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エピローグ 続いていく日々へ
第164話 一ヶ月後 ~帰ってきた翻訳業~
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陛下の崩御、そしてロッサーナ国王代理によって内戦の終結と新体制への移行、王政の廃止が宣言されてから一ヶ月経過した後。
チャールズ一味は新体制となったスティヴァレ民主政府準備委員会から抜けた。
「この体制の原型を作り、実質ここまで導いたのは貴方方でしょうに」
新政権準備委員会の実質的な会長であるモランディ氏がそう引き留める。
ちなみに彼は社会学者でラツィオ高級学校の元校長でもある。俺達が怪しい本を出して危うく退学になりかけた際、護ってくれた一人だ。フィオナとは学術出版関係で卒業後も付き合いがあったらしい。
『ここでの我々の仕事は終わったと判断した』
一応俺にはかつての日本での知識がある。だから政府の方向性等については意見を出したしプレゼンテーションまがいの事だってやった。
しかし方向性がほぼ定まった今、もう俺がすべき事はあまり無いだろう。
俺の本音としてはもう終わりにしてくれ疲れたんだというところだ。無論そんな事を言うわけにはいかないけれど。
『我、チャールズ・フォート・ジョウントは本来、単なる冒険者だ。今回も依頼をただ遂行したに過ぎない。そしてここからは我がいなくても問題は無いであろう。我の仕事、我らの役目は終わったのだ。あとは新制度に就くこの国の皆に任せたい』
実際に依頼を明文化して受けた訳ではない。でも俺にとっては陛下に託された依頼というつもりで言った。
実際そうだと思うのだ。あの本を渡された時、きっと陛下に依頼されたと俺は思っている。この国を変える手伝いをしてくれと。
「残念です。それでテオドーラさん達は残られるのですか」
『いや、彼女らもここで契約解除にしようと思う』
確かに業務割り振りだの連絡だのの業務は当初テディとフィオナがやっていた。
しかし委員会も正式なものとなり関わる人員も増えた。元々国王庁でそういった仕事に就いていた者もいる。だからテディ達がここにいる必要もそろそろ無いだろう。
本音を言うともう翻訳の仕事が待ちくたびれている状態なのだ。ミランダも相手先出版社もそろそろ限界なんだ。
俺もさっさと本を探してバリバリと翻訳しなければならないのだ。復帰が遅くなれば遅くなるほど地獄の日程が待っているのだ。
だから解放してくれよ頼むから。勿論その辺までは説明しないけれど。
『彼女らが属している商会が私の手先機関と近衛騎士団に誤認され襲撃された関係で、保護するとともに我が業務の手伝いをお願いしていた。だが彼女らも元の仕事がある。待っている人もいる。だから我とともに当任務を終了という事としたい』
「貴方方はそれでよろしいのでしょうか」
テディ、フィオナ、ミランダ、ナディアさんの4人とも頷く。なおサラとジュリアは学校が始まった時点で離脱済みだ。
「私もそろそろ産休という事で休もうと思いますので」
テディは見かけ上は以前と変わらないが妊娠3ヶ月。つわり等も結構あって大変そうだ。
「僕は在野の方が落ち着いて自分が調べたい事が出来るしね」
「私は本来飛び回っている方が性に合っているしな」
「私は元々一介の騎士にすぎませんから」
ミランダは新政権の広報機関としてスポークスマンから情報発信の組織作りまでほぼ一手に握ってここまでやってきた。ナディアさんは専ら騎士団等の再編に関わっていた。
でもそれぞれ後任に引き継いだと聞いている。だから問題は無い筈だ。
「わかりました。ところでテオドーラさん達にはフィオナさんを通じて連絡を取ることが出来るでしょうけれど、チャールズ殿に連絡をしたい場合はどうすればよろしいでしょうか」
『スティヴァレに私が必要な時期はもう終わったと判断している。今後は無名の冒険者へと戻るつもりだ。だがどうしても必要がある場合、フィオナ経由で連絡がとれるようにしておこう』
「わかりました」
モランディ氏のその言葉とともに俺達以外の12人が立ち上がる。彼らは準備委員会の中枢、第二騎士団に設立した当初からのメンバーだ。
学者、元貴族、元官僚等いるけれどそれぞれ選りすぐられた人々。彼らに任せれば大丈夫だろう。
『それでは今後のスティヴァレをよろしく頼む』
「わかりました。今までありがとうございました」
相互に礼をすると同時に俺は移動魔法を起動する。移動先はゼノア。無事取り戻したあの俺達の家だ。
「ただいま」
サラとジュリアは学校だ。でもニアとマイアがキュウキュウとないて出迎えてくれる。
「テディは少し休んでくれ。大分疲れただろう」
「それほどでもないし大丈夫ですわ」
「でも今は大切な時期だからね。もう少ししたら安定するからその時にまた翻訳をまとめてやればいいと思うよ」
フィオナの説得でテディは頷く。
「わかりました。それでは少し自室で休ませてもらいますわ」
歩きではなく移動魔法で消える。どうやらそこそこしんどいようだ。
「これでやっと元の生活だね」
「そうですね」
「だな」
俺達は頷く。
「殿下達は元気にやっているかな」
ロッサーナ殿下は今は南部、ネイプルより更に南にあるスカレアという街にいる。そこで家を借りて冒険者稼業をやっているのだ。
あの辺りはまだ未開発の森林や山地が広がり魔獣や魔物も多い。魔物討伐等の仕事も多く腕さえあれば冒険者として幾らでも稼げるらしい。
「お兄様が戻られる前に一旗あげておきますわ」
との事だ。
なおロッサーナ殿下は現在、フレドリカと名前を変えている。ラツィオの王宮で王政の終了を宣言する寸前、委員会経由で別名の冒険者証を作って貰ったそうだ。
「お兄様が戻られても養えるだけの状態にしておくのですわ」
まあ3人とも闇魔法を使えるし、ソニアさんは元々騎士団最強の1人だ。どんな魔物でも後れを取ることはないだろうと思う。
陛下が戻るまでという期限付きだが移動用ゴーレムも貸し出しているし。
「さあて、それではお仕事だ。現在、当初の予定通り原稿があがっているのはサラとジュリアだけだからな。まずはナディアさんだ。こどあその森は12巻まで早急に全部仕上げるように。
フィオナは今回のスティヴァレ維新の関係、全部まとめているよな。あれはジュリアの絵とあわせて記録として出版する。新政権の正式な発足とともに売り出す予定だからな。締め切りは6月12日正午。それまでに寝ないでいいから完成させろ。
あとはアシュ、わかっているよな。テディが産休でサラが学校の今、一般小説担当はアシュだけだ。何でもいいから面白いの3冊早急に。早急とはどういう意味か、わかっているよな」
ミランダの顔が鬼に見える。
うん、でもまあ、仕方ないか。子供達が生まれるまでに少しでも安心できるよう稼いでおかないと。
こうして再び忙しい日々が戻ってきてしまった。
結局こうなるんだよな。そう思いつつも後悔はない。
黒覆面の怪傑で国の英雄なんて役目は俺には似合わない。こうやって本を読んでしこしこ翻訳する方が性に合っているのだ。
ただ仕事量が、ちょっとなあ……
禁断の十倍速モードを使うしかないようだ。
仕方ない。仕事をいままでさぼっていたツケだな。
チャールズ一味は新体制となったスティヴァレ民主政府準備委員会から抜けた。
「この体制の原型を作り、実質ここまで導いたのは貴方方でしょうに」
新政権準備委員会の実質的な会長であるモランディ氏がそう引き留める。
ちなみに彼は社会学者でラツィオ高級学校の元校長でもある。俺達が怪しい本を出して危うく退学になりかけた際、護ってくれた一人だ。フィオナとは学術出版関係で卒業後も付き合いがあったらしい。
『ここでの我々の仕事は終わったと判断した』
一応俺にはかつての日本での知識がある。だから政府の方向性等については意見を出したしプレゼンテーションまがいの事だってやった。
しかし方向性がほぼ定まった今、もう俺がすべき事はあまり無いだろう。
俺の本音としてはもう終わりにしてくれ疲れたんだというところだ。無論そんな事を言うわけにはいかないけれど。
『我、チャールズ・フォート・ジョウントは本来、単なる冒険者だ。今回も依頼をただ遂行したに過ぎない。そしてここからは我がいなくても問題は無いであろう。我の仕事、我らの役目は終わったのだ。あとは新制度に就くこの国の皆に任せたい』
実際に依頼を明文化して受けた訳ではない。でも俺にとっては陛下に託された依頼というつもりで言った。
実際そうだと思うのだ。あの本を渡された時、きっと陛下に依頼されたと俺は思っている。この国を変える手伝いをしてくれと。
「残念です。それでテオドーラさん達は残られるのですか」
『いや、彼女らもここで契約解除にしようと思う』
確かに業務割り振りだの連絡だのの業務は当初テディとフィオナがやっていた。
しかし委員会も正式なものとなり関わる人員も増えた。元々国王庁でそういった仕事に就いていた者もいる。だからテディ達がここにいる必要もそろそろ無いだろう。
本音を言うともう翻訳の仕事が待ちくたびれている状態なのだ。ミランダも相手先出版社もそろそろ限界なんだ。
俺もさっさと本を探してバリバリと翻訳しなければならないのだ。復帰が遅くなれば遅くなるほど地獄の日程が待っているのだ。
だから解放してくれよ頼むから。勿論その辺までは説明しないけれど。
『彼女らが属している商会が私の手先機関と近衛騎士団に誤認され襲撃された関係で、保護するとともに我が業務の手伝いをお願いしていた。だが彼女らも元の仕事がある。待っている人もいる。だから我とともに当任務を終了という事としたい』
「貴方方はそれでよろしいのでしょうか」
テディ、フィオナ、ミランダ、ナディアさんの4人とも頷く。なおサラとジュリアは学校が始まった時点で離脱済みだ。
「私もそろそろ産休という事で休もうと思いますので」
テディは見かけ上は以前と変わらないが妊娠3ヶ月。つわり等も結構あって大変そうだ。
「僕は在野の方が落ち着いて自分が調べたい事が出来るしね」
「私は本来飛び回っている方が性に合っているしな」
「私は元々一介の騎士にすぎませんから」
ミランダは新政権の広報機関としてスポークスマンから情報発信の組織作りまでほぼ一手に握ってここまでやってきた。ナディアさんは専ら騎士団等の再編に関わっていた。
でもそれぞれ後任に引き継いだと聞いている。だから問題は無い筈だ。
「わかりました。ところでテオドーラさん達にはフィオナさんを通じて連絡を取ることが出来るでしょうけれど、チャールズ殿に連絡をしたい場合はどうすればよろしいでしょうか」
『スティヴァレに私が必要な時期はもう終わったと判断している。今後は無名の冒険者へと戻るつもりだ。だがどうしても必要がある場合、フィオナ経由で連絡がとれるようにしておこう』
「わかりました」
モランディ氏のその言葉とともに俺達以外の12人が立ち上がる。彼らは準備委員会の中枢、第二騎士団に設立した当初からのメンバーだ。
学者、元貴族、元官僚等いるけれどそれぞれ選りすぐられた人々。彼らに任せれば大丈夫だろう。
『それでは今後のスティヴァレをよろしく頼む』
「わかりました。今までありがとうございました」
相互に礼をすると同時に俺は移動魔法を起動する。移動先はゼノア。無事取り戻したあの俺達の家だ。
「ただいま」
サラとジュリアは学校だ。でもニアとマイアがキュウキュウとないて出迎えてくれる。
「テディは少し休んでくれ。大分疲れただろう」
「それほどでもないし大丈夫ですわ」
「でも今は大切な時期だからね。もう少ししたら安定するからその時にまた翻訳をまとめてやればいいと思うよ」
フィオナの説得でテディは頷く。
「わかりました。それでは少し自室で休ませてもらいますわ」
歩きではなく移動魔法で消える。どうやらそこそこしんどいようだ。
「これでやっと元の生活だね」
「そうですね」
「だな」
俺達は頷く。
「殿下達は元気にやっているかな」
ロッサーナ殿下は今は南部、ネイプルより更に南にあるスカレアという街にいる。そこで家を借りて冒険者稼業をやっているのだ。
あの辺りはまだ未開発の森林や山地が広がり魔獣や魔物も多い。魔物討伐等の仕事も多く腕さえあれば冒険者として幾らでも稼げるらしい。
「お兄様が戻られる前に一旗あげておきますわ」
との事だ。
なおロッサーナ殿下は現在、フレドリカと名前を変えている。ラツィオの王宮で王政の終了を宣言する寸前、委員会経由で別名の冒険者証を作って貰ったそうだ。
「お兄様が戻られても養えるだけの状態にしておくのですわ」
まあ3人とも闇魔法を使えるし、ソニアさんは元々騎士団最強の1人だ。どんな魔物でも後れを取ることはないだろうと思う。
陛下が戻るまでという期限付きだが移動用ゴーレムも貸し出しているし。
「さあて、それではお仕事だ。現在、当初の予定通り原稿があがっているのはサラとジュリアだけだからな。まずはナディアさんだ。こどあその森は12巻まで早急に全部仕上げるように。
フィオナは今回のスティヴァレ維新の関係、全部まとめているよな。あれはジュリアの絵とあわせて記録として出版する。新政権の正式な発足とともに売り出す予定だからな。締め切りは6月12日正午。それまでに寝ないでいいから完成させろ。
あとはアシュ、わかっているよな。テディが産休でサラが学校の今、一般小説担当はアシュだけだ。何でもいいから面白いの3冊早急に。早急とはどういう意味か、わかっているよな」
ミランダの顔が鬼に見える。
うん、でもまあ、仕方ないか。子供達が生まれるまでに少しでも安心できるよう稼いでおかないと。
こうして再び忙しい日々が戻ってきてしまった。
結局こうなるんだよな。そう思いつつも後悔はない。
黒覆面の怪傑で国の英雄なんて役目は俺には似合わない。こうやって本を読んでしこしこ翻訳する方が性に合っているのだ。
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