異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第16章 冬のリゾート

第123話 まずは物件確認から

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 今回は別荘をまず確認してから。だから持ち物は普通の旅行程度だ。
 超小型ゴーレムのおかげで全員が移動魔法を使える。必要なものがあれば自分で取りに帰るまで。だから問題は何もない。

 さて、最初だけはという事で俺の移動魔法で全員一緒に移動する。まず別荘を外から見た感じは……

「普通だね」

「だな。でも悪くはなさそうだ」

「少しだけ大きいかな」

「手入れはそれなりにしてあるようですわ」

という感じ。

 外見はよくある焼土仕上げの3階建て。大きさ的にはうちの家とほぼ同じくらいかちょい大きめ程度だろう。
 馬車用の小屋と馬小屋もすぐ近くに別棟で建っている。この辺も車庫や倉庫に使えるかな。

「臭いがする」

「これは温泉の臭いだよね」

「そう言えばバルマンのリゾートでも似たような臭いがしましたわ」

 確かに少しゆで卵のような臭いがする。あまり強くはないけれど。

「海にもすぐ行けるみたいだね」

 3腕6mほど下が砂浜で、そこまで岩を削った歩道らしき道がついていた。

「夏でも遊べそうです」

「だな。牡蠣とかウニとかもとれそうだ。でもその辺はあとでという事で、まずは中を確認してみよう」

 俺達はミランダに続き中へと入る。
 事前に間取りは図面で確認済みだ。玄関入ってすぐの扉を開ければ広いリビングルーム。反対側の扉がこれも広い食堂で、その隣がキッチン。他に1階にはトイレと風呂があるだけ。
 2階より上は基本的に個室の寝室。1室だけ大きいベッドを備えた広い寝室があるのはまあお約束だ。

 中は今まで滞在した別荘のような高級感はない。木材に焼土の壁、つまり一般的な家のつくりと同じだ。しかしこの方がかえって俺は落ち着く。
 それにこの広いリビングもなかなかいい感じ。ゼノアの事務所より広い場所にソファーやテーブル、ラグなどがほどよく配置されている。

「この辺の家具類もそのままかな」

「ああ。現状のまま引き渡しと言っていた」

 ならそのまま使えるな。

「私用に寝れる長椅子が欲しいな」

「それはゼノアで買って持ち込めばいいよ」

「ロッキングチェアも置きたいですわ」

 広さがあるのでその辺を配置しても余裕だろう。

「それじゃ他を確認に行くぞ」

 食堂、キッチン、各個室、トイレと見て回るが問題はない。
 個室は広いのが1室、そこそこなのが12部屋。更に召し使い用らしいやや狭めの個室が8部屋と数多い。
 ただし風呂だけは……確かに普通よりは広いけれど……

「増築だな。これでは小さすぎる」

 全員がうんうんと頷く。
 小さすぎると言っても標準以上ではあるのだ。3人程度がゆっくり足を延ばせる程度の浴槽と洗い場があるから。
 しかしこの面子はバルマンのリゾートやこの前の夏のリゾートで広い風呂の快適さを知っている。

「お湯が温泉なのは評価しますわ」

 色そのものは透明だけれども臭いがただのお湯ではない。しかも外から流れてきている。
 浴槽はちょっと凝っていて溶岩らしい岩を加工した代物。ちょい滑りやすそうだが肌触りは良さそうだ。

「浴槽は広げられるよね。あとは増やせないから建て増しかな」

 フィオナは早くも増築計画を考えている模様。

「ところで露天風呂もあるのですよね」

「ああ、この先だ」

 ミランダが扉を開けるとそのまま外だった。赤い焼土の歩道が5腕10m程度続いていて、その先に一見岩のようなものがある。

「ずいぶんと野生的な浴槽だね」

 こちらも内風呂と同じく黒い溶岩を加工した浴槽にお湯がたまっていた。広さも内風呂と同じく3人分程度。
 少し上に源泉らしい場所があり、そこからお湯が岩肌を流れてそのまま入り、溢れると下へと流れるようになっている。

「これはこれで趣があっていいですわ」

「でもやっぱり狭いよね。もう少し広げたいな」

「いずれにせよ中の掃除をしてからだろ」

「そうだね」

 この露天風呂は手入れはされていなかったようで下に木の葉がたまっている。しかしお湯の成分のせいか腐った感じにはなっていない。

「風呂関係は増設しないとならないね。色々と」

「でも私は気に入りましたわ。早速お掃除でも」

 テディは水魔法で露天風呂内のお湯を全部外へ出し、更に清拭魔法をかけている。早速入る気満々という感じだ。

「ここならお風呂を整備すれば毎日でも入りに来れるよね。なら早速設計してみるよ。丸太を組むタイプで設計すれば増築も難しくないしね」

 でも基礎部分だけはどうにかして作る必要があるよな。それにだ。

「丸太を運ぶ手間はどうするんだ」

「いつもの木材店で加工してもらった後、店の前に出して貰うからアシュの魔法でここまで移動させてよ。木材店には集団で取寄魔法アポートをかけているって説明しておくから」

 なるほど。

「基礎はどうするんだ」

「その辺はミランダに手伝ってもらおうと思っているんだ。ここでならミランダに魔法を使ってもらっても問題はないよね」

「確かに問題はないと思いますわ」

 どういう意味だろう。俺はミランダが本気で魔法を使っているところを見たことはない。というか簡単な灯火魔法と清拭魔法以外は使っているのを見たことが無いな。
 でも今の台詞からすると何かとんでもない魔法を持っているようだ。

「ここを平らにすればいいのか」

「うん。それ以上細かい事はミランダの魔法には求めないよ。基礎用の石なんかは加工済みのものをゼノアで購入するつもりだしさ」

「ならとにかく平らに削ればいいんだな」

「溶岩なら問題ないでしょ」

「多分な」

 何か知らないけれど大丈夫なようだ。

「その辺の計画はまた後にして、次は海方面を見に行こう。テディもいいか」

「浴槽の掃除は終わりましたから大丈夫ですわ。これでいつでも入れます」

 テディは露天風呂第一主義のようだ。

 どっちにしろ皆様の反応をみるに購入決定だな、これは。ただ横が火山だし地面は溶岩質だし大丈夫だろうか。
 未来視で先を見てみる。取り敢えず俺が生きている間は大丈夫そうだ。ならいいか、ここを購入しても。
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