神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

文字の大きさ
29 / 84
第6話 先遣隊の迎え入れ

29 神の残影

しおりを挟む
 先遣隊が来た翌々日の9月17日、朝6時45分過ぎ。
 温かいかけうどんに、おでん風に煮たイイダコ、揚げ蒲鉾てんぷら、豆腐。高菜と豆腐の炒め物という朝食を食べている途中のことだった。

 15人の集団が村を出て何処かへ向かっていると、全知が告げた。
 方向は東、ドキ川の方。
 メンバーを確認する。ビブラムやクエルチェ、集団の相談役兼生き字引的な存在のサレルモ、倉庫管理担当のエイダンといった村の重鎮が多い。

 魚捕りか、それとも他の採取活動だろうか。それにしてはメンバーが妙だ。
 持ち物もやっぱり変だ。夏蜜柑とか、酒が入った壺とか、薄焼きパンとか。外で宴会するという雰囲気でもない。

「今日、何か村の行事ってあったっけ?」

 一緒に朝食を食べているロシュとブルージュに聞いてみる。

「今日は6曜日で、畑への水やり以外、お仕事はお休みのはずです」

 この世界も週末はお休みなのか。
 そう思ったところで、全知から説明が入った。

『6曜日が休みなのは、この周辺ではケカハとセキテツだけの慣習です。かつてケカハの土地神アナートが『仕事を休んで空地海に感謝する日』としたものですが、実際は領民の働き過ぎを心配しての提案で、その事はアルツァーヤや領民も知っています。当時はケカハも豊かで、週に1日程度休んでも領民の生活には支障ありませんでした』

 なるほど。私の前任アナートは、領民思いの神だったようだ。
 でもそれなら何故、ケカハを離れたのだろう。

 ただその辺は、ロシュ達に聞いてもわからないだろう。
 聞くとすればアルツァーヤ辺り、人間の目でというとせめてビブラムか。

「ありがとう。それじゃ今日は、村では何もない筈ね」

 そう言って、そしてうどんをすすりつつも、先程の村人達の様子を何となく確認する。
 どうやら川を渡って、更に先に行くようだ。
 今は水が少ないから渡れるけれど、沈下橋みたいなものを作っておいた方がいいだろうか。

 帰りもまた川を渡るのは不便だろう。なら村人達が渡り終わって更に先に行った時点で橋を作っておこう。
 ついでに土手にも、上がりやすい道を作った方が歩きやすい。

 いっそ橋は、洪水時でも問題無いような、アーチ状の大きな橋を作ろうか。
 材料は何処かから土を収納して、岩化して、ブロック構造でイメージすれば、作れないことはない。
 あとはアプローチの道路も……

 そんな事を考えつつ、やっぱりおでんには辛子味噌で、味噌は白みそだよなと思いつつ食べ、更にはロシュやブルージュがちゃんと食べているかを確認しつつ。
 なんとなく例の集団の事も、全知で追っている。

 集団が向かっているのは東方向で、その先にあるのは小さな山だ。
 この村を作る前に私が拠点にしていた、讃岐富士もどきより二回り小さく海側に近い。
 富士山の冠雪する部分が水平に切り取られたような形状で、頂上部分が広い。

『青の山と呼ばれている山です。広い山頂には土地神アナートの神殿がありました』

 神殿か。以前のケカハの土地神は、どういう場所に住んでいたのだろう。
 アナートがこの地を去ったのは十年前だから、今でも痕跡くらい残っているだろう。
 そう思って、山頂の風景を見てみる。

 砂地に枯れた草が倒れている、広い山頂。私が居を構えていた讃岐富士もどきより更に海が近く、周囲の見晴らしがいい。
 しかし建物らしい跡は何も無い。全知を使った神の目で見ても、土台一つ残っていないのだ。

『アナートは建物や道路、その他人工物及び神が作った物一切を、分解して砂へと変えてから去って行きました。ですからケカハに、コトーミが来る以前の建物や道路などは、一切残っていません』

 何故そんな事をしたのだろう。
 壊すのにも、それなりの神力は必要だろう。
 他の世界に行くのなら、神力は少しでも多い方がいい気がする。
 それとも、そうまでしないと治まらないような恨みとか、負の感情があったのだろうか。

『逆です。アナートが人工物一切を壊し、この地を去ったのは、人々をケカハから去らせる為です。
 10年と少し前、元々乾燥して人が住むには困難となっていたケカハの地を、更なる干害が襲いました。結果、これ以上この地にしがみついては人の為にならない。そう判断したアナートは、隣接するセキテツのアルツァーヤに人々の移住受け入れを依頼。
 移住先を確保した後、領民全員にケカハ平野から出るよう命令。平野部から人々が去った後、街や村、道路といった人工物、そして自分の神殿を、全て崩壊させ、砂へと化したのです』

 人々がケカハ平野に戻ろうとしないように。戻って、乾燥に苦しまないようにか。

『その通りです』

 なるほど。
 確かに私がケカハに来てから、人工物の痕跡は見当たらなかった。
 愛着を断ち切る為に、徹底的に消し去ったのだろう。

 なら先程の集団が何処へ、何の為に向かっているのか。もう答が出たようなものだ。
 だったら……

 アナートが好きだったものは、何だろう。

『蒸留酒が好きでした。『神だから酔っ払えないのが悲しい』と言いながら、小麦から作った40%位の蒸留酒に夏蜜柑を搾ってかけたものを飲んでいた姿は、村人にもお馴染みでした』

 なるほど。
 麦焼酎なら材料があるから収納内で作れる。夏蜜柑ならまだ村の周囲の果樹林に実っているから採るのは簡単だろう。

 あと青の山は、標高200m程度で周囲が草か岩で傾斜もなだらか。道を作るのは難しくない。
 橋と一緒に、ついでに村からの道も含めて造ってしまおう。

 もちろんすぐに全部は造らない。
 ビブラム達が山上に着くまでには、気づかれないようにしよう。
 思い偲ぶ時間は、きっと必要だから。

『ビブラム達が山頂に到着するまで、あと1時間半程度です』

 朝食を食べた後工事しながら進めば、ちょうどいいだろう。
 村の方から順繰りに造っていけば、ビブラム達に気づかれにくい。

「ロシュ、ブルージュ、ごめん。今日何か特別な用事が無ければ、ご飯を食べた後に車を出して貰っていい? 道を造りながら進むから、速度はあまり出せないけれど」

「「行きます!」」

 山頂で飲んだくれたら、回収車は絶対必要だろう。
 そして車の運転は、ロシュとブルージュに任せると決めている。
 それに2人とも、車の運転は好きなようだ。
 昨日の夕方、練習と称してセキテツへの道を60km/h位で飛ばしていたし。

 酔っ払い達が面倒かもしれないけれど、その辺は私がロシュとブルージュの壁になればいい。
 あと2人用のおやつも、収納内で作るとしよう。
 夏蜜柑があるからマーマレードっぽいのを作って、薄焼きパンで食べればいいかな。

 取り敢えずはドキ川までの道と、橋からか。
 私は全知を使って完成図をイメージしながら、ロシュとブルージュがちゃんと食べていることを確認しつつ、私はうどんをすする。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...