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第7話 雨期に来るもの⑴
31 害獣注意報
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『そもそもここまで人間に手を貸す神は、他にいません』
そう言われても、つい手を出したくなるのだ。
ただ頼まれもしないのにむやみやたらと手を出すのは、やはり神として正しくない気がする。
だから当面、私の仕事となるのは、
① 村の外での、更なる広範囲での河川や溜め池の整備
② 醤油やみりん、酢の試験醸造
③ カレンダーや書籍の作成
辺りだろう。
①については、分身というか顕現をもう1体出して、村に近い場所から鋭意工事中。
ドキ川水系とアヤ川水系の整備は、ほぼ完了した。
なので現在はその間を流れる、ダイソク川の整備と溜池事業を開始したところだ。
この水系が整備されれば、村の周辺は完全に水害や干ばつから守られることになる。
しかし川の名前が、高松ではなく中讃っぽくなってしまった。
最初に整備した川にドキ川、2番目に整備した川にアヤ川と名付けてしまったせいだ。
しかし『乾くし洪水を起こすしどうしようもない川』の筆頭は土器川だし、ダム湖が2箇所ある長い川となれば香川県では綾川。
ならその間にあるの大束川だろう、常識的に。
だから仕方ない。そう自分に言い聞かせている。
なお顕現をもう1体出すのは、常に村に1体は私がいるようにする為だ。
1体は常に村の中で、ロシュやブルージュと一緒。
もう1体は村の外で土木工事をしたり、アルツァーヤやキンビーラと会話したり、昼食をとったりする、外回り担当。
私は並列思考が出来る。だから2体出しても、思考が混乱するなんて事はない。
②については、私の収納内で全知と全在を使えば、これらの調味料が造れるのは確認済み。
醤油も改良を加えて、琴平の丸尾醤油に近い風味のものが出来るようになった。
これを村人の手で造れるようにするというのが、当座の目標。
もちろんこれは、村民の手で完璧なうどんつゆを作る為である。
ロシュやブルージュに手伝わせるというか、造り方を覚えて貰いつつ、全知の知識に完全に頼りながら、鋭意製造中。
出来上がって、更に満足がいくうどんつゆが出来れば、いよいよ村人に『正しい讃岐うどん』を披露するつもりだ。
これが軌道にのれば、こういった調味料も一般的になるだろう。
そうすれば、いよいよ一般でもうどんが主食化出来る。
そして③。まずカレンダーはこの世界の、神の間で共通で使われている神暦と呼ばれるもので作成した。
『基本的には太陽暦で、1周期は365日か366日。1ヶ月は4、6、8、10、12月が31日までで、それ以外の月は30日まで。ただし閏年は2月も31日まで。一週間は6日間という仕様です』
なお私が作ったカレンダーは1ヶ月1枚の12枚構成で、月日と曜日の他、各作物の播種、植え付け、収穫等の目安が書かれている。
大多数の村人は、文字や数字を読めない。
それでもカレンダーは、使い方をビブラムに説明させた上、全部の家に配った。
少しでも数字や文字に慣れたり興味を持ったりしてくれるように。そんな願いを込めて。
ケカハというかこの世界全般で使われているのは表音文字で、アルファベットに相当する文字20個と記号5つが全て。
数字もアラビア数値的な表記だから、普通に会話が出来る者なら、文字や数字の読み書きを覚えるのはそう難しくない筈だ。
神も人も同じ言語、同じ表記方法を使うあたり、何か作為的なものを感じたりするけれど、それは取り敢えず置いておいて。
同じ理由で本を1日1冊以上と、自分でノルマを決めて作っている。
文字が読めても読む物が無ければ、意味が無いしつまらないだろう。
そんな思いからだ。
内容は動植物の図鑑的など、実用系が半分。日本にあった昔話のような簡単な絵本が半分。文字が少なく絵が多い物がメインなのは、文字を覚えたての人でも楽しめる様に。
設定と大雑把な内容さえ決めれば、全知が必要な文章や絵を流し込んで、全在が印刷して製本してくれる。
ただし紙が藁半紙でインクが黒しかなく、綴じ方が澱粉糊による無線綴じなので、見た目が少年漫画の週刊誌風になってしまうのがちょい悲しい。
この本については、ロシュやブルージュには好評だ。
もう少し作って、大きめの本棚に収まる位になったら、開架の読書スペースを神社内に作って、村人が読めるようにしたい。
役に立ちそうなものや面白そうなものがあれば、文字を覚えようという気になってくれるだろうか。
いますぐとは言わないけれど、何時か効果があったと感じられる日がくれば嬉しい。
◇◇◇
先遣隊が来て10日経過した9月25日第2曜日の10時過ぎ、セキテツとの境のいつもの岩場で、いつもより早めの昼食中。
話によると昨日、日本で例えると台風のような嵐が、セキテツの西端を通って北上したそうだ。
「セキテツは、家が壊れたり川が氾濫したりして大変ですわ」
「海も荒れたな。領域内の島民には出港禁止を命じておいたが、西側の島では港内にいても壊れた船が出たようだ」
ケカハのあの村には、全くといっていい程被害が無い。
風がやや強目で、地面が全体的に濡れる程度の雨が降った。それだけだ。
考えてみれば、我が故郷の香川県もそんな感じだった。
台風は避けて通るし、地震なんてのも少ない、天災系が極めて少ない恵まれた場所だったのだ。
水だけは毎年夏に足りなくなりそうになるけれど。
どうやらケカハの地も、同じような場所らしい。
さて、今3人で話していることからもわかるように、昼食会はあれからも毎日続いている。
無かったのは、私が先遣隊を受け入れた日だけ。
あの日は代わりとして、朝にお茶会をしたけれど。
「さて、セート海域に面した陸では、そろそろ人も動物も動き出す頃だ」
「そうですね。気温が低くなるから虫や爬虫類等は出にくくなりますけれど、畑などを荒らす猪や鹿、猿といった害獣は、そろそろ山から下りて来るでしょう」
なるほど、そう思って気づく。
今はケカハの村周辺には、大型の哺乳類はいない。
しかし川や溜め池を作ったから水場は出来たし、薪炭林や果樹林等をかなり広めに作っている。
なら……
『雨期に山から下りてきた大型哺乳類が、それらの森に居着く可能性は充分に考えられます』
害獣対策をしなければならない訳か。
この辺、ビブラム達は対処を考えているだろうか。
対処を考えていたとして、102人の中から人員を割り振って、有効な対策を講じる事が出来るのだろうか。
「そういった害獣は、どうやって対処するのが一般的でしょうか」
「狩って倒すしかありませんわ。ですけれど狩ることが出来れば、かなりの食肉を確保出来ます。ですから一概に悪いことばかりではありません」
確かに前世でも、結局は害獣駆除で倒すのが一番早かった気がする。
特に猪は始末におえないらしい。
柵を作っても穴を掘ったり体当たりして壊したりすると、Webか何かで見た気がする。
海を泳いで渡って島のみかん畑を狙う猪なんてのもいたそうだ。
人間もさる物で、その猪を駆除してソーセージにして売り出したりなんて事をしていたけれど。
『みかんを食い荒らしてきた厄介者が、美味しいソーセージになりました』
そんなヤバ目の宣伝を見た覚えがある。
香川県ではなく愛媛県の、しまなみの方だけれど。
※ 琴平の丸尾醤油
香川県下にある讃岐うどんの店では、事実上の業界標準と、コトーミさんが思っている醤油。
なおコトーミさんの家では、丸尾醤油ではなく、鎌田醤油のだし醤油を使っていた模様。他にも香川には美味しい醤油があれこれあるので、試して見ると結構面白くて美味しい。
※ みかんを食い荒らしてきた
残念ながら今はもっと大人しい宣伝になってしまった。なのでコトーミさんの記憶にある宣伝については『ねとらぼ』の記事を参照した方がわかりやすい。
『ねとらぼ 畑を荒らすイノシシをソーセージにしたみかん農家の笑顔が意味深と話題に 誕生の裏側を聞いてみた』
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1610/18/news104.html
そう言われても、つい手を出したくなるのだ。
ただ頼まれもしないのにむやみやたらと手を出すのは、やはり神として正しくない気がする。
だから当面、私の仕事となるのは、
① 村の外での、更なる広範囲での河川や溜め池の整備
② 醤油やみりん、酢の試験醸造
③ カレンダーや書籍の作成
辺りだろう。
①については、分身というか顕現をもう1体出して、村に近い場所から鋭意工事中。
ドキ川水系とアヤ川水系の整備は、ほぼ完了した。
なので現在はその間を流れる、ダイソク川の整備と溜池事業を開始したところだ。
この水系が整備されれば、村の周辺は完全に水害や干ばつから守られることになる。
しかし川の名前が、高松ではなく中讃っぽくなってしまった。
最初に整備した川にドキ川、2番目に整備した川にアヤ川と名付けてしまったせいだ。
しかし『乾くし洪水を起こすしどうしようもない川』の筆頭は土器川だし、ダム湖が2箇所ある長い川となれば香川県では綾川。
ならその間にあるの大束川だろう、常識的に。
だから仕方ない。そう自分に言い聞かせている。
なお顕現をもう1体出すのは、常に村に1体は私がいるようにする為だ。
1体は常に村の中で、ロシュやブルージュと一緒。
もう1体は村の外で土木工事をしたり、アルツァーヤやキンビーラと会話したり、昼食をとったりする、外回り担当。
私は並列思考が出来る。だから2体出しても、思考が混乱するなんて事はない。
②については、私の収納内で全知と全在を使えば、これらの調味料が造れるのは確認済み。
醤油も改良を加えて、琴平の丸尾醤油に近い風味のものが出来るようになった。
これを村人の手で造れるようにするというのが、当座の目標。
もちろんこれは、村民の手で完璧なうどんつゆを作る為である。
ロシュやブルージュに手伝わせるというか、造り方を覚えて貰いつつ、全知の知識に完全に頼りながら、鋭意製造中。
出来上がって、更に満足がいくうどんつゆが出来れば、いよいよ村人に『正しい讃岐うどん』を披露するつもりだ。
これが軌道にのれば、こういった調味料も一般的になるだろう。
そうすれば、いよいよ一般でもうどんが主食化出来る。
そして③。まずカレンダーはこの世界の、神の間で共通で使われている神暦と呼ばれるもので作成した。
『基本的には太陽暦で、1周期は365日か366日。1ヶ月は4、6、8、10、12月が31日までで、それ以外の月は30日まで。ただし閏年は2月も31日まで。一週間は6日間という仕様です』
なお私が作ったカレンダーは1ヶ月1枚の12枚構成で、月日と曜日の他、各作物の播種、植え付け、収穫等の目安が書かれている。
大多数の村人は、文字や数字を読めない。
それでもカレンダーは、使い方をビブラムに説明させた上、全部の家に配った。
少しでも数字や文字に慣れたり興味を持ったりしてくれるように。そんな願いを込めて。
ケカハというかこの世界全般で使われているのは表音文字で、アルファベットに相当する文字20個と記号5つが全て。
数字もアラビア数値的な表記だから、普通に会話が出来る者なら、文字や数字の読み書きを覚えるのはそう難しくない筈だ。
神も人も同じ言語、同じ表記方法を使うあたり、何か作為的なものを感じたりするけれど、それは取り敢えず置いておいて。
同じ理由で本を1日1冊以上と、自分でノルマを決めて作っている。
文字が読めても読む物が無ければ、意味が無いしつまらないだろう。
そんな思いからだ。
内容は動植物の図鑑的など、実用系が半分。日本にあった昔話のような簡単な絵本が半分。文字が少なく絵が多い物がメインなのは、文字を覚えたての人でも楽しめる様に。
設定と大雑把な内容さえ決めれば、全知が必要な文章や絵を流し込んで、全在が印刷して製本してくれる。
ただし紙が藁半紙でインクが黒しかなく、綴じ方が澱粉糊による無線綴じなので、見た目が少年漫画の週刊誌風になってしまうのがちょい悲しい。
この本については、ロシュやブルージュには好評だ。
もう少し作って、大きめの本棚に収まる位になったら、開架の読書スペースを神社内に作って、村人が読めるようにしたい。
役に立ちそうなものや面白そうなものがあれば、文字を覚えようという気になってくれるだろうか。
いますぐとは言わないけれど、何時か効果があったと感じられる日がくれば嬉しい。
◇◇◇
先遣隊が来て10日経過した9月25日第2曜日の10時過ぎ、セキテツとの境のいつもの岩場で、いつもより早めの昼食中。
話によると昨日、日本で例えると台風のような嵐が、セキテツの西端を通って北上したそうだ。
「セキテツは、家が壊れたり川が氾濫したりして大変ですわ」
「海も荒れたな。領域内の島民には出港禁止を命じておいたが、西側の島では港内にいても壊れた船が出たようだ」
ケカハのあの村には、全くといっていい程被害が無い。
風がやや強目で、地面が全体的に濡れる程度の雨が降った。それだけだ。
考えてみれば、我が故郷の香川県もそんな感じだった。
台風は避けて通るし、地震なんてのも少ない、天災系が極めて少ない恵まれた場所だったのだ。
水だけは毎年夏に足りなくなりそうになるけれど。
どうやらケカハの地も、同じような場所らしい。
さて、今3人で話していることからもわかるように、昼食会はあれからも毎日続いている。
無かったのは、私が先遣隊を受け入れた日だけ。
あの日は代わりとして、朝にお茶会をしたけれど。
「さて、セート海域に面した陸では、そろそろ人も動物も動き出す頃だ」
「そうですね。気温が低くなるから虫や爬虫類等は出にくくなりますけれど、畑などを荒らす猪や鹿、猿といった害獣は、そろそろ山から下りて来るでしょう」
なるほど、そう思って気づく。
今はケカハの村周辺には、大型の哺乳類はいない。
しかし川や溜め池を作ったから水場は出来たし、薪炭林や果樹林等をかなり広めに作っている。
なら……
『雨期に山から下りてきた大型哺乳類が、それらの森に居着く可能性は充分に考えられます』
害獣対策をしなければならない訳か。
この辺、ビブラム達は対処を考えているだろうか。
対処を考えていたとして、102人の中から人員を割り振って、有効な対策を講じる事が出来るのだろうか。
「そういった害獣は、どうやって対処するのが一般的でしょうか」
「狩って倒すしかありませんわ。ですけれど狩ることが出来れば、かなりの食肉を確保出来ます。ですから一概に悪いことばかりではありません」
確かに前世でも、結局は害獣駆除で倒すのが一番早かった気がする。
特に猪は始末におえないらしい。
柵を作っても穴を掘ったり体当たりして壊したりすると、Webか何かで見た気がする。
海を泳いで渡って島のみかん畑を狙う猪なんてのもいたそうだ。
人間もさる物で、その猪を駆除してソーセージにして売り出したりなんて事をしていたけれど。
『みかんを食い荒らしてきた厄介者が、美味しいソーセージになりました』
そんなヤバ目の宣伝を見た覚えがある。
香川県ではなく愛媛県の、しまなみの方だけれど。
※ 琴平の丸尾醤油
香川県下にある讃岐うどんの店では、事実上の業界標準と、コトーミさんが思っている醤油。
なおコトーミさんの家では、丸尾醤油ではなく、鎌田醤油のだし醤油を使っていた模様。他にも香川には美味しい醤油があれこれあるので、試して見ると結構面白くて美味しい。
※ みかんを食い荒らしてきた
残念ながら今はもっと大人しい宣伝になってしまった。なのでコトーミさんの記憶にある宣伝については『ねとらぼ』の記事を参照した方がわかりやすい。
『ねとらぼ 畑を荒らすイノシシをソーセージにしたみかん農家の笑顔が意味深と話題に 誕生の裏側を聞いてみた』
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