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第36章 お役目のない学園祭
191 一応調べはついている
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「なら修兄はさっきの3つの研究室、修兄の意見としてはどれがいいなと思いますか」
そう来たか。
さっきの質問と似ているけれど、今回聞かれているのはあくまで俺の意見だ。
なら答えていいだろうし、何なら香緒里ちゃんが話しやすいよう、多少誘導してもいいだろう。
「どれも内情を知っているから、一長一短だな。後で一番応用がきくのは基礎理論だろうし、何も無い処から自分の城を作りたいなら魔法情報だろうし。ただ香緒里ちゃんが聞きたいのは、そういう意見じゃないよな、きっと」
俺は言いながら思う。
さあ、そろそろ少しずつ本題に入ろうか、と。
「風遊美先輩も言っていたけれど、勘のいい時の修兄は始末に負えないですよね」
「厳しいな、でもそれはまあ置いておいて。まず言うけれど、うちの研究室は今年は事前運動をしていない。香緒里ちゃんに声をかけようかという話もあったんだけれど、俺が断った」
「始末に負えない上に厳しいですよね」
俺は頷く。確かに自分でも厳しいかもしれないと思うから。
これは香緒里ちゃんの為というより、俺のスタイルだ。
「何処に決めても大丈夫と言った先からだけどさ。香緒里ちゃん自身の事を決めるのは、香緒里ちゃん自身であってほしい。で、俺の件は取り敢えず除こう。その状態なら気分が傾いているのは、雪ヶ谷先生のとこだろ、きっと」
香緒里ちゃんはふうっ、とため息をついた。
「もう一度言いますけれど、本当に勘のいい時の修兄は始末に終えないです」
「勘と言うか、俺が香緒里ちゃんだったら、素直にあそこを選んでいるだろうしさ。もう魔法を隠す必要はないし、あそこなら魔法工学の知識も存分に使える。香緒里ちゃんは俺と違って魔道具系じゃないけれど、具体的に相手や物を見られる分野のほうが興味を持つと思ってさ。ならきっと魔法概論や情報学よりそっちだろ」
雪ヶ谷先生というのは、補助魔法科魔法教育系魔法心理臨床研究室の先生だ。
補助魔法科の魔法教育系に係属しているけれど、医療系や魔法工学科とも関係が深い。
ちなみにソフィーが怪しい心理測定機器を持ち出している大元でもある。
「何なら行ってみるか」
香緒里ちゃんは頷いた。
「ひょっとして、最初から全部お見通しだったんですか」
いや、お見通しというのとはちょっと違う。
「ご存知の通り、アドリブが効かない性格だからさ。だから何時でも準備ばっかりしている」
俺はそう言って肩をすくめて見せ、そして続ける。
「元々は、由香里姉が研究室の話題を持ち出したのがきっかけだ。香緒里ちゃんが研究室3つから声をかけられている事は、知っていた。だから該当する研究室3つについて、人員とか内容とか今の研究内容とかを経歴や紹介を見たり過去の論文を見て調べてみた。何を聞かれてもある程度は応えられるようにさ。学祭で何処がどの部屋で出し物をしているのも調査した。実は雪ヶ谷研究室は浅からぬ因縁があるから、調べやすかったしさ」
「うちってソフィーですか?」
実は違う。
確かに情報が入ったのはソフィーからだけれども。
「狭い魔法業界の狭い高専だから、他にも色々ある訳だ。まあ行けばわかる」
俺は、ぼたもちを包んでいた筍の皮を折り畳んで袋に入れる。
「場所は教室棟の2階だっけ」
「2B、補助魔法科2年のホーム教室です」
階段を4階分降りればすぐだ。
「じゃあその前に1階に寄っていいか」
ちょっと陣中見舞いを仕入れておきたい。
ここの1階にお馴染み創造製作研究会の売店がある。
◇◇◇
『あなたと相手の相性占い』、『心理テスト』等と書かれている怪しげな扉をくぐる。
「いらっしゃいま……何だ腰巾着の腰巾着かい」
「煩い裏切り者配下の下っ端戦闘員」
顔見知りというか、去年まで協力したりやりあったりしたいた、元学祭実行委員長の池尻君である。
学祭実行委員も4年で卒業なので、今は所属研究室であるここ雪ヶ谷研究室に安住している訳だ。
「一応陣中見舞いは持ってきた。うちは出し物無いから返戻不要」
「なら有難く頂くぞい」
池尻はそう言って、俺と香緒里ちゃんを舞台裏に案内する。
ちょうど雪ヶ谷先生をはじめ、俺の顔見知り連中が揃っていた。
タイミングが良かったなと感じる。
「出ましたね。新地に呆れて、研究室を移籍する気になりましたか」
雪ヶ谷先生はそう言って、前の椅子を進めてくれた。
「もうすぐ論文や発表資料が完成するんで勘弁してください。2本も書く気力は無いですから」
「センセ、今日は多分妹分にコナかけたって苦情申し立てだと思いまっせ。奴はシスコンだって評判ですさかい」
池尻が下らないことを言う。
「誰がシスコンだ、おい」
「長津田君ですね」
専科2年の大塚先輩に決めつけられた。この研究室の学生陣最年長にして、実は真の大ボスだ。
見かけは可愛らしいのだけれども。
「俺はむしろ、学生会の2年を働かせている方に文句を言いたいんだが」
「ロビーには確かに世話になっていますね。最新型の探知機も作ってもらいましたし」
「と言うか、薊野さんに状況を説明した方が良くないか」
池尻が似非大阪弁をやめて、まっとうな台詞を言う。
まあそうだ。いきなり入ってきてこの状況は訳がわからないよな。
見るとやはり、目が点状態になっていた。
確かにこれは、説明が必要そうだ。
なら……どこから話せばいいだろう。
そう来たか。
さっきの質問と似ているけれど、今回聞かれているのはあくまで俺の意見だ。
なら答えていいだろうし、何なら香緒里ちゃんが話しやすいよう、多少誘導してもいいだろう。
「どれも内情を知っているから、一長一短だな。後で一番応用がきくのは基礎理論だろうし、何も無い処から自分の城を作りたいなら魔法情報だろうし。ただ香緒里ちゃんが聞きたいのは、そういう意見じゃないよな、きっと」
俺は言いながら思う。
さあ、そろそろ少しずつ本題に入ろうか、と。
「風遊美先輩も言っていたけれど、勘のいい時の修兄は始末に負えないですよね」
「厳しいな、でもそれはまあ置いておいて。まず言うけれど、うちの研究室は今年は事前運動をしていない。香緒里ちゃんに声をかけようかという話もあったんだけれど、俺が断った」
「始末に負えない上に厳しいですよね」
俺は頷く。確かに自分でも厳しいかもしれないと思うから。
これは香緒里ちゃんの為というより、俺のスタイルだ。
「何処に決めても大丈夫と言った先からだけどさ。香緒里ちゃん自身の事を決めるのは、香緒里ちゃん自身であってほしい。で、俺の件は取り敢えず除こう。その状態なら気分が傾いているのは、雪ヶ谷先生のとこだろ、きっと」
香緒里ちゃんはふうっ、とため息をついた。
「もう一度言いますけれど、本当に勘のいい時の修兄は始末に終えないです」
「勘と言うか、俺が香緒里ちゃんだったら、素直にあそこを選んでいるだろうしさ。もう魔法を隠す必要はないし、あそこなら魔法工学の知識も存分に使える。香緒里ちゃんは俺と違って魔道具系じゃないけれど、具体的に相手や物を見られる分野のほうが興味を持つと思ってさ。ならきっと魔法概論や情報学よりそっちだろ」
雪ヶ谷先生というのは、補助魔法科魔法教育系魔法心理臨床研究室の先生だ。
補助魔法科の魔法教育系に係属しているけれど、医療系や魔法工学科とも関係が深い。
ちなみにソフィーが怪しい心理測定機器を持ち出している大元でもある。
「何なら行ってみるか」
香緒里ちゃんは頷いた。
「ひょっとして、最初から全部お見通しだったんですか」
いや、お見通しというのとはちょっと違う。
「ご存知の通り、アドリブが効かない性格だからさ。だから何時でも準備ばっかりしている」
俺はそう言って肩をすくめて見せ、そして続ける。
「元々は、由香里姉が研究室の話題を持ち出したのがきっかけだ。香緒里ちゃんが研究室3つから声をかけられている事は、知っていた。だから該当する研究室3つについて、人員とか内容とか今の研究内容とかを経歴や紹介を見たり過去の論文を見て調べてみた。何を聞かれてもある程度は応えられるようにさ。学祭で何処がどの部屋で出し物をしているのも調査した。実は雪ヶ谷研究室は浅からぬ因縁があるから、調べやすかったしさ」
「うちってソフィーですか?」
実は違う。
確かに情報が入ったのはソフィーからだけれども。
「狭い魔法業界の狭い高専だから、他にも色々ある訳だ。まあ行けばわかる」
俺は、ぼたもちを包んでいた筍の皮を折り畳んで袋に入れる。
「場所は教室棟の2階だっけ」
「2B、補助魔法科2年のホーム教室です」
階段を4階分降りればすぐだ。
「じゃあその前に1階に寄っていいか」
ちょっと陣中見舞いを仕入れておきたい。
ここの1階にお馴染み創造製作研究会の売店がある。
◇◇◇
『あなたと相手の相性占い』、『心理テスト』等と書かれている怪しげな扉をくぐる。
「いらっしゃいま……何だ腰巾着の腰巾着かい」
「煩い裏切り者配下の下っ端戦闘員」
顔見知りというか、去年まで協力したりやりあったりしたいた、元学祭実行委員長の池尻君である。
学祭実行委員も4年で卒業なので、今は所属研究室であるここ雪ヶ谷研究室に安住している訳だ。
「一応陣中見舞いは持ってきた。うちは出し物無いから返戻不要」
「なら有難く頂くぞい」
池尻はそう言って、俺と香緒里ちゃんを舞台裏に案内する。
ちょうど雪ヶ谷先生をはじめ、俺の顔見知り連中が揃っていた。
タイミングが良かったなと感じる。
「出ましたね。新地に呆れて、研究室を移籍する気になりましたか」
雪ヶ谷先生はそう言って、前の椅子を進めてくれた。
「もうすぐ論文や発表資料が完成するんで勘弁してください。2本も書く気力は無いですから」
「センセ、今日は多分妹分にコナかけたって苦情申し立てだと思いまっせ。奴はシスコンだって評判ですさかい」
池尻が下らないことを言う。
「誰がシスコンだ、おい」
「長津田君ですね」
専科2年の大塚先輩に決めつけられた。この研究室の学生陣最年長にして、実は真の大ボスだ。
見かけは可愛らしいのだけれども。
「俺はむしろ、学生会の2年を働かせている方に文句を言いたいんだが」
「ロビーには確かに世話になっていますね。最新型の探知機も作ってもらいましたし」
「と言うか、薊野さんに状況を説明した方が良くないか」
池尻が似非大阪弁をやめて、まっとうな台詞を言う。
まあそうだ。いきなり入ってきてこの状況は訳がわからないよな。
見るとやはり、目が点状態になっていた。
確かにこれは、説明が必要そうだ。
なら……どこから話せばいいだろう。
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