異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第16章 冬のリゾート

第124話 今回の海遊び方法

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 海の方もなかなかいい感じだ。
 海へ出る歩道は岩場を魔法で削り取って作った階段。濡れたら少し滑りそうだが歩きやすい。

 浜は幅せいぜい30腕60m程度と狭いが白くて綺麗な砂浜。付近は岩場で遠浅ではなくそこそこ深くなっている模様。岩伝いにそこそこ深い場所の近くまで歩いて行ける。
 岩場には牡蠣や貝も豊富で小さい蟹もそこここにいるのが見えた。

「これは夏の方が遊べそうだな。泳いでも潜っても色々とれそうだ」

「楽しそうですね」

 確かに泳げば楽しいだろう。だが今は冬だ。
 しかし。

「一応冬でも海で遊べる道具は持ってきた」

 今回もフィオナと相談して作った代物だ。

「何を作ったんだ」

「作ったというか改良や改造なんだけれどね。アシュ、取り寄せお願い」

「わかった」

 例によって家の使っていない方の事務室に置いてあったグッズを召喚する。
 出てきたのは、
  ○ 全長3腕6m、幅1腕2mの船
  ○ ゴーレム1体(水中仕様)
  ○ 釣り道具セット5組
   (仕掛け付き釣り竿、予備の糸、予備の仕掛け、バケツ、トング等)
といったものだ。

 このうち船は既製品をフィオナの設計で木工所で改造したものに、更にやはりフィオナの設計で鍛冶場で製作した動力部を組み込んだもの。
 釣り道具セットのうち竿は俺の自製、釣り針は鍛冶場へ設計図を持っていって作って貰った特注品、錘はやはり自製で鉛を叩いて短冊状にした板錘りもどき。
 他はゴーレムを含め既製品だ。

「そのゴーレムは新しく買ったのか?」

 ミランダの質問にフィオナが頷く。

「そうだよ。2体買って1体はその船の動力源として使ってる。オッタービオさんの工房で買ったもので、基本は家のゴーレムと同じ設計だけれど、海辺や海中での作業用にさびにくい金属で出来ているんだ。あとそこの1体は海水と比重を同じにしてあるから水面水中自由自在だよ」

 以前、海遊びをした際、水上バイクの動力源に頭脳部を通常のゴーレムと同じ状態にしたパフィーちゃんを使用した。しかし海水のせいで錆びやすくなって後で大変苦労した。だから今回は海遊び用に錆びにくい専用ゴーレムを購入したのだ。

 今回購入した海遊び用ゴーレムはグルーチョ君やパフィーちゃんと大きさは同じだが骨格が黄銅などの錆びにくい金属で出来ている。その分やや重かったり出力が抑えられていたりするが、前の時よりメンテナンスは楽に済むはずだ。

「自分で泳ぐ代わりにそのゴーレムを操作して潜ったり魚を捕まえたりする訳か」

「そういう事。グルーチョ君達のような自律型じゃない普通のゴーレムだから、自分でゴーレムを通して海中を体験できる筈だよ」

「あとその棒や糸は何ですの」

 これは釣り道具セットの事だ。

「魚を捕らえる道具の一種だよ。釣りという方法でね。実際にやってみた方が速いかな。アシュ、お願い」

 そう簡単に釣れるとは限らないけれど。
 とりあえず簡単な延べ竿に針とおもりがついただけの仕掛けを選択。岩場にいた平らな貝を足で潰して中身を取り出し、釣り針に引っかける。

「こうやって魚の餌になるものを糸の先についた針にひっかける。あとは魚がいそうな場所に下ろして、魚が餌を食べようとして針にひっかかったら上げるという訳だ」

 一応岩場の一番先端近くへ行き、波にあわせてゆっくりと仕掛けを沈めていく。
 おっと、いきなり来た。釣り人がいないからスレていないんだろう。
 ヒクヒク引っ張る感触は間違いなく魚だ。それもそこそこ大きい。

「今、魚が針にひっかかった状態だ。糸が切れないように竿を操りながら魚を引っ張り上げればいい」

 とは言ってもなかなか引きが強い。リール無しの延べ竿なので釣り竿を上下左右に動かしながら魚を誘導する。

 竿を海側に向けたまま波にあわせてゆっくり岩場を岸の方へと歩きつつ引き寄せ、最後に波とともに浜に魚を引っ張り上げる。
 正確な種類は知らないが黒鯛に似た、でもちょっと間抜けっぽい顔の魚だった。カーモリの市場にもよく並んでいる魚だ。
 体長だいたい30指30cm程度というところだろうか。カルパッチョにちょうどいい。

「うまくいけばこんな感じで魚をつかまえられる」

 魔法でえらを切って締め、バケツにさかさに突っ込んで血抜きをしておく。

「面白そうですね」

「いまのは一番簡単な仕掛けだけれど、糸巻きがついている仕掛けもある。糸巻きがついている仕掛けは深く沈められるから船でかなり沖に行っても使える筈だ」

「なるほどね。餌は今みたいに貝がいいのかな?」

「貝でもいいし小さい蟹でもいい。小魚でも釣れると思う。その辺は実際に試して確認かな」

 これで遊び方の説明は終了だ。

「それじゃお昼まで自由行動だな。昼食は皆適当に食べればいいだろう」

 自在袋に今まで蓄積したものが入っている筈だし。

「それじゃ僕は風呂場の増築部分を設計しているよ」

「私は露天風呂を試してきますわ」

 テディとサラ、フィオナが別荘へ戻る。あとは皆さん海で遊ぶ模様だ。
 
「この船とゴーレム、あと糸巻きつき釣りセット借りていいか。ちょっと沖に出て釣りをしてみたい」

「私も行きます。ニア達はここへ置いていきますね」

 ナディアさんはミニ龍達を召喚して何か言っている模様。

「ジュリアとアシュはどうする?」

「絵を描く」

「俺はとりあえず岩場からの釣りかな」

「わかった」

 そんな訳でジュリアは別荘からおりてくる階段の中程へ。ミニ龍2頭は砂浜で波と遊んでいる模様。
 ミランダ達は船で沖へ出ようとして、すぐ俺のいる岩場の方へとやってきた。

「どうした?」

「餌を捕らないと釣れないよな」

 確かにそりゃそうだ。
 餌はやはり貝が一番簡単。岩に張り付いたムール貝っぽいものを釣りセットのナイフで剥がしてバケツへ。

「餌はこれだけでいいかな」

「何か釣れたらその魚を餌にしてもいい。大きいなら切り身にしても大丈夫だ」

「そうだね。貝の中身を出すのはさっきみたいに踏み潰せばいいのかな」

「身まで潰れないように加減して踏めば大丈夫だ。まあこれだけあれば多少は失敗しても問題ないだろ」

 そしてミランダ達は再び船の方へ、俺は岩場の先の方へ。
 さて、今度は少し場所を変えてみよう。どうせなら今の黒鯛もどきの他の魚も釣ってみたい。
 ちょっと場所を変え、波が引くのに合わせて沖方向へと仕掛けを沈めていく。

 俺が使っているのは柳の枝を魔法で強制乾燥させた後に削って作った2腕4mくらいの延べ竿。仕掛けの長さも竿の全長と同じくらいという簡単な仕掛けだ。
 波で海面が動くのにあわせて左右に動かしながら仕掛けをゆっくり沈めていく。

 糸がなかなか沈みにくい。釣り糸には前世の合成繊維製と違って亜麻の糸を使っている。簡単に手に入る中で一番細くてそこそこ強かったからなのだが、どうにも沈みにくい感じだ。
 途中に鉛の板錘りを追加したほうがいいだろうか。

 沈むのを待っていたら、不意にするするっと下へと沈んでいった。やっと糸が海水になじんだらしい。
 出来るだけ竿を下に下げて海面ギリギリにする。さて、今度は何が釣れるだろう。
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