異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

文字の大きさ
11 / 176
第2章 ゼノアでの新生活

第11話 夕食とデザートと

しおりを挟む
 俺の部屋が片付いたら今度は事務所だそうだ。
 居抜きに近い状態だったので事務机とか椅子とかは最初から揃っている。あとはレイアウトを決め机を動かし、文房具や紙をセットするだけだ。

 レイアウトは
  〇 4人分の机が田の字型に配置された翻訳作業部分
  〇 応接セットを配置しパーテーションで区切った商談部分
に区切り、あとは残りのパーテーションで区切って倉庫代わりにした。

 机の数からしてこの部屋は以前は10名くらいで使用していた模様。それが今は4人だから部屋の半分くらいが余っている状態だ。

 しかし俺には野望がある。いずれこの空いているスペースを書棚で埋め書庫にしたいという野望が。

 無論この世界では本の値段が高い。だから書庫と呼べるようになるまでには随分と時間がかかるだろうけれど。
 今は取り敢えず食器棚を転用した書棚に今まで訳した本と日本から取り寄せた本が細々と入っている状態だ。

「これで明日からお仕事にかかれますわね」

 確かに実家を出て家や事務所まで借りたからには仕事するしかないよな。何せ働かないと食べていけない。
 俺1人ならまだしも4人もいるのだ。最低でも2か月に1冊以上は訳して出版してもらわないと。
 まあその辺の売込みとか交渉系統はミランダさんがやってくれる予定。だから俺はとにかく翻訳をがんばらないと。

 あと売れる本を選ぶというのも大切だよな。今はテオドーラさんお気に入りの作家さんの本の他、昔俺が読んだおすすめの本とかを訳している。
 しかし他にも面白そうな本を探さないとならないだろう。以前政治倫理の教科書の一部を訳したけれど、そういった感じで他の分野の教科書を訳してみてもいいかもしれない。

 飽きられないように小説と並行、あるいは交互に出した方がいいだろうか。その辺についてはまた後程、皆さんに相談してみよう。

「それじゃ今日はこれでお仕事終わりという事でのんびりしようか。浴槽つきの風呂なんてのもあるしさ。あとアシュノール君の料理手伝いをこれから皆で交互にやろう。そうすればいずれ誰もが料理を出来るようになるだろうし」

「そうすれば好きなお料理を自分で作れるようになりますわね」

「まあその辺はある程度長いスパンで見たほうがいいかもしれないけれどさ」

 そんな訳で本日のお手伝いは話し合いの末フィオナさんに決定。
 魚をさばいて魔法殺菌して切りそろえてカルパッチョ風の適当なもの完成。
 それだけじゃちょい寂しいので牛肉にパン粉をつけてオリーブ油を塗ってさっと表面を魔法加熱した半生の牛カツも追加。
 さばいて出たアラ部分を魔法で乾燥させて出汁を取り、温かいスープも作る。 

「要は殺菌したり熱を通したりする訳ね」

「そういう事」

 なんてフィオナさんに説明しつつ手伝ってもらい完成。

 でも何かまだ寂しい。新生活スタートなのだからちょっとだけお祝い的なものがある方がいいだろうか。
 簡単に作れてプレミアム感あるもの……

 バスク風チーズケーキなら材料や分量いい加減でも何とか出来るかな。クリームチーズは無いけれど適当なチーズで代用できるだろう。砂糖は高価だから水飴で代用すればいいな。

 そんな訳でチーズ多め甘みは水飴、生クリームの代わりにバターと牛乳に卵2個小麦粉適当という非常にいい加減なレシピでチーズケーキを作る。全体を加熱した後、表面をさっと高熱で焦がして冷やせば完成だ。
 かなりいい加減なレシピだけれど何とか形になった。魔法だとすぐ結果が出てくれるから楽でいい。

「これは?」

「せっかくだからお祝い用のデザート」

 ひっくり返して平べったい円筒形の状態で皿に盛れば今度こそ完成だ。

「おーい、夕食出来たぞ」

 全員呼んで運んでもらって夕食開始。

 夕食はなかなか評判良かった。カルパッチョも牛カツも好評だったがやはり一番人気だったのはチーズケーキだ。この国では上流階級でもチーズケーキなんてものは無いらしい。

「これは毎日でも欲しいな」

 ミランダさんの台詞に残り2人がうんうんと頷く。

「でもこれを毎日だと太りますよ」

 そう言ったところ諦めたけれど。
 でもまあ、週1回くらいは作ってやるとするか。簡単だし。

 さて、夕食を食べて片付けも終わったら明日に備えて睡眠だ。何せ暗いとする事が無い。本も魔法でわざわざ灯りをともなさいと読めないし。

 色々やったけれど明日からは本格的にお仕事開始だ。頑張るしかないな、そう思って自室の広いベッドに横になった処だった。

 トントントン。扉がノックされ、そして俺が反応する前に開く。

「失礼しますわ」

 元御嬢様だ。
 どうでもいいけれど若い男がベッドにいる時に来ないで欲しい。色々危険だ。ついでに言うとテオドーラさんの恰好そのものもかなり危険だ。
 彼女は寝間着としてはよくあるガラパーという服を着ている。これは要するに足首丈まである長いシャツのような服だ。なおかつ下に何も着ていないようで胸のポツンが見えている。
 繰り返すが非常に危険だ。

「どうされたんですか」

「ちょっと夜這いに参りました」

 えっ! 何だって!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...