異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

文字の大きさ
75 / 176
第10章 犯人は俺じゃない

第71話 リゾートの終わり

しおりを挟む
 昼はスキー、夜は温泉。夕食は好きな物焼きヴァストリベントとテイクアウトのほか、鉄板焼、温かいビーフシチュー、ポトフ、チーズフォンデュ等を冬のリゾートらしい温かく豪華な料理。
 そんな快適なリゾートの日々は予定を2日超過した8日間で終わりを告げた。

「明日辺り帰らないとまた仕事が大変になるぞ」

 そんなミランダの無慈悲な台詞によってだ。

「……仕方ないのはわかりますわ。でもこの露天風呂、快適過ぎて惜しいです」

 テディは露天風呂が気に入ったようだ。時々夜中1人で入ったりもしていたようだし。

「それについては心配いらない。アシュに毎日夜になったら連れてきてもらえばいいだけだからな。無論何日かに1度はお湯を抜いて全部乾燥させる必要はあるだろうけれど」

 確かにそういう意見も出ていたけれどさ。俺に毎日ゼノアとここを全員連れて往復しろと言うのか。出来ないかと言われればまあ出来るけれど。
 
「それならまあ、仕方ないですわ」

「あと休みの日にはまたここでスキーをしようよ」

「いいですね、それ」

 つまり半分リゾートな日々を冬の間続けるという事か。でもその前に一つ注意をしておこう。

「サラの試験日っていつだっけか」

「1月27日ですが」

「それまでは全員協力モードな、サラに」

 この世界の受験勉強は日本ほどには厳しくない。それでも最後の1月くらいは勉強に専念させてやりたいと思うのだ。学力的にはもう大丈夫だろうけれど。

「確かにそうですわね。買い出しや料理等も当番にしましょうか」

「私は抜けていいよな」

「ミランダは仕方ないよね」

 これは外回り担当だからという意味ではない。
 この事はおそらくサラやナディアさんは気づかないだろう。しかし世の中知らない方がいい事というのもあるのだ。だから敢えて俺達は言わない。

「それくらいは私がしますから」

「駄目ですわ。最後の1月位は今までの見直しをしっかりやらないと。もし時間の余裕があるのなら休息や気分転換にこそ使うべきですわ」

 サラ以外の全員が同意のようだ。うんうんと頷いている。

「それでしたらその間私が料理をしましょうか。サラさん程ではないですけれど1人暮らしが長いのでそれなりには」

 おっとナディアさん、それは大変ありがたい。

「ならアシュとナディアさんが夕食当番ですわね」

「だね。朝と昼は僕とテディで交代という感じで」

 しつこいようだがミランダは戦力外だ。こと料理に関しては。

「なら買い出しもナディアさんに御願いしようか。護衛任務もニアとマイアがこの家に居れば問題ないよね」

「児童書もやって貰っていて大変申し訳ないですけれどお願いしていいでしょうか」

「勿論大丈夫です」

 ただナディアさんに申し訳ないな。

「何なら買い物位は俺がするけれど」

「アシュは買い物に行くとなかなか帰ってこないからね」

「そうですわ。仕事が多くてもしっかり2時間以上はかけてきますから」

 しまったバレていたか。事実だけに反論できない。

「それじゃ明日朝、部屋は整理した後清拭魔法をかけておこう」

「テルメの方はどうしましょうか」

「明日の夜入ったら一度お湯を抜いて乾燥魔法をかけよう」

「木材部分は完全に乾かしたら継ぎ目とかが狂うからほどほどにね。あと殺菌消毒魔法もかけておいた方がいいかな」

「その辺の細かい調整はテディとフィオナに任せた」

「ミランダはもう少し魔力の調整を練習した方がいいと思いますわ」

「残念ながら私の魔法はオンとオフしか無い仕様なんだ」

「なおかつ魔法が強力ってのが色々迷惑だよね。まあ明日はテルメ館の水分飛ばし乾燥だけお願いして、微調整は僕とテディでやるよ」

「私も手伝います」

「私も」

「ナディアさんありがとう。でもナディアさんは明日は食料の買い出しをお願いします。サラは明日から勉強に専念。あとアシュは一足先にお仕事開始な。そろそろ次の翻訳始めないとお仕事のスケジュールがまた真っ黒になる」

 はいはい仕方ない。

「わかったよ」

「スケジュール的には先が児童書、次が医学書追補版だな。小説は次のシリーズに良さそうなのをいくつか見繕っておいてくれ。医学書追補版の後でいい」

「はいはい」
 
 ◇◇◇

 そんな訳で翌日の朝食後。俺とサラ、ナディアさんの3人は一足先に家へと帰ってきた。

「それでは買い物に行ってまいります」

「私も一緒に行きましょうか」

「大丈夫です。これでも独り暮らしが長いですから」

「でもここの皆さんよく食べますから分量は大目にお願いします。あとこれが共用の買い出し用自在袋です」

「わかりました」

 ナディアさんが出て行った後、俺とサラは事務所へ。

 まず俺がやるのは手紙整理からだ。この世界もダイレクトメールは結構来るので郵便受けの中身は結構貯まっている。
 おっと、早速不穏な手紙発見。書留では無いので問題は無いと思うが一応別にわけておく。
 半分がダイレクトメール。残りの半分が付き合いのある商会等からの時候の挨拶。不穏な手紙以外の残りがミランダ渡し、つまりお仕事関係だ。

 さて、この不穏な手紙をどうしようかと考える。
 あて先はイービス商会宛て。差出人はロッサーナ殿下。

 あて先から見て俺が開けても問題は無い筈だ。書留ではないので直接のお仕事依頼という訳でもない。
 でも嫌な予感がする。全員がいる時に開けたほうがいい気がするのだ。
 しかし何か急ぎの事が書いてあるとまずいよな。手紙だし急ぎの用件ではないとは思うけれど。

 少し悩んで、結局は開いてみる。中は普通の便箋だ。
 なら難しい事は書いていないだろう。ほっとして読んでみて、そして俺は読んだ事を後悔した。
 内容は要約すれば単純だ。

『一読者からのお願いです。今度は義賊ものを読みたいですわ』

 ……

 まさかチャールズ・フォート・ジョウント騒動、あなたが黒幕ではないですよね。ロッサーナ殿下。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...