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第14話 予定外の産物
58 2月半ばの状況
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何とかならないかと考えても、現時点での私は土地神の中で最弱クラス。
それにそもそも、戦闘なんて性にあわない。
ケカハの村でうどんをすすりつつ、ロシュやブルージュとのんびり暮らしていければそれで十分なのだ、本当は。
なので島やミョウドー辺りのことを注意しつつも、基本的にはケカハ中心の生活を続けている。
いざという時の事について、そしてビシューの人たちについて、気にならないわけではないけれども。
◇◇◇
ケカハにおける目下最大の悩みは、住民にどうやって文字を覚えて貰うかだ。
せめて1家族に1人、文字が読めて簡単な計算が出来る人が欲しい。
そうすれば情報の伝達が楽になるし、ある程度のお金の管理も出来るようになるだろうから。
まもなく通貨による報酬付与制度が実施される。
それまでに、せめて通貨の数字が読めるようになって欲しい。
この世界の文字は文字20個と記号5つで表記する表音文字で、数字も10進法でアラビア数値的な表記。
だから決して難しくはない。そう私は思っている。
一応、文字を読みたくなるような対策は実施している。
ただ中には失敗もあし、実害が出てしまって縮小した対策まで出てしまった。
失敗して縮小したのは、リバーシの対戦成績の表作り&張り出し。
私は全知を使えば、昨日のリバーシの対戦成績なんてのも全部整理した形で把握可能だ。
なので、
○ 勝ち数の順位表
○ 各個人の成績一覧(対戦相手別)
○ 勝率の順位表
○ 対戦相手が強くて勝ち数も勝率も高くないけれど、実は強いだろうという人のピックアップ
等を作成して、毎朝遊技場の壁に張り出してみた。
これは確かに、効果があった。
文字が読めない人でも、自分の名前の表記を教えて貰って確認するくらいに。
しかし1週間経過後、ロシュとブルージュからこんな話を聞いてしまったのだ。
「ビブラムさんがあのゲームの表の順位を、すごく気にしているそうです。特にイルザさんの順位を気にしていて、自分より上にいると農作業に身が入らなくなって、クエルチェさんに怒られているって、アルトラが言ってました」
「毎朝仕事の前に図書館へ行って、あのゲームの表を見る人が増えた。そのまま仕事をしないで、あそこで一日中ゲームしている人も5~6人」
私はすぐに全知で事実関係を確認する。
2人の言っていたとおりだった。
対戦結果が表になることで、まずは文字が読める人間がはまってしまった。
具体的にはビブラム、イルザ、エイダン、サレルモの4人。
互いの対戦成績を気にしだした結果、日常の仕事に身が入らない状態になりかけている。
一方、自分の名前を紙に書いて貰って、表から探すという程度の人たちの間でも、やっぱり仕事に影響が出始めた。
この人たちにとって、一番わかりやすいのが勝利数だ。
表を上から見ていって、自分の名前がどれくらい上の方にあるか、確認するだけだから。
自然、この勝利数を争うようになる。
そして勝利数勝負なら、戦う回数が多い方が絶対的に有利。
結果、朝から夜まで図書館のゲーム室でリバーシをやり続ける人が出始めてしまった。
どうやら私は、娯楽が少ないこの世界を甘く見ていたようだ。
これは対処するしかないだろう。
そんな訳で毎日対戦成績表を作るのはやめた。
でも文字を読もうという動機付けにはなったので、休日である6曜日だけ成績をつけるということにした。
またゲーム室もお昼過ぎ、具体的には午後1時過ぎからの開所とした。
なお図書館には、書籍とゲームの他、楽器も追加した。
ちなみに木琴というか、石琴だ。
前に私の家があったケカハ富士には、他の石をぶつけるとカンカンといい音で鳴る石が取れる。
『コトーミの前世におけるサヌカイト、別名カンカン石と呼ばれるものと同種の岩石です』
この全知の解説で思い出したのだ。
坂出市のふるさと納税の返礼品に、サヌカイト石琴なんてのがあったなと。
だから全知と全在でちゃっちゃと作って、図書館に設置してみた。
どうせならという事で32音の石琴を作成。
割と人気があって列が出来たので、都合3台作った。
午後になると大体誰かが弾いていて、甲高いけれど何処か心引かれる音を響かせている。
◇◇◇
ミョウドーの方は新しい太政官庁が、今のところはうまく領域をまとめている。
元々洪水被害がなければ、ケカハよりよっぽど条件がいい土地。
だからこちらは、ナハルから引き継いだ時のあれこれ以外、私は最小限の関与にとどめようと思っている。
それで今のところの問題はなさそうだ。
そしてキンビーラから引き継いだ島や海の方は、今のところモ・トーからの攻撃はない。
ただしじわじわと人口が増えている。
ビシューから逃れてくる人を受け入れている為だ。
これについては、昼食会でキンビーラから説明があった。
「ビシューの住民は、積極的に脱出させるつもりだ。当分は海の民メインだから、つながりのある島に移住することになるだろう。しかし海辺の街や村の住民の場合、島よりフタナジマの方が暮らしやすいという者も多くなる。
アルツァーヤやコトーミには申し訳ないが、協力して貰えないだろうか」
「私はかまいませんわ。ただ新たに領域とした島の方は問題ありませんが、フタナジマ側には未開発のいい土地はほとんど残っておりません。ですので農業をやるのは困難かと思います」
セキテツはそれなりに開発されているようだから、仕方ない。
一方、ケカハの方は……
「ケカハのほうは大丈夫です。ご存じのように、まだ未開拓の場所が多いですから。事前に希望を言っていただければ、それに沿った場所を作っておきます。あと島の方は元々キンビーラの方がご存じですから、無理のない範囲でしたら全く問題ありません」
ケカハはまだ村が1つしかないし、その村も人口200人以下。だから空いている場所はいくらでもある。
水事情もケカハ用水の完成で、思い切り余裕が出来た。その気になれば水田を作ることも出来るくらいだ。
もっともケカハは現在、讃岐うどん主食化計画が鋭意進行中。
だから水田なんて作るつもりはないけれど。
「わかった。いざという時は、よろしく頼む」
それにそもそも、戦闘なんて性にあわない。
ケカハの村でうどんをすすりつつ、ロシュやブルージュとのんびり暮らしていければそれで十分なのだ、本当は。
なので島やミョウドー辺りのことを注意しつつも、基本的にはケカハ中心の生活を続けている。
いざという時の事について、そしてビシューの人たちについて、気にならないわけではないけれども。
◇◇◇
ケカハにおける目下最大の悩みは、住民にどうやって文字を覚えて貰うかだ。
せめて1家族に1人、文字が読めて簡単な計算が出来る人が欲しい。
そうすれば情報の伝達が楽になるし、ある程度のお金の管理も出来るようになるだろうから。
まもなく通貨による報酬付与制度が実施される。
それまでに、せめて通貨の数字が読めるようになって欲しい。
この世界の文字は文字20個と記号5つで表記する表音文字で、数字も10進法でアラビア数値的な表記。
だから決して難しくはない。そう私は思っている。
一応、文字を読みたくなるような対策は実施している。
ただ中には失敗もあし、実害が出てしまって縮小した対策まで出てしまった。
失敗して縮小したのは、リバーシの対戦成績の表作り&張り出し。
私は全知を使えば、昨日のリバーシの対戦成績なんてのも全部整理した形で把握可能だ。
なので、
○ 勝ち数の順位表
○ 各個人の成績一覧(対戦相手別)
○ 勝率の順位表
○ 対戦相手が強くて勝ち数も勝率も高くないけれど、実は強いだろうという人のピックアップ
等を作成して、毎朝遊技場の壁に張り出してみた。
これは確かに、効果があった。
文字が読めない人でも、自分の名前の表記を教えて貰って確認するくらいに。
しかし1週間経過後、ロシュとブルージュからこんな話を聞いてしまったのだ。
「ビブラムさんがあのゲームの表の順位を、すごく気にしているそうです。特にイルザさんの順位を気にしていて、自分より上にいると農作業に身が入らなくなって、クエルチェさんに怒られているって、アルトラが言ってました」
「毎朝仕事の前に図書館へ行って、あのゲームの表を見る人が増えた。そのまま仕事をしないで、あそこで一日中ゲームしている人も5~6人」
私はすぐに全知で事実関係を確認する。
2人の言っていたとおりだった。
対戦結果が表になることで、まずは文字が読める人間がはまってしまった。
具体的にはビブラム、イルザ、エイダン、サレルモの4人。
互いの対戦成績を気にしだした結果、日常の仕事に身が入らない状態になりかけている。
一方、自分の名前を紙に書いて貰って、表から探すという程度の人たちの間でも、やっぱり仕事に影響が出始めた。
この人たちにとって、一番わかりやすいのが勝利数だ。
表を上から見ていって、自分の名前がどれくらい上の方にあるか、確認するだけだから。
自然、この勝利数を争うようになる。
そして勝利数勝負なら、戦う回数が多い方が絶対的に有利。
結果、朝から夜まで図書館のゲーム室でリバーシをやり続ける人が出始めてしまった。
どうやら私は、娯楽が少ないこの世界を甘く見ていたようだ。
これは対処するしかないだろう。
そんな訳で毎日対戦成績表を作るのはやめた。
でも文字を読もうという動機付けにはなったので、休日である6曜日だけ成績をつけるということにした。
またゲーム室もお昼過ぎ、具体的には午後1時過ぎからの開所とした。
なお図書館には、書籍とゲームの他、楽器も追加した。
ちなみに木琴というか、石琴だ。
前に私の家があったケカハ富士には、他の石をぶつけるとカンカンといい音で鳴る石が取れる。
『コトーミの前世におけるサヌカイト、別名カンカン石と呼ばれるものと同種の岩石です』
この全知の解説で思い出したのだ。
坂出市のふるさと納税の返礼品に、サヌカイト石琴なんてのがあったなと。
だから全知と全在でちゃっちゃと作って、図書館に設置してみた。
どうせならという事で32音の石琴を作成。
割と人気があって列が出来たので、都合3台作った。
午後になると大体誰かが弾いていて、甲高いけれど何処か心引かれる音を響かせている。
◇◇◇
ミョウドーの方は新しい太政官庁が、今のところはうまく領域をまとめている。
元々洪水被害がなければ、ケカハよりよっぽど条件がいい土地。
だからこちらは、ナハルから引き継いだ時のあれこれ以外、私は最小限の関与にとどめようと思っている。
それで今のところの問題はなさそうだ。
そしてキンビーラから引き継いだ島や海の方は、今のところモ・トーからの攻撃はない。
ただしじわじわと人口が増えている。
ビシューから逃れてくる人を受け入れている為だ。
これについては、昼食会でキンビーラから説明があった。
「ビシューの住民は、積極的に脱出させるつもりだ。当分は海の民メインだから、つながりのある島に移住することになるだろう。しかし海辺の街や村の住民の場合、島よりフタナジマの方が暮らしやすいという者も多くなる。
アルツァーヤやコトーミには申し訳ないが、協力して貰えないだろうか」
「私はかまいませんわ。ただ新たに領域とした島の方は問題ありませんが、フタナジマ側には未開発のいい土地はほとんど残っておりません。ですので農業をやるのは困難かと思います」
セキテツはそれなりに開発されているようだから、仕方ない。
一方、ケカハの方は……
「ケカハのほうは大丈夫です。ご存じのように、まだ未開拓の場所が多いですから。事前に希望を言っていただければ、それに沿った場所を作っておきます。あと島の方は元々キンビーラの方がご存じですから、無理のない範囲でしたら全く問題ありません」
ケカハはまだ村が1つしかないし、その村も人口200人以下。だから空いている場所はいくらでもある。
水事情もケカハ用水の完成で、思い切り余裕が出来た。その気になれば水田を作ることも出来るくらいだ。
もっともケカハは現在、讃岐うどん主食化計画が鋭意進行中。
だから水田なんて作るつもりはないけれど。
「わかった。いざという時は、よろしく頼む」
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