神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

文字の大きさ
32 / 84
第7話 雨期に来るもの⑴

32 話を聞くためうどん会

しおりを挟む
 外にいる方の私から、害獣に対する情報が入った。
 なら村での対処を確認した方がいいだろう。

 なので村に居る方の私は、話を聞ける相手を探す。
 全知で村内を確認した結果、昼食を食べに畑から家へと帰る途中のビブラムとクエルチェ、アルトラの3人を発見した。
 
『今日のビブラム達の昼食は、薄焼きパンと野菜ペースト、肉ペーストです。どれも保存が効く食品で、今日食べなくても数日は保存が可能です』

 なら昼食がてら話を聞くのがいいだろう。
 そう考えて、ロシュとブルージュに聞いてみる。

「ちょっと村の事で話を聞きたいことがあるから、ビブラムさんとケルチェさん、アルトラ君を昼食に誘おうと思うんだけれど、いいかな?」

「わかりました。なら何か、準備をしましょうか」

 2人とも、わかりやすく喜んでいる感じだ。
 元々ロシュやブルージュと、あそこの一家は仲が良かった。
 仲が良かったというか、お世話になったというか。
 
「食べ物の準備はするから、2人はビブラムさん達を呼んできて。畑から家に戻ってきている途中だから。
 拝殿の1番の部屋でお昼を食べるから、そこまで案内して」

 1番の部屋とは、拝殿にある8人掛け大机がある小会議室だ。
 大きさがちょうどいいので、ビブラム達を呼んで話をする時は、大抵この部屋を使う。

「わかりました。それでは行ってきます」

「行ってきます」

 2人が出たところで、私は1番の部屋を思い浮かべて移動。
 部屋が綺麗であると意識して掃除した後、収納した中から何を出そうか考える。

 一応パンや此処風のスープ等といったケカハ風のメニューも用意はしてある。 
 しかしロシュやブルージュは、そういったメニューよりうどんの方が好きだ。
 私におもねている訳ではないのは、全知で確認済み。

 ならビブラム達に、うどんを食べてみて貰ってもいいだろう。
 いざという時にはパンも出せるようにして。

 喉ごしがいいうどんは、仕事をして疲れた時にちょうどいい食べ物だ。
 食べた後の腹持ちもいいし、そのくせ消化がいい。だから昼食にうどんは正義だ。

 動いて汗をかいているかもしれないし、気温もまだ温かいから、冷たいぶっかけでいいだろう。
 というか私が、つめたいぶっかけうどんが好きなのだ。
 しっかりうどんの腰を感じられる、この食べ方が。

 醤油を開発して以来、釜揚げも捨てがたくなった。
 しかしやはり、讃岐うどんはしっかりした腰があってこそだと思うのだ。
 だから今日は、ぶっかけうどん。

 せっかくビブラム達を呼ぶのだから、いつもより少しだけ豪華にしよう。
 という事でエビ天、野草天、ちくわ天、更におでん風に煮た長天風揚げ蒲鉾てんぷらを追加。
 長天風揚げ蒲鉾てんぷらには辛子味噌をつけるのが、私風というか香川風。

 なお辛子は、ストックを作る為に祝福を繰り返して木々や草等を生やした際、菜の花っぽい種から採取して製造。
 白味噌は私が全在を使って、収納内で製造したものだ。

 豪華と言っても昼食だから、この程度でいいだろう。
 あと箸は使えないだろうから、私が造ったフォークも用意しておく。
 
 イメージして、いつでも6人分出せるようにしたところで、ロシュ達がビブラム達を連れて戻ってきた。

「失礼します。食事に呼んで頂き、ありがとうございます」

「いえ、食事がてら聞きたい事がありましたので。どうぞ座って下さい」

 全員が座ったところで、うどんと天ぷら各種、長天風揚げ蒲鉾てんぷら、冷水入りコップ、フォークを出す。

「今回は私の故郷の食事を模したメニューです。味が苦手でしたらパンとスープも出せますから、遠慮せず言って下さい。それではまず食べてから、話をしましょう」

 うどんは万能食だけれど、話をしながら食べるのには向いていない。
 話に夢中になると、のびてしまうから。

「これはこの食器で突き刺して、食べればいいのでしょうか」

「ええ。特に礼儀とか方法とかは気にしなくて大丈夫です。この白い長い食べ物、うどんはあまり時間をかけると美味しくなくなるので、食べやすい方法で食べて下さい」

「わかりました」

「あとこちらは塩をつけてもいいですし、この中のつゆにつけた食べてもいいです。こちらは味がついているので、そのままで」

 以上、天ぷらと揚げ蒲鉾てんぷらについての説明。 
 ビブラムは麺を3本くらい突き刺してもぐもぐ食べた後、頷いてこっちを見る。

「美味しいです。味や食べ応えが独特ですけれど、いつものスープよりずっと美味しい気がします」

『嘘ではありません。ただ太い麺という未知の食物なので、食べる事に慣れてないというのはあるようです。あとクエルチェもアルトラも、味を気に入っているようです』

 なら今はいいだろう。
 ただ、一応他でまだ出せない旨は話しておこう。  

「まだこの村では、この料理に使う調味料は一般的ではありません。ロシュやブルージュと試しに作りはじめたのですが、出来上がるのは早くても今年の冬頃になると思います。ですからそれまでは、ここ限定の料理です」

 クエルチェはうどんを何本か食べた後、天ぷらを塩とうどんつゆ、両方で試している。
 アルトラ君はうどんに集中して、ガシガシと夢中で食べている状態。

 天ぷらをひととおり試したクエルチェが、私の方を見て口を開いた。

「こういった長い食べ物は初めてですけれど、美味しいです。あとこのお皿に入っているものも、美味しいです。この葉っぱ以外は、コトーミ様の世界の食べ物なのでしょうか」

「全て材料は、ケカハとその近くの海から採れるものを使っています。こちらは海で採れる生き物で、こちらはこの煮たものと同じく魚を使って……」

 エビは一般的な食べ物ではないのだろうか。
 天ぷらの形にすると、原型とかなり異なるからわからないだけだろうか。
 ちくわはまあ、わからなくて当然だけれど。
 
 なんて思いながらクエルチェに説明している途中で、アルトラ君の丼が空になった。

『まだ食べ足りないようです。腹具合からして、あと2玉は欲しいところでしょう』

 全知が報告してくる。ならおかわりを出してやるとしよう。

「それじゃアルトラ君は、次をどうぞ。麺を多めに入れておいたから」

 在庫は大量に作ったし、念じれば一瞬で完璧な具合にゆであがって洗ったものが丼に入って、つゆをかけられた状態になる。
 だから全く問題は無い。

「いいのでしょうか」

「もちろんです。ビブラムもクエルチェも、足りなければ幾らでもありますから」

 現在は神様との昼食用だけでなく、ロシュやブルージュと食べる御飯も半分以上がうどんだ。
 だからいつでも茹でられる状態のうどんを、時間停止状態で大量に用意している。
 意識すれば完璧な茹で加減で、何ならきっちり冷水でしめて出せる状態だ。

 そして醤油も出汁も、しっかり在庫はある。
 ここで働き盛り&食べ盛りが何玉食べようと、全くもって問題無い。

「アルトラ、この食べ物は、これをつゆに入れると、うどんも美味しくなる」

 ロシュがアルトラに、小声で教える。

「でもロシュ、これだけでも充分以上に美味いぜ。でもこれを入れるか……うお、確かに旨い!」

 そうそう、天ぷらうどんは、天玉がつゆに浸ったところからが本番だったりするのだ。
 アルトラの食べる速度、更に一段とアップ。

 結果、アルトラが5玉分、ビブラムが4玉分、クエルチェが3玉分のうどんをたいらげた。
 女子3人暮らしだと、1.5玉のうどん1杯ずつでそれぞれ充分だったから、ちょっと予定外というか予想外。

 けれど美味しそうに食べてくれるのは、嬉しいし楽しい。
 これならまた昼食会をやってもいいかな、そう思える。

 本当はビブラム達と会うのも、10日に1度の報告だけで充分な筈だった。
 しかしこの世界を知らない新米の神としては、この先も割と相談事が出来てしまいそうだ。

 その辺はまあ、この昼食会のように臨機応変にやらせて貰おうと思う。
 ビブラム達には少しばかり申し訳ないけれど。 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...