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第16章 冬のリゾート
第125話 海釣りの時間
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最初の時ほどは簡単には釣れない。それでもぽつぽつという感じで黒鯛もどきを2匹、小鯖を7匹ほど釣り上げる。
更に小鯖を1匹上げたところでジュリアがやってきた。持ち物から見て俺と同様ここで釣りをするつもりらしい。
「絵は描き終わったのか」
「ひととおり。あとは光の加減が違う時間にする」
ジュリアの描画速度は早いからな。
「この魚の捕らえ方はしたことが無い。だから興味ある」
少なくとも漁師の間では釣りはメジャーな方法ではない訳か。でもそうなるとだ。確か潜水で漁をするって言っていたよな。
「寒い時期は漁師はどうやって魚を捕らえるんだ」
「仕掛け網かゴーレム。網はたくさんとれるが魚が傷むし設備費用もかかる。人数も必要。だからうちみたいな個人漁師はゴーレムがメイン。捕る魚を水中で選べるし息継ぎも必要ない。今は夏でもゴーレムがメインの漁師も多い」
そうだったのか。その辺は全然知らなかった。
「ならミランダ達がやっているのは本職の漁師と同じ方法なのか」
「船はうちの方が性能がいい。一般的な船はゴーレムがオールで漕ぐ。小回りはきくがあの船より遅い。でも漕ぐゴーレムを魚捕りに潜らせる事が出来る」
なるほどな。そうすればゴーレム1機で動力と潜水漁の両方に使える訳か。
「でもこのとらえ方も面白い。これも魚体にあまり傷をつけずに済む。とれる魚こそ選べないがその分何がかかるか楽しめる」
ジュリアは針に貝を殻ごとつける。どうやら貝に魔法で小さい穴を開けたようだ。
「殻ごとでいいのか」
「磯の大物は殻ごとかじって食べる」
そう言って貝をつけた仕掛けを岩の間の深い部分へと投げる。すっと仕掛けは海中へ沈んでいった。
俺のなかなか沈まない仕掛けと偉い違いだ。そう思って気づく。
「そうか、水魔法か」
水魔法で仕掛けを操るなんて事を考えてもいなかった。俺は釣りの概念にとらわれていたようだ。潜水の時と同じだな。
「これで底へ落とす。うまくいけば……」
ジュリアの竿は糸巻きつきだ。
ちなみに糸巻きは原始的な太鼓型リール。糸を出しながら落としていって、そしてジュリアの竿が強く引っ張られる。
「来た!」
かなり大きそうだ。これは大変かな。そう思った瞬間、引きが止まる。
「逃げられたか」
「仕留めた」
リールを巻いていくとおでこ部分が出っ張った人相の悪い大きな魚が浮いてきた。
俺が釣った黒鯛もどきより大きい。全長50指以上ありそうだ。更によく見ると口にいかにもという歯が見えた。
「この歯で糸を切られるかもしれない。だから魔法で仕留めた」
「そうか。確かにこれなら糸を切られそうだな。でも身が厚くて美味しそうだ」
ジュリアはうんうんと頷く。
「見かけは悪いが味はいい。ただ煮ると臭みが出る。生か揚げる」
なるほど、昼か夜に試してみよう。
「この魚の捕り方、面白い」
ジュリアは更に仕掛けを投げる。釣りにもこうやって魔法を使えば効率よく出来るんだな。考えもしなかったけれど面白い。
でもとりあえず俺は今のままやるとしよう。俺はやはり貝を踏み潰して中身を取り出し、ジュリアより浅いところを狙う。ゆらゆらと狙うとすっと引っ張られる。
全長20指くらいの小鯖だ。これを酢と塩で浅く締めたしめ鯖なんて美味しそうだ。
幸いこれくらいの小鯖はうじゃうじゃいる。何匹か釣って、特に小さい10指位のものがかかった時だ。
「貰っていい? 餌に使いたい」
確かにこれは小さいからあまり身も無いしな。外してジュリアに渡す。
ジュリアは小鯖を針にかけるとゆっくりと水面に下ろした。鯖はあっという間に見えなくなる。
「また何か大物を狙うのか?」
「大物は魚食性。この季節だと沖側にいる」
何か狙っているようだ。俺は小鯖を釣りながらジュリアの様子を伺う。
糸巻きには50腕ほどの糸を巻いてある。もう少し巻いておけば良かったかな。そんな事を思いつつ何匹目かの小鯖を上げた時だ。
「良し!」
ジュリアがそう言って糸を巻き始めた。ただ所詮、原始的な太鼓型リール。ギアなど無いから巻くのが大変だ。
「アシュさんごめん手伝って」
「どうすればいいんだ」
「糸巻きで糸を巻いて。私が糸を引いて魚を寄せる」
確かにそうしないと何処かに魚を引っかけそうだ。俺は竿を借りてリールをとにかく巻く作業に専念する。
ジュリアは糸を引っ張る作業だ。今回の糸はそこそこの太さがあるので指を切る事も無いだろう。
上がってきたのは丸々太ったブリっぽい魚だ。全長60指位かそれ以上。例によって沖で締めたらしく既に動かない。
「いいのがとれた。近づくと逃げられるからなかなかとれない高級魚。何をしても美味しい」
「ならこのチャンスで更に狙うとするか」
「当然」
魚を自在袋にしまった後、ジュリアは竿を受け取り、更に俺に向かって手を出す。
餌の小魚だな。適当に小さいのを渡すとまた針につけ、水魔法で流す。
それなら俺は小鯖狙いに集中するか。餌でジュリアも使うことだし、このチャンスにしめ鯖を大量に作ってもいい。
◇◇◇
ジュリアはブリっぽい魚2匹、鰹やマグロに似た魚1匹を釣り上げると仕掛けや道具を自在袋にしまう。
「充分。あとは今後の楽しみ用」
「それもそうだな」
俺も小鯖を結構釣った。とりあえずさばいて塩で締めておこう。
2人で岩場を伝って別荘へ戻る。
露天風呂にテディとサラの魔力を感じた。フィオナは出かけているようだ。設計が終わって材料を買いに行ったかな。
「魚を処理する」
「俺も行くよ」
2人でキッチンへ向かう。
更に小鯖を1匹上げたところでジュリアがやってきた。持ち物から見て俺と同様ここで釣りをするつもりらしい。
「絵は描き終わったのか」
「ひととおり。あとは光の加減が違う時間にする」
ジュリアの描画速度は早いからな。
「この魚の捕らえ方はしたことが無い。だから興味ある」
少なくとも漁師の間では釣りはメジャーな方法ではない訳か。でもそうなるとだ。確か潜水で漁をするって言っていたよな。
「寒い時期は漁師はどうやって魚を捕らえるんだ」
「仕掛け網かゴーレム。網はたくさんとれるが魚が傷むし設備費用もかかる。人数も必要。だからうちみたいな個人漁師はゴーレムがメイン。捕る魚を水中で選べるし息継ぎも必要ない。今は夏でもゴーレムがメインの漁師も多い」
そうだったのか。その辺は全然知らなかった。
「ならミランダ達がやっているのは本職の漁師と同じ方法なのか」
「船はうちの方が性能がいい。一般的な船はゴーレムがオールで漕ぐ。小回りはきくがあの船より遅い。でも漕ぐゴーレムを魚捕りに潜らせる事が出来る」
なるほどな。そうすればゴーレム1機で動力と潜水漁の両方に使える訳か。
「でもこのとらえ方も面白い。これも魚体にあまり傷をつけずに済む。とれる魚こそ選べないがその分何がかかるか楽しめる」
ジュリアは針に貝を殻ごとつける。どうやら貝に魔法で小さい穴を開けたようだ。
「殻ごとでいいのか」
「磯の大物は殻ごとかじって食べる」
そう言って貝をつけた仕掛けを岩の間の深い部分へと投げる。すっと仕掛けは海中へ沈んでいった。
俺のなかなか沈まない仕掛けと偉い違いだ。そう思って気づく。
「そうか、水魔法か」
水魔法で仕掛けを操るなんて事を考えてもいなかった。俺は釣りの概念にとらわれていたようだ。潜水の時と同じだな。
「これで底へ落とす。うまくいけば……」
ジュリアの竿は糸巻きつきだ。
ちなみに糸巻きは原始的な太鼓型リール。糸を出しながら落としていって、そしてジュリアの竿が強く引っ張られる。
「来た!」
かなり大きそうだ。これは大変かな。そう思った瞬間、引きが止まる。
「逃げられたか」
「仕留めた」
リールを巻いていくとおでこ部分が出っ張った人相の悪い大きな魚が浮いてきた。
俺が釣った黒鯛もどきより大きい。全長50指以上ありそうだ。更によく見ると口にいかにもという歯が見えた。
「この歯で糸を切られるかもしれない。だから魔法で仕留めた」
「そうか。確かにこれなら糸を切られそうだな。でも身が厚くて美味しそうだ」
ジュリアはうんうんと頷く。
「見かけは悪いが味はいい。ただ煮ると臭みが出る。生か揚げる」
なるほど、昼か夜に試してみよう。
「この魚の捕り方、面白い」
ジュリアは更に仕掛けを投げる。釣りにもこうやって魔法を使えば効率よく出来るんだな。考えもしなかったけれど面白い。
でもとりあえず俺は今のままやるとしよう。俺はやはり貝を踏み潰して中身を取り出し、ジュリアより浅いところを狙う。ゆらゆらと狙うとすっと引っ張られる。
全長20指くらいの小鯖だ。これを酢と塩で浅く締めたしめ鯖なんて美味しそうだ。
幸いこれくらいの小鯖はうじゃうじゃいる。何匹か釣って、特に小さい10指位のものがかかった時だ。
「貰っていい? 餌に使いたい」
確かにこれは小さいからあまり身も無いしな。外してジュリアに渡す。
ジュリアは小鯖を針にかけるとゆっくりと水面に下ろした。鯖はあっという間に見えなくなる。
「また何か大物を狙うのか?」
「大物は魚食性。この季節だと沖側にいる」
何か狙っているようだ。俺は小鯖を釣りながらジュリアの様子を伺う。
糸巻きには50腕ほどの糸を巻いてある。もう少し巻いておけば良かったかな。そんな事を思いつつ何匹目かの小鯖を上げた時だ。
「良し!」
ジュリアがそう言って糸を巻き始めた。ただ所詮、原始的な太鼓型リール。ギアなど無いから巻くのが大変だ。
「アシュさんごめん手伝って」
「どうすればいいんだ」
「糸巻きで糸を巻いて。私が糸を引いて魚を寄せる」
確かにそうしないと何処かに魚を引っかけそうだ。俺は竿を借りてリールをとにかく巻く作業に専念する。
ジュリアは糸を引っ張る作業だ。今回の糸はそこそこの太さがあるので指を切る事も無いだろう。
上がってきたのは丸々太ったブリっぽい魚だ。全長60指位かそれ以上。例によって沖で締めたらしく既に動かない。
「いいのがとれた。近づくと逃げられるからなかなかとれない高級魚。何をしても美味しい」
「ならこのチャンスで更に狙うとするか」
「当然」
魚を自在袋にしまった後、ジュリアは竿を受け取り、更に俺に向かって手を出す。
餌の小魚だな。適当に小さいのを渡すとまた針につけ、水魔法で流す。
それなら俺は小鯖狙いに集中するか。餌でジュリアも使うことだし、このチャンスにしめ鯖を大量に作ってもいい。
◇◇◇
ジュリアはブリっぽい魚2匹、鰹やマグロに似た魚1匹を釣り上げると仕掛けや道具を自在袋にしまう。
「充分。あとは今後の楽しみ用」
「それもそうだな」
俺も小鯖を結構釣った。とりあえずさばいて塩で締めておこう。
2人で岩場を伝って別荘へ戻る。
露天風呂にテディとサラの魔力を感じた。フィオナは出かけているようだ。設計が終わって材料を買いに行ったかな。
「魚を処理する」
「俺も行くよ」
2人でキッチンへ向かう。
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