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第33章 詩織ちゃんの新魔法と裏切りの黒魔女
180 やはり俺達はかなわない
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しょうがない、ゼミ同僚もそう聞いているんだし、説明してやるとしよう。
「今回の杖の試みの1つは魔法陣の回路化だ。色々な機能を持つ魔法陣を、機能毎にチップ化して、組換や複合化し易くする。そうすれば任意の性能の杖が組みやすくなるし、複雑な積層魔法陣も簡単に組めるだろ。これはその基礎となる積層魔法陣の基本のチップだ」
「うーん、わからないわ」
「電子回路みたいな物なのですか」
詩織ちゃんは何となくわかってくれたようだ。
まあ魔法工学科だしな。
「そう。ただ論理回路というよりは、オーディオ等の増幅回路に近い。アンプ回路や電源回路等のチップと同じように、魔力を増幅したり安定化したり」
「イメージとしては分かるのです。でもメリットがよくわからないのです」
「メリットは色々あるさ。例えば設計が楽になるとか。チップの組換で医療用も作れるし攻撃魔法用にも出来る。拡散にするか収束型にするかだって、チップを変えるだけで済む。
いずれは論理回路も取り付けて、使用する状況毎に最適な性能に変化する杖にするつもりだけどさ。そうすれば用途毎に違う杖を用意する必要も無くなるだろ」
「私や風遊美先輩のヘリテージと同じ方式では駄目なのですか」
「ヘリテージは強力すぎて、逆に細かい作業するには不向きだろ。例えば集団一斉治療とかをしない限り、医療用としてはテュルソスの方が使い易い筈だ。詩織だってヘリテージ使ってICチップの中を修理しろと言われたらやりにくいだろ。
そういった出力の適正化なんてのも、チップ化すれば視野に入ってくる。チップを量産すればコストも下がるし」
「成程、使用状況に合せて別々の杖を持つのと同じなの……ん、状況に合わせて別々……ちょっと待って下さいなのです」
突如詩織ちゃんが目をつむり、考え込んだ、
手がキーボードを叩くように動いている。
世田谷が何か言おうとしたのを、ルイスが手で制した。更に世田谷に目で合図する。
ちょっと黙って様子をみよう、という意味だろう。
俺と話している時に、詩織ちゃんは何かを思いついたらしい。
ルイスが俺の机からメモ用紙とボールペンを取って、詩織ちゃんに渡す。
詩織ちゃんはそれを受取り、何やら記号や図をざざっと書いていく。
その意味は俺には、きっとルイスにも世田谷にもわからないが、何かその図形等で考えをまとめているらしい。
そして。
詩織ちゃんは顔を上げ、俺の方を見た。
「修先輩、ジャンケンの10回勝負をお願いしたいです」
明らかに詩織ちゃんは何かに気づいたようだ。
ならば。
「風遊美さんを呼んでこようか?」
「まずは修先輩で試すです」
よし、ならば手くらいは貸してやろう。
「それでは行くですよ、せーの! ジャンケンポン!」
グー対チョキ
パー対グー
パー対グー
グー対チョキ
チョキ対パー
パー対グー
パー対グー
グー対チョキ
パー対グー
パー対グー
見事に俺の完敗だ。
という事は……
「出来た訳か」
詩織ちゃんは頷いた。
「ただ時間軸先方向を見るだけでは、自分の行動で揺れ動く可能性がある場合の結果は見えなかったのです。なので結果を見るには、自分の行動を選択する必要があるのです。その自分の行動の選択肢毎の結果を確認すれば、答えは出る訳なのです」
正解だ。
「答え合わせは俺じゃなくて風遊美さんの役目だな。今呼んでくる」
俺は立ち上がり、リビングへ。
風遊美さんは月見野先輩と座卓でオセロをやっていた。
「風遊美さん、終わったらでいいのでお願いできますか。詩織ちゃんが宿題を解いたらしいので」
「あら。なら私も一緒に行こうかしら」
月見野先輩がそう言って、そしてオセロを片付け始める。
「あれ、ゲームの方はいいんですか」
月見野先輩が頷いた。
「元々風遊美の魔法のトレーニング用にやっていましたので」
風遊美さんも頷く。
「やっぱり選択肢が多いと大変ですね。杖なしで魔法を使ってオセロをすると、自分の未熟さがよくわかります」
つまり風遊美さん、新魔法を使えるように鍛えていた訳か。
何というか本当に真面目というか、油断も隙も無いというか。
オセロ板を片付けて立ち上がり、3人で俺の部屋へ。
決して広くはない俺の部屋に6人はちと多いが、ベッド2人椅子2人で何とか陣取る。
立っている2人は風遊美さんと詩織ちゃんだ。
「この前と同じ方法で行います。途中の勝ち負けに関係なく同じテンポで10回勝負しますので、そのつもりでお願いします」
詩織ちゃんは頷く。
そして。
グー対グー。
いきなり引き分けた。
それでも勝負は続く。
パー対グー
チョキ対チョキ
チョキ対グー
パー対チョキ
パー対グー
チョキ対チョキ
チョキ対パー
グー対チョキ
パー対パー
風遊美さんは頷いた。
「私の負けです。でも、もう種明かしをする必要は無いですね」
詩織ちゃんは頷く。
「自分の選択肢を選ぶというところに、なかなか気づけなかったのです。という事で早速……」
「ちょっと待って下さいな」
月見野先輩が詩織ちゃんを制して、そのまま部屋外へ出ていく。
すぐ戻ってきたその手には、紙袋が下がっていた。
「本当は今日の3時のおやつにしようと思ったのですけれども。ちょうどいいのでこれを奈津季に持っていって下さいな」
「わかったのです。ありがとうなのです。では靴を履いてから行ってくるのです」
詩織ちゃんは部屋を出て行く。
ドアが締まり、ちょっとした間を置いてから、月見野先輩が悪そうに笑った。
「さて、今もたせたお土産のお返し、詩織が持って帰ってくと思う人は手を上げて下さいな」
おいおい、俺はそんな事考えつきもしなかったぞ。
でも風遊美さんと香緒里ちゃん、それに世田谷は手を上げている。
「奈津希の事ですからきっとこのお菓子の出処に気づくと思うのです」
「私も風遊美さんと同意見です」
「東京のお土産が本場のお菓子に化けるなら安いものよね」
つまりは月見野先輩がお土産を持ってきたのは、打算だった訳だ。
俺には思いつかない発想だ。
思わず俺とルイスは顔を見合わせる。
お互いの目が語っていた。
女って、怖いな……と。
「今回の杖の試みの1つは魔法陣の回路化だ。色々な機能を持つ魔法陣を、機能毎にチップ化して、組換や複合化し易くする。そうすれば任意の性能の杖が組みやすくなるし、複雑な積層魔法陣も簡単に組めるだろ。これはその基礎となる積層魔法陣の基本のチップだ」
「うーん、わからないわ」
「電子回路みたいな物なのですか」
詩織ちゃんは何となくわかってくれたようだ。
まあ魔法工学科だしな。
「そう。ただ論理回路というよりは、オーディオ等の増幅回路に近い。アンプ回路や電源回路等のチップと同じように、魔力を増幅したり安定化したり」
「イメージとしては分かるのです。でもメリットがよくわからないのです」
「メリットは色々あるさ。例えば設計が楽になるとか。チップの組換で医療用も作れるし攻撃魔法用にも出来る。拡散にするか収束型にするかだって、チップを変えるだけで済む。
いずれは論理回路も取り付けて、使用する状況毎に最適な性能に変化する杖にするつもりだけどさ。そうすれば用途毎に違う杖を用意する必要も無くなるだろ」
「私や風遊美先輩のヘリテージと同じ方式では駄目なのですか」
「ヘリテージは強力すぎて、逆に細かい作業するには不向きだろ。例えば集団一斉治療とかをしない限り、医療用としてはテュルソスの方が使い易い筈だ。詩織だってヘリテージ使ってICチップの中を修理しろと言われたらやりにくいだろ。
そういった出力の適正化なんてのも、チップ化すれば視野に入ってくる。チップを量産すればコストも下がるし」
「成程、使用状況に合せて別々の杖を持つのと同じなの……ん、状況に合わせて別々……ちょっと待って下さいなのです」
突如詩織ちゃんが目をつむり、考え込んだ、
手がキーボードを叩くように動いている。
世田谷が何か言おうとしたのを、ルイスが手で制した。更に世田谷に目で合図する。
ちょっと黙って様子をみよう、という意味だろう。
俺と話している時に、詩織ちゃんは何かを思いついたらしい。
ルイスが俺の机からメモ用紙とボールペンを取って、詩織ちゃんに渡す。
詩織ちゃんはそれを受取り、何やら記号や図をざざっと書いていく。
その意味は俺には、きっとルイスにも世田谷にもわからないが、何かその図形等で考えをまとめているらしい。
そして。
詩織ちゃんは顔を上げ、俺の方を見た。
「修先輩、ジャンケンの10回勝負をお願いしたいです」
明らかに詩織ちゃんは何かに気づいたようだ。
ならば。
「風遊美さんを呼んでこようか?」
「まずは修先輩で試すです」
よし、ならば手くらいは貸してやろう。
「それでは行くですよ、せーの! ジャンケンポン!」
グー対チョキ
パー対グー
パー対グー
グー対チョキ
チョキ対パー
パー対グー
パー対グー
グー対チョキ
パー対グー
パー対グー
見事に俺の完敗だ。
という事は……
「出来た訳か」
詩織ちゃんは頷いた。
「ただ時間軸先方向を見るだけでは、自分の行動で揺れ動く可能性がある場合の結果は見えなかったのです。なので結果を見るには、自分の行動を選択する必要があるのです。その自分の行動の選択肢毎の結果を確認すれば、答えは出る訳なのです」
正解だ。
「答え合わせは俺じゃなくて風遊美さんの役目だな。今呼んでくる」
俺は立ち上がり、リビングへ。
風遊美さんは月見野先輩と座卓でオセロをやっていた。
「風遊美さん、終わったらでいいのでお願いできますか。詩織ちゃんが宿題を解いたらしいので」
「あら。なら私も一緒に行こうかしら」
月見野先輩がそう言って、そしてオセロを片付け始める。
「あれ、ゲームの方はいいんですか」
月見野先輩が頷いた。
「元々風遊美の魔法のトレーニング用にやっていましたので」
風遊美さんも頷く。
「やっぱり選択肢が多いと大変ですね。杖なしで魔法を使ってオセロをすると、自分の未熟さがよくわかります」
つまり風遊美さん、新魔法を使えるように鍛えていた訳か。
何というか本当に真面目というか、油断も隙も無いというか。
オセロ板を片付けて立ち上がり、3人で俺の部屋へ。
決して広くはない俺の部屋に6人はちと多いが、ベッド2人椅子2人で何とか陣取る。
立っている2人は風遊美さんと詩織ちゃんだ。
「この前と同じ方法で行います。途中の勝ち負けに関係なく同じテンポで10回勝負しますので、そのつもりでお願いします」
詩織ちゃんは頷く。
そして。
グー対グー。
いきなり引き分けた。
それでも勝負は続く。
パー対グー
チョキ対チョキ
チョキ対グー
パー対チョキ
パー対グー
チョキ対チョキ
チョキ対パー
グー対チョキ
パー対パー
風遊美さんは頷いた。
「私の負けです。でも、もう種明かしをする必要は無いですね」
詩織ちゃんは頷く。
「自分の選択肢を選ぶというところに、なかなか気づけなかったのです。という事で早速……」
「ちょっと待って下さいな」
月見野先輩が詩織ちゃんを制して、そのまま部屋外へ出ていく。
すぐ戻ってきたその手には、紙袋が下がっていた。
「本当は今日の3時のおやつにしようと思ったのですけれども。ちょうどいいのでこれを奈津季に持っていって下さいな」
「わかったのです。ありがとうなのです。では靴を履いてから行ってくるのです」
詩織ちゃんは部屋を出て行く。
ドアが締まり、ちょっとした間を置いてから、月見野先輩が悪そうに笑った。
「さて、今もたせたお土産のお返し、詩織が持って帰ってくと思う人は手を上げて下さいな」
おいおい、俺はそんな事考えつきもしなかったぞ。
でも風遊美さんと香緒里ちゃん、それに世田谷は手を上げている。
「奈津希の事ですからきっとこのお菓子の出処に気づくと思うのです」
「私も風遊美さんと同意見です」
「東京のお土産が本場のお菓子に化けるなら安いものよね」
つまりは月見野先輩がお土産を持ってきたのは、打算だった訳だ。
俺には思いつかない発想だ。
思わず俺とルイスは顔を見合わせる。
お互いの目が語っていた。
女って、怖いな……と。
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