機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第36章 お役目のない学園祭

192 言い訳の代価

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「じゃあ私から紹介しましょう」

 この研究室の学生筆頭にして真の大ボスである大塚先輩がそう言ってくれた。
 うまい説明が思いつかなかった俺は、ちょっとほっとする。

「まずは先生から。雪ヶ谷先生、新進気鋭の准教授と言えば聞こえは良いですけれど、長津田の研究室では別の意見もあるんですよね」

 そう言われたからには、正直かつ率直に答えさせて貰おう。

「新地先生に言わせると『講師の席欲しさに魂を補助魔法科に売った、同期の裏切り者』ですね」

 雪ヶ谷先生は、新地先生と高専及び魔技大で同期だ。
 当時はどっちも魔法工学科専攻。なのでお互い遠慮ない。

「だから私も新地君の事は、保守本流の腰巾着と呼んであげているけどね」

 要するにそういう間柄だ。

「私が大塚、補助魔法科の専科2年です。長津田くんとの関係はまあ、創造製作研究会や田奈先生経由で長津田君に色々無茶な注文をしたクライアントってところでしょうか」

 大塚先輩が、俺とこの研究室及び大塚先輩との関係を簡単に説明する。
 ならという事で、簡単に補足説明をしておこう。
 
「今は魔法感知器も大分小さく出来るようになりましたけどね。でもあの基礎回路は、俺じゃなくて玉川先輩の作品です、本当は」

「当人は『作るの飽きた、面倒い』って、途中から全部、長津田君に投げたのですけれどね。結局検知データの電気情報化は、学生会に入った後も長津田君にやってもらったんです。おかげでデータとして処理できるようになりました」

「という関係なの。なので研究室配置の時も、長津田君をここに誘ったんだけれども、事もあろうに新地君の処に逃げられた訳」

「という訳で、俺もここの研究室はそこそこ知っている。先生同士が知り合いだから、うちの研究室とも仲がいいしな」

 俺、大塚先輩、そして先生の3人での説明が終わる。
 香緒里ちゃんの目が点になっ玉までなのはまあ、仕方ない。

 でも俺もまさかこの研究室が、香緒里ちゃんにコナかけると思っていなかったんだ。
 考えてみれば確かに、納得出来る理由は多いのだけれど。

「他にも学生会では、ソフィーさんにデータ取り手伝ってもらったりしているしね。去年からロビーさんに開発も手伝ってもらっているけれど。私以外にメカわかる人がいないしね。長津田君を取り損なったし」

「でもまさか、薊野を取ろうとすると思わなかったな」

 俺は学生会外では、香緒里ちゃんを薊野と呼ぶ事にしている。

「だって申し訳ないけど、心理系の魔法が使えてメカがわかる学生なんて、うちとしてはどうしても欲しいじゃない」

 雪ヶ谷先生、本音だだ漏れの説明だ。

「長津田が関係者という処が問題だけどな」

「煩いこのお祭り男」

 俺と池尻の掛け合いは大目に見て欲しい。

「他にも助手の先生1人、専科が私以外に3人、学生が今の3年から5年まで15人いるんですけれどね。今はお祭りだから受付担当を除いて皆あちこち回っています。でもまあ宜しければ、昨今の研究成果とか課題の内容についての展示もしてありますので見てやってくださいな。結局決めるのは薊野さんですから。研究室からの希望より学生からの希望が優先されますからね」

 さらっと大塚先輩がまとめる。
 流石この研究室の真の大ボス。色々とそつがない。

 ◇◇◇

 大塚先輩による、展示や研究室概要等の説明の後。
 俺と香緒里ちゃんは、お馴染み創造制作研究会の喫茶室に陣取った。
 今年は2区画半使っているので、広さや席数に余裕がある。

「何か修兄に、これでもかと先回りされた気分です」

 そして香緒里ちゃんがふくれている。
 理由はまあ、本人が今言ったとおりだろう。

「いや、まさか雪ヶ谷先生の研究室ところが話を持っていくとは思わなかったんだ」
 
 これは本当だ。俺自身そんな話を事前に聞いていなかった。
 知ったのはソフィー経由で本当に偶然だ。
 だから状況だけは一応聞いたけれど、それ以上の根回しも何もしていない。

「でもまあ、知らなかったという話は信じてあげます。先輩もそう言ってましたし」

 そう聞いて俺はほっとする。
 大塚先輩のおかげだ。

 まあ事実として、俺は何もしていないのだけれども。
 それでも香緒里ちゃんの機嫌を損ねたままだと、落ち着かないし。

「このパフェと、明日の差し入れ人数分で手を打ってあげます」

「はいはい」

 交換条件は素直に受け入れることにした。

 ちなみに香緒里ちゃんが食べているのは、この店で最高額の最高級和風パフェ。
 あんこと白玉とみつまめと羊羹と……とまあ色々和風な物が入ってクリームで飾ってある代物だ。
 ちなみに俺は白玉団子、あんこ盛りだ。

 これにぼたもちを11個は結構出費だが……まあいいか。
 香緒里ちゃんの機嫌には代えられない。

 ふと柱時計の表示が目に入った。
 そこでちょっと気になったので、香緒里ちゃんに聞いてみる。

「そろそろ学生会の当番、大丈夫か」

 屋上で会ってから既に2時間程度過ぎている。
 確か今日は
  ○ ルイスが斬りまくり大会出場で学生会に出れない
  ○ 詩織ちゃんとロビーはテレビ局協賛のリアルロボット大戦に出場
  ○ ソフィーは取材で飛び回っている
で人が足りない筈だ。

「あ、そう言えば……」

 香緒里ちゃんは腕時計を見る。
 表情が変わった。

「修兄すみません、行ってきます」

 見事なまでのダッシュで消える。
 それでも皿はきちんと空になっている。
 流石だ。

「お、どうした。逃げられたか」

 奥から見慣れた顔が姿を現した。
 江田先輩、今年も店を休んでやって来たらしい。

「今年は店番、玉川先輩じゃなかったんですか」

「よく考えたらな、あいつに同じ場所で同じ事をしていろっていうの、無理だろ」

「確かに」

 玉川先輩は持久力とか持続力とか根性というか、そういうものがまるで無い。とても器用で頭も良くて、物も色々知っているし、色々出来るのだけれども。

 人の2倍の速度で考え、人の3倍の速度で処理し、人の5倍の速度で飽きて、人の10倍疲労する。そういう人だ。
 幸薄いのも、その辺に原因があるのかもしれない。

「それにしてもお姫様、えらく機嫌がよさそうだったじゃないか。最後逃げられたけどさ」

「そうですか。ここの会計と明日のおやつを奢らされましたけれど」

 俺にはそうは見えなかったのだが。

「それは照れ隠しだろ。大体お前も薊野も金に困っていないじゃないか、財布も一蓮托生みたいなものだろ実際」

 まあそうなのだけども。
 その辺は黙って肩をすくめてごまかす。

「そう言えば奈津季さんとは、連絡取れてますか」

「一応な、パンと製菓両方やるから当分は学校だとさ。向こうである程度店での経験も積みたいって言っていたから、やっぱり2年か2年半は向こうじゃないか……」
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