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エピローグ 続いていく日々へ

第165話 半年後

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 家の間取りが少しだけ変わった。具体的には廊下の奥、階段の下にあたる部分に扉がひとつ追加。
 この扉は実はゴーレムだ。言われなければ気づかないが、扉の上にごく小さな頭があり、左右にごくごく小さく細い腕らしきものがある。

 何故ゴーレムなのか。それは自動で魔法を使うためだ。
 その魔法とは空間操作魔法。この扉は別荘の裏口に設置された同型のゴーレム扉と空間を曲げて直結している。

 この扉を入ると別荘1階の裏口から家の中に入った状態になる。別荘1階の裏口に設置したゴーレム扉を開けて入るとゼノアの家の階段下の扉から出る。
 つまりは行先固定常設型のど●でも●アだ。今のスティヴァレには俺のそんな感想に共感してくれる人はいないけれど。

 これは毎日風呂に入るためではない。もちろんそうやって使ってもいるが、本来は部屋確保の為なのだ。

 テディが現在妊娠8ヶ月。終戦後しばらくして発覚したミランダが妊娠3ヶ月。
 そしてつい昨日、ナディアさんの妊娠が発覚してしまった。

「今はともかく、子供部屋が後々必要になるよな」

 まだ早すぎるが言いたい事はわかる。でも待てよ。

「どう考えても部屋が足りなくないか。今の時点で最低3人分は必要だろ」

「大丈夫、いい案があるよ。ついでにお風呂の安全対策もしておくね」

 フィオナの行動は早かった。3日後にはオッタービオさん謹製、扉型ゴーレムが設置されていたという訳だ。

「これなら2人ずつ産んでも部屋数は余裕だよね」

 確かに別荘は使っていない部屋だけで14部屋はある。別荘にある俺の部屋とかテディ達の部屋、フィオナの実験部屋を解放すればもっと増えるだろう。
 なおフィオナが手をつけたのはそれだけではない。階段や廊下、温泉施設のあちこちに手すりが付加された。

「これで安心して温泉に入れますわ」

「だな。私の時も安心だ」

「それじゃ僕もそろそろ頑張ろうかな」

 おいフィオナ、何を頑張るんだ。

「その次を密かに狙う」

 ジュリア誤解を受けるような台詞はやめてくれ。

「私はテディお姉さんが落ち着いてからにします」

 サラもだ。

 おかげで今、思いきり俺、2人以外の皆に白い目で見られた。
 言っておくが手を出してはいない。妊娠中が多くて解消できない性欲のはけ口になんて事はしていない。本当だ信じてくれ。
 
 なお皆さんの産休の影響は少なくとも営業面では出ていない。出版社の担当者がうちの事務所に来るようになっただけだ。

 ただその分仕事を断る作業が大変になった。
 今はまだミランダがある程度やってくれているからいい。ただそのミランダも妊娠3ヶ月で時々つわりが出てる。
 そんなときは消去法で俺が対応せざるを得ない訳だ。フィオナは基本的に調べ物だといって図書館に逃げているから。更にこの先と考えると……

 そうでなくとも俺の仕事は悲しいほどに増えている。翻訳だけでなく一般書の仕上げも仕事として入ってきているのだ。
 サラも手伝ってくれてるけれど彼女は彼女なりに号外紙の仕事がある。彼女の場合は学校だってあるのだ。主に手伝って貰っているナディアさんもついに妊娠してしまった。

 勿論妊娠組も仕事はある程度出来る。でも無理はさせられない。そしてその分の仕事は当然俺に降ってくる訳で……

 そんな感じで今日も俺は仕事に追われてくたびれ切っている。夕食の時間がせめてもの心の拠り所だ。
 その夕食の時間、ミランダが言った。

「いよいよ明日だな」

 何の日かは言わなくても皆わかっている。明日8月5日はジョルジュ長岡の誕生日、ではなくて……

「陛下はあの日のままなんだよね」

 そう、半年前、ファブーロの戦いで陛下を飛ばした先の日付だ。

「8月5日の正午、別荘のリビングでしたわね」

「ああ」

 なお別荘のリビングはゼノアの家に帰った後、再度模様替えをして事務所状態から元の応接スペース付きの広いリビングの姿に戻している。

「殿下、いやフレドリカ先輩達一行とヴィットリオさんが来るんだよね」

「その予定だな。大体皆11時過ぎにこの家に来るそうだから、来たら案内しよう」

「お祝いの料理は任せて下さい」

「腕がなる」

 休養日なのでサラとジュリアでお祝いの料理を用意してくれるそうだ。
 ジュリアがかむという事は海鮮のいいのが出るだろうか。ちょっと、いやかなり楽しみだ。
 
「フレドリカ先輩達は変わっていらっしゃいますでしょうか」

「テディ程ではないと思うよ。テディはかなりお腹がおおきくなったよね」

 なおフィオナの診断では母子ともに大変健康だそうである。女の子だという事まで既にわかっている。名前については今、皆で検討中だ。

 ちなみにミランダの子は男の子。ナディアさんの子はまだ医学的には不明。
 その辺については敢えて未来視で調べたりはしていない。健康に生まれてきてくれればまずは充分だ。

 新しい政府も頑張っているようだ。国民議会議員の立候補受付もはじまった。

 なお選挙運動はかなり厳しく制限されている。だから候補者の情報は公報と号外紙、あとは演説会等に限られる。
 見た限りでは様々な人が立候補しているようだ。元貴族とか学者とか大商会の会頭だけではない。一般平民出身者もかなり混じっている。
 
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