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第2話 まずは自分の生活から
7 名前と外見を設定しよう
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岩の上に筵を敷いただけでは、下が固くて眠りにくい。
なので当初の予定通り、下に分厚く砂を敷いて、その上に筵を敷いて、更に枕を置いて、掛け布団代わりの筵をかけて眠った。
正直、住環境は21世紀日本の住宅にかなり劣る。
それでもぐっすり眠れてしまった私は、割と神経が太いのかもしれない。
さて、目が覚めたら、入口から明るい光が漏れている。
もう外はとっくに朝のようだ。
『此処の太陽時で、かつ1日24時間という方式に換算すると、現在の時刻は9時12分です』
ゆっくり寝ても、誰にも文句を言われる事はない。
これだけで、この世界に来て良かったと、私はしみじみと感じてしまう。
たとえ寝床が砂と筵という状態であったとしても。
さて、今日やるべきは、出汁の為のいりこ作りだろうか。あとは豆で醤油っぽいものが出来ないかの挑戦か。
『食事は一日一食程度で大丈夫です。その代わり、神としての名前と姿を考えて下さい』
全知から、そう注意が来た。
ただし神としての姿とか名前とかを決めても、見せるのは当分の間、キンビーラだけという気がする。
『他にも隣接する土地の神の他、気まぐれに訪れる空神なんて存在もいる可能性があります。また万が一、この土地に人間が訪れた場合、今のままの姿と名前では神として認めてもらえないでしょう』
この世界では、人は神を見ることが出来るのだろうか。
『どの種の神であろうと、人前に顕現するという意識があるときは、人の目で見ることが出来ます。また土地神は人間と同様の身体を持っていますから、当然人が見る事は可能です』
万が一人が来てくれた場合を考えたら、早急に設定しておいた方がいい訳か。
『その通りです』
なお後で変更は可能だろうか。
『名前や姿を変更した場合、既に人に知られている場合は、得られていた信仰心が減る可能性があります。信仰心が減った場合、得られる真素も減少します』
ん!? 今までの説明と違う。
自分の領地内に人が住んでいれば、自動的に真素が得られるのではなかったのだろうか。
『住んでいるだけでも、ある程度自動的に真素を得ることが出来ます。ですが神として信仰された場合、より多くの真素を得る事ができます』
プラス要素という訳か。
なら信仰心を得られるようなありがたい姿と名前を、早々に作っておくのが正解だろう。
『その通りです』
なるほど。
さて、ありがたい姿と言えば、香川県民にとってはやっぱり弘法大師だろう。
香川県出身で、あちこちで修行し、そこら中にため池と水場を作った伝説の人物。
四国霊場八十八ヶ所の第88番札所の大窪寺には、これぞ勇者の像と言いたくなるような、巨大でありがたい弘法大師像がそそり立っている。
笠を被り金剛杖を手にした弘法大師の姿、あれこそ私のイメージするありがたい姿だ。
キンビーラも日本の和服っぽい服を着用していた。なら弘法大師姿でも問題はあるまい。
問題は私が女性だという事だけれど……
『神には固定された性別はないので、どのような姿を取ることも可能です。更には幾つかの顕現、違う姿と名前を持つ事も可能となっています。この場合どの姿で顕現するかは、その場における神自身の意思で決められます』
なら顕現のひとつは、弘法大師像と同じような姿でいいだろう。
弘法大師というか巡礼姿だな。菅笠、白装束、輪袈裟、混合杖、頭陀袋といった感じの。
男性か女性かというと……完全なる弘法大師姿というのは捨てがたいけれど、私の意識は間違いなく女性だ。
なら一応、女性そのままで。頭も丸めないけれど、見苦しくない感じには髪を結っておこう。顔立ちも、今の顔を少し整えた感じで。
『名前はどうしますか』
弘法大師とか空海という、そのままの名前を使うのは恐れ多い。
しかし今の大西彩花という名前は、正直神らしくない。
だいたい香川の高松辺りでは、大西という姓、やたら多いのだ。中学校までは、必ずクラスにもう1人は同じ名字が居た位には。
だからここは神らしい名前で……。たとえば国産みの神話で香川県の神とされている、飯依比古を女性名にしてイイヨリヒメとか……
でも決める前に、周囲の土地神の名前を参考に聞いておいた方がいい気がする。
一人だけ系統が違う名前になったら、何か悲しい気がするから。
『此処ケカハの地は、ミョウドー、ケカハ、セキテツ、トサハタの四つの領域からなる、フタナジマと呼ばれる島にあります。そしてミョウドーの土地神は男神でナハル、セキテツの土地神は女神でアルツァーヤ、トサハタの土地神は男神でガシャールという名です。また前任のケカハの土地神は女神で、アナートと名乗っていました』
うむ、日本神話風の名前では、周りから浮いてしまいそうだ。
キンビーラは和風の服装をしていた癖に。
なら他と似た感じにそれっぽく、自分の名前をもじってみるか。
前任がアナートなら、たとえば私はアヤーカではどうだろう。
でも個人の名前を神様に使うのも、何か違う気がする。ありがたみに欠ける気がするのだ。
もっと一般に広く知られていて、支持されそうな名前。あと前世とは言え神様の名前をそのまま使うのはおそれおおいから、それ以外で。
思い浮かんだのは、ピンクのイルカ。琴電のアイドルであることちゃんの妻、ことみちゃん。
確かに女性だし、これなら知名度もそこそこ高い。ベースにするのに適切だろう。
少し語調を伸ばしてコトーミという感じで。これならアヤーカよりも、広く支持されそうな気がする。決定だ。
なお、琴電のことちゃんやことみちゃんは、イルカのキャラクターだ。
なら私も、神としての姿をピンクのイルカ姿にしようか。
しかしイルカでは、地面を歩けない気がする。
有名な『イルカがせめてきたぞっ!』のイラストにではイルカが地上で直立しているが、あれはやっぱり無理があるだろう。
やはり此処は、人間の遍路姿が無難だ。
『名前はコトーミで、外見は四国の遍路姿。設定しました。それでは外見の細かい部分の確認と修正をお願いします』
女性の遍路姿が脳裏に思い浮かんだ。白衣、手甲、脚絆、地下足袋に、輪袈裟を身につけ、菅笠をかぶり、金剛杖を持つという、古来からある典型的なスタイルだ。
なお顔や体形は、前世の私となっている。
さて、髪は後ろで束ねているけれど、ここは平安スタイル風に長髪にした方が格好良さそうだ。
あと目はもう少しだけ、ぱっちりと。
更に体型ももう少しバランス良く。具体的には腰のくびれをもうちょっとで、胸をもう少しだけ足して……
この作業、なかなかはまりそうだ。何せ思い通りに修正できる。
ゲームのキャラクタメイキングも、これくらい思い通りに細かく設定できれば、きっと楽しいだろう。
あとはダンスと決めポーズ……ではなく、服装にも手を入れる。
脚半は機能性がいまひとつなので、ショートパンツとスポーツタイツの組み合わせにして、靴もウォーキングシューズにするとか。
でもあまり機能性で攻めると神っぽくなくなるので、デザインを少し考えよう。
あと色はことみちゃんのイメージを残すという意味で、ピンクを所々、たとえば輪袈裟に配するとか。
あれこれいじっていると、お腹が空いてきた。
結構時間が経ったようだけれど、今は何時だろう。
『11時48分です』
思ったより時間が経っていた。
なら今日のところはここまでで、あとはおいおい細部を詰めて行こう。
『今の設定を保存しておきます。以降は特に意識しない限り、この姿で顕現する事になります』
さて、それでは食事作業だ。
折角だからいりこを作るとしよう。
ただしイワシ、かなりの量があるので、使うのは半分程度でいいだろう。
この収納は時間停止設定だから、鮮度が落ちることはないし。
いりこの作り方は、子供時代に体験して、おぼえている。
洗って内臓や鱗を落として、漉した海水でさっとゆでて、天日でじっくり乾燥させればいい。
細かいポイントは色々あるけれど、基本的にはそれだけだ。
そして神さまチート、厳密には全在という権能で、工程がイメージが出来ればその通りに収納内で加工可能。
これで讃岐うどんの正しい出汁、大羽いりこの完成だ。
※ ことちゃん、ことみちゃん
ことちゃんとは、高松琴平電気鉄道(以下ことでん)のゆるキャラというか、マスコット。水色のイルカで、うどんをぞぞーとすすっている姿がよく目撃されている。『ごはんがなければうどんをたべればいいじゃない』という名言も有名。
ことみちゃんとは、やはりことでんのゆるキャラで、ことちゃんの妻。ピンク色のイルカ。
詳細は以下の公式ページ参照。
https://www.kotoden.co.jp/publichtm/iruca/kotochan/kotochan_pofile.html
なお、香川県には他にもゆるキャラ(もしくはつるキャラ)がいるけれど、彩花さんの趣味で無視した(例:うどん脳)。あとヤ○ンはポ○モンのキャラなので、任○堂法務部が怖くて使用不可。
なので当初の予定通り、下に分厚く砂を敷いて、その上に筵を敷いて、更に枕を置いて、掛け布団代わりの筵をかけて眠った。
正直、住環境は21世紀日本の住宅にかなり劣る。
それでもぐっすり眠れてしまった私は、割と神経が太いのかもしれない。
さて、目が覚めたら、入口から明るい光が漏れている。
もう外はとっくに朝のようだ。
『此処の太陽時で、かつ1日24時間という方式に換算すると、現在の時刻は9時12分です』
ゆっくり寝ても、誰にも文句を言われる事はない。
これだけで、この世界に来て良かったと、私はしみじみと感じてしまう。
たとえ寝床が砂と筵という状態であったとしても。
さて、今日やるべきは、出汁の為のいりこ作りだろうか。あとは豆で醤油っぽいものが出来ないかの挑戦か。
『食事は一日一食程度で大丈夫です。その代わり、神としての名前と姿を考えて下さい』
全知から、そう注意が来た。
ただし神としての姿とか名前とかを決めても、見せるのは当分の間、キンビーラだけという気がする。
『他にも隣接する土地の神の他、気まぐれに訪れる空神なんて存在もいる可能性があります。また万が一、この土地に人間が訪れた場合、今のままの姿と名前では神として認めてもらえないでしょう』
この世界では、人は神を見ることが出来るのだろうか。
『どの種の神であろうと、人前に顕現するという意識があるときは、人の目で見ることが出来ます。また土地神は人間と同様の身体を持っていますから、当然人が見る事は可能です』
万が一人が来てくれた場合を考えたら、早急に設定しておいた方がいい訳か。
『その通りです』
なお後で変更は可能だろうか。
『名前や姿を変更した場合、既に人に知られている場合は、得られていた信仰心が減る可能性があります。信仰心が減った場合、得られる真素も減少します』
ん!? 今までの説明と違う。
自分の領地内に人が住んでいれば、自動的に真素が得られるのではなかったのだろうか。
『住んでいるだけでも、ある程度自動的に真素を得ることが出来ます。ですが神として信仰された場合、より多くの真素を得る事ができます』
プラス要素という訳か。
なら信仰心を得られるようなありがたい姿と名前を、早々に作っておくのが正解だろう。
『その通りです』
なるほど。
さて、ありがたい姿と言えば、香川県民にとってはやっぱり弘法大師だろう。
香川県出身で、あちこちで修行し、そこら中にため池と水場を作った伝説の人物。
四国霊場八十八ヶ所の第88番札所の大窪寺には、これぞ勇者の像と言いたくなるような、巨大でありがたい弘法大師像がそそり立っている。
笠を被り金剛杖を手にした弘法大師の姿、あれこそ私のイメージするありがたい姿だ。
キンビーラも日本の和服っぽい服を着用していた。なら弘法大師姿でも問題はあるまい。
問題は私が女性だという事だけれど……
『神には固定された性別はないので、どのような姿を取ることも可能です。更には幾つかの顕現、違う姿と名前を持つ事も可能となっています。この場合どの姿で顕現するかは、その場における神自身の意思で決められます』
なら顕現のひとつは、弘法大師像と同じような姿でいいだろう。
弘法大師というか巡礼姿だな。菅笠、白装束、輪袈裟、混合杖、頭陀袋といった感じの。
男性か女性かというと……完全なる弘法大師姿というのは捨てがたいけれど、私の意識は間違いなく女性だ。
なら一応、女性そのままで。頭も丸めないけれど、見苦しくない感じには髪を結っておこう。顔立ちも、今の顔を少し整えた感じで。
『名前はどうしますか』
弘法大師とか空海という、そのままの名前を使うのは恐れ多い。
しかし今の大西彩花という名前は、正直神らしくない。
だいたい香川の高松辺りでは、大西という姓、やたら多いのだ。中学校までは、必ずクラスにもう1人は同じ名字が居た位には。
だからここは神らしい名前で……。たとえば国産みの神話で香川県の神とされている、飯依比古を女性名にしてイイヨリヒメとか……
でも決める前に、周囲の土地神の名前を参考に聞いておいた方がいい気がする。
一人だけ系統が違う名前になったら、何か悲しい気がするから。
『此処ケカハの地は、ミョウドー、ケカハ、セキテツ、トサハタの四つの領域からなる、フタナジマと呼ばれる島にあります。そしてミョウドーの土地神は男神でナハル、セキテツの土地神は女神でアルツァーヤ、トサハタの土地神は男神でガシャールという名です。また前任のケカハの土地神は女神で、アナートと名乗っていました』
うむ、日本神話風の名前では、周りから浮いてしまいそうだ。
キンビーラは和風の服装をしていた癖に。
なら他と似た感じにそれっぽく、自分の名前をもじってみるか。
前任がアナートなら、たとえば私はアヤーカではどうだろう。
でも個人の名前を神様に使うのも、何か違う気がする。ありがたみに欠ける気がするのだ。
もっと一般に広く知られていて、支持されそうな名前。あと前世とは言え神様の名前をそのまま使うのはおそれおおいから、それ以外で。
思い浮かんだのは、ピンクのイルカ。琴電のアイドルであることちゃんの妻、ことみちゃん。
確かに女性だし、これなら知名度もそこそこ高い。ベースにするのに適切だろう。
少し語調を伸ばしてコトーミという感じで。これならアヤーカよりも、広く支持されそうな気がする。決定だ。
なお、琴電のことちゃんやことみちゃんは、イルカのキャラクターだ。
なら私も、神としての姿をピンクのイルカ姿にしようか。
しかしイルカでは、地面を歩けない気がする。
有名な『イルカがせめてきたぞっ!』のイラストにではイルカが地上で直立しているが、あれはやっぱり無理があるだろう。
やはり此処は、人間の遍路姿が無難だ。
『名前はコトーミで、外見は四国の遍路姿。設定しました。それでは外見の細かい部分の確認と修正をお願いします』
女性の遍路姿が脳裏に思い浮かんだ。白衣、手甲、脚絆、地下足袋に、輪袈裟を身につけ、菅笠をかぶり、金剛杖を持つという、古来からある典型的なスタイルだ。
なお顔や体形は、前世の私となっている。
さて、髪は後ろで束ねているけれど、ここは平安スタイル風に長髪にした方が格好良さそうだ。
あと目はもう少しだけ、ぱっちりと。
更に体型ももう少しバランス良く。具体的には腰のくびれをもうちょっとで、胸をもう少しだけ足して……
この作業、なかなかはまりそうだ。何せ思い通りに修正できる。
ゲームのキャラクタメイキングも、これくらい思い通りに細かく設定できれば、きっと楽しいだろう。
あとはダンスと決めポーズ……ではなく、服装にも手を入れる。
脚半は機能性がいまひとつなので、ショートパンツとスポーツタイツの組み合わせにして、靴もウォーキングシューズにするとか。
でもあまり機能性で攻めると神っぽくなくなるので、デザインを少し考えよう。
あと色はことみちゃんのイメージを残すという意味で、ピンクを所々、たとえば輪袈裟に配するとか。
あれこれいじっていると、お腹が空いてきた。
結構時間が経ったようだけれど、今は何時だろう。
『11時48分です』
思ったより時間が経っていた。
なら今日のところはここまでで、あとはおいおい細部を詰めて行こう。
『今の設定を保存しておきます。以降は特に意識しない限り、この姿で顕現する事になります』
さて、それでは食事作業だ。
折角だからいりこを作るとしよう。
ただしイワシ、かなりの量があるので、使うのは半分程度でいいだろう。
この収納は時間停止設定だから、鮮度が落ちることはないし。
いりこの作り方は、子供時代に体験して、おぼえている。
洗って内臓や鱗を落として、漉した海水でさっとゆでて、天日でじっくり乾燥させればいい。
細かいポイントは色々あるけれど、基本的にはそれだけだ。
そして神さまチート、厳密には全在という権能で、工程がイメージが出来ればその通りに収納内で加工可能。
これで讃岐うどんの正しい出汁、大羽いりこの完成だ。
※ ことちゃん、ことみちゃん
ことちゃんとは、高松琴平電気鉄道(以下ことでん)のゆるキャラというか、マスコット。水色のイルカで、うどんをぞぞーとすすっている姿がよく目撃されている。『ごはんがなければうどんをたべればいいじゃない』という名言も有名。
ことみちゃんとは、やはりことでんのゆるキャラで、ことちゃんの妻。ピンク色のイルカ。
詳細は以下の公式ページ参照。
https://www.kotoden.co.jp/publichtm/iruca/kotochan/kotochan_pofile.html
なお、香川県には他にもゆるキャラ(もしくはつるキャラ)がいるけれど、彩花さんの趣味で無視した(例:うどん脳)。あとヤ○ンはポ○モンのキャラなので、任○堂法務部が怖くて使用不可。
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これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
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