異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀

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第19章 それでも俺は挑戦する

第147話 とりあえず無事帰宅

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 無事別荘に帰れたのは今後の検討だの何だのが全て終わった翌々日だった。

「おかえりなさい」

「疲れた」

 帰ると同時に面倒くさい黒装束とウィッグを脱ぎ捨てる。

「らしくない事をやると疲れる」

「でも似合ってた」

 ジュリアやめてくれ、ってまさか……
 机の上を見てみる。号外紙が数枚おいてあった。イラストには騎士団軍勢に相対する黒装束の男の姿が……っておい!

「昨日の号外ですわ。ラツィオを除くほぼ全国で既に販売済みだそうです」

 つまり今回もしっかりと見られていたという訳か。
 はあっ。ため息しか出てこない。

「ところでミランダとフィオナ、あとサラは?」

 もう外が暗くなりかけているのに3人の姿が見えない。

「ミランダはいつもの外回りですわ。フィオナは使っていない3階の部屋を使って何かしているようです」

「サラは夕食調理中」

 つまりいつも通りか。了解だ。

「後で未来視の結果を皆に報告するから。2週間先まで見えている」

 なおナディアさんだけは既に伝達済みだ。向こうで昨日のうちに話したから。

「急ぐような結果はありますでしょうか」

「今のところ無さそうだ」

「なら明日、事務所に揃ってからでもいいのではないでしょうか」

「それもそうだな」

 今日はもうゆっくりしたい。そう思った時だ。
 トトトトト。階段を降りてくる音がした。

「お帰りアシュ」

 フィオナが顔を出す。

「ただいま。疲れた」

「疲れたところ申し訳ないけれど、回収した戦闘用ゴーレムを出して欲しいな。リセットしたいから」

 そう言えば戦闘用ゴーレムは異空間に放置したままだった。危険だから第二騎士団にも渡さなかったのだ。
 仕方ない、回収するか。

「それじゃ回収してくる。機能停止状態でいいか?」

 まだ俺討伐命令が生きているので機能停止させないと面倒くさい。

「いいよ。どうせリセットするからね。あとどうせなら3階に出しておいてくれないかな。運ぶのが面倒だから。どの部屋も空いているし扉も開けて奥からお願い」

「わかった」

 移動魔法でバジリカタのあの街道のところまで戻る。案の定戦闘用ゴーレムが約60機、回収されず異空間を浮遊していた。奴らが認識するよう声が届く状態にして命令する。

「戦闘用ゴーレムに命令する。健康と美容のために、食後に一杯の紅茶」

 名乗った方が良かったかなと思いつつ確認。どうやらゴーレムは声で俺だと認識したようで動きを止めた。あとは空間操作魔法で別荘へと送るだけ。
 魔法3回で何とか全部の戦闘用ゴーレムを送り、別荘へ戻る。

「ありがとう。それじゃ早速リセットするから」

「何に使うんだ?」

「今のところ特に用途は考えていないよ。何なら第二騎士団の戦力にしてもいいかな。ただ今の状態だと所有者が近衛騎士団になっているからね。リセットして初期化しておくんだ」

 なるほど。
 こんどこそ疲れた。机に突っ伏した時にまた空間が歪む感覚を感じた。ミランダのお帰りだな、これは。

「ただいまーっと。おっとアシュとナディアさん、お帰り。お疲れ様」

 ミランダは大体において元気だよな。その元気を分けてもらいたい。

「何かアシュ、疲れているな」

 そりゃ当然だ。

「家じゃない場所にいて、あわない役を4日も演じたんだ。当然だろ」

「でもなかなか様になっていたぞ。あの格好になると人格が変わるのかと思ったくらいだ」

 こいつも見ていたようだ。

「だからあれは仕方なく演じているだけだ」

「でも好評らしいぞ。チャールズ・フォート・ジョウントが出ると号外の出る数が倍近く増えると言っていたからな。ジュリアのまるで見たかのようなイラストのおかげもあるけれどな」

「大好評御礼」

 やめてくれ。

「夕食ができましたよ」

 サラの声にほっとする。飯を食べたら寝るぞ。今日は!

 ◇◇◇

 本日は疲れたからという名目で一人でぐっすり寝た。
 そして早く寝ると早く目が覚める。見ると窓の外はまだ真っ暗だ。

 俺の部屋の時計を見るとまだ午後11時。明日にすらなっていない。これは早く起きすぎではないだろうか。

 でも起きてしまったのだから仕方ない。辺りの気配を伺うが家の中に起きている気配は……
 上でフィオナが作業しているだけのようだ。

 よし、久しぶりにここの温泉で休まろう。俺はタオルと着替えを持って部屋を出る。
 階段を降り、ちょい小腹がすいたのでキッチンに寄って共用自在袋を漁ると……

 ちょうどフレンチトーストが入っていた。うん、旨い。今日の夕食の牛カツも美味しかったけれどさ。 
 サラの飯を食べると帰った気がする。第二騎士団の飯も悪くはないのだがサラの飯には負けるよな。

 そんな事を思いながら、ついでにあんパンとクリームパンをキープし、牛乳を大きめのタンブラーに入れ、これら全部をお盆にのせ脱衣所へ。

 脱ぐのが面倒なので脱衣魔法で脱いでロッカーへ放り込む。持っていた着替えもついでにINだ。タオルとお盆を持って、とりあえず一番奥の露天風呂へ。
 
 縁部分にお盆をおいて風呂の中へ。うん、最初はちょい熱く感じるが実はぬるめの長湯向きな温度だ。この硫黄臭い匂いといい我が家最高。
 本来はあんパンと牛乳は風呂上がりにいただくべきものだが、今日は湯につかりながらいただく。うん、贅沢。

 更にクリームパンの甘みをかみしめながら食べ、牛乳で流し込む。これぞ明日への活力って奴か、違うけれど。
 とりあえずテディではないけれど露天風呂はいい。リリンの生み出した文化の極みだよ……ってあれは露天風呂では無く歌か。

 この前エヴ●ンゲリオンのコミック版を取り寄せて読んだせいで変な台詞がでてしまった。あれもそのうちジュリアが訳せと言ってくるんだろう。でもあれってスティヴァレで訳しても面白いのだろうか。
 そんなしょうもない事を考えたりする。それくらい快適だ。

 そんな感じで久しぶりに我が家の露天風呂を堪能していた時だった。
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