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第8章 熱闘・魔法武闘会
第53話 正体不明な魔法
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食事会が終了し陛下が食べ終わった食器ごと自在袋に収納して姿を消す。
陛下は試合開始から試合終了までは必ずあの貴賓席にいる必要がある。この大会の名目上の主催者だから仕方ない。
さて、もうすぐ第二試合だ。この控室にも窓があって試合場を見ることが出来る。
「これで攻略方法がわかるといいですね」
「せめてどんな魔法を使えるのかわかればいいんですけれど」
そうだ、ちょっとナディアさんに聞いてみよう。
「相手のバーガティ選手ってどんな感じなんですか?」
ナディアさんはちょっと考えて、そして口を開く。
「極めて堅実な戦い方をするA級冒険者です。特筆する速度も無いですし特殊な魔法をつかう訳でもありません。癖も特にありません。速度相手なら基本的に防御しつつ隙をみて攻撃をするタイプになりますし、相手が防御型なら格闘戦に魔法を併用して崩すなんて事もします。ソニアさん程技や速度、魔法を持っている訳ではありませんが、体格がいい分攻撃が重いです」
なるほど。ここに残るだけの腕はあるという事か。
両選手が試合場に出てきて礼をする。そしていよいよ試合開始。
バーガティ選手は遠距離魔法戦に出るようだ。俺が以前対戦したヴィンセントさん程ではないがそれなりの速度で様々な攻撃魔法を撃ち出す。
その瞬間、俺にはわかった。空間が僅かに歪んだ事が。
『レジーナ選手、無効化抵抗を使用しているようです。バーガティ選手の魔法が途中でかき消されている!』
解説者の魔法音声が入る。確かに無効化されているがいわゆる抵抗ではない。俺の魔法で言えば『空間操作 歪曲&テンソル変換』だ。途中で空間を微妙にねじ曲げて攻撃を他空間へと逃している。
攻撃魔法が届いていない事がわかったからだろう。バーガティ選手はゆっくり用心深くレジーナ選手に近づいていく。レジーナ選手もバーガティ選手へと近づいていく。
なお攻撃魔法が途切れた時点で空間歪曲は消えた。おそらく自分が接近戦をするために邪魔だったからだろう。
間合いが3腕を切った。バーガティ選手は再び攻撃魔法を連射する。更に土風併用魔法の砂嵐を展開。砂嵐の砂と風の動きでレジーナ選手の真の居場所と動きを察知する作戦のようだ。
バーガティ選手もおそらくレジーナ選手の以前の試合を見ていたのだろう。この砂嵐はその上で考えたレジーナ選手対策と見た。確かに幻視魔法等ならその対策で正解だ。
バーガティ選手から打ちかかる。レジーナ選手が躱してそのまま引く形で杖を横なぎに振るう。バーガティ選手は剣の手元部分で杖を受け、そのまま後方へ吹っ飛んだ。そのまま立ち上がれない様子。
『勝負あり。勝者、レジーナ・カナル・サリング選手』
「最後のは接触型雷魔法だな。当たると同時に発動・伝播するから抵抗《レジスト》も間に合わない」
「でもその前のバーガティさんの剣、あれはどう見ても当たる筈の攻撃でした」
確かにナディアさんの言う通りなのだが、それは俺にとって問題では無い。
でもまあナディアさんにはある程度の説明をしておくとするか。彼女になら教えても問題はないだろうし、間違った推測をされると後々面倒な事にもなりかねない。どうせ陛下と色々話せばある程度はバレるだろうしな。
「あれはどうやったかはわかっています。それはなんとかなるんです」
「ええっ」
「試してみましょうか」
俺は立ち上がり、空間魔法を起動する。この場所にいないから攻撃は通用しない、でも相手から姿は見えるというやつだ。
「この状態で俺に攻撃を仕掛けてみてください。空振りする筈です」
ナディアさんは首をかしげつつ、それでも俺に正拳を軽く繰り出す。すかっ。当然空振りする。
ナディアさん、首をかしげつつ今度は横蹴り。ただの横蹴りでは無い。横蹴りから進んで正拳、肘打ち、回し蹴りと続く連撃だ。
流石に元魔法騎士団所属、魔法使いとは思えない格闘術。だがどれもすかっと空振りする。
「どういう事ですか」
「これが俺の使う魔法の本来の使用方法なんです。他の高速移動とかもまあ、この魔法の一部ですけれど」
「それで何かわかったかな」
出たな陛下。試合終了を宣言してすぐにここへとやってきたらしい。
「今日の試合では無理ですね。確かにこの世界で通常認識できるものとは違う空間軸を使っている、それしかわかりません」
「ただ格闘戦の動きを見ると高級学校生徒の標準程度の腕に見えるな。魔法もあの軸を使う魔法以外は一般的なものだけだ。今日のところは」
「昨日の闇が包んだという魔法もそうでしたか」
「あれを今日見られればよかったんだが。あれも違う軸を使った事は確かだがそれ以上は私にはわからなかった」
なるほど。
でも使用したという闇についても実はある程度俺には見当はついている。
「この魔法と同じならいいんですけれどね。『空間操作、場の歪曲とテンソル変換。起動!』」
ふっと俺たちの横に直径1腕程度の球形の暗闇が出現した。
「攻撃が効かない魔法の逆パターンみたいなものです。かけられた側は見えないし聞こえない。違うのは術者からは感知可能で攻撃も通るところです。その辺の空間軸の傾斜は陛下なら見ればわかるし使えると思います」
陛下はうんうんと頷く。
「なるほど、こういう使い方もあるんだね。理解した。でも僕にこの魔法、教えてもいいのかな」
「それはまあ、俺にこの魔法の存在を教えてくれた事でチャラですよ」
「それもそうかな」
ナディアさんが? な表情をしているがそれは仕方ない。この魔法を説明するにはあの本の内容を教える必要がある。しかしこの空間操作魔法を使える人間をこれ以上増やさないのが陛下の意向だ。
「俺とレジーナ選手の能力が同じなら、悲しいくらい低レベルな決勝戦になりますよ。観客が思いきりブーイングするんじゃないかと」
「魔法で勝負をつけられない結果格闘戦、それも高級学校の生徒レベルの格闘戦になる訳か。それはそれで歴史に残るね。魔法武闘会の歴史に残る汚点としてさ」
「そうならないように頑張りますけれどね」
とりあえず明日は空間操作魔法を駆使して戦う事になるだろう。相手の空間操作のレベルは未知数だ。出し惜しみすると勝てない可能性が高い。
とりあえず攻撃に当たらない魔法を起動させ、攻撃魔法と空間操作魔法を組み合わせてかけまくってみるか。相手にも同じ事をされる可能性もあるけれど。
「それじゃ明日の決勝戦もよろしく頼む」
陛下は姿を消す。
陛下は試合開始から試合終了までは必ずあの貴賓席にいる必要がある。この大会の名目上の主催者だから仕方ない。
さて、もうすぐ第二試合だ。この控室にも窓があって試合場を見ることが出来る。
「これで攻略方法がわかるといいですね」
「せめてどんな魔法を使えるのかわかればいいんですけれど」
そうだ、ちょっとナディアさんに聞いてみよう。
「相手のバーガティ選手ってどんな感じなんですか?」
ナディアさんはちょっと考えて、そして口を開く。
「極めて堅実な戦い方をするA級冒険者です。特筆する速度も無いですし特殊な魔法をつかう訳でもありません。癖も特にありません。速度相手なら基本的に防御しつつ隙をみて攻撃をするタイプになりますし、相手が防御型なら格闘戦に魔法を併用して崩すなんて事もします。ソニアさん程技や速度、魔法を持っている訳ではありませんが、体格がいい分攻撃が重いです」
なるほど。ここに残るだけの腕はあるという事か。
両選手が試合場に出てきて礼をする。そしていよいよ試合開始。
バーガティ選手は遠距離魔法戦に出るようだ。俺が以前対戦したヴィンセントさん程ではないがそれなりの速度で様々な攻撃魔法を撃ち出す。
その瞬間、俺にはわかった。空間が僅かに歪んだ事が。
『レジーナ選手、無効化抵抗を使用しているようです。バーガティ選手の魔法が途中でかき消されている!』
解説者の魔法音声が入る。確かに無効化されているがいわゆる抵抗ではない。俺の魔法で言えば『空間操作 歪曲&テンソル変換』だ。途中で空間を微妙にねじ曲げて攻撃を他空間へと逃している。
攻撃魔法が届いていない事がわかったからだろう。バーガティ選手はゆっくり用心深くレジーナ選手に近づいていく。レジーナ選手もバーガティ選手へと近づいていく。
なお攻撃魔法が途切れた時点で空間歪曲は消えた。おそらく自分が接近戦をするために邪魔だったからだろう。
間合いが3腕を切った。バーガティ選手は再び攻撃魔法を連射する。更に土風併用魔法の砂嵐を展開。砂嵐の砂と風の動きでレジーナ選手の真の居場所と動きを察知する作戦のようだ。
バーガティ選手もおそらくレジーナ選手の以前の試合を見ていたのだろう。この砂嵐はその上で考えたレジーナ選手対策と見た。確かに幻視魔法等ならその対策で正解だ。
バーガティ選手から打ちかかる。レジーナ選手が躱してそのまま引く形で杖を横なぎに振るう。バーガティ選手は剣の手元部分で杖を受け、そのまま後方へ吹っ飛んだ。そのまま立ち上がれない様子。
『勝負あり。勝者、レジーナ・カナル・サリング選手』
「最後のは接触型雷魔法だな。当たると同時に発動・伝播するから抵抗《レジスト》も間に合わない」
「でもその前のバーガティさんの剣、あれはどう見ても当たる筈の攻撃でした」
確かにナディアさんの言う通りなのだが、それは俺にとって問題では無い。
でもまあナディアさんにはある程度の説明をしておくとするか。彼女になら教えても問題はないだろうし、間違った推測をされると後々面倒な事にもなりかねない。どうせ陛下と色々話せばある程度はバレるだろうしな。
「あれはどうやったかはわかっています。それはなんとかなるんです」
「ええっ」
「試してみましょうか」
俺は立ち上がり、空間魔法を起動する。この場所にいないから攻撃は通用しない、でも相手から姿は見えるというやつだ。
「この状態で俺に攻撃を仕掛けてみてください。空振りする筈です」
ナディアさんは首をかしげつつ、それでも俺に正拳を軽く繰り出す。すかっ。当然空振りする。
ナディアさん、首をかしげつつ今度は横蹴り。ただの横蹴りでは無い。横蹴りから進んで正拳、肘打ち、回し蹴りと続く連撃だ。
流石に元魔法騎士団所属、魔法使いとは思えない格闘術。だがどれもすかっと空振りする。
「どういう事ですか」
「これが俺の使う魔法の本来の使用方法なんです。他の高速移動とかもまあ、この魔法の一部ですけれど」
「それで何かわかったかな」
出たな陛下。試合終了を宣言してすぐにここへとやってきたらしい。
「今日の試合では無理ですね。確かにこの世界で通常認識できるものとは違う空間軸を使っている、それしかわかりません」
「ただ格闘戦の動きを見ると高級学校生徒の標準程度の腕に見えるな。魔法もあの軸を使う魔法以外は一般的なものだけだ。今日のところは」
「昨日の闇が包んだという魔法もそうでしたか」
「あれを今日見られればよかったんだが。あれも違う軸を使った事は確かだがそれ以上は私にはわからなかった」
なるほど。
でも使用したという闇についても実はある程度俺には見当はついている。
「この魔法と同じならいいんですけれどね。『空間操作、場の歪曲とテンソル変換。起動!』」
ふっと俺たちの横に直径1腕程度の球形の暗闇が出現した。
「攻撃が効かない魔法の逆パターンみたいなものです。かけられた側は見えないし聞こえない。違うのは術者からは感知可能で攻撃も通るところです。その辺の空間軸の傾斜は陛下なら見ればわかるし使えると思います」
陛下はうんうんと頷く。
「なるほど、こういう使い方もあるんだね。理解した。でも僕にこの魔法、教えてもいいのかな」
「それはまあ、俺にこの魔法の存在を教えてくれた事でチャラですよ」
「それもそうかな」
ナディアさんが? な表情をしているがそれは仕方ない。この魔法を説明するにはあの本の内容を教える必要がある。しかしこの空間操作魔法を使える人間をこれ以上増やさないのが陛下の意向だ。
「俺とレジーナ選手の能力が同じなら、悲しいくらい低レベルな決勝戦になりますよ。観客が思いきりブーイングするんじゃないかと」
「魔法で勝負をつけられない結果格闘戦、それも高級学校の生徒レベルの格闘戦になる訳か。それはそれで歴史に残るね。魔法武闘会の歴史に残る汚点としてさ」
「そうならないように頑張りますけれどね」
とりあえず明日は空間操作魔法を駆使して戦う事になるだろう。相手の空間操作のレベルは未知数だ。出し惜しみすると勝てない可能性が高い。
とりあえず攻撃に当たらない魔法を起動させ、攻撃魔法と空間操作魔法を組み合わせてかけまくってみるか。相手にも同じ事をされる可能性もあるけれど。
「それじゃ明日の決勝戦もよろしく頼む」
陛下は姿を消す。
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