神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第9話 雨期に来るもの⑵

43 移住第2弾

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 ナルゼ達とは去る前に、こんな形で取り決めをした。
  〇 ケカハへ帰還希望がある場合は、受け入れた上、現在の村人と同様に扱う
    ただし村での規則を遵守すること
  〇 帰還する際は、3日前までに連絡を入れること

 なお連絡方法は、稜線から道を1町(109.9m)下りた場所に設置する、連絡箱に連絡内容を記した手紙を入れることとした。
 連絡箱は私が全知で監視して、手紙を入れた時点で回収するという仕組みだ。

 そしてナルゼ達が帰った翌々日の9月28日の朝7時過ぎ。
 稜線を越えて、道を下ろうとしている人影を発見した。
 イルザやクエルチェより少し上くらいの、やや小柄だけれどしっかりした感じの女性だ。

『ナルゼ達の集団の長であるイルザです。連絡箱に入れるつもりの手紙を持っています』

 なら挨拶をしておこう。
 ただ、いきなり近くに出現するのは精神的によくないだろう。
 そう考えてイルザの前方50m、ちょうど連絡箱のところに移動する。

 イルザは瞬間身構えかけたが、すぐに私が何者か気づいたようだ。
 こちらに向かって頭を下げる。

「イルザと申します。コトーミ様でいらっしゃいますか」

「ええ。ナルゼ達から聞いています。連絡の受け取りついでに、何か質問があればと思って出てきました」

「ありがとうございます。それでは幾つかお話を伺ってよろしいでしょうか」

 なら立ち話も何だろう。神社の会議室から椅子を2脚収納、道の端に水平な場所を2箇所作って、その上に出す。

「良ければ座って下さい。私も座りますから」

 ◇◇◇

 イルザと話して、更に帰ってビブラムとも話して。
 更にビブラムは村の幹部会を招集し、更に総会を開いて村人全員に周知して。

 そして10月1日朝7時13分頃。
 
『イルザが率いる51人が、稜線を越えました』

 全知で向こうの状況を確認して、そして私は指示する。

「それじゃロシュ、車を発進させて。私は先に行って、向こうの荷物を預かってくるから」

 稜線上から山道を通って、車が通れる道まで下りてくる時間と、村から山道への分岐へ車で行く時間は、ほぼ同じ位。
 だから発見と同時にスタートという形にした。

 なおブルージュが『もしまた猪がいたら捕まえる』という気満々でいるのはご想像通り。
 そう都合良くいるとは、私は思っていないけれど。

 連絡箱のところで、イルザ達と合流。

「お疲れ様です。そしてお帰りなさい……」

『大人の男性が18人、女性22人。子供が男6人女5人です。これでグループ全員で、ミョウドーに残してきた者はいません。
 また全員、既にイルザやナルゼ達により、この先の移動や村についての説明を受けています』 

 だから私がやるのは荷物を受け取り、魔法を授与する事だけ。
 なお薪も、自分達で用意してあった。

『ナルゼ達から魔法について聞いていた為、あらかじめ薪を1人2本程度所持しています。また薪は縄で固定する等して、両手を使わなくても保持出来る様に工夫しています』

 準備万端だ。この辺は事前情報を入手出来た事と、集団の人数が少ない事のおかげだろう。

 さて、私はミョウドーとの境をひととおり、全知で確認する。

『ナハル、またはその信徒が境界を越えて来るような様子は、今のところありません』

 その気が無いのか、今は動かないつもりなのかわからない。
 ただ今日動かれると面倒だから、取り敢えずは助かる。

「それでは村まで、およそ半数の方はこの車で、残りの方は魔法を使って走っていただきます……」

 こちらは人数が少ないせいか、駄目駄目な大人がいない。
 なので素直に体力+魔法で、到着時間が遅そうな順に選べばいいだろう。

 ◇◇◇

 車は40分程で、村に無事到着。
 到着時に確認したところ、第2便を出す必要性は無さそうだと判断。
 実際、その後40分ほどで、全員が村に到着した。

 預かっていた荷物を配布し、各家に入れた後。
 神社の本殿を会場に、村人総出の歓迎の昼食会に突入。

 今回の料理は私ではなく、村の皆さん一同で料理したもの。
 以前アルツァーヤが持ってきたイモタキによく似た鍋と、高菜まんばっぽい葉を猪の脂肪で炒めたもの、炒り豆、猪内臓肉の脂煮などが並んでいる。

『この鍋料理はイモタキではなく、ウチコミ汁と呼ばれています。肉ではなく干し小魚を出汁として多めに入れ、あとは芋、豆、そのほかの野菜、小麦粉を練って指くらいの長さにしたものを入れ、塩で味付けしたものです』

 日本の香川にも、似たような名前の郷土料理があった気がする。
 あれは確か味噌味だったかな。話に聞いた事がある程度で、食べた事は無いけれど。

 またパンも、日常の薄焼きパンとは違う、デニッシュっぽいパンだ。

『生地に脂を入れて捏ね、延ばして表面に脂を塗り、折り畳んでまた延ばして脂を塗るを繰り返した後に焼いたパンです。焼いた際に脂が落ちたり染み込んだりして、間に隙間が出来、ふかふかのパンに仕上がります。猪が獲れた時など脂が大量に手に入った時や、こういったお祝いの際に作られる、特別なパンです』

 こんなカロリーがヤバそうなパンは、香川には無かった。
 食べないと気にする人がいると困るから、一応は食べるけれど、1個だけに抑えておこう。

 なお私は、挨拶以外では特に大人と話すことはない。
 これは神様だからまあ、仕方ないだろう。

 ただし最上席でぼっちかというと、そうでもない。
 ロシュやブルージュ、更にはアルトラ、イル、サレラといった、読書会で話をした子供達に囲まれているからだ。

 料理の話や魔法の話。文字が読めない子供も興味があるようだから、文字が最小限の絵本をもう少し作って欲しい。
 そんな話をしている最中に、全知と並列思考が気になる話をキャッチした。
 
 ビブラム、クエルチェ、イルザ、サレルモ、エイダンといった、この集団の重鎮が話しているあたりでだ。

※ 打ち込み汁
  いりこ出汁、季節の野菜大量、家庭で作った小麦粉のめん(うどんに似ているけれど、塩を入れたり踏みまくったりしない)を入れて煮込み、味噌で味付けした香川県の郷土料理。
  祭りとかハレの日の料理では無く、あくまで日常の料理だったらしい。

※ 特別なパン
  イメージは、インド料理のパロッタというパン。美味しいけれどカロリーボンバー。作り方その他は、デイリーポータルZの下記のページが詳しい。
『インドのフカフカしたパン、パロッタが好き過ぎて作りたい 玉置標本』
https://dailyportalz.jp/kiji/Indian_bread-porotta
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