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第2話 まずは自分の生活から
6 ねぐらを作ろう
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神の居場所というと、思い浮かぶのはやっぱり神社だ。
金比羅宮とか、その奥社とか、天空の鳥居がある高屋神社とか、讃岐の国一宮でもある田村神社とか。
しかしあんな木造建築を出来る様な木材は、この平原にはない。
それどころか草ばかりで、竪穴式住居を作る骨組みさえ手に入らない。
いや、山の方へ行けば、骨組み程度になる雑木はあるか。
ただ竪穴式住居に神が住む、というのは今ひとつイメージが……
そう思って、そして思いついた。
洞窟なら、掘るだけでいい。周囲が土でなく岩なら、一度中を洗えば汚れないだろう。
神が住まう洞窟なんてのは、割と話にあったような気がするし。
ただ、穴を掘るなら、横穴が掘れるような場所がいいだろう。
となると、やっぱり山とか丘とかだ。
そういえば神社って、山にあるものも結構多かったよなと思い出す。
山とか山の岩がご神体なんて神社が、結構あった気がするのだ。
金刀比羅宮だって山の中程にあるし、もっと典型的なものとしては丸亀にある讃岐富士を神体とする飯神社なんてのもある。
この飯神社は遥か古代、国産みの神話で四国が生まれた際、香川県の神として誕生した飯依比古を祀った神社だ。
山頂にあるのは神社では無く、安養寺の奥之院だけれども。
うむ、地域の神と言う意味では、きっと私と同じ。
しかも平野の中にある山なら、周囲からも見ることが出来る。
平野に人が住むようになった際、崇敬を集めやすい気がするのだ。
という事で、とりあえず場所は山に掘った岩窟に決定だ。
岩だろうと、今の私なら神の権能で掘ってそこそこ広い穴を作るのは可能だ……よね。
『可能です。どんな固い岩であろうと、自分の領域にあるものならば、思い通りに加工出来ます』
全知のお墨付きが出た。
ならという事で、視覚と脳内地図とを併用して、出来るだけ平野の広い部分から見える、独立した形のいい山を探す。
なかなかいい山があった。周囲が平野で、海からも5km程度と遠くない。
形も讃岐富士のような、美しい円錐型をしている。これはコニーデ型火山なのだろうか。
『元々はテーブル状の台地でしたが、風雨による長年の浸食でこのような形になりました。土質は麓付近は花崗岩で、中腹から上は安山岩、山頂付近では赤い粘土質の土となっています』
粘土質か。ならばその粘土質の部分を加工して、素焼きの家のようにする事は可能だろうか。
『可能です。なお素焼きにせず、岩盤化する事も可能です。掘ったり積んだりして成形した後に岩盤化すれば、それなりに頑丈な建物となります。ただし重さがあるので、天井を支える構造はアーチ状にする等、工夫が必要です』
おお、当初予定していた以上の住処が出来そうだ。
そう思って、そして気づく。
岩盤化ということは、天井も壁も床も岩という事だ。
そして岩の上に直接寝たのでは、固くて寝にくい気がする。布団なんていいものは無いとしても、せめて敷物とか、掛けるものとかが欲しい。
『この土地にない物は、出す事は出来ません。ただし服に関しては、着用している状態で出す事が可能です。これは服まで含めて神の姿という事になっているからです』
全知があらかじめ注意してきた。
つまり私の権能では、21世紀日本の布団とか寝袋とかは出せないという事だ。
でも待てよ、着る寝袋なんてのはどうだろう。
『着る寝袋は、今回は分類上、は服ではなく寝具とみなします。ですから服として着替える事は出来ません。この世界にあり、手に入るもので調達する必要があります』
取り敢えず、下が岩では固そうなので、砂を持っていくとしよう。敷き詰めれば、固い岩盤よりはましだろう。
ただし砂の上に直接寝るのは、あまり宜しくない気がする。耳に砂が入りそうだし、目や手にも、髪の毛にも砂がつきそう。
なら、今手に入る材料で出来そうなのは……
あるのは草原と、砂浜。山の方へ行けば細い雑木はあるけれど、それくらい。
あ、でも草は使えるような気がする。畳なんてのは、い草を編んで作った畳表と、藁で出来た畳床を組み合わせたものだ。
なら目の前の草原に生えている、実の成分がさぬきの夢に近い小麦の藁も、叩いて柔らかくすれば畳床っぽいものや、畳表みたいなものを作れないだろうか。
『現在は糸がないので、畳床そのものを作る事は出来ません。ただし藁を使った筵の類似品なら、この世界でも作られていました。前に生えている草と全知による知識で作製可能です』
よし、敷物と掛け布団かわりは、取り敢えずこれでいいだろう。
ならばということで、念じてみる。
『寝るのに使えそうな、3畳分くらいの筵と、掛け布団代わりの筵、枕っぽい藁束を作るのに必要な草を、目の前の草地から採取』
目の前からかなりの部分の草が、根元から綺麗に刈り取られて消えた。
筵はこれで、イメージ通りのものが作れるだろう。
それでは山へ移動だ。日没まで、もうあまり時間が無い。
山頂は、比較的平らな草原だ。
そして周囲の見晴らしが非常にいい。
『最大干潮時のセト海域の海面からの高さは、422mとなります』
結構標高が高い。でも私は神様なので、移動は念じるだけでいい。
だから標高の高さは、見晴らしがいいという長所だけしかない。
『遮るものがないので、風雨は平地より若干強いでしょう』
その辺は、建物の構造で何とかすればいいだろう。
さてという事で、まずは頂上の周辺50m四方くらいの草をばっさり刈って収納する。
更に土の中に残っている根やその他のゴミを意識して取り除いて、土を中央に積み上げる。
さて、全体の形をどうするか。風雨に強くて、屋根の重さを支えやすいアーチ状の建物というと……
思いついたのは、パゴダだ。大学時代に友人の車で、わざわざ西讃、仁尾の海水浴場に行った際、近くの寺に異国風の建物があると聞いて見に行った、あの白い建物。
パゴダとはミャンマー様式の仏塔で、あそこの寺のは、中にタイから送られたという金ぴかの釈迦涅槃像が置かれていた。
うん、仏様ではなく、神様が横になる場所としても、きっと悪くはないだろう。
パゴダとは仏舎利塔で、釈迦涅槃像というのはつまり釈迦が死ぬ様子を像にしたもの。
だから墓だろうし縁起が悪い、寝ると死ぬぞという考えは、あえて無視。
うろ覚えながら、それっぽい建物の形と内側、部屋の構造をイメージする。
ドーム型の建物が出来上がった。岩盤化すると白ではなく暗めの灰色になったけれど、取り敢えずはこれでいい。
内側もそこそこいい感じで、天井が綺麗にカーブを描いている。
しかも天井、壁、床ともに石造りという、なかなか豪勢なつくり。
神の権能、何にでも使える全在で、砂とか石の破片とかを全部取り去った後、中へ入る。
それでは敷物である筵を作ったら、今日は寝るとしよう。
まずは採取した藁を叩きまくって柔らかくして……
※ 彩花さんがイメージしたのは、香川県三豊市仁尾町家の浦にある、円明院七宝山円興寺のパゴダです。ただ記憶が今ひとつだったので、入口の意匠が通常の建物と同じようになっているほか、屋根の頂点についている相輪が単なる尖った棒状になっていたりします。
金比羅宮とか、その奥社とか、天空の鳥居がある高屋神社とか、讃岐の国一宮でもある田村神社とか。
しかしあんな木造建築を出来る様な木材は、この平原にはない。
それどころか草ばかりで、竪穴式住居を作る骨組みさえ手に入らない。
いや、山の方へ行けば、骨組み程度になる雑木はあるか。
ただ竪穴式住居に神が住む、というのは今ひとつイメージが……
そう思って、そして思いついた。
洞窟なら、掘るだけでいい。周囲が土でなく岩なら、一度中を洗えば汚れないだろう。
神が住まう洞窟なんてのは、割と話にあったような気がするし。
ただ、穴を掘るなら、横穴が掘れるような場所がいいだろう。
となると、やっぱり山とか丘とかだ。
そういえば神社って、山にあるものも結構多かったよなと思い出す。
山とか山の岩がご神体なんて神社が、結構あった気がするのだ。
金刀比羅宮だって山の中程にあるし、もっと典型的なものとしては丸亀にある讃岐富士を神体とする飯神社なんてのもある。
この飯神社は遥か古代、国産みの神話で四国が生まれた際、香川県の神として誕生した飯依比古を祀った神社だ。
山頂にあるのは神社では無く、安養寺の奥之院だけれども。
うむ、地域の神と言う意味では、きっと私と同じ。
しかも平野の中にある山なら、周囲からも見ることが出来る。
平野に人が住むようになった際、崇敬を集めやすい気がするのだ。
という事で、とりあえず場所は山に掘った岩窟に決定だ。
岩だろうと、今の私なら神の権能で掘ってそこそこ広い穴を作るのは可能だ……よね。
『可能です。どんな固い岩であろうと、自分の領域にあるものならば、思い通りに加工出来ます』
全知のお墨付きが出た。
ならという事で、視覚と脳内地図とを併用して、出来るだけ平野の広い部分から見える、独立した形のいい山を探す。
なかなかいい山があった。周囲が平野で、海からも5km程度と遠くない。
形も讃岐富士のような、美しい円錐型をしている。これはコニーデ型火山なのだろうか。
『元々はテーブル状の台地でしたが、風雨による長年の浸食でこのような形になりました。土質は麓付近は花崗岩で、中腹から上は安山岩、山頂付近では赤い粘土質の土となっています』
粘土質か。ならばその粘土質の部分を加工して、素焼きの家のようにする事は可能だろうか。
『可能です。なお素焼きにせず、岩盤化する事も可能です。掘ったり積んだりして成形した後に岩盤化すれば、それなりに頑丈な建物となります。ただし重さがあるので、天井を支える構造はアーチ状にする等、工夫が必要です』
おお、当初予定していた以上の住処が出来そうだ。
そう思って、そして気づく。
岩盤化ということは、天井も壁も床も岩という事だ。
そして岩の上に直接寝たのでは、固くて寝にくい気がする。布団なんていいものは無いとしても、せめて敷物とか、掛けるものとかが欲しい。
『この土地にない物は、出す事は出来ません。ただし服に関しては、着用している状態で出す事が可能です。これは服まで含めて神の姿という事になっているからです』
全知があらかじめ注意してきた。
つまり私の権能では、21世紀日本の布団とか寝袋とかは出せないという事だ。
でも待てよ、着る寝袋なんてのはどうだろう。
『着る寝袋は、今回は分類上、は服ではなく寝具とみなします。ですから服として着替える事は出来ません。この世界にあり、手に入るもので調達する必要があります』
取り敢えず、下が岩では固そうなので、砂を持っていくとしよう。敷き詰めれば、固い岩盤よりはましだろう。
ただし砂の上に直接寝るのは、あまり宜しくない気がする。耳に砂が入りそうだし、目や手にも、髪の毛にも砂がつきそう。
なら、今手に入る材料で出来そうなのは……
あるのは草原と、砂浜。山の方へ行けば細い雑木はあるけれど、それくらい。
あ、でも草は使えるような気がする。畳なんてのは、い草を編んで作った畳表と、藁で出来た畳床を組み合わせたものだ。
なら目の前の草原に生えている、実の成分がさぬきの夢に近い小麦の藁も、叩いて柔らかくすれば畳床っぽいものや、畳表みたいなものを作れないだろうか。
『現在は糸がないので、畳床そのものを作る事は出来ません。ただし藁を使った筵の類似品なら、この世界でも作られていました。前に生えている草と全知による知識で作製可能です』
よし、敷物と掛け布団かわりは、取り敢えずこれでいいだろう。
ならばということで、念じてみる。
『寝るのに使えそうな、3畳分くらいの筵と、掛け布団代わりの筵、枕っぽい藁束を作るのに必要な草を、目の前の草地から採取』
目の前からかなりの部分の草が、根元から綺麗に刈り取られて消えた。
筵はこれで、イメージ通りのものが作れるだろう。
それでは山へ移動だ。日没まで、もうあまり時間が無い。
山頂は、比較的平らな草原だ。
そして周囲の見晴らしが非常にいい。
『最大干潮時のセト海域の海面からの高さは、422mとなります』
結構標高が高い。でも私は神様なので、移動は念じるだけでいい。
だから標高の高さは、見晴らしがいいという長所だけしかない。
『遮るものがないので、風雨は平地より若干強いでしょう』
その辺は、建物の構造で何とかすればいいだろう。
さてという事で、まずは頂上の周辺50m四方くらいの草をばっさり刈って収納する。
更に土の中に残っている根やその他のゴミを意識して取り除いて、土を中央に積み上げる。
さて、全体の形をどうするか。風雨に強くて、屋根の重さを支えやすいアーチ状の建物というと……
思いついたのは、パゴダだ。大学時代に友人の車で、わざわざ西讃、仁尾の海水浴場に行った際、近くの寺に異国風の建物があると聞いて見に行った、あの白い建物。
パゴダとはミャンマー様式の仏塔で、あそこの寺のは、中にタイから送られたという金ぴかの釈迦涅槃像が置かれていた。
うん、仏様ではなく、神様が横になる場所としても、きっと悪くはないだろう。
パゴダとは仏舎利塔で、釈迦涅槃像というのはつまり釈迦が死ぬ様子を像にしたもの。
だから墓だろうし縁起が悪い、寝ると死ぬぞという考えは、あえて無視。
うろ覚えながら、それっぽい建物の形と内側、部屋の構造をイメージする。
ドーム型の建物が出来上がった。岩盤化すると白ではなく暗めの灰色になったけれど、取り敢えずはこれでいい。
内側もそこそこいい感じで、天井が綺麗にカーブを描いている。
しかも天井、壁、床ともに石造りという、なかなか豪勢なつくり。
神の権能、何にでも使える全在で、砂とか石の破片とかを全部取り去った後、中へ入る。
それでは敷物である筵を作ったら、今日は寝るとしよう。
まずは採取した藁を叩きまくって柔らかくして……
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