悲しいくらいに竿が動かない。
竿も1本増え4人共に構えているのに全然釣れない。
「諦めて小さい仕掛けで小物を狙いましょうか」
「でも14人の大所帯だろ。小さいのだと圧倒的に量が足りない」
14人で、かつ皆よく食べるしな。
「なら仕方ないです。そろそろ必殺技を出すのです」
詩織ちゃんがそう言って、リールを巻き始める。
完全にリールを巻いて、自分の仕掛けも全て片付けてしまった。
その代わりに取り出したのは、見覚えあるアイテム2つ。
例の詩織ちゃん改造済みアミュレットと招き猫型最強杖試作品だ。
学園祭で田奈先生がやっていたのと同じように両手で2つの魔道具を握って、一気に魔力を増大させる。
「おいおいこれって」
それほど魔力感知が得意でない俺でもわかる位凶悪な魔力だ。
風遊美さんがさささっと自分の釣り道具を片付ける。
俺や奈津希さんもそれに倣う。
そして。
ドン、という大きな音とともに、船が揺れた。
現れたのは巨大な魚。豪快に跳ねている。
奈津季さんが冷却魔法で強引にとどめを刺し、船倉に巨体を押し込んだ。
「毒は無いですね」
「カンパチだね」
「重さ12kgです」
医療魔法担当、調理担当、そして審査魔法持ちの俺の感想は以上になる。
41
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる