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第10章 犯人は俺じゃない
第71話 リゾートの終わり
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昼はスキー、夜は温泉。夕食は好きな物焼きとテイクアウトのほか、鉄板焼、温かいビーフシチュー、ポトフ、チーズフォンデュ等を冬のリゾートらしい温かく豪華な料理。
そんな快適なリゾートの日々は予定を2日超過した8日間で終わりを告げた。
「明日辺り帰らないとまた仕事が大変になるぞ」
そんなミランダの無慈悲な台詞によってだ。
「……仕方ないのはわかりますわ。でもこの露天風呂、快適過ぎて惜しいです」
テディは露天風呂が気に入ったようだ。時々夜中1人で入ったりもしていたようだし。
「それについては心配いらない。アシュに毎日夜になったら連れてきてもらえばいいだけだからな。無論何日かに1度はお湯を抜いて全部乾燥させる必要はあるだろうけれど」
確かにそういう意見も出ていたけれどさ。俺に毎日ゼノアとここを全員連れて往復しろと言うのか。出来ないかと言われればまあ出来るけれど。
「それならまあ、仕方ないですわ」
「あと休みの日にはまたここでスキーをしようよ」
「いいですね、それ」
つまり半分リゾートな日々を冬の間続けるという事か。でもその前に一つ注意をしておこう。
「サラの試験日っていつだっけか」
「1月27日ですが」
「それまでは全員協力モードな、サラに」
この世界の受験勉強は日本ほどには厳しくない。それでも最後の1月くらいは勉強に専念させてやりたいと思うのだ。学力的にはもう大丈夫だろうけれど。
「確かにそうですわね。買い出しや料理等も当番にしましょうか」
「私は抜けていいよな」
「ミランダは仕方ないよね」
これは外回り担当だからという意味ではない。
この事はおそらくサラやナディアさんは気づかないだろう。しかし世の中知らない方がいい事というのもあるのだ。だから敢えて俺達は言わない。
「それくらいは私がしますから」
「駄目ですわ。最後の1月位は今までの見直しをしっかりやらないと。もし時間の余裕があるのなら休息や気分転換にこそ使うべきですわ」
サラ以外の全員が同意のようだ。うんうんと頷いている。
「それでしたらその間私が料理をしましょうか。サラさん程ではないですけれど1人暮らしが長いのでそれなりには」
おっとナディアさん、それは大変ありがたい。
「ならアシュとナディアさんが夕食当番ですわね」
「だね。朝と昼は僕とテディで交代という感じで」
しつこいようだがミランダは戦力外だ。こと料理に関しては。
「なら買い出しもナディアさんに御願いしようか。護衛任務もニアとマイアがこの家に居れば問題ないよね」
「児童書もやって貰っていて大変申し訳ないですけれどお願いしていいでしょうか」
「勿論大丈夫です」
ただナディアさんに申し訳ないな。
「何なら買い物位は俺がするけれど」
「アシュは買い物に行くとなかなか帰ってこないからね」
「そうですわ。仕事が多くてもしっかり2時間以上はかけてきますから」
しまったバレていたか。事実だけに反論できない。
「それじゃ明日朝、部屋は整理した後清拭魔法をかけておこう」
「テルメの方はどうしましょうか」
「明日の夜入ったら一度お湯を抜いて乾燥魔法をかけよう」
「木材部分は完全に乾かしたら継ぎ目とかが狂うからほどほどにね。あと殺菌消毒魔法もかけておいた方がいいかな」
「その辺の細かい調整はテディとフィオナに任せた」
「ミランダはもう少し魔力の調整を練習した方がいいと思いますわ」
「残念ながら私の魔法はオンとオフしか無い仕様なんだ」
「なおかつ魔法が強力ってのが色々迷惑だよね。まあ明日はテルメ館の水分飛ばし乾燥だけお願いして、微調整は僕とテディでやるよ」
「私も手伝います」
「私も」
「ナディアさんありがとう。でもナディアさんは明日は食料の買い出しをお願いします。サラは明日から勉強に専念。あとアシュは一足先にお仕事開始な。そろそろ次の翻訳始めないとお仕事のスケジュールがまた真っ黒になる」
はいはい仕方ない。
「わかったよ」
「スケジュール的には先が児童書、次が医学書追補版だな。小説は次のシリーズに良さそうなのをいくつか見繕っておいてくれ。医学書追補版の後でいい」
「はいはい」
◇◇◇
そんな訳で翌日の朝食後。俺とサラ、ナディアさんの3人は一足先に家へと帰ってきた。
「それでは買い物に行ってまいります」
「私も一緒に行きましょうか」
「大丈夫です。これでも独り暮らしが長いですから」
「でもここの皆さんよく食べますから分量は大目にお願いします。あとこれが共用の買い出し用自在袋です」
「わかりました」
ナディアさんが出て行った後、俺とサラは事務所へ。
まず俺がやるのは手紙整理からだ。この世界もダイレクトメールは結構来るので郵便受けの中身は結構貯まっている。
おっと、早速不穏な手紙発見。書留では無いので問題は無いと思うが一応別にわけておく。
半分がダイレクトメール。残りの半分が付き合いのある商会等からの時候の挨拶。不穏な手紙以外の残りがミランダ渡し、つまりお仕事関係だ。
さて、この不穏な手紙をどうしようかと考える。
あて先は梟商会宛て。差出人はロッサーナ殿下。
あて先から見て俺が開けても問題は無い筈だ。書留ではないので直接のお仕事依頼という訳でもない。
でも嫌な予感がする。全員がいる時に開けたほうがいい気がするのだ。
しかし何か急ぎの事が書いてあるとまずいよな。手紙だし急ぎの用件ではないとは思うけれど。
少し悩んで、結局は開いてみる。中は普通の便箋だ。
なら難しい事は書いていないだろう。ほっとして読んでみて、そして俺は読んだ事を後悔した。
内容は要約すれば単純だ。
『一読者からのお願いです。今度は義賊ものを読みたいですわ』
……
まさかチャールズ・フォート・ジョウント騒動、あなたが黒幕ではないですよね。ロッサーナ殿下。
そんな快適なリゾートの日々は予定を2日超過した8日間で終わりを告げた。
「明日辺り帰らないとまた仕事が大変になるぞ」
そんなミランダの無慈悲な台詞によってだ。
「……仕方ないのはわかりますわ。でもこの露天風呂、快適過ぎて惜しいです」
テディは露天風呂が気に入ったようだ。時々夜中1人で入ったりもしていたようだし。
「それについては心配いらない。アシュに毎日夜になったら連れてきてもらえばいいだけだからな。無論何日かに1度はお湯を抜いて全部乾燥させる必要はあるだろうけれど」
確かにそういう意見も出ていたけれどさ。俺に毎日ゼノアとここを全員連れて往復しろと言うのか。出来ないかと言われればまあ出来るけれど。
「それならまあ、仕方ないですわ」
「あと休みの日にはまたここでスキーをしようよ」
「いいですね、それ」
つまり半分リゾートな日々を冬の間続けるという事か。でもその前に一つ注意をしておこう。
「サラの試験日っていつだっけか」
「1月27日ですが」
「それまでは全員協力モードな、サラに」
この世界の受験勉強は日本ほどには厳しくない。それでも最後の1月くらいは勉強に専念させてやりたいと思うのだ。学力的にはもう大丈夫だろうけれど。
「確かにそうですわね。買い出しや料理等も当番にしましょうか」
「私は抜けていいよな」
「ミランダは仕方ないよね」
これは外回り担当だからという意味ではない。
この事はおそらくサラやナディアさんは気づかないだろう。しかし世の中知らない方がいい事というのもあるのだ。だから敢えて俺達は言わない。
「それくらいは私がしますから」
「駄目ですわ。最後の1月位は今までの見直しをしっかりやらないと。もし時間の余裕があるのなら休息や気分転換にこそ使うべきですわ」
サラ以外の全員が同意のようだ。うんうんと頷いている。
「それでしたらその間私が料理をしましょうか。サラさん程ではないですけれど1人暮らしが長いのでそれなりには」
おっとナディアさん、それは大変ありがたい。
「ならアシュとナディアさんが夕食当番ですわね」
「だね。朝と昼は僕とテディで交代という感じで」
しつこいようだがミランダは戦力外だ。こと料理に関しては。
「なら買い出しもナディアさんに御願いしようか。護衛任務もニアとマイアがこの家に居れば問題ないよね」
「児童書もやって貰っていて大変申し訳ないですけれどお願いしていいでしょうか」
「勿論大丈夫です」
ただナディアさんに申し訳ないな。
「何なら買い物位は俺がするけれど」
「アシュは買い物に行くとなかなか帰ってこないからね」
「そうですわ。仕事が多くてもしっかり2時間以上はかけてきますから」
しまったバレていたか。事実だけに反論できない。
「それじゃ明日朝、部屋は整理した後清拭魔法をかけておこう」
「テルメの方はどうしましょうか」
「明日の夜入ったら一度お湯を抜いて乾燥魔法をかけよう」
「木材部分は完全に乾かしたら継ぎ目とかが狂うからほどほどにね。あと殺菌消毒魔法もかけておいた方がいいかな」
「その辺の細かい調整はテディとフィオナに任せた」
「ミランダはもう少し魔力の調整を練習した方がいいと思いますわ」
「残念ながら私の魔法はオンとオフしか無い仕様なんだ」
「なおかつ魔法が強力ってのが色々迷惑だよね。まあ明日はテルメ館の水分飛ばし乾燥だけお願いして、微調整は僕とテディでやるよ」
「私も手伝います」
「私も」
「ナディアさんありがとう。でもナディアさんは明日は食料の買い出しをお願いします。サラは明日から勉強に専念。あとアシュは一足先にお仕事開始な。そろそろ次の翻訳始めないとお仕事のスケジュールがまた真っ黒になる」
はいはい仕方ない。
「わかったよ」
「スケジュール的には先が児童書、次が医学書追補版だな。小説は次のシリーズに良さそうなのをいくつか見繕っておいてくれ。医学書追補版の後でいい」
「はいはい」
◇◇◇
そんな訳で翌日の朝食後。俺とサラ、ナディアさんの3人は一足先に家へと帰ってきた。
「それでは買い物に行ってまいります」
「私も一緒に行きましょうか」
「大丈夫です。これでも独り暮らしが長いですから」
「でもここの皆さんよく食べますから分量は大目にお願いします。あとこれが共用の買い出し用自在袋です」
「わかりました」
ナディアさんが出て行った後、俺とサラは事務所へ。
まず俺がやるのは手紙整理からだ。この世界もダイレクトメールは結構来るので郵便受けの中身は結構貯まっている。
おっと、早速不穏な手紙発見。書留では無いので問題は無いと思うが一応別にわけておく。
半分がダイレクトメール。残りの半分が付き合いのある商会等からの時候の挨拶。不穏な手紙以外の残りがミランダ渡し、つまりお仕事関係だ。
さて、この不穏な手紙をどうしようかと考える。
あて先は梟商会宛て。差出人はロッサーナ殿下。
あて先から見て俺が開けても問題は無い筈だ。書留ではないので直接のお仕事依頼という訳でもない。
でも嫌な予感がする。全員がいる時に開けたほうがいい気がするのだ。
しかし何か急ぎの事が書いてあるとまずいよな。手紙だし急ぎの用件ではないとは思うけれど。
少し悩んで、結局は開いてみる。中は普通の便箋だ。
なら難しい事は書いていないだろう。ほっとして読んでみて、そして俺は読んだ事を後悔した。
内容は要約すれば単純だ。
『一読者からのお願いです。今度は義賊ものを読みたいですわ』
……
まさかチャールズ・フォート・ジョウント騒動、あなたが黒幕ではないですよね。ロッサーナ殿下。
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