神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第2章 ケカハの土地神 第5話 受け入れの準備

21 家はこんな感じです

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 また居住する家についても、教えて貰った。

「神職や船頭らの家は別として、一般の家そのものは簡素だ。魔法による土造りで、部屋は3部屋。1部屋は土間、残り2部屋はスノコ状に板を並べ、上にジュンカースという草で編んだ敷物を敷いている。調理や道具造り等の作業は土間の方で行って、板の間で生活して就寝する形だな。寝る際はリナム布とタイハ綿で作った寝具で寝ている」

 素材は別として、間取りそのものは四国村にあった、河野家住宅と同じような感じだ。
 素材が土だと冬に底冷えしそうだけれど、気候が温暖だから大丈夫なのだろう、きっと。
 ところで魔法による土造りとあったけれど、この魔法を使うのは神だろうか。それとも人間だろうか。

 例によって、全知の説明が入る。

『神が力を使う場合は神力、もしくは全在、権能といった表現を使います。ですから魔法と言った場合は、使用するのは神以外、一般には人間か神獣です。
 神に力を与えられる事によって、人や動物は魔法が使えるようになります。ただし与えられた神の領域内で、与えられた種類の魔法を、与えられた威力の範囲内でしか使用出来ません。
 また魔法は、与えた神の神力を使用して発動します。ですからあまり多くの者が魔法を使用すると、神力が減少し、場合によっては神の存続にすら影響が出る事になります』

 ファンタジーらしく、人間も魔法を使えるようだ。
 ただし魔法の力の元は神力だから、むやみに力を与えると酷い目に遭うと。
 ただし、人間そのものは、地球とそう変わらないらしい。

『魔法を使える他は、基本的には、地球上の人間とほとんど変わりません』

 そう全知が追加説明で断言したから。
 あとはキンビーラの言葉に出てきた、不明な植物についても、やっぱり全知が補足した。

『ジュンカースとは、地球におけるイグサの近似種です。またタイハ綿とは、地球におけるガマに近い種の穂が熟して出来た綿状の部分を集めたものとなります。少し重いですがしっかりした、保温性のいい布団となります』

 ケカハでも、ジュンカースとタイハを導入したい。
 そう思ったら、すぐに全知が反応する。

『ジュンカースは汽水域で、タイハは淡水の水が温かい溜め池等で、生育が可能です。既に現在、ある程度生えていますので、定期的に採取すれば、使用可能でしょう』

 これでQOLが更に上がる。よしよし。

 またセキテツの家についても、アルツァーヤからこんな説明があった。

「家については、キンビーラが話したのとほぼ同じですわ。セキテツの西側や山岳地帯は気候が異なるので、やや造りが異なりますけれど。
 基本的には土造りで、室内は土間1部屋と板敷き2部屋。板敷きの方の部屋は、海側に近く板が造れない場所はスノコ状で、山に近い場所は完全な板敷き。敷物は麦藁で作った筵で、寝具はリナムか草綿で作られた布と、動物の毛や羽、タイハ綿、草綿も使っています。また大型動物の毛皮も使っています」

 アルツァーヤの言葉に出てきた草綿については、例によって全知の補足説明が入る。

『地球の日本で言われているところの、和綿に相当する植物です。ただしケカハの気候では、雨が少なすぎて栽培は困難です。人手か魔法で毎日散水をする必要があります』

 逆に言うと毎日散水する事が出来れば、綿の栽培も出来る訳か。
 いずれ必要があれば、考えてみてもいいかもしれない。

 そして家の他にも、必要な建物があるそうだ。

「家の他に、保存庫が必要だ。穀物や保存食を保存するには、涼しい場所が必要だからな。基本としては土造りで、半地下構造で作る事になる。ただし半地下だから、水が浸入しないよう、特に気を配る必要がある」

「村長や神職などの家は、部屋数を多くする他、大部屋をつくる必要があります。村での行事等がある場合、そういった大部屋や多くの部屋が必要になりますから」

 確かにもっともだと思う。この辺は、やっぱり聞いてみるものだ。
 ただし、聞くだけではない。キンビーラに、こう注意されたのだ。

「必ずしも、此処での今までの形にとらわれる必要はない。此処ケカハは、土地神コトーミの地。人に参考意見を聞くのはいいが、決めて実行するのは土地神であるコトーミだ」

 そう、ここケカハは、私という神の土地なのだ。
 だから此処の生活は充分理解した上で、その上を行く環境を作ろうと思う。
 21世紀初頭の人間である私が、生活で困る事がない位の、進んだ土地に。

 もちろん神力という限界はある。
 それでも戦闘等が起こらない限り、そう神力は不足しない筈だ。
 特に力が必要な河川改修やため池造りなんて大物は、一通り終わっている。

 まずは家から考えよう。
 家族全員が個室を持ち、衛生的なトイレを持ち、毎日風呂に入れる生活を送るには、魔法や神力がどれくらい必要だろうか。

『熱の魔法と水の魔法を、最低各世帯1人は持たせる必要があります。水を出す魔法なら、ケカハの開発済み地域のように水路が近辺にある場合、それほど神力を必要としません。ですが熱の魔法は、ある程度力を制限しないと、神力を消費する可能性が高いです』

 なるほど。

『特に信心深くない人間の場合、1人あたり1,500kcal程度の真素マナを放出します。これのおおよそ8割が神力として土地神に吸収されます。つまり1人あたり1,200kcal以上の魔法を使うと、収支がマイナスとなり、土地神の神力が減少することになります』

 いきなり現代的な単位が出てきてしまった。
 ついでに言うとkcalなんて言われても、遥か昔に習った家庭科で献立の熱量として出たとか、女性向けWebページでダイエットに関するうんちくで出たという記憶しかない。

 あ、でも高校の時の理科系科目の何かで、ちらっと話に出てきた気がする。
 熱量の単位であるcalカロリーは今では一部の分野でしか使われず、通常はジュールで表すとかなんとか。
 私は文系なので、よく覚えていないけれど。

『1,200kcalは、SI単位系ですと5,020,800Jです。これは力にすると、1tの物体を500m程度持ち上げる事が出来るエネルギーで、人ひとりが使用できる力としてはかなり大きいです。ですが熱量として考えると、100ℓの水を12℃上げる程度で、風呂を沸かすには到底足りません』

 確かに、1tの重さを500m持ち上げるなんてのは、人間の出来ることではない。
 それでも風呂を沸かすには足りないのか。

『薪炭林を有効に活用する必要があるでしょう。水分量20%まで乾燥させた薪ならば、1kg当たりおよそ4,800kcalの熱量があります。また乾燥魔法は、水の魔法の一種として、出水魔法と同時に与える事が可能です』

 1,200kcal制限、案外弱い。薪250g程度しかない模様だ。
 というのは別として、1,000人が、毎日風呂に入れる薪の量を確保するのに必要な広さは、どれくらいになるのだろう。

『住民1人あたり樹木3本として、3,000本。3メートル間隔なら1本に9m²必要なので、最低27,000m²必要です。
 樹種は細葉樫でいいでしょう。地球上におけるブナ科コナラ属に近い種で、乾燥に適応した樹種です。セキテツやかつてのケカハでは一般的で、比較的成長が早く、材木にも薪炭材にも使いやすい樹種となります。
 ただし、乾燥に適応したと言っても、現在のケカハの降水量では足りません。100m間隔くらいで地中に浸透するタイプの用水を流し、付近を潤す必要があります』

 27,000m²というと2.7ha。縦100m横270m程度。
 なら問題ない。1km²は整備するつもりだから。

 用水はもちろん整備するとして、他にオリーブ林やかんきつ類の林等を作るのもいいだろう。
 細葉樫なら、アルツァーヤから貰った種一式の中にも入っていたはずだ
 明日にでも用水を引いて、土地に祝福を与えて林を作ろう。

 そんなこんなで、先遣隊が来る9月半ばに向け、仕上げ作業を進める。

※ 四国村にあった、河野家住宅
  土間と茶の間、座敷という構成の、江戸後期における標準的な住宅。詳細は下記URL参照
  https://www.shikokumura.or.jp/guide/facilities/kono-family-house/

  四国村は琴電屋島駅から徒歩8分のところにある野外博物館で、四国四県から移築復元した33棟の建物等が展示されている。高松の中心部からも気軽に行けて、割とおすすめ。
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