異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

文字の大きさ
133 / 176
第16章 冬のリゾート

第127話 豪華浴場完成

しおりを挟む
「さて、話は変わるけれどさ。浴場の組み立てを手伝ってくれないかな。小屋がけも浴槽も皆で組み立てれば今日中に出来るようにカットして貰ってきたんだ。運ぶのはアシュの魔法頼りになるけれどさ」

 おっと、そういうイベントもあった。

「なら行くか。露天風呂の処でいいんだよな」

「そうそう。今回はミランダにも魔法を使って貰わないといけないしね」

 ミニ龍2頭も連れて全員で風呂場の先の外へ。

「まずはミランダだね。ここの岩というか溶岩、建物の壁際から元からある露天風呂のすぐ下まできっちり平面に削ってくれないかな。今の部分は全部吹き飛ばして構わないけれど、建物だけは壊さないでね」

「わかった。じゃあ皆、どいててくれ。ちょっと危ない魔法を使うからさ」

 何をするかわからないが危険そうだ。だから皆ミランダの後ろ方向へ避難する。
 ミランダは自在袋から魔法杖を取り出し、しゃがんで杖を低く構える。
 彼女が魔法杖なんて取り出すのは初めて見た。というか簡単な熱魔法や水魔法を日常で使う以外、俺はミランダが魔法を使っているのを見たことがない。その意味が今、わかるのだろうか。

「それじゃ久々にやるか。水魔法、超高速水流、起動っと!」

 シャーという音を立て強烈な勢いの水が前の岩場を襲った。水流は岩を削り土をならし削り取っていく。
 とんでもない勢いの水流だ。みるみるうちに真っ平らな場所ができあがていく。

「あとミランダ、焼土処理もお願い。家は焼かないでね」

「はいはいと」

 先程削った場所がわっと熱気を帯びた。土や岩が真っ赤になるまで熱せられた後冷やされる。
 結果、先程削られた部分は焼土やガラス質の平らな岩へと変化した。まだ熱いとまずいから触らないけれどコチコチに固まっている感じだ。
 俺じゃさっきの水魔法もこの熱魔法も無理だな。パワーが凶悪すぎる。

「相変わらずミランダの魔法は強力だよね」

「威力を絞るのが苦手だからな。こういう時しか使えない」

「でも好きな物焼きヴァストリベントの時は、自分で鉄板を熱する事が出来るようになりましたよね」

「熱魔法と水魔法はかなり練習してやっと慣れた感じだな。それでも自由自在というより極小と無しを交互にやっている感じだ。やっぱり魔法はこうやって思い切り使う方が性に合っている」

 それでミランダは滅多に魔法を使わないのか。確かにこれでは普通に使った場合被害甚大だ。

「でも威力が凄い。羨ましい」

「でもこのせいで学校の魔法の授業はずっと見学だったんだぜ。初等学校から高級学校までずっとだ。先生からもお前は魔法を使わないでいいから、実力は充分わかっているからと毎回言われてさ」

 先生の気持ちはよくわかる。失敗したら校庭に大穴が開くとか校舎が吹っ飛ぶとかしそうだ。

「さて、それじゃアシュの番だよ。いつもの木材店の前にミランダ様と書かれた木材が積んであるからさ。それをここへ取寄魔法アポートで持ってきて欲しいんだ」

 それなら俺の得意技だ。店は何回か行ったからすぐわかる。
 魔法を使って見ると確かにそれっぽい木材が大量に積んであった。しかしこれ、ちょっと予想外に……

「随分と多くないか、木材が」

「それでいいんだよ。とりあえず全部お願い」

 俺でさえも1回では無理な量だ。仕方ないので3回に分けて積み上げる。

「随分とたくさんありますね」

「風呂小屋の壁と屋根分もあるからね。勿論浴槽分も。そんな訳でここからは力仕事になるよ。テディ以外は身体強化魔法をかけて手伝って欲しいな」

「私もまだ大丈夫ですわ」

「駄目駄目、一応大事をとっておかないと」

 テディ以外全員で組み立て作業だ。身体強化魔法を起動してお仕事開始。太くて長く重い木の端を2人で持って運んで、指示通りの場所で組む作業。
 全ては木材を組みあわせるだけで形になるように出来ている。まずは市販の束石を置き、その上に骨組みになる木材を組み合わせ、それが出来たら壁になる板材を交互にはめ込んで……
 フィオナの指示通り運んではめ込む作業を繰り返す。屋根まで全てがはめ込んで固定できるように出来ていた。

「うまく出来ているな」

「その辺の設計はまあ慣れだよね。使っている方法は一般的なものばかりだよ。今回は土を塗らないで木材だけで完成するように作ったけれどね」

「壁のこの部分は開いていていいのか」

 露天風呂側の壁が半分ほど開いた状態だ。

「ここが開放的な方が気持ちいいと思ってね。湯気がこもらないし昼間ならあかり取りにもなるから。
 それじゃ次は浴槽部分を組み立てるよ」

 今度は大きさが小さい分楽かと思えばそうでもない。水漏れがしにくいよう、力を入れてはめる部分が多くなっている。

 作っているのは大きな浴槽と深い浴槽、座る浴槽に寝る浴槽。かつてバルマンのリゾートで作ったものとほぼ同じだ。
 しかし一通り浴槽を作っても木材が結構残っている。

「この木材はどうするんだ」

「中の浴槽の横の空きスペース、あそこをサウナにしようと思ってね。あそこに壁を作って木材を置いて、中に熱する石と適当に水を入れればサウナになるよね。石は各自が魔法で熱するとして」

 つまり大きさこそバルマンのテルメ館より小さいが施設は同等という訳か。しかもこっちはずっと俺達専用と。

「そんな訳でミランダ、サウナ用にここの溶岩を適当にぶった切って。運ぶのはアシュの魔法でやってもらうからさ」

「はいはい。形はどうでもいいのか」

「この辺で真横にカットしたらちょうどいい大きさと形になると思うよ」

「あと元からあった浴室内の浴槽も丸々カットするんだろ」

「正解だよ。中の浴槽は下に穴が開かないようカットした後、外の今まであった露天風呂の横に並べる形で設置する予定。この手の溶岩ならミランダの魔法で溶かして再結合できるよね」

「パワーには自信があるけれど微妙な調整は出来ないぞ」

「その辺は考慮済みだよ。多分大丈夫だから遠慮無く」

 次々と新しい設備ができあがっていく。

 それにしてもミランダの魔法、凶悪だ。威力というかパワーがとんでもない。岩と化している溶岩をドロドロになるまで赤熱するってどんな威力だよ。
 それを分かった上で使いこなしているフィオナもなんだかなと思うけれどさ。

 建物や浴槽や組み上がった後も作業はある。
 まずは何カ所か支柱をつくり、完成品状態で買ってきた木樋をはめ込んで通す。更に岩の上部分にミランダの熱魔法で溝を作り木樋をはめ込む。
 最後にやはりミランダの熱魔法で岩に穴を開けた、これで源泉から湯が全体に流れるようになった。

「これで完成だね。あとはお湯がたまるのを待つだけだよ」

 ここまでだいたい3時間。この3時間という時間が長いのか短いのかはよくわからない。

「これで何時間くらいすれば入れる? アシュ未来視でわかるか?」

 こういった事なら簡単に視る事が出来る。

「2時間程度で充分だな」

「楽しみですわ」

 ◇◇◇

 完成した新しい風呂場の施設は、まずは今までの浴場部分に、
  ○ スチームサウナ
  ○ 水風呂(2人用)
  ○ 内湯(3人用)
の3施設。

 新しく出来た壁の一方が開いている浴室が、
  ○ 寝湯3人分
  ○ 座湯(椅子湯)2人分
  ○ 歩行湯(長さ2腕4mの深い浴槽)
  ○ 普通の浴槽(6~7人用程度)
の4施設。

 そして今までの露天風呂の横に内湯で使っていた浴槽を接続し、かなり広くなった露天風呂が1カ所。
 ここの湯船は黒光りする岩で出来ていてなかなか高級感がある。単にミランダのハイパワーな魔法で溶かして結合した結果、表面がガラス質になっただけなのだれども。

 更に露天風呂から少し離れた場所にお湯が滝のように落ちる場所が出来ている。下はミランダの超高熱魔法で焼いて固めてあり、打たせ湯として使用可能だ。

 こんな感じで見た目にも設備的にもいい感じの浴場が完成した。
 広さこそバルマンのリゾートに劣るが設備の多さと雰囲気はこっちの方が上だ。 

「これはもう移動魔法で毎日通いたい位ですわ」

「というか実際に通うんだろ、テディは。自分でももう移動魔法使えるしさ」

「どうせなら皆で来たいですわ」

「そうだよね。毎日の日課としてここで皆で一服するのもいいよね」

「賛成です」

「なら明日にでも契約に行ってくるか」

 確かにこの施設、なかなかいいとは思う。でもここにこの面子と裸に近い格好で入るかと思うと……
 とにかくこうして俺的に悩ましい新施設が出来てしまったのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...